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#26 ガルムドゲルン防衛戦・終盤

集団戦闘大詰めです。





 大量の何か、それは…亀の背中から飛び出してきた飛行型の魔物達─ガーゴイルやハーピィとファンタジーでは有名どころな魔物から、不思議な形をした魔物…魚の胴体に爬虫類っぽい翼が生えた感じのやつとか、パッと見色合いはドラゴン…よりは小さいからワイバーンかな?って思ったんだけど、形的に変…なんかトカゲ?サンショウウオ?みたいな胴体にワイバーンの翼が生えたようなやつとか、よく分かんない魔物が混ざってたから、マップ上で確認したら[スカイスイマー][フライリザード]って表示されてた。



[敵増援を確認。総数1534体]



 折角数的に優位になったってのに、また逆転された…いや、でも考えてみたらこのタイミングでまだマシだったのかも…空からあんな数が戦闘開始直後に出てきてたら、戦意喪失ものだったんじゃ…。

 そのまんま要塞亀ってことか、戦力温存とかホント洒落にならない…しかも航空戦力だし、どうすりゃいいんだよっ、流石に空は飛べないぞ、俺…っていうか空飛んで戦闘とか、多分そういう飛空スキル創っちゃえば出来るんだろうけど、そんなんやりたくない。

 目立つの確定だし、生身の人間の身体で飛ぶっていうのも個人的にあまり好きじゃないんだよ…羽とか翼が生えてるならまだしも、見た目それ飛べないよね、って思うやつが飛んでるってところに抵抗が…いっそ背中に羽生やして人間辞めるか…?いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない、あれをどうにかしないとっ。


 そんな奴等が大量に出てきたもんだから、こっちも皆動揺を隠しきれずに戦線が少し乱れたっぽい。

 今度は空まで気にしなきゃいけなくなったんだから、そりゃ皆慌てもするって。


 いや、でもマジでどうしよ…もうこれ、なりふり構わず闇黒魔法で対処するしかないのか…って考えてたら、前線中央で戦ってた弘史が後方の知美ちゃん達の所へ下がっていくのが見えた。

 もしかして…何か策があったりするのか?



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「おいっ!そこの魔法使い!風魔法使えるかっ!?」


「絢久ですよっ、長門絢久!使えますけどそれが何かっ!」


「よしっ!んじゃ、空の魔物にその魔法撃てっ!倒さなくていいっ纏められれば上出来だっ!」


「貴方に指図される謂れは無いんですけどっ!」


「つべこべ言わずにやれってのっ!知美ぃ!今から空中のアイツ等纏めっから、遠慮なくやっちまえっ!!」


「えっ!?いいんですかぁ?遠慮なくやっちゃいますよぉ!?」


「おぉっ!やっちまえっ!」


「はぁい、やっちゃいますぅ!えへへ…纏めてくれるんなら、どうしようかなぁ…大きいので一発?ううん、どこ撃っても当たりそうだからバラ撒こうっ!キモい良さそうだしぃ…うふふふっ。じゃあ、カノンちゃんっ、肆弐式お願いぃ!」


「オッケーニャ〜、ご主人しゃま〜!武装変態〜『肆弐式対魔ニ門速射砲〔ツインガトリング〕』!」


「なるほどぉっ、そーゆーことねっ!なら私だって…っ!」


「おらっ、こいやぁぁあ!〔双竜嵐旋風ツイントルネード〕ォォオ!!」


「チッ、全く以て不本意極まり無いんですけどね…っ。渦巻く風よ、天上高く吹き昇れっ!〔ウインドストリーム〕っ!!」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 弘史と絢久が魔法と技で風を巻き起こしてた…どうやら空中の敵の動きを阻害しようとしてるっぽい?

