#20 称号の話
「………転移、とか……無、限…収納………は…………ケンゴ、やコウ、キ…と………同じ、だ…ね…………」
「この辺のスキルは多分漂流者定番だと思う。何かと便利だしね」
「だな、あれは便利過ぎるわ。けどまぁ、転移はいいスキルだよなぁ…いろんな意味で」
「まぁ、そうやなぁ…」
「うん〜、そうだねぇ……」
「………(コクコクっ………」
……?いろんな意味でって…ただの移動スキルだよな?それ以外になにかあったっけ…?
むしろあれは使う時俺が幸せな気分になるっていう…みんなに密着されて。
「何だよ、いろんな意味でって…?」
「あー、いや、何でもねぇよ。こっちの話だ。んで、後は称号か…」
教えてくれなかった…何か気になるけど、しょうがないか。
「称号は…もう放っておいていいと思う。いろいろおかしいから」
「獣と幼女と竜は、何となくウチらと会ってから付いたんやろなってのは分かるんやけど…」
「寝取られたってぇ…ナオちゃん〜、やっぱりぃ可哀想なぁ人だったのぉ…?」
ぐっ…そこは一番触れてほしくないところなんだけど……。
「…可哀想っていうか……まぁ、俺がダメなやつだったってだけだよ………」
「色恋沙汰なんてちゃんとしたことねぇからよく分かんねぇけどよー、そんなコロコロ相手変えられるようなもんなのか?しかも身体許すとか」
「…アーネも抉ってくるな……。俺のいた世界じゃ、まぁありえる話だったんだよ…。今の相手よりいい相手がいたら、気持ちも傾いて…気持ちが傾いたら身体も許せるってことなんじゃないかな…。現に俺はそうされた…から……」
あー…また言ってて凹んできたわ…自分で思ってる以上にトラウマっぽくなってるな、これ…。
ただフラレただけならまだしも、身体までってなると、やっぱりそれなりに傷深くなるのかな……。
「そ、そんな落ち込まんと…ほら、あれや、昔の、しかも元の世界での話やろ?せやからもう気にせんと、こっちの世界で上手くやっていこ?な?」
「……ああ、大丈夫だよ、ちゃんと分かってるし。俺、自分の事しか考えてなくて、結構自分勝手に生きてたから……そりゃ相手も気持ち傾けたくなるって。だから俺のせいなんだよ…全部」
「そうなのぉ…?あんまりぃそんな風にはぁ〜見えないぃけどねぇ…」
「あ、いや、こっち来てからはちゃんと相手のこと見て、考えていこうって…せっかくこっちの世界に来れたんだから、やり直すチャンスかなって…いろいろと」
「ふーん…それならまぁ、今んとこ上手くいってんじゃね?ほれ、なりかけでもハーレムマスターになってんだしよ」
いやいや、それが一番おかしいから。
しかもなりかけって何だよ…現状こうなっちゃってるけど、構築しようとか思ったこと一度も無い……って、まぁ、想像っていうか妄想しちゃったことは勿論あるけどさ。
「その称号も無視で。竜の称号と同じで身に覚え無いのに付く称号とか意味分かんないし」
「そうなんかな…?ナオトはん、一回でええからリオに乗ってみたいとか言っとったよな?」
「え、まさか…それだけで称号付いちゃったのっ!?」
「それしかぁ〜考えられないぃよぉねぇ〜……」
「………わたし、も……乗っ、て………ほし、い……って、言った……か、ら………?………」
「実際やってなくても両者合意の上ってだけで付くってこと…?それでいくと……」
