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#28 祝宴・終わり



 あちこちでみんなを囲んで楽しそうに話してるところを見ると、姫達の事、やっぱり俺が思ってた通りだったなって確信出来た…そりゃ、こんな可愛い娘達が嫌われるなんて、よっぽどのことが無い限り有り得ないだろうなって。

 そんな彼女達を眺めてたら、自然と顔が緩んでたらしく、隣のリズがちょっとだけ不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。


「どうしたの?そんな緩みきった顔して。みんな取られちゃったのに」


「いや、さ…姫達が鬼って呼ばれてるってマールから聞いたんだけど…やっぱり悪口でも何でも無かったなって。この光景見てると」


「あーそれね。ワタシも聞いた事あるよ…どうせみんなフザケて呼んでるんだろうなーって思ってたけど」


「やっぱそうだよな…みんないい娘だし、嫌う要素がどこにも見当たらないし…な」


「良かったね、そんな娘たちから気に入られてさっ。ま、ワタシは最初っから分かってたけどねっ」


「分かってたって…何がだよ?」


「言ったじゃない、ナオトは当たりだって。まぁ、ここまでとは予想してなかったけど…」


 あぁ、そういえば言ってたな…何が当たりなのかさっぱり分かんなかったけど、つまりは…こうやってみんなと上手くやっていけそうな奴だって思ってくれてたってことか?


「…そんな大層な奴じゃないんだけどな、俺…。周りが良い奴らばっかりなんだって」


「それも当然あるんだろうけど、でもナオト自身がそうだからみんな寄ってくるんじゃないかなーって。なんて言うのかな…ナオトってちゃんと相手を見て接してくれるじゃない?見た目とか関係なく」


「いや、それはまぁ、そうするのが俺の中で基本というか、向こうの世界で得た経験によるものというか…」


「…初めてワタシと会った時、普通に挨拶してくれたよね」


「あ、うん、したね。その後すぐ崩れちゃったけど」


「ほら、ワタシこんな身体だからさ、子供扱いされるのはいいんだけど、端っから相手にしてくれない人もたまにいるんだよね…」


「………」


「ワタシなりにこの身体で頑張ってるつもりなんだけどさ…相手にすらされないのは、少し…悲しいかなぁ、なんて。へへっ」


 そう言ったリズの顔は…やっぱり、少し、物悲しさを隠しきれてない笑顔だった。



 ポンっ



「………」


 軽く頭に手を乗せて、ゆっくりと、髪を梳くように撫でてやった…そんな顔されたら、誰だってこうしたくなるんじゃないかなって…。


「…へへっ。やっぱりナオトって…ちゃんと見てくれるんだね、こんなワタシでも……」


「こんなってなんだよ…ちっちゃくったって、リズは、リズだろ……」


 そうやって少しの間撫でてやってたら…リズがコテンっと俺に身体を預けてきた。

 ちっちゃいから肩に頭を乗せるなんて芸当は出来ない代わりに、俺の胸に頭を倒してきた…必然的に撫でていた手が外れたんだけど、それはそのままリズの肩に乗っかって…ちょっと抱き寄せてるみたいな感じになった。



「「………」」



 いろいろ抱え込んでる事があるんだろうな、このちっちゃい身体に…こんな風に胸を貸すなんて、やっぱり俺の柄じゃないって理解してるんだけど、何故か不思議と出来てしまう。

 そういや俺若返ってたんだっけ…若い頃はよくカッコつけようとして女子相手に頑張ってたこともあったからな…そんなとこまで若返ってるってことなのかな。


 なんて考えながらリズとこうしてたら、ふと周りの喧騒が止んでることに気が付いた…さっきまであんなにガヤガヤしてたのに、何でだ?と思ってリズに向けてた顔をちょっと上げてみたら……この席を囲んでいたほぼ全員が俺とリズを見てた…ニヤニヤしながら。



