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#07 解体屋の父娘



「あ、着きましたよ、ナオトさん!ここがギルド提携の解体屋になります」


 おっと…内心悶えてるうちに着いたのか。

 こっちも舞い上がりそうだけど今はなんとか自重しよう…まずはお金をどうにかしないと。

 俺の狩ってきた魔物の素材で何とかなればいいけどなぁ。

 ラナさんが解体屋入ってった、俺も入ろう。


「こんにちはーすみませーん!ディモルさんいますかー?」

 

 入ってすぐにラナさんが大きめな声で誰か呼んでる。

 解体屋の人か、どんな人だろう?やっぱり解体するような人だから、ガタイの良いおっさんと予想。

 と、思ってたら、奥の方からひょこっと女の子が顔を出してきた。

 え、まさか、この子が…いやいや、そんなわけないだろう。


「あ、ラナおねーちゃんだー、いらっしゃいー」


「あれ?カティちゃんだ。珍しいね、こんな時間にいるなんて。学園は?」


 奥から出て来てラナさんの前まで来たよ。

 ちっちゃくて可愛らしいなぁ…130センチくらいか?小学生ってとこだろうな。


「今日は試験前で早く終わったんだよー」


「そっか、ちょうどそんな時期なんだね。そうそう、お父さんはいる?」


 ラナさんが屈んで目線合わせながらカティって子と話してる。

 うん、そんなわけはなかった。

 娘さんで学園生なのね、この子が解体なんてちょっとびっくりしたわ。


「かいたいのお客様ですかー?カティやりますよー?」


 えっ!?カティちゃんも解体出来るんかいっ!スゴいなそれは…。

 流石異世界、見た目に惑わされちゃダメだな。


「うーん…解体だけだったらカティちゃんにお願いしてもいいんだけど……今日は査定もしたいんだよね」


「そうなんですかー分かりましたー!じゃあ、おとーさん呼んできますねー、ちょっと待っててくださいー」


「うん、よろしくねー」


 パタパタ走って奥に引っ込んでいった。

 そうか、解体だけだったらカティちゃんでも大丈夫なんだ。

 ただ学生だから滅多に合うこともないのか?


「カティちゃんも解体は出来るんですけど、学園に通ってるので休みの日くらいしか会えないんですよ。今日はたまたま会えましたけど、査定もとなるとやっぱりカティちゃんのお父さん、ディモルさんじゃないといけなくて」

 

「いや、でもあの歳で解体技術を持ってること自体、驚きましたよ。凄いですね…」


「わたしも解体作業見せてもらったことがあるんですけど、凄かったですよ!小さい頃から見てたせいですかね、全然物怖じしないでサクサクっと解体しちゃうんですよ」


「そうなんですか。それはちょっと見てみたいですね」


 小学生くらいの子の解体ショーとか、ちょっと興味あるな。

 見れるなら是非見てみたい。


「あ、それなら査定後にちょっとだけ見ていきますか?1体くらいなら見せてくれるかもしれないですよ?」


「そうですね…無理にとはいいませんが、都合がよければ見学してみたいですね」


「じゃあ、査定が終わったらちょっと聞いてみましょう。見せてもらえるといいですね」


「はい、ちょっとだけ楽しみにしておきます」


「ですね!あっ、ディモルさん、こんにちは」


 お、カティちゃんのお父さんが登場…って、でかっ!2メートル超えてるんじゃね!?一緒に来たカティちゃんとの対比が…ホントに親子なのかって思ってしまいそうだ。


「おとーさん呼んできたよー」


「おぅ、ラナか。カティがいるのに俺を呼んだってことは…そっちのやつの査定か」


 うぉ…すげぇ見降ろされてる……俺もそんなに身長あるわけじゃないしな。

 あれ?そういやこっち来てから自分の容姿まだ確認してないや。

 身長とか変わってないのかな?