 三本の竜巻が広範囲で空の魔物を巻き込んでいって…空中で上手く制御が取れなくなった魔物達が渦の中で纏められていった。


 弘史と絢久の側にいた知美ちゃんはカノンちゃんを狙撃銃から違う銃、あれは…ガトリング銃?を片手で1本ずつ持って(見た目かなり重そうに見えるんだけど、そこは余裕で持ってた)、それを空中で纏まった敵に向けて構えてた…ああ、なるほど、纏めて殲滅しようって魂胆か。

 知美ちゃんの隣にいた華凛もそれに合わせて弓を構えてたんだけど、流石に弓矢じゃこの風の壁は突き抜けられないんじゃない…?と思いながら眺めてたら、知美ちゃんが物凄い勢いで纏まってる敵目掛けて乱射し始めた。


 ……うん、何だ、某有名ロボアニメにいたよなぁ…そんな感じのやつ、その内胸やら肩やら至るところから武器出して撃ち始めるんじゃないの、それ…なんてふと思ってしまった。

 華凜も華凜でスキルを使ったんだろう、矢が弓から撃ち出されたとは思えないくらいの速さ…知美ちゃんの銃弾に負けてないくらいの速度で、風みたいなものを纏いながら魔物に飛んでいった…ただ、矢の本数は一射で5本くらいだけど。

 流石に弾数は銃器に勝てないよなぁ…それでも頑張って連射してるっぽい…矢を放つその動作がかなり忙しなくて、ちょっと滑稽に見えたのは心の内に留めておこう。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 バシュッ!バシュッ!バシュッ!…



「〔貫通風矢ペネトレイトウインドアロー〕!〔貫通風矢ペネトレイトウインドアロー〕!!〔貫通風矢ペネトレイトウインドアロー〕!!!……あーっ!もうホントそれズルいっ!弓で銃に勝てるわけないじゃんっ!!」



 ズバババババババババババッッ……



「アアアアァァァアアッ!キっ…キモチ良いぃぃいいーっ!アハッ!アハハハハハハッ!!」


「ご主人しゃま、いつにも増してノリノリですニャ〜♪」






「………何なんですか、あれ…」


「……カノン持つといっつもああなるんだよ…。ま、気にすんな」


「…気にするなってレベルじゃないと思うんですけどね、あれは……」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 遠目から見てあの知美ちゃんがヒャッハー!って無双してるように感じるのは気のせいだろうか…気のせいということにしておこう、うん。


 前線中央は任せても大丈夫そうだから、今の攻撃の範囲外で無事だった魔物達…防衛隊側と冒険者側の上空に分断された形になったけど、そんなのはお構い無しで攻めてきた奴等を何とかする方向でいこうとして、冒険者側はマジックユーザー部隊が対空砲火に切り替えてたから対空が弱い防衛隊側に回ることにした。


 左翼に即移動して地上の魔物達相手にまだ奮闘してる防衛隊の皆がそれに集中出来るように、空の魔物は俺が一手に引き受けるつもりでいたら、フライリザードって奴が口から火の玉を吐き出して攻撃してきた…それはヤバい!このままだと防衛隊の皆に被害が出る…っ!防御!防御っ!


(〔侵闇壁ダルクウォルド〕っ!!)


 焦って刀剣持ったままの両手を前面に突き出して防御用の闇黒魔法を使った…傍から見たら変なヤツに見られてたんだろうけど、そんな事気にしてられるかっ!

 突き出した両手から闇が防衛隊の皆をカバー出来るくらい面になって広がり、一瞬ここだけ闇夜になった。

 フライリザードが吐き出した火の玉は…その闇夜に触れた途端、吸い込まれる様に跡形も無く消えて無くなった。

 

 フライリザードの火の玉以外にも、ガーゴイルが投擲した槍や、爪とか体当りで攻撃しようとしてきたハーピィ、スカイスイマーもその闇の中にどんどん飲み込まれていき、その姿を消していった。


 気が付くと遠距離攻撃をしていたフライリザードとガーゴイル以外はほぼ居なくなってた…のはいいんだけど、残った奴等はどうしようって考えてたら…


「(ナオトっ!マジックユーザー隊が標的にされたっ!アタイらじゃ空からの攻撃は防ぎきれねぇ!)」


 …と、アーネからシータ達がピンチだって念話が。

 あ、これもう目立つからやらないとか言ってる場合じゃないなっ!