「………」



「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 

 ………うん、まぁ、酒の席でやるこっちゃないよな、これは………。


「…あー、なんだ。気にしないで続けてくれ。くくっ」


 いや、気付いちまったんだからそれは無理だろ、ガズのおっさん…。


「…なんでそーなってんのか分っかんねぇけどよー、ナオトってあれだよな…くっつきやすくね?」


「何となく分かるわ、それ…理由聞かれると答えられへんけどな…」


「私もぉ…触れられるのにぃ〜ほとんどぉ抵抗がないみたいなぁ……」


 …まぁ、今日一日でひっつかれたり抱っこしたり、かなりのスキンシップあったからなぁ……確実に、一日で複数の女の娘とスキンシップ取ったのは元の世界でも無かったから、初めての体験ってことになる。


 んー、でもあれだよなぁ…姫達とかラナはなんかこう、動物に懐かれてるって感じの方が強いんだよなぁ…獣人なだけに。

 リズは…子供に懐かれてる感じ?ちっちゃいだけに…。

 要するにこっちの世界に来て懐かれやすくなったってことなのかなぁ?



「…ちょっと、リズ……いつまでそうやってるの…?」


「……もうちょっと」


「もうちょっとって……みんな見てるのに」


 って、もういいだろ、リズ…ラナもこう言ってるし、いい加減俺もこれ以上は勘弁してもらいたいんだけど…。


「あー、別に俺らの事は気にしなくていいぜ、なぁみんなっ!」


「ええ、そうね。お好きなだけどうぞ?ふふっ」


「ここにゃそんな細けぇこと気にするやつなんていねぇからなぁ。ま、同じ男としては羨ましい限りだけどなっ」


 …こっちの世界の人達はこういうのに寛容というか、思ったほど気にしないというか…まぁ、みんなニヤニヤしてるから単純に楽しんでるだけって話かもだけど…あれかな、冒険者だからってのもあるのか?さっき料理持ってきてくれた時も思ったけど、冒険者ってザッパーが多いみたいだしなぁ…。


「俺も帰って嫁さんとイチャイチャするかな」


「いいわねぇ…アタシもいい人に抱きしめてもらいたいもんだよ」



「「「「「「「「「………」」」」」」」」」



「…なんでそこで黙るんだい?アンタら」


 …そんなギロリと睨まれても…。

 アナタを抱きしめられる人がここにはいないからですよ…俺の知ってる限りでは、解体屋のディモルさんくらいしか出来ないんじゃないですかね…2本槍背負ったボディビルダー並で高身長のお姉さん……。


「ま、まぁ、あれだっ。とりあえず飲もうぜっ!」


「だなっ!コイツを肴にすると酒も旨くなるってもんさっ」


「そいつは間違いないな。ここらで改めて乾杯といくか」


「乾杯って…何にだよ?」


 俺を肴にしかも改めて乾杯とか、アーネと同じように何に対してだよって…元々俺らのランクアップ祝いなんだし、それ以外は無いぞ?


「あ?んなの決まってんだろが」



「「「「「ハーレムに」」」」」


「「「「色男に」」」」


「「「女ったらしに」」」



「「「「「「「「「乾杯だっ!」」」」」」」」」



 おいちょっと待てっ、それはどれも祝うようなものじゃないだろっ!しかもたらしとか俺が悪いみてぇじゃねぇかっ!全く以って改める必要皆無だわっ!


「はぁ…要するに何でもいいっちゅーこっちゃな…」


「…ま、今日くらいは構やしねぇか。ははっ」


「うふふっ。いいんじゃぁ〜ないかなぁ〜」


「いい…のかなぁ?まぁ、アーネ達がいいっていうなら、誰も何も言わないとは思うけど…」


「いいんじゃないー?にししっ」


「あー、もうこの際いいのは分かったからそろそろ離れてくれよ、リズ」


 もうさっきみたいなしんみりした雰囲気は吹っ飛んでるんだから、離れてもいいはずなのに逆に手回して抱き着いてきてるし…それホントにマズいんですけどっ、その柔らかいモノを押し付けるのやめてくれませんかねっ!これ絶対ワザとやってるよなっ間違いなくっ!さっきから容赦なくその武器で攻撃してくるのホント勘弁してくださいっ!


