#27 ガルムドゲルン防衛戦・決着
戦闘シーンは今回で完結です。
スキルを発動した烈華絢蘭のメンバーは集中してるのか全員目を瞑ってた…いやぁ、これ周りに敵がいたら使えないね、確実に。
それだけ大技ってことなのか…?なら少しは期待してもいい…?
まだちょっと時間掛かりそうな感じだったから、周りの状況を確かめようと思って見回してみると、皇都の援軍、緑風騎士団から単騎、こっちに向かって来てるのを見つけた。
正確に言うと俺達漂流者の所じゃなくて冒険者側の指揮を取ってるフィルさんの所へだけど。
少し遠目からでも緑色の鮮やかな長髪が靡いているのが分かる…まるで風を纏ってるような感じで馬上がとても良く似合ってる騎士だった。
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ドドドドドドドッ……ヒヒィィィンッ
「ガルムドゲルン防衛の指揮を取っている者は誰かっ」
「冒険者側の指揮は私、ギルドマスターのフィルトリッツァです」
「おお、ギルドマスターであったかっ。援軍要請を受け皇都から馳せ参じた、緑風騎士団団長のシャナルシェリア・セム・グリュンゼファールだっ。遅くなってすまない!」
「とんでもない、援軍要請を受けていただき感謝します」
「何とか間に合ったようで良かった。とは言っても既に大勢は決したようだがな」
「ええ、ただ最後まで油断は出来ません。それに…まだ奴が残っていますし」
「奴か…。あれはいったい何なのだ?」
「あれはフォートレスタートルと言う過去に封印されていた魔物です」
「封印されていた魔物が何故ここに…」
「それはこの戦いが終わった後に説明を。奴の対処は漂流者に任せています」
「了解した。確か…皇都からも烈華絢蘭が来ているのだったな」
「はい。彼等には負担を掛けてしまっていますが、奴レベルとなると頼らざるを得ない状況なのです」
「致し方あるまい。奴の事は漂流者達に任せて、我等は残敵の殲滅に注力するとしよう」
「そうですね。ではあと少し力をお貸し願いたい」
「うむ、任されよ。遅れた分はきっちり埋めることとしよう」
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冒険者側の指揮を取ってる所へ辿り着いたその騎士は無事フィルさんと会えたらしい。
少ししたら今度は防衛隊側の方へ駆けていった…次はブリュナノルグ様の所へ行くのか、なんてのん気に見てたり。
で、視線を元に戻してみると…烈華絢蘭は変わらずだった…。
その状態の烈華絢蘭を眺めること更に数分…溜め長いよっ!流石にそれは長すぎないかっ!?
「…なぁ、アイツら何やってんだ…?一向に動かねぇじゃねぇか」
「いつ亀が動き出すか分からないから、そんなにのんびりしてられないんだけどな…」
「もぅ限界ですよぅ…撃っちゃいますよ?もぅ撃っちゃってもいいですよね?ね?…ハァ……ハァ………」
「あーこっちも限界かよ…早くしてくんねぇかなぁ」
知美ちゃんの眼がイッちゃってて怖いんですけど…変な色気も出てるし。
弘史も弘史でこんな知美ちゃん見ても平然としてるのは慣れてるせいなのか?
とか言ってる内にどうやら溜めが完了した模様、やっとか…。
「…スキルコネクト成功、魔力同調完了」
「よしっ、いくぞっみんな!」
「オッケー!」
「…いきます……」
全員瞑ってた目を開けて亀の方に右手を突き出し構えをとった…こんだけ溜めたんだ、さぞ高威力な技、それこそ一撃で亀を倒せるようなスキルなんだろうな…?頼むぞ…。
「烈っ!」
「華っ!」
「絢っ!」
「蘭っ!」
「「「「覇ぁぁあ!!!」」」」
うわぉ…息ピッタリ……っていうか、ここまで含めて特訓してたのか?これ…ある意味俺がこんな厨二病全開の格好してるより恥ずかしいような気もするんだけど……。
気合いの入った掛け声で発動されたスキルは、亀に向かって光と共に高出力のエネルギー波みたいなものを発射して…亀の喉元辺りに命中した。
ドゴォォォォオオオンン!!