 

 目の前に展開してた侵闇壁ダルクウォルドはそのままにして闇の壁の内側から外側へ、残ってたフライリザードとガーゴイル達が視認出来るように移動して闇黒魔法を放った。


(〔黒魔閃レイノルグっ!〕)


 頭の中で闇黒魔法を叫ぶと、俺の身体の周辺に真っ暗な硬式野球ボールくらいの大きさの球体が大量に現れて、その球体から次々と光線…黒いから光線って言うのも変だけど、黒いレーザーみたいなのが空の魔物目掛けて発射された。


 高速で発射された黒いレーザーにフライリザードとガーゴイルは躱すことすら出来ずに貫かれ、一瞬で全て撃墜した。


 結構派手にやったはずなんだけど、よくよく考えたら闇の壁で防衛隊の皆からは俺の方見えないんだった…これならそんなに騒がれることもないな、良かった。


 これで防衛隊側の空の魔物は居なくなったから、侵闇壁ダルクウォルドを解除して、急いでシータ達の所へ向かったら…フライリザードの火の玉とマジックユーザー隊の魔法、炎や氷の矢みたいなものから雷や光のビームみたいなものが飛び交う撃ち合い合戦になってた。


 マジックユーザー隊の一部と、その後方にいた前線から後退してきた負傷者を回復してた回復支援部隊が魔法障壁みたいなものを張って火の玉を防いでたけど、こっちの方が防衛隊側よりも空の魔物の数が多いらしく、障壁も崩壊寸前っぽかった…とにかく防ぐのが先だっ!


(〔侵闇壁ダルクウォルド〕っ!)


 マジックユーザー隊と空の魔物達の間に割って入り、防衛隊側でやったのと同じ様に急いで闇の壁を展開したら…フライリザードの火の玉が吸い込まれるのは分かってたけど、壁の内側になったマジックユーザー隊の魔法も闇の壁に吸い込まれてった…え、両面とも同じ効果ってこと?あれ?でも俺さっきすり抜けられたよな…?どうなってんだこの壁…。


 けど、まぁとりあえず防げはするからこれはこれで安心っちゃ安心か、効果が変なところは大目に見てもらおう。



「ナオトっ!」


 マジックユーザー隊の護衛に付いてたアーネが俺の所に走り寄って来てくれた…どうやら無事っぽい、間に合ったかっ。


「アーネっ無事かっ!?」


「あぁっ、何とかなっ!けどあんなの相手じゃ護衛のしようがなかったぜ…こっちが躱すので手一杯だったっつーのっ」


「何にせよ無事で良かった…。シータは?」


「シータも無事だぜ。ただマジックユーザー隊からも負傷者が出ちまった…こんな後方まで来るとは思ってなかったからよ……」


「空の敵はどうしようもないって。とりあえずこの壁の内側は安全だから、今の内に皆に立て直してもらおう」


「分かった、そうするっ。あ、ナオト!」


「ん?」


「ありがとなっ!」


 一言俺に礼を言ってマジックユーザー隊の所へ戻って行ったアーネ。

 別に礼なんかいらないっての、当然の事をしたまでなんだから。


 さて、そんじゃ早く空のコイツ等どうにかしないと…標的が前線にいる冒険者達に移っちまう。

 またさっき防衛隊側で撃墜したみたいにやるしかないよな…今度は冒険者達が前線にいるから確実に目立っちゃうけど、もう今更だしとっととやっちまおうって行動に移しかけたら…



 ドドドドドドドッ……



 …っていう音が聞こえてきた。

 何の音だ?まさかまた敵の増援とかじゃないよなっ!?って急いで壁の向こうにすり抜けていったら、前線の冒険者側の更に右手側…皇都方面から騎馬の一団がこの戦場に向かって来た。

 その内の一部の騎馬がある程度の距離─丁度魔法が届くくらいのところで馬を止めた途端、馬上のまま空中の魔物目掛けて一斉に魔法を放ってきた…あ、これショーが頼んだっていう皇都からの援軍かっ!?



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「っ!?間に合ったかっ!魔導騎兵隊、空中の魔物へ魔法攻撃開始っ!槍騎兵隊はそのまま前進、左翼の援護に回れっ!ゼフィは魔導騎兵隊、ブリングは槍騎兵隊の指揮をそれぞれ任せるっ!」


「ハッ!魔導騎兵隊、継続して空中の魔物に魔法攻撃!シャナル様はどうなさるんですかっ?」


「私はガルムドゲルン部隊の指揮者の所へ向かう!後は頼んだぞっ!」


「任された!槍騎兵隊、我に続けぇっ!」



『『『『『『了解っ!!』』』』』』



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 援軍と思われるその部隊は全て騎兵で、魔法攻撃をしていた騎兵達はその場で継続して空中の魔物達に魔法を放ち、それ以外の騎兵、大体半分くらいの数の騎兵が冒険者達の戦ってる前線を突っ切って防衛隊側の援護に行くようだった。

 

 結構な数に見えるんだけど、どれくらい来たんだ?



