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#22 剣技と刀技、それからゆったりと



 ではでは早速…まずは軽く素振りを、と。

 右の刀、左の直剣を軽く交互に振ってみたけど…うん、重さも適度、何の負荷もなくスムーズに振れるな、よしっ。

 ちょっと剣舞っぽく…脚も使って振りのスピードをちょっと上げて左右の刀剣を、振り下ろし、斬り上げ、横薙ぎ、袈裟斬り、突きも入れつつ振り回してみた。

 おぉ、思った通りに身体が…動く、動くぞっ、これは…様になってるんじゃないか、俺っ!よっし、調子上がってきたからいっちょ左の剣技でも試してみますかっ!シータがいるから技名とか絶対口には出さない方向で…あ、それと芝生ダメにしちゃマズいから斬り上げで上方にだなっ。



(魔刀剣術…刹・迅闘舞 表技迅舞〔炎呀ファイアファング〕っ!)



 ボゥッ…ブォォォォオッ!!



 ダルクブラウヴァーのブレード部分に一瞬で炎が湧き上がり、それをそのまま空中目掛けて斬り上げたら、火炎放射のように空中に放たれた…中々の火力じゃないか、これ。

 んじゃ、続けてもう一丁っ!



(刹・迅闘舞 表技迅舞〔雷爪サンダークロー〕っ!)



 バリバリッ…ピシャッズガガガガガッ!!


   

 今度はブレードに雷を纏って、さっきと同じように斬り上げると、一条の稲妻が夜空に吸い込まれるように昇っていった…こっちもいい感じに格好良いんじゃないかっ!スゲぇ、感動だ…思った通りに出来るってこんなに爽快なのかっ……!


 よしよしっ、次は右の刀技、こっちは剣技みたいなエフェクトっぽい派手さはないけど、全身使って兎に角斬るからなっ…こっちも思い通りに動いてくれよっ。



(魔刀剣術…絶・乱瞑舞 裏技乱舞〔剣客はやひと〕っ!)



 突進からの刀剣2連撃、左剣の水平斬りからの右刀の右袈裟斬り、そのまま技を繋げて…



(絶・乱瞑舞 裏技乱舞〔曲者まがひさ〕っ!)



 返す刀剣で右刀の逆袈裟から左剣の逆手水平斬りの2連撃…うん、文句無く身体が自由自在に動くっ!言うことなし、これで近接でもいけるはず…!

 ちょっとカッコつけて左右の刀剣をクルっと回しながら左腰と背中に納刀、ふぅ…メッチャ良い気分……!



「ふぅ…。うん、これなら何とかなりそうだな…って、どうした?シータ」


 息を整えて腕を軽く回しながら身体に違和感が無いことを確認しつつ、ふとシータがいる方を向いたら…呆然とした顔でこっち見てた。

 

「………いや、改めて…ナオトはん、漂流者なんやなって……」


「いや、まぁ、改めなくても漂流者だけど…どういうこと?」


「属性も無いのに魔法使えるところとか…あと、動き速くて見えへんかったで」


 あー、あれは…どうなんだろう?自分で想像して創造した剣技だから、純粋な魔法じゃないような気がする…。

 ダルクブラウヴァー使わないと炎とか雷は出せないと思うし。


「えーっと…多分だけど、さっきのは魔法じゃないと思う。うーん…なんて言ったらいいのかな…この剣の性能と技が合わさって初めて出来るというか…。だから一般的な火とか雷の属性魔法は使えないと思うよ」


「それって、つまり…ナオトはんしか出来ないってわけやな…なんや属性魔法形無しって感じやけど……」


「そうかな?俺も結局この剣が無いと出来ない事だから、形無しってわけじゃないかと…。純粋に魔法使える方が凄いと思うけどな」


 炎や雷は剣技として出せるってだけで、魔法みたいに例えば炎をいろんな形状にして打ち出せるとか、さっき言ってた魔導帝みたいに広範囲を殲滅出来る…は、あれか、剣技によっては出来なくもない…かも……まぁ、でも基本そんな器用なことは出来ないはずだから、やっぱり属性魔法の方が利点は多いし使い勝手は段違いだと思う。

 俺のは属性魔法っていうより、属性攻撃って言った方がしっくりくるな、うん。


「そうなんやろか…威力とかも見た感じ相当高そうやったし、ウチなんかの魔法がお遊びみたいに見えてちょっと自信無くしそうやわ……」


 あ、ちょっと落ち込んでる感じ…そこは比較対象としての選択を間違えてるだけだって。


「あ、いや、そこはほら…漂流者と比べても意味無いし、自信無くすとかお門違いだって」


「…ま、それもそうやな。漂流者やもん、これくらいは当然やし、比べてもしゃーないな」


 そうそう、チート持ってる漂流者と比較すること自体無意味だしね。

 さて、武器も創って身体が動くことも確認できたし、もういいかな。


「そういうこと、うん。さて、とりあえず確認したいことは確認出来たしそろそろ戻ろうと思うけど、シータはどうする?」


「うん、ナオトはんが戻るならウチも一緒に戻るわ。凄いもん見せてもろたし、マールとアーネにもちょっと教えたろって。特にアーネには絶対ナオトはんに吹っ掛けるなって釘刺しとかんとな、死にとうなかったらって」