ド派手な爆発エフェクトと一緒に轟音が響き渡り、それが亀の全身を包み込んだ…見た目は威力抜群そうだな、これはイッたか…?アコ、奴の体力だけでいいから教えてくれっ。
[対象:フォートレスタートルの体力を表示]
【ステータス】
体力 :2506/2534
…………んんっ??えっ?なにどういうことっ?
[烈華絢蘭覇によるダメージ:10]
…………10て。
あんだけ溜めて見た目も派手だったのにたったの10!?
「よしっ、やったかっ!?」
いや、やってねぇよっ!全然やれてねぇからっ!
何だよ10って、ほとんど無傷じゃねぇかそれ!!
スキルがヘボいのか亀が堅いのか、それとも両方か…マトモに相手したら相当時間掛かるんじゃないか、これ……。
爆発エフェクトも収まってきて、全員で亀を眺めてみたら…案の定見た感じ無傷っぽかった。
「っ!?流石に一撃では無理だったか…。だけど効いてるのは間違いないっ!もう一度、次でトドメを刺そうっ!」
いや、効いてねぇからなっ。
見てほとんど無傷だって分かるだろうに、何故そこで効いてると思えるのか…君の目はどうなっているんだ、烈君よ。
次って、またあの溜めから入るのか?流石にもう亀が黙っちゃいないっての。
「あー、これもう任せちゃいらんねーな…こっちも限界だし。知美ぃ、俺らもやっちまおうぜっ」
「まっ、待ってましたぁ!あぁ…やっと…もっと気持ち良くなれるぅ…!カノンちゃんっ!一発でイッちゃいそうなのいくよぉ!伍零番台なんて初めて使うけど…今なら絶対イケる自信ありますよぅ!!」
「…初めて使うって、マジか……そりゃ俺もイケそうだわ………」
「えへへっ、楽しみにしててくださいねぇ、弘史さぁん…アハッ!じゃあイキますよぅ〜…カノンちゃん、伍玖式っ!」
「ニャニャっ、お任せニャ〜!武装変態ー!『伍玖式対魔重撃超電磁砲〔バスターレールカノン〕』!!」
限界を迎えたらしい(何の限界か分からないけど、というか分かりたくない気がするけど)知美ちゃんと弘史が、何やら二人にしか分からないような会話をした後、カノンちゃんがまた違う銃…これもまたアニメに出てきそうな感じの巨大な砲身を携えたゴツい両手持ちの大砲に変形した。
「アハッ!魔力ぅごっそり持ってかれちゃいましたぁ〜、アハハハッ!」
えぇ…それダメじゃないの?武器出して終わりって役に立たないのでは…。
「あー…ったく、無茶苦茶しやがって…。俺もそんなに魔力残ってねーぞっ」
「弘史さぁん…早く、早くぅ〜キてぇ〜っ!」
……知美ちゃんがエロいです。
勘弁してください、ちょっと俺も反応しちゃいそうなんですけど…。
弘史が巨大な銃を構えた知美ちゃんの後ろに回って背中から抱きついた…おい、何やってんだよこんな時にっ!
「ハァ…ハァ……弘史さぁん……もっと…もっとキツくぅ…っ!」
「分かったよ…おらっ、これでいいかっ?」
「ああぁぁ…キテる……弘史さんの…が……私のぉ中にぃぃ〜!はぁァんっ!!」
いや、ホント何やってんの君ら!知美ちゃんのその恍惚とした表情とその台詞が全くこの場にそぐわないんですがっ!
って、二人を見てたら知美ちゃんの銃身がぼんやり光りだした…あ、もしかして、魔力送って充填してるとかそういうやつ?にしてもそのやり取りはどうなのよっ!見てるこっちが変な気分になるわっ!
