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#20 食後にまったり



 初めての異世界料理…向こうとそれ程かけ離れてなかった料理だったけど、それでも異世界で初めての食事に舌鼓を打ちつつ、そしてこれからの冒険者ライフに思いを馳せながら、夕食を堪能した。

 エールのおかわりをウォルに頼む時、この後の予定も一緒に伝えとこう。


「ウォルー、エールのおかわりいいかー」


 そう呼び掛けたらウォルがちょっと離れたその場で、


「ん、わかったー」


 と、返事をして厨房の方に引っ込んでったから、おかわり持ってきてくれた時に伝えるとするか。


「んぐっ、んぐっ…ぷはぁぁあっ!ふぅ〜…。そういやナオト、明日から早速クエスト受けるんだよな?」


「ん?うん、そのつもりだけど」


「どんなクエスト受けるん?」


「明日実際どんなクエストがあるのか見てから決めようとは思ってるけど、とりあえず考えてるのは採取系か雑務系かな」


 アーネが美味そうにエールを呷りながら明日からの予定を、シータがクエストの種類を聞いてきたから、当初から考えてたクエストをやるつもりだって答えてあげた。

 地道にやっていこうと思ってるから、クエストのポイントは度外視でとにかく慣れる為にいろんな種類のクエストを熟していこうかと。


「そうなんや。せやけどハイゴールドランクで採取系とか、ほぼ魔物の素材しかないと思うで?雑務系に至っては皆無やろうし」


「そうなんだ…でも初めてのクエストだから、ランクは気にしないで受けようと思ってるんだ」


「そうするとぉ〜ポイントはぁ入らないけどぉ〜いいのぉ〜?」


「あー、うん、急いでランク上げるつもりも無いし、最初の内はいいかなって」


「何か勿体無ぇな、それ…そんなチマチマいかねーでよぉ、もうアタイらと組んでいこーぜっ」


 いや、だからまずは慣れようと思ってるんだって…早く組んで自分たちの瀬戸際解消したいのは分かるけど、とにかくまずは色々経験してみたいんだってば。


「アーネ達から見たら勿体無いと思うかもしれないけど、それでもまずはこの世界を知るために色々挑戦してみたいんだよ」


「うん、ナオトはんの言う通りやな。何事にも順序ってもんがあるんやし、ウチらの都合で振り回すのは筋違いやで、アーネ」


「いや、だってよぉ、ナオト漂流者だろ?しかももうハイゴールドなんだし、アタイらのランクのクエストくらい余裕なんじゃね?」


「言われてみればぁ〜そうかもねぇ〜。ナオちゃんさえぇ良ければぁ〜すぐにでもぉパーティー組んでぇ〜行ってみてもぉいいかもねぇ〜」


 まぁ、うん、俺も正直言うと多分厨二病設定のお陰でそれ程苦労はしないだろうとは思ってるんだけどさ、初日からすぐ姫たちに囲まれてズルズル一緒に行っちゃうのは俺的に良くないのは分かりきってるので、主に精神的な面で。

 とは言っても、約束しちゃったからほんの3日程度でしか無いんだけど…もうちょっと期間取れば良かったか、今思うと。 


「アーネもマールもいい加減にしときや。ナオトはんがウチらと組んでくれるってだけでも奇跡に近いってこと分かっとるんか?」


「シーちゃんのぉ言うこともぉ分かってるんだけどぉ〜…でもぉやっぱりぃ〜早くぅこの状態を何とかぁしたいなぁ〜ってぇ〜……」


 マールのウサ耳もシュンってなると垂れて萎れちゃうのね…獣部分を見ちゃうとどうにかしてあげたくなっちゃうから、意識的に視界から外さないと…。


「せやかて後3日の辛抱やん。それくらい今までに比べたら大したことないやろ?」


「そうなんだけどよぉ…アタイら暫くマトモにクエスト出来てねぇからさ…身体がウズウズしてしょーがねぇっつーかよぉ…」


 アーネ、お前スカウトだよな…もう前衛に転職しちまえばいいんじゃね?


