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#08 解体と査定



「よし、早速バラすぞ!まずはこの虫からだな!」


「カティはうさぎさんー?ねずみさんー?からー」


「とりあえずバラして確認するのが目的だからな、細かい面倒な手間は今回省くぞ、いいな」


「うんーわかったー」


 とか言って問答無用で解体用の刃物を入れていく二人。

 いや、仕事だから分かっちゃいることだけど、躊躇いなく出来るってのは凄い尊敬する。

 流石はこの道のプロって感じだ。

 見る見る内に解体されていく…ディモルさんは言わずもがな、カティちゃんも全身を使って動き回りながら、それもかなりのスピードで解体してる。

 装備のおかげなんだろうけど、パッと見踊ってるようにも見えて、とにかく凄い技術だと素直に感心した。


「どうですか?凄いですよね、カティちゃん」


「あ、うん、あれは凄いね…予想以上だよ。あの歳でもう極めてるって感じ…天職って言ってもいいんじゃないかな」


「カティちゃん、お父さんの事大好きですからね。将来の夢はやっぱり解体屋って言ってましたよ」


「いや、あの技術見ちゃうと、もう叶ってるんじゃないかな?本当に凄いな…」


 いや、もうホント、スゴいとしか言いようがないんだけど……。


「うぉぉぉぉおおお!」


「やー!たー!よいしょー!」


 いや、ね、うん、スゴいんだけどね、なんていうか解体ってそんな気合いの声出しながらやるようなものなんだっけ…?何かイメージ違った……。


「よし、こいつはこんなもんか。検分は後回しだ、次のヤツバラすぞ!」


「カティもおわったー、つぎはいぬさんー!」


「いくぞ、とにかくバラしてバラしてバラしまくれ!」


「はーい!いくよー、えいやー!」


「おらぁぁぁあああ!!」


 …声だけ聞いてると、解体っていうか、戦闘してるようにしか聞こえないし。

 まぁ、ある意味ここが解体屋の戦場だから、あながち間違いじゃないのかもしれない……けど、でも、やっぱり何かが違うような気がする……。


「今日は二人とも凄く張り切ってますね!いつもより激しいです」


「あー、いつもこんな感じで解体してるのね…」


「はい、そうですね。カティちゃんなんかいつにも増して楽しそうですよ?」


 あれで楽しそうなのかぁ…もうホント圧巻だわ……。

 奥義・ナントカ乱舞!とか言い出してもおかしくないな、これ。


「よし!ノってきた!久々にシメるかっ!」


「あーカティもやるー!」


「おう!いくぞおらぁぁあああ!!」


「いっくよー!ほいやぁぁぁぁー!」

 

「「壊塵流解体術奥義!」」



 え!?マジであるのっ!?



『彩盡暴・解!!』


『いるみな・おーばー・かてぃくしょんー!!』


 ズバババババッ!



 えぇぇ……一瞬で解体されちゃったよ………認識違ってたわ、うん、どっからどう見ても戦闘でした。

 ってか、そんな大技っぽいので、なんでそんなキレイに解体出来てるのか、そっちの方が理解追いつかない……。


「わぁー、奥義初めて見ましたよっ!凄いです、二人とも格好良かったです!」

 

「おう、そうか。久々に本気出しちまった。流石は未知の魔物、熱くさせてくれる!」


「カティもーたのしかったー!」


「…こちらの世界の解体は、本当に凄いですね……驚きましたよ………」


「ま、どこで解体してもこんなもんだろ、多分。だよな、ラナ」


「えっと…どう…ですかね…?解体はここでしか見たことがないので……」


 いや、どう見てもこれが普通とか思えないんだけど…まぁ、珍しいものが見れたってことで良しとしておこう、うん。


「そうか。まぁ、細かい事は気にするな。それより確認するぞ」


「あ、はい、ではわたしも確認しますね」


 そう言って解体された部位を確認していく二人。

 その二人を眺めていると、カティちゃんが俺の方にトコトコ寄ってきた。


「カティちゃんもお疲れ様。凄かったよ、踊ってるみたいだった」


「えへへーありがとうーごさいますー」


 にへらっと笑って俺を見上げるカティちゃん。

 あれだけの動きで解体してたのに、全然疲れたように見えないところもまたスゴいよな。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「ディモルさん、これ、魔石ですよね…一番小さいサイズの魔物でこの大きさですか……」


「あぁ、この魔石の大きさからして、相当厄介な類の魔物だろう。そうだな…バジリスク、サンドワーム、小さ目のランドドラゴンってレベルか」


「やっぱりそうですか…それがさっきの数なんですよね……うーん、そうすると、ポイント換算で──」


「こいつの皮は相当な強度があるな、いいレザー装備が作れそうだ。こっちの外殻の強度も申し分ない。それから──」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 解体された部位の前で二人がうんうん唸りながらあーだこーだ言ってる。

 もうちょっと掛かりそうだからカティちゃんと話でもして待つか。


「カティちゃんは学園生なんだよね?」


「うんーそうだよーミルティシア学園の初等生なのー」


「そうなんだ。学園は楽しい?」


「うーん、勉強と試験はあんまり楽しくないー。でも、友だちといっしょにいるのは楽しいー」


「ははっ、そっかー、カティちゃんは勉強苦手なんだ。友達はたくさんいる?」


「うんー、いっぱいいるよー!ティシャでしょーヒナリィでしょー、それからーロッサにーヒミカー!」


 お、何か日本人っぽい名前が出たな…。


「おーたくさんいるね、ヒミカちゃんていうのはもしかして漂流者なの?」


「ヒミカはねー、おかーさんがひょーりゅーしゃだって言ってたー」

 

