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#03 初会話と漂流者



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー






 途中、スパルティスの他、ネズミだかウサギだか分からんようなヤツとか、6本足のクマっぽい体型だけど顔がイノシシみたいなヤツとか、翼の生えたイヌだかオオカミみたいなヤツを分析解説しながら即死させて回収しつつ、体感的に2時間くらい歩いてたらやっと森を抜けられた。

 森の切れ目を抜けた瞬間、なんかモヤっとした変な感覚がしたけど。


 抜けてからすぐ探査したら、街道っぽいのがマップに出たからそこに向かって、その街道を道なりに進もう。

 マップ上では街道が繋がってる先までは表示されてなかったから、右左どっちが街や村に近いのか分からん…千里眼とか飛空スキル創って探すのが手っ取り早いんだろうけど、あんまり便利にし過ぎると後で痛い目見そうな気がするから、ここは勘で進もう…よし、左で。






ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー






 道なりに歩いて更に体感2時間くらい……やっと街っぽいのが見えてきた。

 これくらいで着いたんだから、俺の勘もまぁ捨てたもんじゃなかったってことかな、勘っていうか運が良かっただけか。

 マップ上にも四角じゃない丸いマーカーがチラホラと見える、魔物じゃなくて人がいる証拠だな。


 近くまで来て見ると、外壁高いなぁ…圧倒させられる。

 城塞都市ってやつか?このまま進んだら街の入り口に着くけど、すんなり入れてくれるわけにはいかないよな、きっと……。



 入り口…外壁門の近くに来ると列が出来てた。

 当然の如く街に入るのにチェックは必要だよな、やっぱり。

 身分証もお金も何も無いし、素直に言ってどうにかするしかないか。

 っていうか、この世界の人と初接触だ、人見知りって程じゃないけど多少緊張するな。

 それと、会話出来るか…だな、頼むぜ言語翻訳。



「次、そこのお前…ってその格好、『漂流者』か」


「え?『漂流者』…ですか?」


 お、言ってることが分かる!

 こっちの言ってることも通じてるみたいだ。

 くすんだ金髪の髪を短く切り揃えた精悍な顔付きで40代くらいに見える、フルアーマーほどではないけどそれなりの重装備をした門番の兵士が、俺の格好見てひと目で見抜いてきた…ってことは俺以外にも転生とか転移して来てるやつがいるってことなんだろう。

 ここでは漂流者って呼ばれてるのか…確かに神だの女神だのに会ったわけじゃないし、問答無用でこの世界に流れ着いたって感じがするから、的は得てるのかも。

 何か目的があってこの世界に寄越されたってわけじゃなさそうだしな…。

 

「たまにお前みたいな妙な格好のヤツが現れるんだよ。どうせ身分証や通行証なんか持ってないんだろ?」


「あ、はい、持ってないですね…どうしたらいいですか?」


「仮証明出してやるから、3日以内に身分証作ってきな。どこかのギルドに入れば登録証発行されるから、仮証明を返却する時持ってくればいい」


「分かりました、ありがとうございます」


 ギルドも定番だな。

 冒険者ギルドは無いと困るな…回収したものを換金出来ないと食うのも寝るのもままならないだろうし…売れればだけど。


「しかしまぁ、今回の漂流者はえらく低姿勢だな…そんなに畏まらなくてもいいだろうに」


「あ、いえ、流石に初対面の人にいきなりくだけた感じにはなれませんよ…失礼だと思いますし」


 どこの世界でも礼節は大事だと思うんだけどな……。

 SE時代に培ったやりとりのクセはそうそう抜けないし。

 基本的に俺が小心者だってのもあるけど。


「そんなもんか?この間来たヤツなんか、初対面でも相当馴れ馴れしかったぞ。いきなりおっさん呼ばわりされたしな」


「そうなんですか…ま、まぁいろんな人がいますし」


 それは…日本人じゃないかも?日本人だとしたら礼儀知らずのお子様っぽい気が…大丈夫なんだろうか。

 チートとか持ってれば気がデカくなるのは分からなくもないけど、流石に初対面でそれはあまりにも…と思ってしまった。


「こっちは特に気にしないがな。あんまり下手に出られると逆にやり辛いわ。慣れたらでいいから普通にしてくれ」


 あ、気にしないんだ。

 俺が気にし過ぎってことね、でもまぁこういう性格だから仕方ないか。


「分かりました、とにかくここの生活に慣れるよう頑張ってみます」


「おう、大変だと思うが頑張れよ。あと、済まんがこの魔導具に手を置いてくれ。これも決まりなんでな」


 犯罪歴のチェックってやつか、まぁこれも当然だな。

 ここには真っ直ぐ来たし、誰とも会ってないから大丈夫なはず………大丈夫だよな?初っ端に使った闇黒魔法に巻き込まれてたとか…それだけは勘弁してほしい。

 手の平サイズの四角い板に丸い魔法陣みたいなのが書かれている…これに手を乗せればいいのか。

 お、魔法陣が青く光りだした。

 色で見分けるタイプってことか、青はセーフだよな?