「まぁ、ハーレムもそうなるだろーなぁ……」
「いやいや待って!リオのはともかく、ハーレムに関しては俺から何も言ってないよねっ!?」
一々説明するのが面倒だからまぁいいか、くらいにしか思ってなかったし、俺からハーレム作ってやるぜ!なんてこれっぽっちも思って……あ、いや、うん、無理だとは思ってたけど、ちょっとは、ほんの少しは、出来たらいいだろうなぁ…くらいは思っちゃったかもしれない…想像した時点で。
「だからぁ〜、なりかけぇなんじゃぁないかなぁ〜……」
「少なくとも、ウチらはええよって言うたし……」
「……なんてこった………迂闊なこと言うと付いちまうのか、称号って……。しかもそれが本当なら、俺が認めた時点でなりかけも取れる可能性があるってこと…?」
「だろうなぁ。ま、所詮称号の話だし、そこまで気にするようなこっちゃねーだろ」
「いや、そこは気にしようよ…みんなだって気になるでしょ?その、俺みたいなやつのハーレムの相手にされて……」
「なして?嫌やったら最初からええって言っとらんけど」
「そうだよぉ〜」
「…え、なんでそんなに軽いの?気にしてるの俺だけ…?」
「アタイらは、ほら、ナオトがパーティー組んでくれさえすりゃ、それでよかったしよ…」
「そういうことだねぇ〜。でもぉ…今とぉなってはぁ〜、むしろぉこれでぇ〜いいんじゃないかなぁ〜、なんてぇ……」
「せやなぁ…これでまだ、この先ナオトはんと一緒に冒険出来るやろうし……」
…ん?なんでそーなる?ハーレムなんて作らなくたって一緒に冒険は出来るだろうに…。
「いや、それ別にハーレムとか関係なくない…?」
「んー、ほら、ハーレムになっとったら、ナオトはん、そう簡単に抜けられへんやろ…?」
「……はい?」
「いや、だからアタイら全員囲ってもらえりゃこの先心配いらねぇかなーってよ……」
囲うって…何か俺ひどい奴みたいじゃね?それ…。
リオの事もあるんだし、そんな事あるわけ無いのに、何をそんなに心配することがあるんだか…。
「……はぁ〜…そういう事か…。そんなん無くてもみんなから要らないって言われるまで一緒にいようと思ってるって…。こっちに来て初めて出来た仲間なんだし、それに……」
「…それにぃ〜…?」
「…あ、いや…やっぱ何でもない……」
「なんや気になるからはっきり言うてや」
「い、言わないとダメ…ですかね……」
「そこまで言ったんなら言えっての」
「う…じゃ、じゃあ、正直に言うけど……こんな可愛い娘達に囲まれて自分から抜けるとか、よっぽどの事がない限りあり得ません……」
「「「「………」」」」
…ほら黙っちゃった……だから言うの渋ったんだよ…。
もうさ、いいからこの話題は終わりに…。
「…それは、その……ウチらで、ええっちゅうことやんな…?」
「か、可愛いって…それ、アタイも、入ってんの…か……?」
「じゃ、じゃぁ〜…そのぉ、私たちがぁ…くっついてもぉ〜…迷惑じゃぁないぃ…?」
「……わ、たし…も……可愛、い………?………」
ちょっ、喰い付き過ぎっ!何だよみんなっ!そんな喰い付いてくると…本当にみんなハーレム作りたいって思ってるのかと俺が勘違いするからヤメてっ!
あーもーこの称号のせいだっ!誰だよこんな称号生やしたやつはっ!
