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#14 そしてまた、海より来たる


 

「……なん、だよ……コレ…………っ!!」


「嘘…っ、なんで、こんな………っ!?」


「っ!?ナオちゃんっ!早く中へっ!生存者を助けないとっ!!」


 キャトローシャニアは…既に壊滅と言っていい状態だった。

 陸側の城壁は至る所が崩れていて、その隙間からはまだ燻っているのか白煙が見える。

 外壁門も機能していない状態で、そこから見える街中からはまだ少し火の手が上がっているのが覗けるのだが──


「おかしいぜ…魔物の気配が全然しねぇ」


「確かに静か過ぎるな……」


「もうどこかに移動した後っちゅーことか…?」


 ──アーネの言う通り気配も何も無く、微かに聞こえるのは今尚パチパチと燃えている火の音だけ…。


「そんなことより早く中へっ!急いで助けないと……っ!!」


 そう言って完全にスイッチの入ったマールが真っ先に街へ入る。

 俺達もそれに続いて壊れた外壁門を通り街の中へ入った。



「こりゃ酷ぇな…」


「感想はいいカイン、今は生存者を…」


「アーネちゃんっ、人の気配はするっちゅか…?」


「いや、しねぇな…。ってか、人っ子一人いねぇんじゃねぇか…?」


「…瓦礫の下にもいなさそうね。もしかして襲われる前に全員逃げられたのっ?」


 壊された建物と散乱した瓦礫の中、気配に敏感な三人…アーネとチュチュ、モリーがそんなことを言ってきた。

 確かにパッと見た感じ、人が倒れているとか血痕があるとか、そういったものが全く見られない。

 モリーの言う通り街の人は襲われる前に全員避難したとしか思えない感じだ…。


「おいっ、人がいねーんなら俺らこんなトコにいる場合じゃねーだろっ。これやったヤツら追うのが先じゃねーのっ」


「弘史の言う通りだなっ。リオっ、悪いんだけどまた「待ったっ!」っ!どうしたアーネっ!」


「あ…いや、ワリぃ。ちっと気になることがあってよ…。海の方まで行ってみていいか…?」


「港の方か?」


「あぁ…なんもなきゃぁいいんだけどよ……」


「もしかして…魔物の気配でもした?」


「それがハッキリしねぇんだよ…だからちょい確認してぇなって……」


 アーネの気配察知は俺のマップ表示より優秀なんだよな…今までもまず気が付いたのはアーネと、あとマールの耳だった。

 流石に海が近いとマールの耳は波音とかで効かないとしても、アーネの感覚は信じていい。


「分かった、アーネが気になるって言うなら俺は付いてくよ」


「いや、アーネちゃんがそう言うんなら全員付いてくだろ?」


「あー、けどよ…無駄足かもしんねぇし…。ここで時間食うのもどうなんだよ?」


「ほな、ウチらだけで行く?」


「ボクたちここで別れちゃうの?」


「…いえ、全員で行きましょう。私の精霊達に手伝ってもらうわ」


「それがいいな。お嬢がまとめて面倒見てくれりゃ済む話だ」


「…いいのか?シルファ」


「ええ、それくらい任せてちょうだい。なら急ぎましょうっ」


 シルファが風の精霊に頼み込んで、俺達に纏めて風の力を使ってくれたおかげで、かなり早く港まで辿り着けた。

 通って来た道には、やはり人という人は全く見当たらず、恐らくこうなる前に脱出出来たんだろうな、と…マールがそれを知ってかなり安心していたけど、未だ緊張は解いておらずスイッチは入ったままだ。


「おいおいこりゃ……」


「そういうことか…これはオーガは関係無いな……」


「だろーな…。けどよ、これどんだけ来たんだよっ」


 弘史と二人、港の有様を見て呟く…岸壁に停泊していた船はほぼ原形を留めていないうえに、その岸壁すら削り取られたような跡が無数に残っている。

 まず間違い無く大量の魔物が海からやって来たってのがはっきりと分かる…ここから海の方を見ると、うっすらと対岸っぽいものが見えなくも無いが、そこから来たとすると相当な距離を渡って来たということになる。

 ということはつまり、対岸が別大陸だとしてその魔物達は…別大陸の魔王の配下ってことか!それがもうこの大陸の何処かへ向かって移動してるって?それはマズいだろっ!


「ねぇ尚にぃ、さっきからオーガってよく聞くんだけど、誰?」


「あ、それは私も気になりました…誰なんですか?」


「あ、いや、今は説明してる余裕無いんだ、ごめんっ」


「そうですか…」


「で?アーネちゃん、気になってるのってなんか分かったのか?」


「………ナオト、マップってヤツで海の方見てくれね?」


「ああ、分かった」


 俺の予想通りなら急いで上陸した魔物達を探してどうにかしないとこの大陸が大変な事になるから、オーガの事とかのんびり説明してる場合じゃないってことで攻瑠美達には悪いけど断った。

 で、ここへ気になるからって来たアーネからは俺のマップを見て、その気になる何かを確かめてほしいらしく俺に頼んできた…海の方って指定付きで。

 マップを最大に拡大表示して海の方を見たけど、特に何も変わったものは表示されていなかった…珍しいことにアーネが外したのか?と思ったその時、マップ上部…対岸方面にポツっとマーカーが表示された。