「へー、お母さんが漂流者なんだ。他にも漂流者の友達はいるのかな?」


「あとはーヒミカのいもうとのトウカがいるー」


 あー、姉妹なのね、ってことは漂流者はお母さん一人か。

 こっちで結婚して子供産んだってことか、やっぱりいろんな人が来て生活してるみたいだな。


 カティちゃんとそうこう話してる内に、ディモルさんとラナさんが戻ってきた。

 確認終わったのか、どうなったかな?あと、また大事なこと聞いとかないと。


「おう、大体確認終わったぞ」


「お待たせしました、ちょっと上の方に報告が必要ですが、何とか査定出来そうです」


「ありがとうございました。あ、そういえば…解体料っていくら位なんでしょうか」


「あぁ、漂流者でも査定だけなら基本解体はしねぇからな…今回が特別なだけだ」


 あーそっか、今回は解体しないと査定出来なかったからか。

 なら解体料発生するよな…どうしよう、手持ちないんだけど……。


「あ、それなら確認に使用した魔物1体を解体料に回してはどうですか?」


「おいおい、それじゃこっちがボロ儲けじゃねぇか。1体分でも十分釣りが出るぜ」


「あの、実は今手持ちが全くと言っていい程ないんですよ…なので、それしかないというか、何というか……」


「あー、そういうことか、なら遠慮なく貰っておくか。そうだな…解体料で取るならネズミウサギで十分なんだが、この虫の解体部位が多くてな…細かい確認もしてみたいんで、こいつにしてくれると助かるんだが、どうだ?ナオト」


 どうもこうもお願いしてるのはこっちだからどれでもオッケーなんですが…一番デカいイノシシクマでも。

 いや、でも、それ以前に残りの魔物の解体料が……。


「いえ、よくよく考えたら残りの魔物の解体もお願いしたいので、今回の4体分全部をお渡ししますよ。それで残りの解体料も足りますか?」


「そりゃ構わんが…いいのか?ナオトが大損するぞ?残り分でも虫とクマで十分過ぎると思うが」


「ええ、大丈夫です、二人分の解体見学料も含めてということで。いいもの見せてもらえましたし。ただ…即換金出来そうなものだけ譲って貰えませんか?でないと手持ちのお金が出来ないので……すみません」


「あぁ、そこは心配するな。魔石だけは持っていけ、どうせギルド側の査定で使うだろうしな」


「はい、そうですね。魔石は査定時の判断材料として使わせてもらった後、当ギルドの方で買取りさせて頂きたいです」


 魔石はギルドの方で買い取ってくれるのか、それならオッケーだな。

 これでやっと自分のお金が持てる…助かったぁ……。


「そうなんですね、よかった…これでやっと手持ちが出来そうで安心しました、ありがとうごさいます」


 そう言って二人が持ってきた魔石を受け取り収納墓地へ。

 魔石も一応亡骸から出てきたものだし、無限収納よりこっちかな、と。

 魔石は小さいのがテニスボールくらい、大きいのはソフトボールくらいってところだった。


「まぁ、2、3日生きてく分くらいの金なら俺が出してやってもいいがな。こんだけの素材を貰えるってんなら、余裕で面倒みてやれるぞ」


「あ、いや、収入のあてが出来たのでそこまでしてもらわなくても大丈夫ですよ。それに残りの解体もお願いしてるので」


「そうか、まぁ、何かあったら遠慮なく言ってくれ。こんだけしてもらったんだ、いくらでも手を貸してやる」


 おぅ、何と頼もしいお言葉…多分これからしばらくご厄介になりますよ、解体で。


「魔石はいいとして、他の素材はどうしますか?多分前例が無い素材が多いので査定にも時間がかかると思うのですが…」


 あー、それ俺も気になってたんだよね。

 解体した素材貰っても、どの程度の価値があるかさっぱり分からんし。

 ラナさん聞いてくれてありがとう!


「あぁ、それはこっちでやっておく。俺が残り分を解体してる間に、素材として扱う連中に声を掛けといてやる。そうだな…全部含めて2日ってところか、3日後には確実に終わってるだろうから、それ以降に引き取りに来てくれ」


 なんと全部面倒見てくれるとか、至れり尽くせりだな、ホント助かりますわ。


「3日後以降ですね、分かりました。では残り分置いていくのでよろしくお願いします」


 残り分を放出放出っと。

 3日くらいなら魔石を換金した分で何とか持つかな?どれくらいになるか分からんけど、まぁ、何とかするしかないな。


「おう、任せておけ。今日はカティもいるから、この後続けてやるつもりだしな」


「おとーさんーこんどはいのししくまさんやりたいー」


「あーわかったわかった、やらせてやるよ」


「わーい!やったー!」


 根っからの解体好きなのね…あの調子ならあっという間に終わっちゃいそうだけど。


「ではナオトさん、わたし達は魔石を持ってギルドに戻りましょう」


「はい、分かりました。では、ディモルさん、カティちゃん、すみませんが解体よろしくお願いします」


「あぁ、やっておく。また後でな」


「ラナおねーちゃん、ナオトおにーちゃん、またねー!」


 おにーちゃんって呼ばれたのがちょっとくすぐったかった。



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