#03 休息〜いざ、調査へ
村に一軒しかない宿屋に案内してもらってそこで部屋を取ったんだけど…あまり人が来ない村なんだろうから部屋数も種類もなく、今4人となると大部屋一つしかない用意出来ないって言われた…たまたま俺達の他に行商の人達が来てたかららしい。
「えーっと…どうしようか……」
「んー…まぁ、その部屋しかないんじゃ、しゃーねーんじゃねぇの?」
「そうやな…ナオトはんには悪いけど、それで我慢してもらえへんか?」
「え、いや我慢って…この場合俺じゃなくてみんなの方だよね?」
「う〜ん…でもぉ〜ナオちゃんだけぇ追い出すぅわけにもぉ〜いかないよねぇ〜?」
いや、この際それでもいいような気が…信用してもらえるのは嬉しいんだけど、一応俺も男なんですよ…別に何かしようとかそんなことは考えてない、けど、でも、女の娘に囲まれてとか普通に寝れる気がしない…。
「そこしか無いんだからしゃーねぇっての。折角用意してくれたんだしよ」
「そうだよぉ〜。ナオちゃんもぉ〜ちゃんとぉ休まないとぉ〜ダメだよぉ〜?」
「あー、うん、そうだな…じゃあそれで……」
とりあえず、理性を総動員して細心の注意…ラッキースケベなんて起きないよう気を付けないとな。
宿の人に案内してもらった4人部屋に入ると…やっぱり俺は一人の方がいいって気がしてきた……だってダブルベッドが部屋の両脇に二つしかないんだもんっ!そりゃ4人部屋ってことは家族用みたいなものなんだろうから当然そうですよねっ!
「すみません、こちらの部屋しかご用意出来ず…。夕飯は下の食堂でお出し出来ますのでそちらでお願いします。それとお風呂もございます…あまり大きくはありませんが、4人ご一緒でなら入れるくらいですので」
いやいや入らないからね?4人一緒でとか。
何を勧めているのですか女将さんはっ。
あ、でもその言い方だと…一つしか無い、男湯と女湯で分かれてないってことか…?じゃあ順番に入らないといけないのか……どっちが正解?先に入るのと後に入るの。
いや、考えるまでもないか、後だな後。
姫達が全員確実に出て来た後に入る、これ一択だな。
先に入ると姫達が何かの間違いで入ってくるかもしれないし、姫達の誰かがいない時に行くとばったり風呂場でなんて可能性もあるからな。
その辺は全力回避する方向でいけば、何事もなく無事明日を迎えられる…いや、ベッドの問題があった…。
…床で寝るの一択か、まぁ外で寝るとかよりはいいか、しょうがない。
「十分や、ありがとな女将はん。後で夕飯と風呂ご馳走になるわ」
「あぁ、ベッドで寝れるとか十分過ぎるぜっ」
「すみません〜お借りしますねぇ〜」
「はい、こんな所ですがどうぞごゆっくり」
「あ、ありがとうございます……」
この部屋で決まりらしい…俺、ゆっくり休めるのか…?ま、まぁ姫達がそこまで気にしてないみたいなのがせめてもの救いか。
俺も気にしないようにすればいいって話だよな、うん。
とりあえず、大した荷物もない…大体俺の無限収納に入ってるから、装備だけ外してみんな楽な格好になってそのまま夕飯、そしてお風呂をいただいた…。
…風呂?そりゃ勿論さっき考えてた通り姫達が全員上がってきてから一人で入りましたけど。
姫達は全員一緒で入りに行ったから、ちゃんと全員戻ってきたってことだけを確認してから一人で入りに行きました…風呂上がりだから出来るだけ見ないようにしてすぐさま風呂場へ直行しましたとも。
お陰様でお風呂イベントなんてものも無く、ゆっくり湯につかれたから少しは精神的に落ち着きましたよ…ホッと一安心。
…と思って風呂から上がった後、部屋に戻ったら……超油断してました。
そりゃそうだよね、寝る時までいつもの格好なわけないよねっ、みんな薄手の寝間着っぽい格好でベッドの上に座って…しかも全員尻尾出てるっ!シータとマールの尻尾初めて見たわ……マールのはまんまるぽわぽわの尻尾がちょこんと付いてる…シータのはもうふっさふさのさらっさらの太い尻尾が……あ、ダメだこれ、触りたくてウズウズしてくる…っ!
「……………」
「…ナオトはん…?何でそないなとこで固まってるん…?」
「………あ!いや、その……マールとシータの尻尾……初めて見たなって………」
「あれぇ〜?そうだったっけぇ〜?」
「そか、普段はローブで隠れとるからな…でも、なんや、その、そんなマジマジ見られると、ちょっと恥ずかしいわ……」
シータが尻尾を丸めて抱きかかえるようにした…隠そうとしてるんだろうけど、ごめんそれ逆効果だわっ…!