「んー…もうちょっとだけー」



 ベリッ!



「ちょっとー…無理矢理引き剥がすとか酷くないっ!?」


「本日の身体的接触期間は終了しました。以上」


 問答無用で引っ剥がしてやった…こんな場所じゃなかったら高確率で流されてたような気がする…と思ったら怖ろしくなってきた……リズに手出すとか、ダメ、絶対!いくら年齢的に合法だとしても!


「え…今日はもう終わっちゃったんですか…?」


 なんでそこでラナが残念がるんだ…そもそもこんなところでくっついてるのがおかしいんだって。

 まぁ、所構わず流される俺が悪いんですけどね。

 でもですよ、あんなちょっと弱った感じ見せられたら、こう、慰めてやらなきゃ、とか思うのはダメですかね…基本的に女性のそういう感じは放っておけない質なんですよ、昔っから。

 ま、俺なんかに慰められて喜んでくれたのは妻くらいなもんでしたけどね…遠い昔に。


「なにー?ラナもしたかったの?やっぱり」


「べ、別にそういうわけじゃ…」


「なんだラナ、遠慮なんかしてないでくっついてきたらどうだ?ん?」


「ガ、ガズおじさんまで…」


 おいおっさん、あんたラナのお守りなんだろう?そこは止めるとこじゃないのかっ?


「理由がほしいのか?今朝助けてもらったお礼とかでいいんじゃないか?」


「ちょっ!ガズさん!そいつはダメだ、認められねぇ!」


「そうだそうだっ!そんなこと俺達の目の前でやられた日には…」


「確実に立ち直れないくらいの傷を負っちまう……」


「明日から生きていく自信がなくなっちまう……」


 相変わらずスゴい惚れ込みっぷりだな…いや、まぁ、そこまで惹きつけるほどの魅力がラナにあるってのは分かるけど、ちょっといき過ぎじゃないか…?


「こ、こんな大勢の前じゃ、恥ずかし過ぎて出来ませんよっ」


「なんだラナ、お前も結局したいんじゃないか。大勢の前じゃなきゃいいんだろう?くくくっ」


「そっ、そうじゃないですよっ!もうっ!」


 なんでみんなそんなにくっつけたがるんだかさっぱりだ…。

 あー、いや、違うか、ただ弄って遊んでるだけか。

 けど俺も一緒になって使われて遊ばれるのもなんだかなぁって…まぁ、ぶっちゃけ役得な使われ方だから全く以て悪い気はこれっぽっちもしないけど。

 ラナに関してはファンのみんなに恨まれそうだけど…。



 そうやってなんだかんだイジられながらも皆ワイワイ楽しそうに喋って飲んで騒いで大いに盛り上がった…姫達も、ラナもリズも、この世界で出会ってから一番の笑顔を見せてくれて、俺も嬉しくなって一緒に笑った…酒の席でこんなに笑ったのは初めてだと思う。


 向こうの世界で読み漁ってた異世界モノのラノベにあるテンプレなんて微塵も無く、本当に気の良い冒険者しか居なかった。

 なんでだろう?冒険者なんて荒々しい職業だし、そういう誰にでも難癖つけて突っ掛かってきそうな性格っていうか気性持ってる人がいてもおかしくはないと思ってたんだけど、こうして皆を見てると全然そんな事無くて、活き活きとしてその時その時を全力で楽しんでるって感じしかしないんだよな…。


 この世界の人達がみんなそうなのか、この場にいる皆だからそうなのかはまだ分からないけど、ただ一つだけ言えることは、間違い無くここに流れ着いた俺は最高に運が良かったってことだな。


 これから先こんな日々が続いていくといいなぁ…なんて思いつつ、楽しく騒ぐ皆を眺めながら酒宴の夜は更けていった……。




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