 やっぱりアーネの感覚は凄いんだなと改めていたら…そのマーカーが徐々に増えてきて、それを呆然と眺めてる内にマップ上部の3分の1がマーカーで埋め尽くされた。


 その数…およそ5万。 



「アーネ…本当に凄いな。ありがとう……」


「…?何か見えたかよ?」


「…シルファ、悪いんだけどみんなを連れてここを襲った魔物達を追ってくれるか?出来るだけ早く」


「…?ナオトはどうするのよ?」


「俺は…リオとここに残る。やらなきゃいけない事が出来た」


「やっぱり来たのかよっ!なら俺らも「いや、二人でいい」っ!なんでだよっ!」


「………全力出すからだよ」


「ナオが全力って…どんだけ来たんや?」


「………約5万だ」



『『『『っ!?』』』』



「おまっ、だったら尚更「これが第二陣だとしたら、こっちだけに集中してるわけにはいかないだろ」……………二人だけで大丈夫なのかよっ!」


「ああ、出来るだけ早く倒してそっちに追い付くよ…リオがいるなら飛んでいけるし」


「あーっ!ったくよーっ!わーったよっ、行きゃいーんだろっ!シルファ!悪ぃけど頼むわっ!」


 俺とリオ、二人だけでここを受け持つ…5万もの魔物達を迎え討つと決めて、他の皆には既に上陸して移動しているであろう魔物達の方へ向かってもらうようにした。

 リオを残したのは、広範囲殲滅可能な火竜魔法があるから。

 俺の闇黒魔法と合わせれば何とかなる、いや、合わせて何とかする、だな。

 強さ的にはランとイアでも問題無いと思うけど、二人は大量の魔物を相手にするのは向いてない…魔法は使えないはずだから、結局各個撃破するしかない。

 それでも全然余裕だとは思うけど今回は殲滅速度重視だからこそのリオだ。


 弘史は一緒にって言ってくれたけど、誰も居ないここなら全力を出しても問題無いだろうし、何よりここをこんな風にした第一陣がもし第二陣と同数だったりしたら、この街と同じ様なことになる街がもっと増えて…次は犠牲者が出てしまう可能性が高い。

 恐らく皇都…ゲシュト様から連絡が来たということは、皇王陛下やオーガももうこの事態を知っているってことだろうし、既に何処かで第一陣と戦端が開かれているかもしれない…だとしたら、そっちに早く加勢した方がいいに決まっている、流石にこの数は烈華絢蘭の4人には荷が重すぎる、というかもう無理じゃないかとも思う。

 だから早くそっちに行きたいんだけど、こうして第二陣を見てしまったら放置なんて出来るわけがない…となるともう、第一陣の方は皆に頼るしか無いんだよ…。



「「ナオ……」「ナオちゃん……」」

「「ナオト」「ナオトさん…っ」」

「「…………」」



「……大丈夫、これくらいなら全力出せばすぐだよ」


「せやけど……」


「心配してくれるのは嬉しいけど、こっちよりみんなの方が大変だぞ、きっと…。俺が戻るまで、無事でいてくれよ……」


「……そうだ…そうだなっ。アタイらはアタイらで全力出さねぇとだよなっ!分かったナオト、こっちは任せとけっ!」


「ああ…頼んだ、アーネ。みんなもな」


「……分かりました、わたしも全力でみんなのこと守りますっ」


「私も…できる限り救ってみますっ」


「うん、よろしく。それとラン、イア…。お前らも全力で頼むな、お姉ちゃん達のこと守ってやってくれよ……」



「「……(コクコクっ…………」」



「他のみんなもよろしく頼むっ!」


「クソっ、お前に言われなくてもそーするわっ!とっとと片付けて追い付いて来いやっ!!」

「ナオトなら大丈夫だと思うが…それでも気を付けてくれ」

「アンタがどうなろうと知ったこっちゃないけどねっ……ラナを泣かせるようなことしたらアタシが許さないからっ!!」

「リ、リオちゃんもきき、気を付けて、ね…っ」


「……(コクっ…。……ありが、とう…トモ、ミ………」



「「…尚にぃ」「尚兄さん……」」


「攻瑠美と護璃はもう十分強くなったから…勇者として頑張ってな、仲間と力合わせて」


「…うん、分かったっ」

「…分かりました、頑張ります」

 

「にゃー達も頑張るのにゃっ」

「ああ、修行の成果ってやつを見せてやんよっ!」

「チュチュもやるっちゅよっ!」

「………全力でいく」


「おらっ、別に今生の別れってわけでもねーだろ、湿っぽくしてねーでとっとと行くぜっ。お嬢、済まねぇが頼むわ」


「シルファお嬢様、私とカインが必ずお護りしますので」


「大丈夫よ、そんなに気張らなくても。こっちはこれでも魔王大戦を生き抜いた元勇者パーティーの一員だったんだからねっ。それじゃナオト…行ってくるわ。リーオルも頼むわねっ」


「「ああ、そっちは任せた」「……(コクっ………」」



 …お互いに励ましあった後、皆はここを去って上陸済みの第一陣を追って行った…そっちはもう最悪の結果になっていないことを祈るしか出来ない。

 

 残ったのは俺とリオの二人だけ…ここで、必ず喰い止める。




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