「尻尾くらい別にいいじゃねーか、いくら見られたって」
「アーネは出しっぱなしだからそないなこと言えるんやろ。ウチらは普段出してへんのやから…」
「だったら普段から出しときゃいいって話だろ」
「そんなぁ装備を〜揃えるぅ余裕なんてぇ〜無かったからねぇ……」
「あーそりゃま、そうか…。んじゃ金貯めて装備新調しようぜっ」
「それはいい考えやけど…マジックユーザーで尻尾出せるような装備あったかな…?」
「アコライトもぉ〜あんまりぃ見たことぉ無いかもぉ〜…」
「んなもん、探しゃいいだろ?皇都辺りに行けばあるんじゃねーの?」
「皇都かぁ〜…そっかぁ、もう行けるんだぁねぇ〜…」
「せやな…近い内に行ってみたいわ……皇都」
「んじゃ次は皇都行って装備新調するのが目標ってことで、金貯めようぜっ!」
「うん〜、賛成ぃ〜」
いや、うん、なんか俺を置いて女子会みたいなノリで話し始めるのはどうなんですかね…どうすりゃいいの?俺……。
「うん、それええかもな…って、ナオトはん、いつまでそこにおるん?」
「え、あ、いや…俺、どうすればいいのかなって…」
「あー、ナオトはアタイと同じベッドな」
「えっと、ナオトはん…ホンマごめんな……」
「ごめんねぇ…ナオちゃん……」
「え…なんで謝るの…?」
「いいから早く寝よーぜっ!明日もあるんだしよっ!」
どうやら俺は床じゃなくてアーネと一緒のベッドらしい…そこはまぁ、俺が何とか理性を保てばいいとして、シータとマール二人して謝ったのが気になるんだけど…何かあるのか…?
とりあえず言われるがままアーネと同じベッドに潜り込んだ…出来るだけ接触しないように気を付けて端の方で寝ることにしよう。
「ほなお休みなー」
「おやすみぃ〜」
「お、お休み…」
「そこそこ広いからそんな端に寄らなくてもいいぜ、ナオト」
「そ、そう?んじゃもうちょっとだけそっちに…」
アーネの言う通りもうちょっと真ん中に寄ったけど、大丈夫そうだった…これ、アーネが小さいからってのもあるな、うん。
そうして暫くベッドの中で黙ってたら…あっと言う間に寝息が3つ聞こえてきた…。
やっぱりそれなりに疲れてたんだろうな、みんな…とか思いつつ俺も目を閉じたら…自然と眠りにつけた……。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
チュン、チュンっ
…ん……眩し、い………もう、朝…かぁ…。
あぁ、良かった…何事も無く結構ちゃんと眠れ……んんっ?あー…これかぁ……二人が謝ってたの………。
隣を見るとアーネがいない、そして俺の身体が何か重い…ってことで、布団を捲ってみると……アーネが俺の上で寝てた。
抱きついてるとかそういうんじゃなくて、完全に俺の上…腹から下半身の辺り、猫みたいに丸まって乗っかってる感じで眠ってた。
器用に乗っかってるなぁってちょっと関心してしまった…でもこれ、シータやマールとかだったら苦しいんじゃないか?って、そうか、乗っかってくる度起きて退かして、また乗っかってきて…の繰り返しってことか、そりゃ眠れないわな…。
俺だったから朝まで気付かずこのまま眠れたってことか…いや、しかし、こうして見るとホント猫だなぁ……やっぱり実家の猫思い出しちまうわ、懐かしい……あの猫もよく俺の腹の上で寝てたよな…。
って、いい加減退けないと…あ、いや、もう朝なんだから起こしていいのか。
「おい、アーネ。朝だぞ起きろー」
「んんん…寒ぃ………」
布団捲ってたから寒くなったんだろう、余計丸まった…俺の上で。
「んー…ふぁぁ……あー、朝なんか…。あぁ、ナオトはん起きとる……」
俺がアーネを起こそうとした声で隣のベッドで寝てたシータが目を覚ましたらしい。
「おはよう、シータ」
「ん、はよう、ナオトはん…って、あー…やっぱりそうなってもうたんやな……」
「あ、やっぱりこれのことだったんだ…昨日謝ってたの」
「あー、うん、そうや。アーネと一緒に寝ると絶対そうなるん…。せやからメルはんとこの宿の部屋でも、アーネだけ別のベッドで一人寝とるんや」
そりゃそうだろうな…そうしないとお互いちゃんと眠れないだろうし。
アーネは退かされるだけだからそうでもないのか?でも退かされる度また乗っかりに来るならもぞもぞ動いてちゃんと寝れてないような気がする。
「とりあえず…退かせば起きる?」
「いや、もう起こすんなら退かすだけやなくてもっと刺激与えんとダメや」
「揺すったりすればいいってこと?」
「まぁ別にベッドから落としてもええで?」
「いや、それは流石に…」
「うぅ〜ん……あぁ〜朝だぁ〜……おはよぉ〜シーちゃんん〜……」
そうこうしてるうちにマールも起きてきた…二人とも寝覚めは良さそうだ。
アーネが一番寝起き悪いのか…?
