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#09 回想録⑨ 一時帰宅



 シルファが書簡を渡し、内容は話さなかったけど(皆が居るから当然だと思う)公的な用事というのはすんなり終わった…ただ、その間ずぅーっとギリーさんに睨まれ続けていた俺。

 イヤな予感っていうのはどうしてこう当たる確率が高いのかと。


「…で、シルファよ。そろそろ儂の返事を聞かせては貰えんかのぉ?」


「その事ですがギリー様…申し訳ありません、私お相手が決まりまして」


「なっ!それはもしや…その隣に座っておる奴じゃあるまいのっ?」


「…ギリー様の仰る通り、この方が私のお相手です……」


 そう言って俺の腕を取って絡めてくるシルファ…もう明らかに挑発してるとしか思えない。

 そしてそんな俺を見て予想通り顔を真っ赤にして突っ掛かってくるギリーさん…どうしてもこうなるらしい、というかこうさせたいらしい、シルファがっ!


「きっ、貴様ぁっ!儂の…儂のシルファを誑かしおってぇっ!!」


「ちょっ、待ってくださいっ!誑かすとかそんなことしてませんからっ!」


 シルファに限っては俺からは何もしてないっ、シルファがリオも入れたんだから私も入れるべきっていう謎理論をブチ立ててきただけであって、ホント俺には身に覚えが無いですっ!誑かすとか以ての外だよっ!


「うう煩いわっ!こうなったら力尽くで…っ!」


「おとーちゃんっ!ナオにーちゃんに変なコトしたらメイが許さないのさーっ!」


「っ!?なん…じゃと……っ。き、貴様もしやメイにまで……っ!」


 うわぁーっ!?待って待って、余計話が拗れてるぅーっ!メイちゃんっ、止めようとしてくれたのは嬉しいけど逆効果ぁっ!


「ナオにーちゃんはメイの命の恩人なのさーっ!」


 あっ、ちゃんと説明してくれるのね…びっくりしたぁ……ただまぁ、メイの説明でどこまでイケるか超不安だけど、このままよりはマシだと思いたい…。


「命の…恩人?どういうことじゃそれはっ」


「採掘場に超でっかい岩喰らいロックイーターが出たのさーっ!メイは転んじゃって食べられるところだったのさ!そこをナオにーちゃんが助けてくれたのさぁーっ!」


「なにっ!?岩喰らいロックイーターじゃとっ!?しかも超でっかいとな…それでソイツはどうしたのじゃっ!」


「ナオにーちゃんが超カッコよく倒してくれたのさぁーっ!」



『『『『………(超カッコよく…)』』』』



 一部生温かいのと嘲笑の視線が混ざっておりますが、嫁達はうっとりしてますね…じゃなくて、別にカッコつけてやろうと思ったわけでは無いですよっ!助けるなら全力でしょう!間近で見て助けられたメイにはそう見られてもどうしようもないってのは何となく分かるからそう言われたっていいだろぉっ!


「むぅ…メイにここまで言わせるとはの……。お主、何者じゃ?」


「え、俺ですか?えっと…ナオトと言います。こう見えて漂流者ですけど……」


「くっ…漂流者じゃったか……。ならメイがこうなるのも仕方が無いわい。じゃがのっ、シルファは別じゃろ!何故儂じゃ駄目なのじゃっ!」


「それは…私にも理想というものがありますので…。ナオトが私の理想に合っていた、としか……」


「理想…理想、か……。儂ではその理想が叶わんかったということか……」


「……申し訳ありません。ですのでギリー様からの申し出にはお応え出来ません」


「だから最初にメイが言ったじゃないのさー…おとーちゃんじゃシルファ様とは釣り合わないのさーってぇ……」


「むぅ…仕方あるまい……惚れた相手には全力で向かうのがドワーフじゃからのぅ……」


 え、この世界のドワーフってそういうものなんですか…?いや、うん、漢ですね…。

 けど、俺もすみません…本当にシルファの理想に合ってるのか全く以て分からないので……。

 だってこれ、どう見ても断る口実の引合いに出されてるとしか思えないんですもん、俺……。


「おとーちゃん、これからはちゃんと釣り合いのとれる相手を探さないとダメなのさー。もうメイはいなくなるんだからしっかりやるのさーっ」


「……ナオトに、付いて行くとな…?」


「うんっ!」


「そうか…メイがそう決めたのならそれでいいわい。ナオトよ、こんな娘じゃがメイをよろしく頼むぞい」


 ……え、今そういう流れだった?いきなり来たような……まぁ、多分もうメイは称号付いちゃってるだろうから是非もないんですけど、当然こうなったからには大事にお預かりします、と。