「すみませんディモルさん、お呼び立てして。仰る通りこちらの漂流者、ナオトさんの査定の立会いをお願いしたくて」


「初めまして、今日この街に来たナオトと言います。来る途中に狩ってきた魔物を持ってきましたので、査定をよろしくお願いします」


「俺はこの解体屋『壊塵洞』の主、ディモルだ。こいつは俺の娘のカティリアーナ。まぁよろしくな。んで、ブツはどんだけあるんだ、この場で出せるくらいか」


「いえ、この広さだと全部は出せないですね」


 ここじゃ多分1、2体しか出せないな。

 あー、ネズミウサギ、なんて言ったっけ、確か…マビットゥラースだっけか、あれくらいならもうちょい出せるか。

 それでも4、5体くらいだろうけど。


「そうか。なら奥に来い、そっちで出してもらう」


 そう言って奥に向かうディモルさんとカティちゃん。

 俺とラナさんもその後に着いていく。

 ちょっとした廊下を通っていったら、解体の作業場だった、かなり広い。

 ここなら全部出しても大丈夫そうだな、多分山になるだろうけど。


「ここなら全部出せるだろ。出してみな」


「はい、では出しますね」


 んじゃ、出すか。

 手を前に掲げて…収納墓地から放出っと。


 ドバドバドバドバ………



 ん、全部出たな、やっぱり山になったわ。

 カマキリクモサソリのスパルティス12体、イノシシクマのボアードベア7体、翼イヌのウグルフォルク18体、ネズミウサギのマビットゥラース23体、内訳はこんな感じだ。


「「「…………………………」」」


 おっと、3人とも固まってる。

 一気に出しすぎたか?山にしちゃったしな……。


「……あの、これ、ナオトさんが、全部一人で狩ってきたんです…か……?」


「えぇ、そうですけど…すみません、一斉に出し過ぎましたかね?」


「…おとーさん、見たことない魔物ばっかりだねー」


 え、そこなの?だってここから数時間の所にある森だよ?この街の冒険者なら誰でも知ってるんじゃ…?


「…あぁ、カティは知らないわな。俺もこの中じゃ、そこのネズミだかウサギだかわからんような奴を1回だけ見たことはあるが…それ以外は初見だな。ナオトって言ったか…お前さん、漂流者なんだよな」


「あ、はい、そうですね。この世界に来たばかりです」


「なるほどな…。ラナ、こいつは多分『空崩からくずの森』から来たってことだろう」


「えっ!?まさかそんな…あの森は入ったら最後、二度と戻ってくることが出来ないって……あっ!」


 ん?何それ?あの森そんなに危険だったの?

 まぁ、魔物はそれなりにいたけど、それ以外は割と何処にでもあるような普通の森だったと思うけど…。


「あぁ、恐らくそういうことだ。外から入ると二度と出られないが、中からなら出られる、つまり…漂流者しか出て来られないってことだ。俺が見たことのあるこの魔物も、偶然出てきたのを狩った奴がここに持ち込んだってところだろう」