「アーネさ、もう前衛になっちゃえばいいんじゃないのか?」


「は?何言ってんだよナオト、職種はそう簡単に変えられねぇっての」


「あ、そうなの?」


「職種変えるには、まず候補になる適性職種があるかどうかが前提やし、それにその候補の中に前衛向きの職種があるかどうかも調べんと分からへんし…」


「職種を〜調べるにはぁ〜神殿に行ってぇ高位の神官様にぃ〜見てもらわないとぉ分からないんだよぉ〜…それにはぁ相当な額のぉ〜お金が掛かっちゃうんだぁ〜…」


 そうか、そういう仕組みになってるのか…じゃあやっぱり俺みたいに自由に職種変更出来るのが異例なのか。

 でも選択職種があるかどうかくらいは分析解説使えば分かるだろうとは思うんだけど…それはパーティー組んでみんなに了承貰ってから使ってみるか。

 今の段階で見ちゃうのは少し早い気がすると思ってる、まだ知り合ったばかりだし、もう少しお互いを知ってからみたいな。


「そっか、そうなんだ…でも、アーネなら前衛向きの適性職種が候補にあるような気がするけどなぁ」


「いや、そりゃねーだろ。アタイのガタイじゃ前衛は無理だっての。せいぜい動き回って引っ掻き回すくらいしか出来ねーよ」


 性格的には前衛向きだけど、体格的には確かに無理っぽいか…素早さ重視の職種が一番合ってるだろうし。


「言われてみればそうか…けどその性格でスカウトっていうのも合ってない気がするんだけど」


「そんなことあらへんで。普段はこんなんやけど、いざクエスト始めると索敵とかかなりの精度やし」


「そうなんだよぉ〜、アーちゃんはぁ〜こう見えてぇ〜やる時はぁやる娘なんだよぉ〜」


「な、なんだよ二人とも…褒めたって何も出ねーぞっ」


 頬染めてそっぽ向いたよ、褒められ慣れてないんだろうな…この二人には形無しってところか、可愛いとこあるじゃないかアーネも。


「にーちゃん、エールおかわり持ってきた」


 お、さっき頼んだエールが来たか、早速ウォルにお願いしとこうかな。


「おぅ、ありがとな、ウォル。それと食事終わった後、さっき言ってた裏庭への案内お願いできるか?」


「ん、分かった。じゃあ食事終わったらまた声掛けて」


「すまんな、よろしく頼むよ」


 おかわりしたエールを置いてまた戻って行ったウォル、これで試したいことが出来るといいんだけどな…。


「なぁにぃナオちゃん〜、裏庭にぃなんてぇ〜何の用事がぁあるのぉ〜?」


「あぁ、ちょっとね、試したいことがあって。身体動かせそうな広い場所無いかって聞いたら裏庭があるっていうから、食事終わったら行こうかと思ってさ」


「なんだよ、食後の運動ってか?」


「んー、まぁ、それもあるけど、とりあえず剣を振ってみたくて」


 ちゃんと剣振れるのか確認しないとパーティー入っても前衛としてやれるのか分からないしな。

 でも実は厨二病時代に考えてた技とか実際使ってみたいってのが一番の理由だったり…。


「剣って、ナオトはん、剣持ってへんやろ?」


「大丈夫、ちゃんと収納に入ってるから」


 ホントは入ってないから、まず創るのが先なんだけど。

 創ってる所見られても収納から出したって誤魔化せばまぁ何とかなるかな、と。


「そうやった、ナオトはん漂流者やしな。収納スキルも当然持ってはるんやな」


「みんなは持ってないの?収納スキル」


「アタイらは誰も持ってねぇから魔法袋使ってるな。つっても大した容量は無ぇけどよ」


「そうだねぇ〜、もうちょっとぉ容量のぉ大きいぃ〜魔法袋がぁ欲しいんだけどぉねぇ〜…最近はぁ稼げてないからぁ〜手がぁ出せないのぉ〜……」


 やっぱりそれなりの魔導具は値段も高いってことか。

 でも冒険者やるなら必須アイテムなんだろうな、収入に直結するだろうし。


「そっか。まぁ、俺とパーティー組むようになったらその辺の心配は無くなるだろうから、気にしなくてもいいと思うよ」


「それって…ナオトはんが収納してくれはるってこと…?」


「え、うん、だってみんなと一緒なんだから俺が持っててもいい…んだよね?あれ、ダメだった?」


