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#09 道具屋と食料調達



 3人に付いて店内に入ってみると…右片側に回復薬と思われる瓶が棚にずらっと並べてあった。

 大きさと形は、元気ハツラツとかファイトー一発ーとか言って宣伝してたドリンクの瓶に似たものが大半で、それよりちょっと大き目の瓶とペットボトルくらいの大きさの瓶が少し、あと形は同じだけど中身の色が違うもの、それだけで結構な種類の回復薬があるってのは分かった…けど、当然のことながら俺にはどれがどの回復薬なのかがサッパリだ…まぁ、アコに頼めば教えてくれるんだろうけど。



[視界内の対象全てに対し、アコを使用しますか?(YES/NO)]



 いや待ってそれやるとものスゴい勢いでステータス表示されるよなっ!…気を遣ってくれるのは嬉しいんだけどね、ありがとな、アコ。

 ま、多分後で出番あるから、その時頼むわ。


 とか、傍から見たら一人で慌ててるように見えたんじゃないかと思いつつ、3人が居る方を見たら…見知らぬ人のところに向かってた、多分店の人だろうな。


「おはよう、ニル婆はん」


「おや、シータ嬢ちゃん、マール嬢ちゃん、それに…アーネ坊やじゃないか、おはよう」


「ニル婆さん〜おはよぉございますぅ〜」


「ニル婆さぁ…いい加減その坊やっつーのやめてくんねぇかなぁー…」


「坊やだから坊やって呼んで何が悪いんだい?にひひひっ」


「あー、ったく、ニル婆にはどう言ってもムダかぁ…」


「坊やって呼ばれたくないんだったら、少しは嬢ちゃんらしくしてみたらどうなんだい?にひひっ」


 ニル婆さんって呼ばれてる店主っぽいお婆さん…アーネを手玉に取って遊んでる……。

 想像しちまったじゃないか、アーネのお嬢さん姿……うん、イケるな、黙ってさえいればだけど。

 その姿で今のアーネみたいに喋った瞬間、イメージがガラガラ崩れていった…。


 …ん?どうした、アーネ、何でそんなジト目を俺に向けてんの?


「……ナオト、今何想像したか言ってみ?あん?」


 ゲッ!ヤバ、まさか顔に出てたのか…っ!?


「べ、別に何も想像なんてしてないぞ…うん」


「ウソつけっ、めっさ顔に出てたわっ!余計な想像してんじゃねーぞっ!」


「いや、だって…そんなん聞いたら誰でも想像しちまうだろ……」


「はーん…どんな想像したか言ってみろよ?ほらっ!どーせ似合わねーとかいって笑ってたんだろっ!あぁ!?」


「何言ってんだよ、逆だよ、逆。中々似合うんじゃないかって思っただけだって」


「ハッ!どうせ黙ってればとか付くんだろ?」


「え、何で分かったし」


「やっぱりかよっ!あぁ、そんなこったろーと思ったよっ!!」


 あ、やべ、正直に言ってしまった……いや、だってそう思っちゃったんだもん、しょうがないよね?


「何やら楽しそうなお仲間が増えたんじゃないかい?にひひっ」


 婆さん、ナイスタイミング!これ以上アーネと絡むのは危険だったから助かった…。


「あ、どうも初めまして、みんなとパーティーを組むことになったナオトと言います」


「にひひっ、これはご丁寧に。わたしゃこの『必須庵』の店主をやってる、ニールニースヴェリニス、皆からはニル婆と呼ばれているよ、にひひっ」


 ニル婆さんか、何ていうか道具屋の店主っていっても、怪しい道具扱ってる方なんじゃないか?って感じの雰囲気醸し出してるのは…気のせいだろうか。

 ここに置いてある商品…大丈夫なんだろうな?


「来たばかりの漂流者で分からないことだらけですが、これからよろしくお願いします」


「おや、漂流者だったのかい…それはそれは。道理でこんな朝早くから来るなんて、久しぶりだと思ったよ。ナオト坊やが一緒になったから、早速仕事に行くのかい?」


 俺もアーネと同じ坊や扱いなのか…いや、まぁニル婆さんから見たら、今の俺も坊やなのかもしれないけど…中身おっさんだから微妙だ……。


「そうなんよ。それで準備をと思ってな、寄らせてもろたんや」


「そうかいそうかい、じゃあ必要なものを揃えていくんだね。にひひっ」


「そうさせてもらうわ。とりあえず…いつもの状態異常系の回復薬一式と…ヒールポーションとマナポーション貰おうかな」


「はいよ、ちょっと待っとくれ、今持ってくるから」


 そう言って重そうな腰を上げて店の奥へ行ったニル婆さん、元々用意でもされてたんだろうか、店の棚にあるやつじゃないっぽいから。

 みんな冒険者歴はそれなりなんだから常連って言ってもいいのか。

 それで予め姫達用に用意してあるってところかな。


「ったくよぉ…ナオト、お前も大概失礼なヤツだよな」


 ちょっと待てアーネ、お前がそれ言うのか?って言い返したいところだけど…今回は口滑らせた俺のせいだしな、素直に謝っとくか。


「あー、うん、悪かったよ…」


「私はぁ〜正直者でぇ〜いいと思うけどねぇ〜」


「まぁ、アーネも人のこと言えへんけどなー」


 あ、シータが言い返してくれた、やっぱりそう思ってるのは俺だけじゃなかっただろ?


