#04 回想録④ 勇者パーティーvs雷銃(フル)/黒惹華(リーダー抜き)
開始早々仕掛けていったのはやっぱり弘史で、そしてそれに付いていくモリー。
勇者パーティーは弘史を迎え撃つように護璃と攻瑠美が前に出る。
「おらっいっくぜぇーっ!」
「させないっ!」
ガィィインッ!
弘史の上段からの片手斬りつけを、幅広の剣盾で正面から受け止める護璃。
攻撃を止められた弘史に対し、その横から攻瑠美がすかさず両腕の盾を拳までカバーするような形に変型させて殴りに行く。
それを見たモリーが攻瑠美を止めに入ろうとするが…
「モリーっ、この二人はいいっ!残りの二人に行けっ!」
「分かったっ!任せたわよっ!」
…どうやら護璃と攻瑠美の二人を弘史一人で、ペルとチュチュをモリーが一人で相手にするらしい。
「いくら弘にぃでもそれはムリだよっ…って、うきゃっ!?」
攻瑠美の攻めを空いた片手で発動した魔法によって牽制する弘史…見たところ雷系の魔法を飛ばしたらしい。
それを間一髪躱した攻瑠美、飛び掛かっていく態勢で強引に避けたもんだからヘンな声を出してる。
「へっ…何がムリだって…?あぁっ!」
今度は逆に弘史が護璃を剣盾ごと蹴りで突き放した後、攻瑠美に向かって剣で攻撃を仕掛ける。
攻瑠美は態勢を立て直しそれを躱そうとするが…
「うわっ、ちょっ!速……っ!?」
「こんなもん速ぇ内に入んねぇよっ!うらぁ!!」
…ギリギリで弘史の剣を避けられているが全く余裕が無い、寧ろ掠っていて防具に剣痕が付いていってるくらいだ。
「攻瑠美っ!」
そこへ割って入ろうとする護璃だが…先程の攻瑠美と同じ様に弘史の魔法で牽制される。
バチッ!!
が、護璃はその雷撃を剣盾で受け、それを意に介さずそのまま突っ込んでいき割り込みに成功した。
ガキンッ!
「へぇ…ちっとはやれるじゃねぇか……」
「大丈夫っ攻瑠美っ!」
「うっ、うんっ…なんとか……っ」
勇者二人と弘史がこんな感じで戦闘を進めている中、もう一方ではペルとチュチュがモリー一人に翻弄されていた。
「にゃっ、にゃんでにゃーっ!」
「あ、当たらないっちゅー!」
「遅いわよっ二人とも!それでも獣人なのっ?」
ペルとチュチュが果敢に攻めているにも関わらず、それをいとも容易くその素早い動きで躱すモリー…ペルとチュチュも職種柄それなりに素早い動きをしてるんだけど、モリーはそれを軽く上回っている…流石アサシンってところか。
「ほらっ、今度はこっちからいくわよっ!」
両手のカタールで片手ずつ二人纏めて攻撃を仕掛けるモリー、それをペルは両手の鉤爪で、チュチュは両手のクナイで必死に受け、なんとか捌いていく。
「にゃーっ!こっちも速いにゃぁぁあ!!」
「ちゅっ、隙が無いっちゅーっ!!」
そして、勇者パーティーの後衛はというと…こちらも援護しようにも出来ない状態に陥っていた。
「くっ…なんだよっアレはよっ!こっちがマトモに撃てる態勢取れねぇじゃねぇかっ!!って、うおっ!?」
バシュッ!
「……〔雷精光」
バシュッ!バシュッ!
「……チッ!」
「ヴォルドもマトモに詠唱出来ねぇし…これじゃ援護のしようがねぇよっ!!」
そう、後衛同士で牽制しあっている状態…というか、知美ちゃんが一方的にブリッズとヴォルドの攻撃を邪魔していた、ライフルで。
「うふ、うふふっ……カノンちゃん〜、拾伍式も絶好調だよぉ〜……アハっ!」
「……私の出番は無さそうなんだが……。ヒロシもモリーも二人相手に余裕がありそうだし」
「フラムはぁ〜そこでのんびりしてていいよ〜、ふふっ…えいっ!」
バシュッ!
