#24 ガルムドゲルン防衛戦・序盤
集団戦闘有りです。
「っし、いくぜおらぁっ!〔電雷豪雨衝〕っ!!」
「…地より噴き出し熱波の渦よ、炎と共に舞い上がれっ!〔フレイムストーム〕っ!!」
弘史は掲げてた左手を勢いよく振り下ろし(やっぱり右手で抜剣してたけど…)、絢久は持っていた杖を上へ突き上げた。
弘史は決闘した時に技名叫んでたから知ってるけど、絢久は詠唱付きなのね…。
いや、まぁ、本人達がいいなら何も言いませんけど、俺にはちょっと無理かなぁ…恥ずかしくて。
ということで、俺は心の中で叫ぶことにしときます。
(〔魔闇爆〕っ!)
弘史の放った技が雷の雨を降らせ、絢久の放った魔法が炎の渦を巻き上がらせていた。
俺の闇黒魔法は敵方面に向けた掌の前に発生した黒い球体を一つ、魔物達の方へ撃ち放ち、着弾と同時に爆発させた。
見た目は3人とも結構派手だけど、どれくらい削れただろうか…それなりに減ってくれていればいいけど。
[電雷豪雨衝:討伐数751/フレイムストーム:討伐数509/魔闇爆:討伐数1324]
サンキューアコ。
2500くらいは削れたっぽい…それでもまだ魔物の数の方が上だな。
っていうか、弘史の方が討伐数上だった…やっぱり口だけだったか?烈華絢蘭は。
俺達が放った先制攻撃を物ともせず魔物はどんどん近付いてくる…けど、こちらも負けてはいない。
冒険者側のフィルさんと防衛隊側のブリュナノルグ様がそれぞれ指示を出す。
「マジックユーザー隊、術式開始!前衛は右翼側へ展開!いいかっ、基本を忘れるなっ!常に三人一組で行動しろっ、背中をがら空きにするなよっ!」
「大盾部隊、左翼側へ前進!槍撃部隊、剣撃部隊はそれに続いてくださいっ!いいですかっ、防衛隊の名にかけて必ずここで食い止めますよっ!」
『『『『『『『『『オオオオオオォォォォォォオオオ!!!!』』』』』』』』』
両陣営から気合十分な声が上がり、それと共に全員進軍を開始。
冒険者側前衛は三人一組になってそれぞれ突進していき、マジックユーザー隊からは詠唱が開始されていろいろな属性の魔法が魔物達に向かって飛び交っていく。
防衛隊側は大盾部隊が重厚な足取りで前進、その速度に合わせて槍部隊と剣部隊が後に続いていった。
開幕先制した俺達はそのまま中央から来る敵を相手にする形に。
意気揚々と突撃していったのは烈華絢蘭の前衛二人、ソードマンの須藤烈とランサーの宮藤蘭子だ。
「行こう蘭子、いつも通り蹴散らしに」
「ええ、分かっているわ。さっさと終わらせて皇都に戻りましょう」
「俺も行くとするかぁ。知美ぃ、後は頼んだぜっ!」
「はは、はいっ!…カノンちゃんっ……お、お願いっ」
知美ちゃんに一言言い残し、先に特攻した二人から少しだけ遅れて弘史も魔物の群れに向かっていった。
知美ちゃんはその場で弘史に応えた後、何かにお願い?してた…すると、知美ちゃんの目の前にポンッって擬音が聞こえてきそうな感じで背中に黒い羽を生やした黒猫が宙に浮いたまま現れた。
あぁ、そういえば知美ちゃんが助けようとした猫もこっちの世界に来てて使い魔になってるって言ってたっけ…その浮いてる黒猫が使い魔ってことか。
「ご主人しゃま、お呼びかニャ〜」
「カノンちゃん、きょ、今日もよよ、よろしくねっ!」
「はいニャ〜!ご主人しゃまの仰せのままに〜」
「じゃ、じゃあきょ、今日は…参捌式でおお、お願いねっ」
「了解ニャ〜!武装変態〜『参捌式対魔中距離狙撃銃〔ヴァルファテッサSPTー2nd〕』!」
知美ちゃんと黒猫…カノンちゃんが何やら会話してたら、急にカノンちゃんの体が光りだして…狙撃銃っぽいのになった。
えっと…つまり、黒猫カノンちゃんは武器─銃で、知美ちゃんはガンナーってこと?