「…言われると思ったわ……」


「分かってるんだったらぁ〜言わなきゃぁいいのにぃ〜、アーちゃんてばぁ〜」


「言ってから気付いたんだよ…もういい、この話はこれで終わり終わり」


 分が悪いから自分から話切ってきたわ…ま、俺的には助かった。

 アーネと絡む時は気を付けるか、なんて思ってたらニル婆さんが奥から戻ってきた…そこそこな大きさの木箱を持って。

 おいおい、それ大丈夫なのか?腰やっちゃいそうで見てるこっちの方が気が気じゃないんだけど……。


「ふぅ…よっこいせ、とぉ。ほい、いつものやつだよ。ポーションは両方共初級だから、中級が欲しいんなら棚から持ってくるんだね」


「あ、おおきに、ニル婆はん。マール、マナポーション初級やけど、どないする?中級も一応用意しとこか?」


「あぁ〜…うん〜そうだねぇ…今日のぉ相手はぁ〜格上だしぃ……持っていきたいかなぁ〜……」


「せやな…ウチもちょっと不安やし、持っていこか」


 そう言って二人共瓶が並べてある棚の方に行って物色しだした、二人はどれがヒールポーションでどれがマナポーションとか、どれが初級でどれが中級とか見ただけで分かるのか。

 まぁ、普段から使ってるものなら分かって当然か。

 棚からそれぞれ数本の瓶を抱えて戻ってきたシータとマールが、それをニル婆さんが持ってきた木箱の中に加えてた。


「よっと。ニル婆はん、これも一緒にお願いや」


「はいよ。お代はそうだね…端数は切り捨てといてあげるよ。全部で1000セタルだね」


「おおきにニル婆はん。ほなこれで」


 シータがニル婆さんに大銀貨1枚渡して、マールが木箱を魔法袋にしまっていた。

 っていうかアーネ、お前もマール手伝ってやれっての。

 

「毎度あり。みんな頑張っといで、無理はするんじゃないよ。にひひひっ」


「ありがとぉ〜ニル婆さん〜」


「ほな、行ってくるわ。またよろしくな、ニル婆はん」


「んじゃな、ニル婆」


「お邪魔しました。ではこれで」


 各々挨拶して道具屋を出た、サラッとしか見てなかったけど反対側の棚には回復薬以外の道具も置いてあったっぽいから、野営用の道具を揃える時にはまた来ることになりそうだ。


「さて、後は食料か。野営用の道具は買ってないから材料買っても意味ないな。出来合いの物買い込んで行くか」


「あぁ〜、それならぁ〜ノルチェのぉ軽食でもぉ〜買っていこうよぉ〜」


「あー、うん、せやな。あそこで包んでもらおか」


 ノルチェって、あぁ、昨日行ったウェナがいる茶店か。

 昨日は飲み物とケーキしか出てこなかったけど、軽食とかもあるのか…ま、弁当代わりには丁度いいか。


「その辺は任せるよ」


「了解や、ほなノルチェまで行くで」


 食料買い出しにノルチェに向かって歩き出した俺達4人。

 クエスト受けた時から比べると、少しは緊張が取れたのか、みんな昨日みたいに普段通り話しながら歩いてるっぽい。

 この分なら問題無くクエストもいけるかな?あとは…街出る前にみんなのステータス見せてもらおうと思ってる、みんなどれくらいの強さなのか、どんなスキル持ってるのか、それくらいは確認しておきたいかなって。

 勝手に見るのはちょっとあれなので、ちゃんと了承もらえればだけど…。

 

 大した距離でもなかったから、数分歩いて到着。

 当然お店はもう開店してるのでそのまま店内へ入ると、会計カウンターにウェナじゃない他の店員が居た、耳が尖ってるからエルフかと思うんだけど、ギルマスとかと比べると若干短いような気が…。


「いらっしゃ…何だ姫達か。らっしゃっせー」


 え、何で言い直したし…。


「相変わらずアタイらって分かった途端対応おざなりになるな、おい」


「アーに払う敬意は無い」


「相変わらずズバッと言うな、おいっ!」


 なんだ、えらいクセのある店員だな…でもちょっと面白いかも、アーネに対してのその態度が。


「ほんま相変わらずやな…おはよう、シャリー」


「ふふっ、おはよぉ〜シャーちゃん〜」


「ん、はよー。シー、マー」


「おはよう…ございます?」


 みんなの後ろにいたからちょっと顔出して、初対面にも関わらずシャリーって呼ばれてる娘が面白い態度だったから、思わず疑問形になってしまった挨拶をしたら…


「……え?…あっ!お、おはようございますっ!いらっしゃいませっ、ノルチェシェピアへようこそっ!」


 …急に態度変わったぞ?え、何で俺にだけ?そして何やらシータにだけ小声で話し掛けだした…。


「ちょっとシーっ!どっ、どちら様よっ!」


「どちら様て…あー、うん、ウチらのな、新しいパーティーメンバーや。漂流者のナオトはん」


「パーティーメンバーっ!?しかも漂流者って…それなんて奇跡?」


「奇跡て…まぁ、否定はせんけど」


「え、じゃあまだ冒険者続けられるってこと?」


「そうや、今日もこれからクエスト行くし…な」


「チッ」


「なんで舌打ちやねんっ!?」


「いや、これはウェナにしてやられたことに対しての舌打ち」


「あー、そうなんや…それはご愁傷様やな」


「あーもーウェナにやられるとか、アタシも地に落ちたか」


「そこまで言わんでも…」


「シーちゃん〜シャーちゃん〜、こそこそぉ話してないでぇ〜本題本題ぃ〜」


 …んー、こそこそしてたつもりだったんだろうけど、この距離だからほぼ聞こえてましたがね…多分アーネにもマールにも。

 ウェナとは昨日会ってるから、俺の事をシャリーに話したってところか?シャリーは信じてなかったっぽいけど。

 メンバーが増える増えないとかで賭けでもしてたか?


「せやった。シャリー、食料調達に来たんやけど、何か持っていけるようなもんあったら包んでもらえる?」


「んー。ちょい待って、聞いてくる」



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