「…ここまで差があるとはな。私達もそれなりに強くなったということか……」
最早後衛…ブリッズとヴォルドは機能せず、ただ前衛の二組を眺めるだけとなっていた…。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
───観戦組、黒惹華、シルファ
「………何これ、え?何なのっ?」
「いや、まぁ、多分こうなるだろうなぁ、とは思ってたけど」
「ウソっ!?だってあの娘達勇者よっ!?なんでこんなに差があるわけっ!?」
「あーソレな。アレだよ、アレ」
「アレってなによっ!?」
「んー…ウチらがハーレムだからやな、うん」
「は?ハーレムって…そんなの関係あるっ!?」
「あるんだよぉねぇ〜…これがぁ〜……」
「ハーレムっていうか、正確にはナオトさんやヒロシさんの称号ですけどね」
「……称号?」
「………ハーレム……マス、ター…………」
「この称号ね、おかしいんだよ…。マスターの経験値が勝手にメンバーに入っちゃって……」
「…え?ということは、ナオトやヒロシのハーレムに入ると、簡単に強くなれるってこと……?」
「つまりはそういうことやな。あと何かいろいろ特典まで付いとるみたいやし」
「職種が勝手に変わるとかな」
「職種が変わるって…そんなのあり得るのっ?」
「あるんだよぉねぇ〜…これがぁ〜……」
「……マスター、の…騎竜に、なれ…た……のも……それ、の………おかげ…………」
「そういえば、わたしの職種って何になってるんですか?ナオトさん」
「ラナは…守護盾獣だよ」
「……そんな職種聞いたことも無いわよ………」
「だからまぁ、いろいろとおかしいんだってこの称号。弘史達でこれだから、俺達だともっと差が出ると思う」
「……そんな………」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
と、観戦してる俺達が話し込んでる内に、攻瑠美と護璃は弘史に、ペルとチュチュはモリーに勝負を決められていた…弘史は攻瑠美の喉元に剣を突き付け、もう片方の手で護璃を雷属性の魔法で痺れさせて。
モリーはペルとチュチュ、二人の後ろから纏めて抱き付き弘史と同じ様にカタールを二人の喉元に突き付けていた…。
後衛の二人、ブリッズとヴォルドはそれをただ呆然と見ているだけ。
「や、やめっ!そこまでっ!はい終了っ!!」
それを見て慌てて止めに入るシルファ…ここまで差があるとは全く思ってなかったらしい。
まぁ、攻瑠美と護璃は自分がいたパーティーの勇者である堅護と攻輝の妹なんだから、それなりの強さは持っているとでも思ってたんだろうけど。
「…どうよ?俺達は。中々強ぇだろ?」
「うぅ…なんか……悔、しい………」
「……こんなに……差がある、なんて………」
「ま、これからみっちりシゴイてやるよ。楽しみにしとけ」
「アンタ達もよっ。猫と鼠のクセに猿相手のスピード勝負で負けてどうするのさっ」
「ふにゃぁ…」
「ちゅ、チュウ……」
「とりあえずアレね、二人はアタシに付いてこれるようになること。いいわねっ分かったっ?」
「「は、はい(にゃぁ)(っちゅ)………」」
「ハァぁ……やっぱり気持ちイイわぁ…カノンちゃん。もう最っ高………っ!」
「結局突っ立っているだけで終わってしまったな……」
「俺達も最後まで何も出来なかったぜ……っ、くっそ………っ」
「……………」
各々思うところを口に出したりその場でしょぼんとしたりしてる…これ、俺達相手にやれるのか?もっと戦意喪失しそうなんだけど。
とりあえずちょっと休憩して、続けるかどうか確認してみるか。
「マール、リオ、悪いんだけど前衛の四人、回復してあげてくれる?」
「「うん〜、分かったぁ〜」「……(コクっ………」」