「問題ないな。ほら、これが仮証明だ、無くさずに後で返しに来いよ」


「はい、ありがとうございます。なるべく早く返しに来ます。あ、そうだ。自分はナオトって言います。門番さんのお名前は?」


「ん?あぁ、返すのは別に俺じゃなくても誰でもいいんだが…まぁ、聞かれたなら答えるのが筋ってな。俺の名前はエドゲイズバッキィ、エドでいいぞ」


「返すのは門番なら誰でもいいんですね、ではエドさんがいたらエドさんに返すようにします」


「そうだな、俺がいたら受け取ってやる」


「はい、よろしくお願いします。それでは、行ってきます」


 どうやら無事に通れそうだ、よかったよかった。

 先に転生してきてた奴らに感謝かな。


「あぁ、言い忘れてた」


「?」


「ようこそ、城塞都市ガルムドゲルンへ!歓迎するぜ!」






ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー






 さて、一応歓迎されつつ街の中に入れたわけだが…まずは身分証のためにギルド登録かな。

 さっきからジロジロ見られてるから服装もどうにかしたいけど、先立つものが何も無いし。

 今着てるものを売るとか、寝間着には使えるんだから勿体無くて。

 根っから小市民だな、俺。


 道行く人に声掛けるとか日本じゃほとんどやらなかったし、ちょっと緊張するな…なぜか道聞かれるのは割と多かったけど。


「あの、漂流者の方ですか?」


「え?はい?」


 あれー?こっちでも同じなの?おっとりとした柔らかい表情が印象的な年配の女性の方が声掛けてきたよ……。

 俺ってそんなに声掛けやすいのかな。

 まぁ、こっちから声掛ける手間が省けたからいいけど。


「見慣れない格好でしたので、漂流者の方なのかと」


「あ、あーはい、そうです。今さっきこの街に着いたばかりで」


「あら、それはそれは。では何か聞きたいことがおありでは?」


 おぉ、向こうから聞いてきてくれるとは、なんとありがたい!助かるなぁ。


「すみません、助かります。実はギルドの場所を知りたくて、誰かに声を掛けようとしてたところでした」


「まぁ、そうでしたか。どちらのギルドへ?」


「えっと…その辺りも含めてお聞きしようかと。どんなギルドがあるのでしょうか」


 とりあえず、どんなギルドがあるのかは知っておきたい。

 それからどこに登録するか決めよう。


「それでしたら、まずは情報開示局に行くことをお勧めしますよ。貴方の聞きたいことにはほとんど答えてくれると思いますし」


「情報開示局ですか。それは自分のような何も知らない人には助かりますが…利用するのにお金掛かりますよね?」


 情報開示局…語呂的に多分インフォメーションセンターみたいなものだと思うけど、タダで利用出来なかったら行く意味無いな…どうしよう。


「確か利用料は必要だったと思いますが…来たばかりだと手持ちも無いでしょうから、こちらをお使いくださいな」


 そう言ってご婦人から差し出される銀貨っぽいものが1枚。

 いやいやいや、見ず知らずの人にそこまで!?


「いえ、流石にお金は……ご好意は大変ありがたいのですが、そこまでしてもらうわけには………」


「でも、お手持ちが無くてお困りでしょう?そうですね…そうそう、今日の宿もまだお決まりではないですよね?」


「ええ、それは…もちろん。お金をどうにか工面してからじゃないと決められませんし」


「実は私、『精霊の歌声亭』という宿屋をやっていまして…よろしければ本日の宿をこちらで取ってもらえませんか?お金はその時にでも返していただければと」


 なんという商売上手…まさか客引きの為にここまで考えていたのか?

 でも人良すぎだよ…逆にこっちが心配になるレベルだ。

 俺としてはこんな親切受けといて踏み倒すなんて、そんな碌でもないこと出来るはずないんだけど…甘えちゃっていいのかな?


「ええと…こちらとしては大変助かるんですが…一つだけ伺ってもいいですか?」


「はい、なんでしょう?」


「その、初対面の自分に、何故ここまで親切にしてくれるのかな、と…」


「ふふっ、誰にでもってわけではないんですよ?これでも客商売ですから人を見る目は確かだと思ってますので」


 と、いうことは…俺はお眼鏡に叶ったってことかな?だとしたら嬉しいね!なんかこの世界好きになれそうだ。


「それは…何というか、大変光栄ですね。では、お言葉に甘えてお借りすることにします。ありがとうございます!」


「はい、ではこちらをお持ちくださいな。宿の場所は情報開示局で聞いてもらえれば」


 差し出された銀貨を受け取った。

 おぅ、この世界に来て初の所持金だ。

 自分のお金じゃないけど…。


「確かに受け取りました、後で必ずお返しに伺いますので。そうだ、大事なことを…自分はユサ・ナオトと言います、ナオトで構いません。それで、貴女のお名前を教えて頂けませんか?」


「あら、私ったらまだ名乗ってなかったわね、ごめんなさい。私は宿屋『精霊の歌声亭』の女将をやっているメルリダリナと申します。メル、と覚えて頂けるかしら」


「はい、メルさんですね、ありがとうごさいます。では、改めて情報開示局の場所を教えてもらえますか?」


 名前も教えてもらったし、これでこれからの行動に目途がたったぞ、ホント助かった。

 聞きたいことは山ほどあるしな。 

 最初にこの街に辿り着いたのは幸運だった!

 若干だけど運勢上昇中ってのが効いてるのかも。


「今私たちがいる、この中央通りを真っ直ぐ進むと、中央に噴水がある円形の広場に出るの。その円形を右回りに沿って歩いていくと、水晶球に羽根ペンをクロスした看板があると思うわ。そこが情報開示局ね」


「水晶球に羽根ペンの看板ですね、ありがとうございます。ではそこに行ってみます」


「お役に立てたのならよかったわ。来たばかりで大変だと思うけど、頑張ってくださいね」


「はい、いろいろとありがとうございました。それでは」


「では、また後ほど。お待ちしてますね」



 ホント幸先いいな、うまくやっていけるような気がしてきた。

 それじゃ早速情報開示局に行くか!




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