「…じゃあ、この魔物は全部、『空崩からくずの森』にいた魔物っていうことですか……」


「だろうな。でなきゃ説明がつかん」


「そんな…それじゃわたしの手には負えませんよ……ディモルさんでも無理ですよね?」


「まぁ、無理だわな。だがまぁ、解体してみりゃある程度は分かるかもしれん。とは言っても分かるのは精々こいつらのおおよその強さくらいだと思うがな」


 そっか…まぁ見たことない魔物ならそうなるよな…また面倒なところから転生してきたもんだ。

 俺的にはただサーチ&デスってただけなんだけれども。


「おとーさんーかいたいするのー?カティやりたいなー」


 マジか、この子スゴいな…ラナさんの言ってた通りホント物怖じしないな。

 あー、好奇心の方が勝ってるのか、子供だもんなぁ…。


「このいのししくまさんみたいなやつー」


 まさかの一番デカい魔物選択、それはちょっと好奇心旺盛すぎなんじゃ……。


「まぁ待て、俺も見たことがねぇ魔物だって言っただろう。ってことはだ、この街で知ってる奴もいないだろうってことだ。大抵の魔物はここに持ち込まれるんだからな」


 そりゃまぁ普通に考えたらそうだろうな…狩った魔物を自分で解体出来る人ならともかく、大体みんなここに持ち込むんだろうし。

 俺もこれからお世話になりますよ。


「つまり、だ。誰も知らないような魔物を一番最初にバラすのは…俺だっ!」


「えー!おとーさんズルいー!カティもやりたーいー!」


 あぁ…この二人間違いなく父娘だわ、確信した。


「あはは…とりあえず、解体してみないことには査定も出来そうにないみたいなので、そうですね…見たところ魔物の種類は4種類だから、1種類1体ずつ解体してもらい、その解体結果で査定してみようと思いますが…どうでしょうか?」


「そうだな、その辺が妥当なところだろう。という事で、だ。ナオト、悪いが1体ずつ貰うぞ、いいか?勿論いいよな?」


 ディモルさん、目が怖ぇよ…めっちゃ血走ってるから!どう見ても断れないじゃねぇか……。


「え、あ、はい、それで構いませんが…」


「よし!カティ!イノシシクマと虫は俺がやる。お前は翼イヌとネズミウサギだ、いいな」


「うーん、いのししくまさんやりたかったけどー…わかったー、やるー!準備してくるねー!」


 カティちゃんが準備するって言って解体所の隅にある小部屋に向かって走っていった。

 期せずしてお子様解体ショーが見れることになったぞ…どんな感じでやるのかちょっとだけ楽しみだ。


「ナオト、悪いが一旦解体するやつ以外を回収してくれ」


「あ、はい、分かりました」


 今のままじゃ少し手狭だしな。

 あー面倒だから一回全部墓地に回収して…と、それから1種類1体ずつ放出、と。


「これでいいですかね?」


「お、おぅ…ナオト、お前さんの収納、えらく高性能だな…普通一気に回収とか出来ないんだが」


「そ、そうですね…あれだけの量を収納出来るところも凄いと思いますし……」


 あ、そうなの?魔法袋とか収納スキルあるって言ってたから大差無いのかと思ってた。


「あー、そうなんですか?自分じゃまだ分からなくて…なにせ来たばっかりですし…」


「まぁ、漂流者だからな、細かいことはどうでもいいか」


「えと、まぁ、そうですね、漂流者ですからね」


 あーその、漂流者、って一言で片付くのね。

 だったらこの先も何かあったら、漂流者ですから!って言っとけば大丈夫な気がしてきた。


「おとーさんー準備できたよー」


 お、カティちゃんが戻って来た…って、何だか凄い装備になってるな…なんだろ、あれ。



[対象者:カティリアーナの装備を表示]


【ステータス(装備品)】

《装備》

 頭部(前):レリゲイトゴーグル

        付与:視覚効果緩和(ー)

           切断部位判別(ー)

           防塵(ー)

 胴部(前):カティ専用解体作業エプロン

       (ちょうちょ)

        付与:防汚(ー)

           防塵(ー)

           持久力上昇(中)

 腕部(両):パークスガントレット

        付与:腕力上昇(中)

           器用度上昇(中)

 脚部(両):パージルグリーブ

        付与:脚力上昇(中)

           敏捷度上昇(中)



 おぅ…分析解説が仕事した、ちょっとびっくりしたわ。

 なるほど、解体用の装備ってわけか。

 ちっちゃいカティちゃんの足りない力を装備で補強して解体するわけね。

 見た目はちょっとゴツい両手両足、顔半分以上隠れたほぼ仮面に近いゴーグルに蝶のワンポイントが付いた青い子供用エプロン…全装備に付与効果があるってことは、相当良い装備なんじゃないか?これ。



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