マールとリオに勇者パーティーの前衛四人の回復を頼んだ…弘史とモリーは必要無さそうだったから除外して。
リオに回復を受けさせながら、攻瑠美と護璃にこのまま続けるかどうかを聞いてみる。
「攻瑠美、護璃…どうする?この後」
「……やる、やるよっ。弘にぃ達とは相性が悪かっただけだよっ!」
「そうね…後衛をまともに攻撃させないなんて、知美先輩くらいにしか出来ないでしょうし…。次はもうちょっとやれるはずですっ」
どうやら相手が悪かっただけだと思ってるらしい、やる気はまだあるようだ。
確かに姫達には知美ちゃんみたいに、あんなあからさまに後衛を機能させないような戦い方は出来ないとは思うけど…でもまぁ、戦ってみれば分かるか。
「にゃー達も、もうちょっと頑張るにゃっ」
「このままじゃ終われないっちゅっ!」
「オレ達も…入って早々これじゃ納得いかねぇよっ、なぁヴォルド!」
「………そうだな」
残りのメンバー、マールに回復を受けてるペルとチュチュも、何も出来ずに終わってしまって体力的には全然余裕のあるブリッズとヴォルドも同意見だった。
それならまぁ、やるだけやってみようか…。
「…了解。それじゃそっちの準備が出来たらやろうか」
「次は絶対負けないんだからねーっ!」
「俺らも次は活躍させてもらうぜっ!」
「にゃー達もにゃーっ!」
ということで、次戦、黒惹華(俺を除く)と勇者パーティーとなったわけですが…
「くっ…このぉ!……っ!なん、でっ……」
「ぐぅ…っ、お、重…い………っ!」
「………ケン、ゴ…と……コウキ…は……もっと………強かっ、た…よ…………」
「「…〜〜〜っ!!」」
…俺が居ない穴をリオが受け持って前衛を熟し、攻瑠美と護璃の二人を相手取ってる。
リオは前勇者パーティーで主に後衛支援をやってたって聞いたけど、堅護や攻輝、それにラビィやアーメル達と混ざって訓練してたみたいで、それなりの体術が使えるとのこと。
更に俺のメンバーになって能力値が上がってるもんだから、相手二人を子供のように扱ってる感じ…攻瑠美の盾での攻撃を素手で受け止めて、護璃を尻尾で剣盾ごと吹っ飛ばしてる。
で、今回はまともに攻撃支援に参加出来たブリッズとヴォルドはというと…
「オイオイオイ…っ、こっちでもオレ達役立たずなのかよ…っ!」
ブリッズが氷の矢で攻瑠美達やペル達の援護をしようとすると…
ガガガッ!!
…ラナの大盾で全て防がれる始末。
そのラナの大盾はマールの魔法で魔法防御を向上させているらしく、大盾自体にキズを付けることなく難無く防ぎ弾いている。
「……〔雷精光貫閃〕」
それからヴォルドの魔法、雷を纏った光線みたいな攻撃は…
「〔雷電風呀〕っ!」
…シータの魔法、こっちも雷を纏った風の牙みたいなやつがヴォルドの光線を食い千切るように相殺していた。
雷だから相当な速さで飛んできてるんだけど、シータは簡単そうに自分の魔法をそれに合わせてる…一体どんな技量なのかと。
流石に広範囲っぽい魔法でヴォルドが攻撃してきた時は、マールが防御壁を張って防いでたけど。
そしてアーネは…
「ほらほらどーしたよっ!そんなんじゃ掠りもしねーぜっ!」
「モ、モリーより速いって……」
「どういうことにゃぁぁああっ!!」
…二人を相手にニヤニヤしながら余裕綽々で躱してるだけである。
そんなことするんだったら訓練なんだからアドバイスの一つでも言ってあげろと。
躱しながら煽ってるだけって…攻撃なんか一切していないのに、二人はもうかなりヘロヘロになってる。
モリーもかなりのスピードだったんだけど、アーネはその上をいってるのか…やっぱり皆強くなってるんだなぁ…。
「……やっぱり…こうなる、のね………」
と、俺と一緒に観戦してるシルファが隣で零し、そろそろ体力的に勇者パーティーが崩れそうになったその時…攻瑠美が、キレた。