「はい…娘さん、大事にしますので……」


「えへへ…よろしくなのさっ、ナオにーちゃんっ!」


 遂にドワーフまで入ってきちゃったよ…なに?これ種族コンプでも狙えって言ってるの?ホントおかしいわこの称号…。



 という感じで、新たに元気っ娘ドワーフのメイをハーレムに加え、ヴェルドグライア公国から一路精霊王国まで戻った…勿論帰りも当初の目的を忘れず修行をしながら。

 帰りの道程でメイは姫達やリオ、それにラン、イアともかなり打ち解けていて、ガルムドゲルンにいる他のメンバー達のこととかも話していたみたいだった。

 それに弘史達や勇者パーティーの皆、シルファ達とも抵抗なく交流出来てて、その明朗快活さからムードメーカーっぽい感じになってた…まぁ俺的にはマスコットキャラっぽい感じに見えたんですけど、ちっこいし、ね。

 ともあれ行きよりは幾分明るい雰囲気の道中だった。






―・―・―・―・―・―・―・―






 ヴェルドグライア公国からシルファの家まで戻って来た翌日、旅の疲れを癒やすという名目で休日を取ることにした…当然皆大賛成だった。

 俺と、俺の嫁達はシルファ宅でのんびりお茶をしながらこれからの事…メイも付いてきたはいいが、メイは冒険者ではないので修行に連れて行くわけにもいかず、どうしようかと皆で考えていて、ある程度方向性が決まったっていうタイミングで…


「(ナーくん、聞こえるー?)」


 …と、ひぃから念話が来た。


「(聞こえてるぞー。どうした?ひぃ)」


「(えっとねー、今から家に来れる?)」


「(家にって…ガルムドゲルンにか?)」


「(うんっ、そうー。だめかなぁ?)」


「(あー、ちょっと待ってな?今シータ達に聞いてみるから)」


「(分かったー、待ってるねー)」


 ひぃからの呼び出しとは珍しいな…何かあったのか?けどあれだ、ひぃのお願いとあっちゃ断れないからな、それにタイミング的にバッチリかも。

 決まったことだけど、一応皆にも聞いておこう、丁度今こうやって揃ってお茶してるし。


「なぁみんな、今ひぃから念話が来てガルムドゲルンに来て欲しいって言われたんだけど」


「ヒナリィから?なんや珍しいなぁ」


「なんかあったのか?」


「いや、ただ来てほしいなぁって感じだったかな」


「そうなんですか。でもいいタイミングですよね、ヒナリィちゃん」


「丁度ぉ〜顔ぉ出すのにぃもぉ〜、いいんじゃぁないぃ〜?」


「……みん、な………元気、かな…………」


「みんなって…ガルムドゲルンにいる娘たちなのさー?」


「せや、ウチらの家にいる娘たちや。けどほんま丁度ええやんな、これでメイを連れてくって用も熟せるし」


 だな、メイは向こうの皆と一緒に居てもらおうって今話し合って決まったばっかりだし…向こう行ってアレを創ってくればメイもあれこれやる事が出来るだろうしな。


「うん、じゃあそういうことで。メイもそれでいいか?」


「うんっ!他のみんなと会うのも楽しみさー!」


「決まりだな。どうせならちょっとゆっくりしてこいよ、こっちは気にしねーで」


「そうだぁねぇ〜、家のぉみんなとぉ〜仲良くぅしてぇきたら〜いいとぉ思うぅ〜」


「こっちはこっちで無理せんよう上手くやっとくよ。シルファ達もおるし問題無いやろ」


 向こうに戻るんなら少しゆっくりしてきてもいいって皆が言ってくれた…なら、いい機会だからやり残してることとか約束事もやってこようかな、結構溜まってるし。



「「…………」」



「あー、私達も連れてけって?んー…連れてってやってもいいけど、そうするとこっちがなぁ……」


 ランとイアが俺と一緒に行きたいって言い出した…俺的にはこっちに残ってて欲しいんだけど。

 弘史と知美ちゃんのレベルが上がって、二人の転移があれば空崩の森へは全員で行けるだろうから、修行場所を変える必要も無さそうだし…そうすると、ここでランとイアを抜いちゃうのは修行組が戦力ダウンしちゃうからちょっと心配かなって…ぶっちゃけこの二人、俺の次に強いだろうし。

 皆を守ってくれると俺も安心なんだけどな…。


「ランちゃんはお姉ちゃんと一緒にいよ?イヤかな?」


「…………」


「一緒に寝てくれるならいいよって?うん、じゃあ今日はお姉ちゃんと一緒に寝よっかっ」


「………(コクっ…………」


「……イア、も………そうす、る……?…………」


「……(コクっ…………」


 ラナとリオが二人を上手く丸め込…説得してくれた。

 ホント、ラナとリオがコイツらの言ってること分かるようになっててくれて助かった…どうせなら嫁達全員そうなってくれるともっと助かるけど、どういう基準になってるのか分からんしな…ティシャとひぃ、それに弘史の嫁のフラウは理解出来てるみたいなんだけど、何故その三人なのかさっぱりだし…歳が近そうくらいしか思い付かない。

 まぁ、この二人はラナとリオに任せておけば大丈夫だろうな。


「それじゃランとイアは二人にお願いするよ」


「「はいっ」「……(コクっ…………」」


「お前らもちゃんとお姉ちゃん達の言う事聞くんだぞ」


「「…………(コクっ………」」



「よし、ならちょっと戻るよ。悪いけどこっちはよろしく。じゃあメイ、一緒に行くか」


「はいなのさーっ!」






―・―・―・―・―・―・―・―






 と、ここまでが…こっちでの話。

 で、ここからはメイを連れてガルムドゲルンへ戻ってからの話なんだけど…ひぃに呼ばれたのは、友達が遊びに来てて皆俺に会いたがってたみたいだったから、びっくりさせようと思って呼んだらしい。

