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#17 救援

シリアス回です。

集団戦闘があります。




ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー






 シータを抱きかかえたまま先行していた二人にはすぐ追い付き、三人並走するように戦闘が行われているであろう場所へ急いだ…マップは開きっぱなしで、走りながら見ていると現場に近付くに連れマーカーがどんどん増えていった…主に四角いマーカーが。


「マズいなっ、魔物の数が多すぎる…対して人は10人程度だっ」


「チッ、何だってこんなところにっ!」


「とにかく急ごうっ!」


 走る速度を上げて兎に角急いでいたら、森の切れ目が見えてきた…マップでは森を抜けたもう少し先で戦闘になっているっぽい。

 4人で森の切れ目を抜けた途端、まだ少し遠目だけど蠢く集団が目視出来た…俺には緑色っぽいものがわらわらしているようにしか見えない。


「敵はゴブリンだなっ、あそこまでの集団だと間違いなくリーダークラスがいるぜっ!どうするっナオト!」


 アーネにはハッキリ見えたらしく、敵がゴブリンの集団だってことが分かったけど…やっぱり集団だけあって統率クラスのゴブリンもいるっぽい…そいつらをまず潰さないとマズいかっ。


「分かったっ、上位種の相手は俺がするっ!アーネは前線に出て戦闘してる人達のフォローを!」


「了解っ!」


「シータは後方から前線で戦闘してる人達への援護を頼むっ!」


「分かった!」


「マールは負傷者がいたら優先して回復をっ!」


「はいっ!」


 走りながら指示を出していたから、俺も肉眼でゴブリンだと判別出来る距離まで詰めた…前線から少し離れたところに豪奢な馬車が見える、ということは…戦っているのは貴族の護衛兵ってことだろう。

 前線に視線を戻すとかなりの乱戦になってるっぽい、気を付けてくれよアーネっ。


「アーネ!無茶だけはしないようになっ!」


「あぁ!わーってるよっ!」


 もうすぐそこで戦闘が行われている前線へ一段ギアを上げてアーネがまず特攻した。

 俺はシータを降ろすために一旦スピードを落とし、少し離れた所でちょっと荒目になったけどシータを無事降ろした。


「シータ、ここで大丈夫かっ?」


「大丈夫やっ、十分射程内やでっ!」


「分かったっ、じゃあ頼むっ!」


「任せときっ!」


 俺はそこから上位種がいるところを目指して走り出そうとしたけど、パッと見少し大きめのゴブリンがいるくらいで正確な上位種の位置が分からなかった。

 マップ上でも四角いマーカーだけでどれが上位種だか分からない…こんなことならもっと正確に分かるように創ればよかったと後悔した矢先に、マップ上のマーカーの幾つかに線が付いたコメントボックスのようなものが4つ出てきた。

 コメントボックスにはそれぞれ[ゴブリンリーダー][ゴブリンメイジ][ゴブリンアーチャー][ゴブリンアーチャー]と表示されている。

 …このコメントが線で結ばれてる先のマーカーが上位種ってことかっ!でも何で急にこんな……。



[スキル調整:探査および自動地図作成とアコを連結。マップ表示を最適化]



 !?すまんっ、アコ助かったっ!よしっこれで上位種の位置が分かったから、最短距離で向かえるっ!



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「くそっ!何で今日に限ってゴブリンがこんなに…っ!全員怯むなっ!ここで食い止めるぞっ!」


「兵士長!リッドが負傷!このままでは持ちません…っ!」


「くっ…この数では……だが……っ!」


「諦めんなっ!!」


「!?誰だっ!」


「んなこたぁどうでもいいっ!目の前の敵に集中しやがれっ!おらぁぁっ!!」


「…円環の理より来たりし炎よ……輪を以て其の身を焦がせっ!〔フレイムサークル〕っ!」


「負傷者をこちらへっ!…聖と浄、光輝く悠久の、癒し給いて再び生を……〔ヒーリング〕…」


「っ!?すまんっ…!全員救援だっ!ここから巻き返すぞっ!」


「「「「「うおおぉぉぉぉお!!」」」」」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 上位種はリーダーとメイジ組、アーチャー2体組でそれぞれ少し離れて固まっていた…けど、周りに数体取り巻きっぽい感じでゴブリンがいて、まずはこいつらをどうにかしないと届きそうになかった。

 真っ先に倒すのはやっぱりリーダーだろうと思い、そっち側の集団に突っ込んだ…取り巻きをまとめて吹っ飛ばすなら…これだっ!


(刹・迅闘舞 表技迅舞〔風尾ウインドテイル〕っ!)


 ブオォォォォンン……ドガァッ!



 背負っていたダルクブラウヴァーを抜き、左からの横薙ぎ一閃、ブレイドに纏った風が解き放たれてゴブリン達をまとめて横へ吹き飛ばした…まるで尻尾が横薙ぎに振るわれたかのように。

 2体ほど残っていたが、ほぼ取り巻きがまとめて取り除かれたことでリーダーを捉えることが出来た…そのまま絶刹那たちせつなを抜きつつ突進して残り2体をそれぞれ左右の刀剣で一閃した。

 これで完全にリーダーが丸裸になった…と思ったら、横から炎の矢が飛んできた、どうやらメイジが攻撃してきたらしい…が、この際無視だ、防御は闇護膜ダルクヴァルドに完全に任せて兎に角リーダーを真っ先に倒すっ!


(絶・乱瞑舞 裏技乱舞〔狼藉おおかり〕っ!)


 炎の矢が飛んできたことで余裕の態度っぽいのを見せていたゴブリンリーダーだったが、炎の矢が全く効いてないことに驚いたのか、慌てて持っていた武器…大斧を構えようとしていた…けど、もう遅いっ!