「ん、はよう、マール。ナオトはんももう起きとるで」
「あぁ〜本当だぁ〜…ナオちゃん〜おはよぉ〜」
「おはよう、マール。あとは…アーネだけか。ほら、アーネ、みんな起きたって。いい加減起きろって」
とりあえず俺の上から退かして揺すってみたけど、もぞもぞするだけで起きる気配がない。
「ナオちゃん〜、そんなんじゃぁ起きないよぉ〜、アーちゃんはぁ〜」
「じゃあどうすれば…」
「んとな…尻尾をな、こう、ギュッと握ればええんや。あ、引っ張るのは無しでな」
そう言って握りこぶしを作るシータ…え、それやってもいいの?でもまぁ付き合いの長いシータが言うんだからいいのか…。
とりあえず言われた通りにアーネの尻尾を持ってギュッと握ってみたら…
「フギャァっ!?」
…って凄い叫び声上げて飛び起きた……メッチャ効果絶大だった。
「おっ、お前っ!な、なんてことしやがるんだっナオトっ!!」
フゥゥーフゥゥーって尻尾ピンッて立てて毛も逆立ててスゲぇ威嚇してる感じ…いやだってシータがやっていいって言ったから…。
「アーネが起きんからやないか。起こしてもろたんやから感謝しいや。あんなん気持ちよさそう寝とってからに…」
あれぇ?え、ちょっと私怨入ってないかい?シータさんや…。
「…え、アタイ、またやっちまってた…のか……?」
「気持ちぃ良さそうにぃ〜ナオちゃんのぉ上でぇ〜、丸まってたよぉ〜」
「…ナ、ナオトは……平気、だった…のか?」
「あー、うん。朝起きるまで気付かなかった」
「そ、そっか…。あー、その、悪かった…な……」
「いや、別に何でもなかったからいいんだけど…アーネと一緒に寝るとこうなるってことね」
起きた時ちょっとびっくりしたけど、まぁそれくらいで済んで良かった…俺が何かやらかしたわけじゃなかったから正直ホッとしたよ…。
「ウチらは…ほら、昨日寝る前に謝っといたからな…」
「そ、そうだねぇ〜…ちゃんとぉ〜謝ったぁよぉ……」
「理由については一っ言も触れてないけどな」
「「……ご、ごめんなさい(ぃ〜)」」
「俺だったらこうなっても大丈夫だって思ってた?もしかして…」
こんな乗っかってきたら誰でもまともに眠れないと思うんだけど…まぁ、先にこれ聞いちゃってたら床で寝る一択だったんだけどね。
この身体のせいかアーネが乗っかってきてても普通にぐっすり眠れたし…ベッドだったから尚更気持ち良く眠れた感がある。
「あー、うん、ちょびっとな…。せやけど、そうなったとしても床で寝さすとかそんな事出来へんかったし…」
「言っちゃってたらぁ〜、絶対にぃ床でぇ寝るってぇ〜言ったでしょぉ?ナオちゃんならぁ……」
「うん、まぁ、そりゃ…ね」
「ナオトはんにだけそんなんさせるわけにはいかへんやろ……」
そっか…一応気遣ってくれたのか…。
別にいいのに…君達の身の安全を第一優先にして欲しいんですが、俺としては。
男ですからね、これでも…いや、まぁ、中身はそれなりに大人ですから、その辺の常識は当然弁えてるつもりではいますけどね、それでもやっぱり異世界の人ですからいつ欲に負けるか分からないんですよ…何かきっかけがあったらもしかして暴走する可能性もあるってことをですね、念頭に置いといて欲しいと切に願うよ、ホント。
「うん、まぁ気遣いは嬉しかったよ、ありがとな。んじゃ、みんな起きたことだし、クエスト行くか」
「せやなっ、今日も頑張ってこか!」
「おっしゃ!気合い入れてくぜぇ!」
「私もぉ頑張るよぉ〜!」
どうやらみんな十分な休息が取れたみたいで、朝から気合い入りまくってた。
早々に出発の準備を済ませて、宿屋の朝食をいただいた後、早速出発することに。
用意してもらった宿だけど、ちゃんと宿泊代4人で800セタルは俺がまとめて支払いましたよ。
で、宿を出た後、村長のモラットさんの所に寄って今から調査へ向かうことを伝えた。
「分かりました。くれぐれもお気を付けて。よろしくお願いします」
モラットさんと、数人の村人達に見送られて村を後にした俺達。
山中の洞窟までは体感2時間くらいで着いた…多分村の人が踏み慣らしたんだろう道があったので、迷わずここまで来ることが出来た。
「ここが慟哭の洞窟か…。あ、そうだ、ニル婆に貰った地図出してくんね?」
地図か…古くてあてになるかどうか微妙なところだけど、一応地図頼みで進んでみるか。
この地図が使えるかどうか確かめた方がいいような気もしてるし、最悪俺のマップで何とかなるだろうって。
「ん。ほな地図はアーネに任せるから、道案内頼むわ」
魔法袋からニル婆に貰った地図を取り出しアーネに渡したシータ、どうやらアーネが案内役になってくれるらしい。
さて、それじゃ洞窟探索と行きますかね。