[ブラストヘルム皇国所属・魔導・槍騎兵混合部隊〔緑風騎士団グリンドナイツ〕:総数2014騎]



 え、そんなに来たんだ!これは…もう大勢決まったか?



「(ナオトっ、マジックユーザー隊立て直し終わったぜっ!)」


 闇の壁の向こう側からアーネの念話が来た、どうやらマジックユーザー隊が立て直したらしい。

 早いな、もう終わったのか…ならマジックユーザー隊にももうちょっと頑張ってもらうかっ。


「(了解っ、壁解除するぞっ!)」


「(あぁっ、頼むっ!)」



 闇の壁を解除してマジックユーザー隊からも攻撃出来るようになって、援軍と変則挟み撃ちみたいな形になった。

 これならもうこっちの冒険者側も大丈夫だろうな、後は…あのデカブツを何とかすれば俺達の勝ち、ガルムドゲルン防衛成功だろっ!


 戦場全体を見渡してみたら、肉眼でも魔物の数よりこっちの数が完全に上回ってる。

 よしっ、最後は俺達漂流者で仕上げといくかっ!


 漂流者で受け持ってた中央に舞い戻って来たら、もう動いている魔物の姿は一つもなく、残すは亀のみになってた。

 烈華絢蘭も弘史、知美ちゃんも流石は漂流者ってところか…烈華絢蘭の皆もクチだけじゃなかったっぽい?



「おう、戻って来たか。こっちはもう終わってるぜ」


「みたいだな。んじゃ残すはあの亀だけか」


「アイツ動き出す前にやっちまおうぜっ」


 こんだけ魔物の数が減ったのに、もう諦めたのか全く動きを見せない亀。

 弘史の言う通り今の内だろうな…最後の悪あがきとかされたらたまったもんじゃない。


「それは僕達がやるよ」


「だねっ。あの亀は私たちが倒すよっ!」


「…遂にアレを使う時がきましたね。特訓の成果を今ここで見せるとしますか」


「…アレをやるのですか?確かにアレでなければ倒す事は出来ないかもしれませんが…」


「大丈夫だって、蘭子!私たちならラクショーよっ!」


「…いえ、そっちの心配ではなくて……私的にアレは少し、その、恥ずかしいのですけれど………」


「何も恥ずかしいことなんてないよ、蘭子。今こそ僕達の力を合わせて立ち向かう時さ」


「……烈がそう言うなら…分かったわ。覚悟を決めましょう」


 何やら烈華絢蘭のメンバーだけであの亀をどうにかするみたいだ…じゃあ、ちょっと任せてみるか。


「何か策があるみたいだな。じゃあ任せてもいい?」


「ああ、君達は黙ってそこで見ててくれ」


「オマエらだけであのデカブツを倒せるとは思えねぇけどな…。ま、やるっていうならやってみろや」


「えぇ…弘史さぁん、私もブッ放したいんですけどぉ……さっきから疼いて疼いてしょうがないんですよぅ……ハァ…ハァ………」


「ちょっと待ってろって、多分出番あるからよ」


「……あんまりぃ…待てませんよぅ……ハァ、ハァァァ………」


 ……えっと………どちら様ですか?なにこの豹変ぶり、え、どうしちゃったの知美ちゃんっ!?


「あー、うん、まぁ、気にすんなや。後で説明してやっからよ」


「あ、あぁ…分かった、けど……同一人物、なんだよ…な?」


「見間違いじゃねーよ、知美だ、知美」


 さ、左様ですか…まぁ、容姿が変わってるわけじゃないから知美ちゃんなんだろうけど…中身明らかに別人なんですが。


「では皆やりますよっ。魔力開放!同調開始…発動、スキルコネクト!!」


 知美ちゃんの変貌に驚いてる内に、絢久がスキルを発動したらしい。

 絢久を中心にして烈、華凜、蘭子が魔力を送ってるっぽい…どうやら協力して大技を放つ感じだな。

 さて、どうなることやら…これで決まればいいんだけど。



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