 突進でリーダーの目前まで来た俺は、勢いそのままに左右の刀剣で左右同時に袈裟斬り、そこから更に踏み込みに使った脚で地面を蹴り上げ、上方に飛び上がりながら下から掬い上げるように左右の刀剣で真っ直ぐ斬り上げた。


「グガガガガァァ……」


 叫び声を上げて、構えようとしていた大斧を力なく落とし、その場で膝を着いて前方に倒れ込んだみたいだが、それは俺の視界の端に一瞬映っただけだから詳しくは分からない…俺はもう次のメイジに向かっていたから。

 飛び上がりの斬り上げで着地後すぐメイジに向かってまた突進し、こっちにもまだ少し残っていた取り巻き3体を含め、まとめて斬り掛かりに行く…ここは刀剣5連撃技でっ。


(絶・乱瞑舞 裏技乱舞〔成敗なりやぶり〕っ!)


 まずは左剣の横一閃で左側にいたゴブリンを斬り倒し、振り抜いた勢いをそのままに身体を一回転させる途中で右刀でも横一閃、今度は右側にいたゴブリンを斬り払う…一回転するから相手に背を向けることになるけどお構い無し、何をされても大丈夫な自信があるからこそ出来る技だ…ただ、多分動きが速すぎて背を向けるのも一瞬だと思うから、相手からも早々その瞬間を狙ってどうこうするとか出来ないとも思うけど。

 回転で勢いを付けたまま、また正面に戻ってくる時に残りのゴブリンをまた右刀で横一閃、最後の標的になったメイジに左剣で回転を止める楔を打ち込む感じで突きを放った。


「グギャギャギャッ」


 目の前で何かがクルクル回っているとしか認識出来なかったんだろう、自分が突きを喰らったことに相当驚いた感じの叫びっぽかった…そして突き刺さった左剣を引き抜く勢いを利用して右刀でトドメの袈裟斬り一刀…これでこっちの組は片付いたっ、次はアーチャー組だっ!



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「…なんだっ?敵の勢いが……落ちた…のか!?」


「兵士長っ!救援のお陰でこちらも持ち直しましたっ!これなら……」


「ふっ、どうやらナオトがうまくやったみてーだなっ!流石は漂流者ってヤツかっ!」


「っ!戦ぐ風よ、盾と成れ!〔ブリーズウォール〕っ!…アーネっ、気ぃ抜くんやないでっ!」


「すまねぇシータ!…アーチャーの矢か……勢いが落ちて、ちと気が緩んだな……チッ、アタイもまだまだだぜっ!」


「皆さんっ、もう少しです!…光と堅、身に宿りしは屈腱の、護り給いて防ぎ御せ……〔アンジェラス〕!」


「こっ、これは…防御向上か……っ!助かるっ!全員っ、最後まで気を抜くなっ!押し戻せぇっ!!」


「「「「「うおおぉぉぉぉお!!」」」」」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 アーチャー組は前線援護に集中してたっぽく、こっちでリーダーがやられたことに気付いていなかった…アーチャー組の取り巻きはリーダー達より少ない…なら、アーチャー共々纏めて倒すっ!


(刹・迅闘舞 表技迅舞〔地角ランドホーン〕っ!)


 ズブズブズブブブブ……ゴガッズガッドガァァッ!



 ある程度─距離的に10メートルくらい─近付いたところで、ダルクブラウヴァーを地面に突き刺した…そこから地面の中を蛇みたいなものが這うように土が盛り上がり、アーチャー達に向かっていった。

 そこで初めてアーチャー達が俺の方に気付いたらしい、取り巻き含めこっちへ振り向いたけど、もう遅いっ!盛り上がった土がアーチャー達の足許に辿り着いた途端、地面から尖った土塊が突き出してアーチャー達を纏めて上方へ突き飛ばした。


 ドンッ!ドドンッ!


 突き上げられたゴブリン達が上空から落ちてきて、地面に叩きつけられた…これでもう上位種はいないはず、後は残りのゴブリン達を殲滅するだけだと思って前線の方に目を向けたら…既にゴブリンの数と人の数がほぼ同数くらいになっていた。


 これならもう任せても大丈夫だろう、と少しだけ気を休めて抜き身の刀剣を納刀しつつ、護衛兵達が守っていた豪奢な馬車の方へ向かったら…馬車の近くに一人、倒れている人が見えた…服装とかを見た感じだと執事っぽい……倒れてるなら怪我してる可能性が高いな、急がないと。


 倒れた人のところに着くと、やっぱり執事のような初老の男性だった、頭部から少し血を流して眼を閉じているが、呻き声が聞こえるのでまだ息がある…良かった、すぐマールを呼ばないと。

 しゃがんで顔を近付けて話し掛けようとしたら、何やら口が動いてる…何か言いたいんだろうか?


「大丈夫ですかっ?今手当をしますからちょっと…」


「…お……じょ………さ、ま…………が………………お…き、な………まも、の………に………………」


 掠れた声で必死にそう言って、震える腕を無理矢理動かしある方向を指差した…お嬢様……?そうか、貴族の馬車なんだから当然護衛対象がいるはずだよな……。

 


 貴族の集団、倒れた執事、扉の空いたもぬけの馬車……中に、人の気配は、無い。



 っ!?何で気が付かなかった、俺っ!そのお嬢様は…今まさに魔物から逃げてるってことかっ!


「マールっ!!この人を頼むっ!!」


 その人の治療をマールに任せ、俺は指差された方向に全速力で走り出した……間に合ってくれっ…頼むっ!!



※次回もシリアス回の予定です。

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