 ひぃの目論見通り俺が転移で急に来たうえに、メイまで連れていったもんだから、来ていた皆を驚かせることには成功したんだけど…どういうわけかシャリーとジィナ、それにミルが一緒に住むことになったらしく、逆に俺も驚かされたっていう…この三人、多分もうサブから昇格してるような気がするわ…。


 久しぶりの我が家だったけど、皆変わらず元気そうで安心した…ウェナとファルも丁度仕事が休みだったから家に居て、ファルは何故かサキュバス姿になってた…その姿、俺的にはかなりヒットしてるので、見るとドキドキしちゃうんですよ…。

 案の定そこをイジられてちょっとワタワタしてしまったっていう。


 家に転移した時は丁度昼食後のデザートを皆で食べてたところで、俺とメイもご相伴にあずかった。

 ティシャとウェナが作ったデザートだそうで、これがまた大層美味しかった…メイも絶賛してたし。

 ちょっと見ないうちにかなり上達したな、ティシャは…凄く美味しいよって褒めたら大変喜んでた、それはもう俺に駆け寄って抱きついてきて…つまりはお嬢様であることを忘れてしまうくらいに。


 その後、話の流れでディルと、初めて会ったガイアルドルヴ子爵家の二人、ロッサとスペを相手に皆が見てる中、庭で模擬戦をやった…ディルは以前、領主城の庭でこうしてやったことがあるんだけど、あの時から頑張って訓練してたのか剣の振りにキレが増していて、かなりの上達振りを見せていた。

 とは言っても脚運びとかはまだまだ未熟で俺に攻撃を当てるとまではいかなかったけど。

 スペも普段からディルと剣術の稽古をやってるらしく、そこそこ様になってた。

 スペはディルに比べると剣の扱いは若干落ちるけど動きと目がよくて、俺がわざと隙を見せたりすると、チャンスとばかりに飛び込んできて、そこを狙って攻撃してはくるんだけど、やっぱり剣の扱いがネックで上手く当てられない、といった感じ。

 そしてロッサは…その歳の割にはよく動けてた。

 聞いた話だとロッサは普段から兄達と混ざって剣の稽古をしているらしく、なるほどと思った…このままいけば女騎士も夢じゃないかも?とも思ったり。

 まぁこの娘も貴族のお嬢様とは思えない男勝りっぷりなんだよね…なんか、ひぃとセットでよくティシャに怒られてるんだとか。


 模擬戦が終わった後、ディルにあげたのと同じ重量調節可能な剣をスペにも創ってあげたらめっちゃ大喜びしてた、「これでディルに引けは取らないぜっ!」とか言って。

 その光景を見ていたティシャが何となく頬を膨らませていたような…俺の気のせいかもしれないけど。


 それからメイの為に、家の裏庭隅のスペースを使って鍛冶工房を俺のスキルで創った。

 メイは防鍛公の娘さんだけあって、防具に関する扱いはギリーさん直伝だそうだ。

 ただ、これはヴェルドグライア公国から精霊王国に帰る道中で聞いた話なんだけど、メイは養子だったみたいで、つまりギリーさんに奥さんは居らず独り身、だから何も気にせずシルファに猛アタックをかけてたそうな。

 メイは最初、ギリーさんがシルファに惚れたって分かった時に、やめといた方がいいって忠告したらしい。

 けど、それを聞かずギリーさんがシルファに求婚し始めたもんだから、もうその後は無駄な努力、実らぬ恋と影から黙って眺めていただけってぶっちゃけてた…。

 と、養子とはいえ幼少期からギリーさんに仕込まれた腕を使い、アーネやラナ、リオの装備、つまり防具のメンテナンスや新装備の製作をやりたいって話をその道中皆で話してたそうだ。

 俺も皆とメイのこれからについて、お茶しながら話してた時にそれを皆から聞いて、いい案だと思ったからこうしてメイを連れて来たわけで。

 この街にはギア、ドルムのおっちゃんが居るからドワーフ同士の交流も出来るだろうな、と。


 そうして一段落ついたところでおやつタイムとか言って、エマ達が用意してくれたお菓子とお茶を頬張りながら皆といっぱいお喋りをした…メイはこっちでもすぐ皆と打ち解けて、その様子だと何も心配の種は無いなぁ、と皆とのやり取りを眺めてた…多分ニコニコしながら。


 そんな賑やかな時間を久しぶりにゆったり堪能して、あっという間に夕方になった頃、燈花と氷見華のお母さんである優里香さんと、そしてリズに会おうってことで、ここにいる全員で冒険者ギルドへ向かうことになった。


 ウェナが何故か含み笑いしてたんだけど、聞いても何も教えてくれなかったのがちょっと気になったんだけどさ。




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