でも、それなら物凄く心強いな、銃なんてこっちの世界じゃそんなに普及してないだろうし…多分。
少なくともガルムドゲルンの冒険者達で銃を持った人は見なかったからな。
うん、これなら任せても大丈夫そうだ、俺は俺で亀の幻術破ってこよう。
知美ちゃんの武装も見届けたし、俺も真っ直ぐマップ上の亀が表示されている位置まで突っ込むとしますか。
魔物の集団は足の早い魔物を前衛として突撃させているっぽく、四足歩行の獣型の魔物─ファングウルフや虎型のブレードタイガー、猛牛型の赤と黒のブルホーン、熊型のデッドリーベアなんかが先行して迫ってきていた。
冒険者側と漂流者で俺より先に飛び出していった3人は既に接敵して戦闘になってる。
前線中央の後方からは絢久の魔法と平岸華凛の弓矢で前衛二人を援護射撃していた。
防衛隊側は進みが遅いからまだみたいだけどもうすぐ接敵するだろう。
俺はそのまま烈と蘭子、弘史が戦闘している脇を通って亀に向かうことにした…目の前の魔物を刀剣で捌きながら。
脇を通りがてら弘史に「先に亀の所に行くから、ここは頼むなっ」と、一声叫んで特に返事も聞かず突っ切った。
獣型の魔物の後には人型の魔物─ゴブリン、コボルト、オークやオーガが続いていたけど、とりあえず進行方向の敵だけ切り捨てて一直線に亀に向かった。
その途中、人型の部隊の後方に遠距離攻撃、弓や魔法を使うっぽい魔物─ゴブリンアーチャーやゴブリンメイジみたいな上位種の一団を見かけたから、そいつらだけは厄介だと思って闇黒魔法をその一団に打ち込んどいた。
(〔邪黒陣〕)
一団のいる地面に黒い魔法陣が展開されて、そこから黒い炎のようなものが上空へ湧き上がり魔物達を飲み込んでいった。
これで多少は遠距離攻撃による被害も抑えられるだろう。
[闇黒魔法・幻滅殺:有効範囲内に到達]
了解アコ、意外と近かったな、もうちょい奥にいるかと思ったけど…あ、デカいから脚とか首とかが範囲内に入ってるのか?
まぁ、いいか、使えるならとっとと使って幻術解こうっ。
見えないからどこ狙っていいのか分かんないけど、適当な方を向いて…。
(〔幻滅殺〕っ!)
目の前に翳した掌から闇の膜っぽいものが一瞬で前方を覆い尽くすように放射されて、その膜に触れた部分から顕にしていった。
まず目前に現れたのは、ほぼ壁に近い何か…多分これ脚なんだろうな。
その壁みたいな脚の根元には、それを支える為の巨大な爪を携えた7本の指が…前側4本、後側3本って感じで付いてた。
今いるこの位置だと、そこまでしか把握出来ない…顔を上げて目線を上に向けても腹の底しか見えないし。
と、少しボケッとして眺めてたら見の前の壁が上に動き出した…多分脚を持ち上げたんだろう、上を見てた俺の視界にアスファルトのような表面をした足の裏が入ってきた…って、あ、これ俺を踏み潰すつもりかっ。
どうしよう、片脚くらいここで潰しておいた方がいいか?いや、でもそれやって暴れられでもしたら余計厄介になるか…ここはおとなしく避けとこう。
迫って来る足の裏から視線を外してその辺にいる適当な魔物を対象に定め、瞬影動でこの場から一瞬で離脱した。
ズゥゥゥンッ
っていう音と一緒にかなり大きな震動が来てちょっと焦ったけど、とりあえずは無事避けられた…対象にしてた移動先の魔物は震動に耐えられずよろけてたけど。
っていうか、こいつギガントゴブリンじゃねぇかっ。
一瞬であの時のティシャとひぃの顔を思い出して、反射的に討伐を繰り出してた…こいつ見ただけでブチ切れそうになるとか、俺も相当頭にきちまってるな。
とりあえず幻術は解けたみたいだから、亀は後程皆でどうにかするとして、一旦距離取って前線のフォローに戻ろう。
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──前線中央、漂流者前衛組
「なっ…なんだありゃ!?」
「す、凄く…大きいですわね……」
「あ、あぁ…まさかあんなに大きいとは……」
「いや、デカいってもんじゃねぇだろ、あれっ!?」