「えっとぉ〜…私たちはぁ〜凄く助かるけどぉ〜…」


「いいのか?そんな荷物持ちさせちまうようなコトしても」


 荷物持ちって、実際手に持って運ぶわけでも無いんだからなんてことはないんだけど。

 冒険者として倒した魔物は自分達の責任で回収するみたいな決まりがあるなら別だけど、マールが助かるって言ってるくらいだからそうでも無さそうだし。


「ダメじゃないんだったらやろうと思ってたけど…大した手間でもないし」


「ダメなことはあらへんけど…ほんならお願いしてもええってこと?」


「うん、もちろん。やるからには少しでも役に立てればと思ってるし」


「いや、役に立つどころの話じゃねぇだろ、それ…今までと比べてどんだけ稼げるんだって話だよな?」


「うん〜、今までぇ容量いっぱいでぇ持って帰れなくってぇ〜泣く泣く置いてくってことがぁ〜無くなるってぇことだよねぇ〜…」


 あー、やっぱりそういう事もあったのか。

 どの位の容量の魔法袋を持ってたのか分からないから何とも言えないけど、俺の無限収納や収納墓地は上限無いだろうから持って帰れないものは無くなるだろうな…それだけで魔物素材の回収が増えるってことだから、当然その分の収入も増えるだろうし。


「じゃあ、パーティー組んだら頑張って今まで取り零した分稼ごう。それくらいの手伝いは出来るから任せてよ」


「…なぁ、ナオト…お前ホントに漂流者なんだよな…?」


「え、そうだけど…何で?」


「いや、アタイの中で漂流者ってのは、なんつーか、こう、傲慢っていうか自意識過剰っていうか、とにかく俺様は強ぇんだよってのを前面に出してるようなヤツだったからな…」


「ウチもまぁ、そんな感じやなぁ」


「私もぉ〜そういう印象かなぁ〜漂流者ってぇ〜…」


 うん、多分予想だけど、概ねそんな感じじゃないかな、とは思う。

 チートもらって来てる時点で元の世界で出来なかったことを思う存分やってやるって考える人が多いのは否定出来ないし…まぁ、そういう奴ばかりじゃないだろうけど、こっちに来て元の世界とは違う性格に変わってしまうこともあるんじゃないかな、基本欲望に忠実なのが地球人だしなぁ…俺も例には漏れないだろうけど、度胸がない上に臆病で自分に自信が持てないタイプだから、相手に迷惑が掛かっちゃうようなやり方が出来ないってだけの話だと思う。


「あぁ、みんなの中の漂流者ってそんな感じなんだ。うん、まぁ、大体合ってるんじゃないかなぁ」


「いや、どう見てもナオトはそうじゃねーだろ」


「そう…?まぁ、他の人みたいに前面に出せる程、自信満々にはなれないってだけだと思うけど…基本的なところは多分他の漂流者と変わらないよ。これから一緒に冒険していけば段々と分かってくるんじゃないかな?」


「まぁ、まだ出会ったばっかやしそうなのかも知れへんけど…」


「今日会ってからぁ〜お話した感じとかぁ〜収納のこととかぁ聞いてるとぉ〜そういう風にはぁ見えないねぇ〜…」


 その辺は別に意識してるわけじゃなくて、これが俺の普通なんだけどな…やっぱり他の漂流者に会ってみないことにはどれくらい俺と違うのか見当付かないな。


「性格的な面は当然あると思うよ。みんなが思ってるような他の漂流者とはたまたま合ってなかったってだけじゃないかな」


「ほな、そのたまたま合ってない漂流者とウチらは出会えたってこと?」


「うん、まぁ、そうなる…のかな?」


「これってぇ…やっぱりぃアーちゃんがぁ〜いつものぉ癖を出したぁお陰ってぇことなのかなぁ〜…今回にぃ限ってはぁ〜」


「せやな…今回ばっかりはアーネに感謝せなあかんかな……」


 多分ギアンテのおっちゃんの所の入り口で鉢合わせにならずに店内で合ってたら、普通に声を掛けたりしない限り接点は無かったよな。

 ただの客同士、しかも異性相手に声を掛けるとか、シータやマールがやるとはあまり思えないし、俺から声掛けるとかもっとあり得ないっていうか、それやるとナンパになっちまうし…そう考えるとアーネのお陰って言えなくもない…のか?