「ちょっ、何で俺がアーネを死なす前提になってるのっ!そんなことしないよっ!」


「あははっ、分かっとるよそんなん。アーネにはこれくらい言わんと効かんからなぁって」


「…予想だけど、多分シータが言っても聞く耳持たないと思う。逆に見せてみろって言ってくる方に銀貨1枚」


「それは…賭けにならへんからダメやな、ウチも分かっとるし。ま、一応言うだけは言っとかんとって思うとるだけやしね」


「そういうことね…まぁ、程々に伝えておいてくれるといいかな…?」


 無駄だと思うってのはシータも分かってるみたいだし、適当に言っておいてもらえればいいか。

 でもなぁ…アーネのことだから明日絶対突っ掛かって来そうな予感がする……あ、あれか、猫が戯れてきてるって思えばいいのか、それなら可愛いもんだ。


「任せとき、アーネもナオトはんのこと気に入っとるみたいやし、悪いようにはならんと思うで?」


「ん…?あれで気に入られてるの?俺。全くそうは見えないけど」


「まぁ、会ったばかりやしナオトはんには分からんやろうけど、その内分かるようになるて。マールかてまんざらでもなさそうやったし」


 長く一緒にいるシータが言うならそうかもだけど、俺には分からんところだな。

 一緒にパーティー組んでやっていけば、俺にも分かるようになる…のかな?

 二人は分かったけど、本人はどうなんだろ?


「それは…パーティー組むんだったら良い事なんだろうけど…じゃあ、シータは?」


「え?あー、うん、ウチなっ。ウチも、その、まぁ、なんや、ナオトはんみたいな漂流者で良かったって…思うとるで」


 そっか、シータもそう思っててくれてるんなら、まぁ大丈夫かな。

 後は俺次第ってところだけど…。


「そっか、それなら良かった。皆と上手くやっていけるかちょっと不安だったし…」


「そんな心配せぇへんでも大丈夫やって。ウチらがお願いした事やし、ナオトはんがそないに不安がること無いんやで?」


「それはそうなのかもだけど…お願いされた以上、ちゃんとやらないとなって…でもこの世界に来たばっかりで出来るかどうか自信無かったし、軽く受け過ぎちゃったかなって……」


「それこそ無駄な心配やん。最初っから上手くいくなんてウチらだって思うてへんし、少しずつやっていけばええやろ?ちゃう?」


 そうなんだけど、俺漂流者だからな…最初っから上手くやってやるって、上手く出来て当然みたいに思っちゃってる部分あるな…やっぱりこれ、チートのせいか。

 大概のことは出来るのかもしれないけど、人間関係…相手との関わり合いとか信頼関係結ぶのにチートは然程直接関係ないしな。

 精神支配系や隷属系のスキルとかがあるなら別だけど、強制的に結ぶ関係って俺ダメなんだよなぁ…異世界ものでは常套手段なんだろうけど、相手のこと思うとどうしてもこう、拒否反応が出るというか…お話的には大好物なんだけどね、奴隷に奉仕されるとか男の浪漫だとは思うし、絶対に裏切らないとか…ね。

 ただ、これを目の前の現実で、とか考えると無理かな…俺的に相手を尊重してないとか尊厳を無視してるって感じがしてやっぱりダメだな、うん。


「…うん、シータがそう言ってくれるなら…頼られちゃって最初から上手くやろうと思って気負い過ぎてたかも」


「いくら漂流者でもそこまで求めへんって。逆にウチらが頑張らんとナオトはんに頼りっきりになりそうで怖いわ」


「まぁ、頼られるのは悪い気がしないっていうか、むしろ俺的に嬉しいからいいんだけどね。じゃあお互い少しずつでいいから頑張っていこうってことで」


「せやな、それでいこうや。ほな戻ろか」


「うん、戻ろう」


 そう言って二人で裏庭を後にして、来た時に通った廊下を通り食堂へ戻ってきた。

 まだ利用している客はいたけど、疎らで席は半分以上空いていた…時間的には九つ鐘から2時間経つんじゃないかと思うけど、こんなギリギリまで利用してる人もいるんだな。

 酒が入っているであろう客達を横目に、階段を上って2階まで来たから、シータに挨拶して部屋に戻ろう。


「じゃあシータ、今日はいろいろありがとう。また明日、おやすみ」


「うん、明日からよろしくな。おやすみ、ナオトはん」


 二人で軽く手を振ってシータは3階だからまた階段を上って行ったんだけど…何だろう、妙に足取り軽く上っていくように見えるのは気のせいか、うん、気のせいだろう、と自分を納得させてそのまま部屋へ。


 入ってすぐベット…に行くとまた瞬間的に寝落ちしそうだからソファーに座ろう。

 ふぅ…いやしかし、初日から濃い一日だったな…こんな見ず知らずの漂流者なのに、いろんな人に親切にしてもらって、ホントありがたかったな…。

 この世界に来た時はどうしよう、どうなるんだろう、とか思ってたけど、冒険者にもなれたしこれなら何とかやっていけそうな感じだ。

 むしろ明日のクエストが楽しみって感じるくらいだし。

 今日のところはこの辺で、明日のために風呂入って休むとするか。


 防具を外して…って、これちょっと楽したいな、パージとか言ってそのまま収納出来れば楽なんだけどなぁ…。


 シュン!