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──前線右翼側、冒険者
「オイオイオイ、ありゃねぇだろ…いくら何でも……」
「デカいってレベルじゃねぇな…山が動いてるとしか思えねぇ……」
「あれが魔物だっていうのかい…?あんなヤツどうやって倒すんだよ……」
「オラっ!気ぃ取られてんじゃねーぞテメェらっ!目の前の敵に集中しやがれっ!」
「わ、分かってんよっ!」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
──前線左翼側、防衛隊
「な、何ですかっ!?あれはっ」
「あれも…魔物だっていうんですか……」
「あの大きさは流石に防ぎきれないんじゃ……」
「えぇい!狼狽えるなっ!所詮図体がデカいだけの魔物だっ、どうとでもなるっ!今はこの前線を維持しろっ!」
「「「は、はいっ!」」」
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──冒険者側、指揮
「あ、あれが…フォートレスタートル、なのか……」
「ギルマスっ、あれは俺達じゃどーにもならねぇよっ!」
「分かっている、あれの対処は漂流者に任せてあるから心配するな…」
「いや、でもいくら漂流者っつったって、あれはどうにもならねーんじゃねぇかっ?」
「…漂流者でどうにも出来ないのであれば……ガルムドゲルン、いや、この国は終わりだろうな。そこは信じるしかあるまい」
「そうかもだけどよ…」
「とにかく我々は今のまま他の魔物に全力で当たるようにっ」
「…分かったよ、それしかねーしなっ」
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──防衛隊側、指揮
「ブリュナノルグ様…あれも、魔物なのでしょうか……」
「ええ、恐らくこの魔物の軍勢を率いているのではないでしょうか。しかしあれでは敵総大将と分かっていても、どうすることも出来ませんね…」
「そうですな…我々では手も足も出ないでしょう。幸い本作戦には漂流者が7人も参加していますので、そちらに期待するしかないかと…」
「そうですね…頼らざるを得ないでしょう。せめてそれ以外のところでは私達で出来る限りのことをしましょう」
「はっ!ではこのまま前線維持のため全力を尽くすとします」
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──前線、回復支援二人
「リーちゃん…あれは……」
「…………私、より……大き、い…………」
「…あんな魔物と、ナオちゃんは戦うの…?」
「……マスター、なら………大丈、夫……だよ………きっと…………」
「……そうだね、私たちの…マスターだもんね。今は私たちに出来る事をやりましょう」
「…………(コクっ……。……そう、する………」
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──後方、マジックユーザー隊二人
「マジか…まさかあそこまでデケぇとは思わんかった……」
「…ナオトはん……大丈夫やろか……」
「アレを見えるようにしたのだって、どうせナオトがやったんじゃねーか?だったら大丈夫だろ、多分」
「やといいんやけど…」
「アタイらにはどーしよーもねぇから任せるしかねーだろ。心配してる暇あったら一発でも多くブチ込んどけって」
「…せやな、今はそれしか出来へんもんな」
「そーゆーこった」
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アレを見た皆がどう思ってたのか、当然俺には分かるはずも無く、亀に向かって行った時と同じ様に眼前の敵だけを排除しながら前線に戻って来た。
かなりの乱戦になってるけど、皆よく持ち堪えているみたいで大きく崩れたところは無いように見える。
さて、こっからが俺の本番だな…気合い入れ直していこうかっ!