[創造神エクリィータです]
「はぁ?神様かよ……」
「「「「…?…」」」」
「あー、いや、称号って神様が付けるんだなって……」
「そうやで、創造神様が付けるんや」
「あ、そう…みんな知ってる感じ?」
「知ってるっつーか、常識だけどな」
「こっちのぉ世界じゃぁ〜、そうなってるねぇ〜」
常識だったのか…まぁよくよく考えたらそうか、こういうのって神様絡みだよな。
正確に言うと神様が創ったこの世界でのシステムみたいなものかな、スキルとかステータスもそうだろうし。
で、その神様がこんなもの付けた、と。
これはあれだな、やっぱ放置しよう。
なりかけでずっと止まっとけ、俺が認めない限り取れないだろうしな。
「うん、じゃあ俺の話はもう終わりね。こんな感じのやつだけど、これからもよろしくして、くれる…よな……?」
あれ?こんなんでよろしくしてくれるのか?急に不安になってきた…。
「もちろんや。教えてくれてありがとな、ナオトはんっ」
「何かいろいろスッキリしたわ。ま、これからもよろしく頼むぜっ」
「うん〜よろしくぅねぇ〜、ふふっ」
「………(コクっ……。……よ、ろし…く………マス、ター…………」
とりあえずよろしくしてくれるみたいで良かった…けど、リオさん、マスターて…だから称号付いてるだけなんだって。
何を言い出すんですか…。
「いや、マスターはやめて…まだマスターになってないから……」
「まだってことは、いつかはなるつもりなんやなぁ〜。あははっ!」
「あっ!ち、違う間違えたっ!マスターじゃないからっ!」
「私たちもぉ〜マスターってぇ呼んだ方がぁいいのかなぁ〜?うふふっ」
「やめてくださいお願いしますっ!」
「んじゃ、なりかけ取れるまで保留しとっか」
「しなくていいっ!取れないからっ!」
「………マ、スター……って………呼ん、じゃ……ダ、メ……なの……?…………」
「え…呼びたい、の…?リオ……」
「…………(コクっ………」
「呼びたいんだったら、まぁそれでもいいけど……でも、ハーレムのマスターじゃないからね?」
「…………(コテっ……?……?…………」
いや、なんで小首傾げて不思議そうにするのさっ、称号だけの話ってさっきから言ってるでしょうにっ!
「と、とにかく!俺の話は終わりねっ!ほらっ、みんなの話もリオにしてあげたらっ?俺はある程度聞いたからいいけどっ」
「そうやな、ウチらもリオにはちゃんと話さんとな。もう正式にウチらのパーティーメンバーなんやし」
「だな。つってもそんな大層な話なんてねーよな、アタイらには」
「そうだねぇ〜。えっとぉ、じゃぁ〜私たちはねぇ…」
って、みんなの国のこと、なんで姫なのかとか、その辺をリオに話してた。
俺は大体知ってるから聞き流してたけど…さっきの自分の話してちょっと疲れたんだよ…精神的に。
でもホントハーレムには参った…ったく、神様?にも困ったもんだよ、もっとちゃんとしたシステムにしといてくれと。
まさか今も見てるとか無いよな…?こっちに来た時会ったわけでもないし、そこまで神様も暇じゃないだろうしな。
[暇だそうです]
………は?いや、何言ってんの?なんでお前が分かるんだよ、そんなこと。
[創造神エクリィータよりアコに通知有り]
………はい?ちょっ、待てや…お前なんで神様と繋がってんの?ってそうか、スキルとかも神様扱いか…いやいやそうじゃなくて、暇なのかよ神様…しかもなんで俺なんか見てるんだよ、他にも漂流者いるだろう…。
[面白いからだそうです]
……おい、ちょっとその創造神様とやらに一言言ってやりたいんだが。
仕事しろって言っとけアコ!
[………息抜きは必要だそうです]
息抜きに俺を使うなよっ!ったく、どーなってんだよ、この世界…こんな神様で大丈夫なのか?
「…また百面相になってんぞ、ナオト…。アコがなんかしたんか?」
話が終わったらしいみんなが俺の方見てた…どうもアコとやり取りすると毎回顔に出ちまうらしい……ポーカーフェイスが欲しいです、切実に。
「あ、いや、何でもないよ、何でも…は、ははは……」
「…?ならええけど…話終わったで?」
「お、終わったのね。じゃあ後は…明日乗り切るだけだな」
「……そうやな……」
「どうした?シータ…。あ、もしかして、不安なのか?」
「…そら、まぁ…あの数やし……」
まぁ、数だけ聞くとね、そう思うのは当然かな。
けど、こっちには漂流者が7人いるし、いけるんじゃないかと俺は楽観視してるわけで。
本当にどうしようもなくなったら、仕方がないので俺一人で何とかしようかな、と。
多分どうとでもなりそうだし、闇黒魔法あれば。
それやると確実に祭り上げられるだろうから、最終手段にしたい。
とにかく、そうならないようちょっと皆にお願いしとこう。