 …って、あれ?で、出来たよ…防具全部消えた。

 

 じゃ、じゃあ、逆に装着って…。


 シュッ!


 …おぉ、装備出来てる…な、なんて便利な、いいのかこれ、何でもアリだな……。

 ま、まぁ出来るんだったらありがたく使わせてもらおう。


 防具をパージして、更に服までパージ、これで一瞬にして真っぱになりました。

 さ、風呂風呂…と、あー、まずは魔石に魔力溜めないといけないのか。

 よし、やってみるか…魔石に手を乗せて…とりあえず念じてみればいいのか?魔力魔力…あー、この身体の中を巡ってる感じのやつが魔力…かな?お、魔石が光ってきた、これ、溜まってる証拠だよな…ってことはこの感じが魔力ってことだな、覚えとこ。

 ん?ありゃ、もう光らなくなった…モヤっぽいものも出てるし、もう一杯になったのか、これで使えるようになった?

 魔石は動力源として使用するだけっぽい、魔石自体で操作するんじゃなくて、ちゃんとレバー式の蛇口が付いてるみたいだから。

 レバーを倒して…と、お、蛇口から水が、いや、湯気が出てるからお湯か。

 結構な勢いで出てるからすぐ浴槽に溜まりそうだな、その間に身体洗っちまおう。

 備え付けに石鹸があるけど、流石にシャンプーとかリンスは無かった…まぁ、石鹸しか無いならしょうがないけど、どうにかならないかな……あ、そうだ、シャンプーとかリンス創れるか?想像通りでいいなら別に詳細な作り方とか知らなくても出来ないかな?流石にそれは都合良すぎか…でもやるだけやってみよう、失敗したらしたで別に構わないしな。

 向こうの世界で愛用してた天然素材を売りにしてる某ショップのシャンプーとコンディショナーを思い浮かべて…創造っと。


 ポンっ!ポンっ!


 っと、出てきた…うん、容器とかはそのままだな、後は中身だけど、使ってみないことには分からないから、髪洗うか。

 うわ…久々にこんな長髪洗ったわ……ん、でもちゃんとシャンプーとして使えそうだな、泡立ちも抜群だし。

 うし、このまま身体も洗って…と、丁度お湯も溜まったし身体流して湯船浸かろう。


 ドボンッ…ザバァァァ


 ふぃー、やっぱ風呂はいいなぁ…まぁ、まさか普通に異世界の宿屋で風呂入れる部屋に泊まれるとは思ってなかったけど、こういうところは元の世界とあまり変わらなくて良かったって思う部分もあったり…やっぱり慣れ親しんだものがあるのと無いのとじゃ、全然気の持ちようが違ってくるって、ホント。

 こういう慣れ親しんだ部分を先に広めてくれた漂流者の方々には感謝しとこうかな、多分他にも色々あると思うから。

 でもあれだな、こうしてみると結構な数の漂流者がこの世界にいるような気がするな…既に今日だけで4人いるってのは分かったし。


 カティの友達のヒミカ・トウカのお母さん。

 リズが担当してるっていうケモミミ属性持ちハーレム系漂流者。

 俺が見つけた服と防具の発案者のオーガ。

 魔導帝サトリ・キュウジ。


 まぁ名前分かってるのはオーガとサトリって人だけだけど、多分明日にはリズの担当漂流者には間違いなく会えるだろうと勝手に思ってるわけで。

 この調子だともっと増えてくんじゃないか…?大陸も7つあるって言ってたし、どこかには召喚勇者とかいるような気もする、クラス転移とかもされてたりして…。

 あとは…どっかのダンジョンマスターとかに転生してたり、魔王として召喚?転生?してたり。

 流石にモンスターに転生されてるとパッと見分からないかもなぁ…それとヒミカのお母さんみたいに普通の転生?転移?してる人もいるし…あ、どっかの国のお姫様とか貴族令嬢とかもいそうだな。

 何だかこうして考えると、この世界で漂流者探しってのもちょっと面白いかもしれない…いや、やっぱナシだな、出来れば会わない方向でいった方がいい…俺の今の装備で出会ったらまず笑われるのは間違いないだろうしな……厨二病全開のイタイ奴としか見られないっての。

 とりあえず他の漂流者とは、会ったら会った時に考えればいいか、今からあれこれ考えたってどうしようもないし…ただ、方針としては、可能な限り避けて通るってことで。

 あ、オーガは別か、アイツには会わなきゃいけない理由もあるし…な。


 っと、温まったしそろそろ出るか、逆上せちまう前に。



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