「うーん…まぁ、俺から声掛けることはほぼ間違いなくなかっただろうから、シータとマールがそう言うなら、アーネのお陰なのかも…ね」


「さっきも言ったけどさ、今こうしてる結果が全てってこったろ?アタイだって改めて今よくよく考えてみたらよ、漂流者相手に喧嘩売ってたとかゾッとしねぇよ…」


「言われてみれば、その辺は勘が働かなかったのか?」


「あー、まぁ、あれはその、なんつーか、タイミングがよ…入り口開けて目の前にいたから反射的に…な」


 勘はどこいったんだよ、勘は。

 やっぱ脊髄反射だけで生きてきたんじゃねーか…。


「…やっぱりぃ〜アーちゃんのぉお陰じゃぁなかったわぁ〜…」


「ウチも感謝とか間違うとったわ…ナオトはん、どうせならアーネ凹ましてくれてもよかったんやで?」


「ちょっ、おいシータっ、それはヒドくねーかっ!?」


「流石に初対面でそんなことはしないから…アーネから手出してきたんだったら別だけど」


 こっちからは勿論手出すなんて以ての外なんだけど、相手から手出してきたなら自防迎撃くらいはさせてもらうつもりはあったかな。

 いや、まぁ迎撃はしないか、逃げに徹するだろうな…面倒事は避けるに限るし。


「おいおいナオトさんよぉ〜、そいつはあれか?アタイを凹ますくらい余裕だってか?あ?」


「あー、まぁそうだね…でも面倒だからやらないと思うけど」


「あ?面倒ってどういうことだよっ」


「え、アーネしつこそうだから、勝つまで何回も挑んできそうだなーって…」


「ぷぷっ、ナオトはん、この短期間でアーネのことよう分かっとるやないか。その通りやと思うで?」


「アーちゃんってぇ〜見た目通りでぇ分かり易いからねぇ〜、ふふっ」


 うん、見て話した感じそのまんまだったってことで二人からもお墨付きを貰ったよ。

 ま、3人の中じゃ一番分かり易いっちゃあ分かり易いからなぁ…脊髄反射の猪突猛進て、手つけられないような気がするけど、よくシータとマールは一緒にいられるなぁ、ってある意味感心するわ…。


「なっ、なに言ってんだよっ…アタイだってなぁ、引き際くらい見極められるっつーのっ」


「いやぁ、俺相手だとムキになって突っ掛かってきそうなんだけどなぁ…初見で「あ、こいつヒョロくて弱そう」とか思ったんじゃない?違う?」


「……そ、そんなことはねぇ…ぞ?別に……」


「ま、これでも一応漂流者だからね、それなりの強さはあると思ってるよ」


 勿論チートというか、厨二病設定前提のことだけど。

 それが無ければただの人で、すぐ野垂れ死にしてると思う。


「既にウチらより上位ランクの時点で分かりきっとるけどな」


「アーちゃんでもぉ〜ナオちゃんにはぁ敵わないとぉ〜思うよぉ〜」


「んなの、やってみなきゃ分かんねーだろっ。場数踏んだ経験はこっちの方が上だぜっ」


 そりゃまぁ、元の世界で殴り合いの喧嘩なんて高校出てからやっちゃいないけど…そんな経験を凌駕するのがチートだからなぁ…。


「あれだよ、パーティー組んでから確かめてみればいいんじゃないか?それで判断すれば?」


「そうだな…そうすっか。ナオトの実力見てからでも遅くねぇか」


「アーちゃん…パーティー組んでからはぁ〜揉め事禁止だよぉ〜?」


「わーってるって、模擬戦とかならいいだろ?」


「パーティー内で訓練するとかの名目でなら、まぁ、相手になってもいいけど」


 多分訓練する度、突っ掛かってくるんだろうなぁ…まぁ、それくらいならいいか。

 みんながどれくらいやれるかも確認しとかないと、どういう立ち位置でやればいいのか分からないから、先に訓練して手合わせしてみるってのも悪くないかも。


「それ、いいかもなっ。早速明日やろーぜっ、ギルド併設の闘技場があるからよっ!」


「あー、うん、クエスト終わって時間に余裕があったら…ね」


「簡単な採取ならすぐ終わりそうやけど、雑務だと時間拘束されるものもあるし、クエスト次第やな」


 明日ギルドに行って、クエストの内容見てって感じかな。



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