「はぅ…もっと…欲しいのぉ…。弘史さぁん…こっちからもぉ…お願いぃ…っ!」
「おいっ、そりゃ流石にここじゃムリだっての……」
「もう少し…もう少しでぇ、イケそうなんですぅ!だからぁ早くぅお願いぃぃ!!」
「マジか…あー、もーどーなっても知らねぇぞっ!」
もにゅっ…もみもみっ
「あっ、はぁぁ…んっ……クる…キちゃう……これっ、スゴいのぉ………キちゃうよぅ…っ!!」
……弘史が知美ちゃんの胸を揉みしだき始めた。
それ、必要な事なんですかね……まぁ見た感じ確かに銃身がますます光ってきて、バチバチってスパークし始めましたけれども。
にしたって…それはちょっと、いや、かなり羨ま……じゃない、こんな時と場所でやるようなことじゃないだろ…目が離せなくなってる俺も大概だってのは自覚してますがねっ、知美ちゃんのその、アレしてる時みたいな顔…めっちゃ気持ち良さそうです、もうホント俺の息子も黙っちゃいないくらいエロいんですよ……。
とか何とか俺の目が釘付けにされてる内に、遂に亀が動き出した。
完全にこっちを標的に定めたらしく、ゴツい顔…亀っぽくないドラゴンって言った方がしっくりくる顔をこっちに向けて、ゆっくり口を開け始めた…どう見てもなんか口から出して攻撃してくる体勢だよな、それっ。
これ、あれか…亀の攻撃とこっちの攻撃で相殺するってオチじゃねぇの?それはちょっと止めてほしいから、こっちの準備が終わるまでもうちょっと黙っててくれるっ?
(〔魔闇爆〕!)
完全に口を開ける前に亀の顔面目掛けて魔闇爆の黒球を飛ばした。
ドゴォォォオオン!
グォォオオアアァァァアア……
あんなデカい的を外すわけも無く、狙い通り顔面に命中した黒球が爆発して、それを受けた亀が痛がったのか叫び声を上げた…さっき当たった烈華絢蘭覇の時は嫌がる素振りすら見せなかったのに。
俺の闇黒魔法は効くってこと?
[闇黒魔法・魔闇爆によるダメージ:42]
……効いてなかった、はい、気のせいでした。
あー、これムリだわ、マトモに相手するのは止めた方がいいな…。
そうすると…アレ使うしかない、のか……?
いや、今なら弘史、知美ちゃん、烈華絢蘭の攻撃に便乗すればバレない…か?
長期戦とか洒落にならないし、もうそれしかないよな…使わないって決めたのに、こんなに早く使う羽目になるとか微塵も思わんかった。
けど、長引かせるとそれだけ皆に危険が及ぶだろうし、それだけは絶対にダメだ、今がここぞって時だと納得するしかない。
バレないことを祈りつつ、準備が完了した烈華絢蘭と弘史、知美ちゃんが放ったスキルに上手く合わせるよう俺もスキルを使おうとした。
「これで終わりだっ!いくぞっ!!」
「烈っ!」
「華っ!」
「絢っ!」
「蘭っ!」
「「「「覇ぁぁあ!!!」」」」
「弘史さぁんっ!もぅ…ダメ……私もっ、私もイクぅぅううっ!!」
「くっ…おらっ、イけっ!イッちまえぇ!!」
…台詞の温度差よ。
いや、どっちも恥ずかしいって意味では共通してるよな、うん。
一瞬呆けて俺のスキル発動タイミングがズレたけど、かえってそれが功を奏したっぽい。
二組のスキル…烈華絢蘭覇はさっきと同じド派手な見た目のエネルギー波っぽいのを、知美ちゃんはトリガーを引いた瞬間、人に見せちゃいけないような顔を晒しながら雷纏ったぶっといレーザーみたいなのを、それぞれ同時に亀へ向かって放ち、これもさっきと同じ様にヤツの喉元にブチ当たった。
その後大爆発を起こした瞬間、俺もスキルを使った…皆のスキルが当たる前だとおかしいって気付かれそうだったから、これで良かったはず。
(〔黒闇齎〕!)
…両スキルの爆炎が消え、見た感じやっぱり何の変化もなく、傷一つ見当たらない亀が…
ズズゥゥンンンッッ…
…っていう音とかなりの震動を伴ってその場に崩れ落ち、最後に頭を地面に叩き付けて身動きを止めた…。




