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#01 ある一日の始まり(SIDE:魅音)


 本章は幕間でガルムドゲルン留守番組視点の話になります。





□■□■□






「ん…ふぁぁ〜……」



 ベッドから上半身だけ起こして、伸びとあくびを一つ。

 カーテンの隙間から射し込む朝の陽射しから、今日も絶好の路上ライブ日和だと確信した。


 私の両隣を見ると、まだスヤスヤと気持ち良さそうに眠っているファミとニア…うん、可愛い。

 少し離れた位置にあるもう一つのベッドには、ニナとマミが寄り添うように寝ている。


 ここ、ガルムドゲルンにある尚斗君の屋敷に来てから早一月。

 皇都で活動していた時もそれなりに楽しかったけど、今の方がなんていうかこう、余裕のある感じで日々楽しめているかなっ。


 素敵な仲間達に囲まれて、好きな音楽に熱中出来て…この世界に来れて本当に良かったなぁ、って。



 私、響 魅音はこの世界で言うところの漂流者。

 元の世界では…人生の大半を病床で過ごしていた。

 その世界では例が無い原因不明の難病を生まれた時から患っていて、生を受けた時点で入院生活を余儀なくされた。

 普通の生活が満足に送れなかった私には、その病院と先生方、そしてお父さんとお母さんが全てだった。

 こんな私でも生まれてきてくれてありがとう、と、目一杯愛情を注いでくれた両親。

 入院生活や治療にかかるお金だって相当なはずなのに、二人とも仕事の合間や仕事終わりに必ず毎日会いに来てくれた。

 学校にも満足に行けない私にいろんなことを教えてくれて、必要だと思うものは可能な限り与えてくれた。


 その中で私が一番興味を抱いたのが…音楽だった。


 ジャンルを問わず、様々な楽器から奏でられる音と、私と同じ、人とは思えない力強い、綺麗な歌声にどんどん魅了されて…いつからか私もこんな風に音色を奏で、歌ってみたいと強く願うようになっていった。


 でも…分かりきっていたことだけど、この身体ではその願いは叶えられない。

 私にとっては夢のまた夢、それこそ次に生まれ変わることが出来るのならきっと…そう望みながら、私は16年という長いような短いような人生を、優しく温かく見守ってくれた両親に、ありがとう、と最大の感謝と、これからの二人の幸せを願いながらこの世界での終わりを迎えた。





 

 ───奇跡、というものが本当にあるのだとしたら、多分これがまさにその奇跡なんだろう。



「私は、この世界『ミクシディア』の神の一柱を担う、技能神ステクキーニックルと申します。ヒビキ・ミオン、貴女はこの世界で新たな人生を歩むことが可能です。貴女はそれを望みますか?」



 真っ白な、何も無い空間で目覚めた私の眼前に、自らを神と名乗る翼を生やした、一見だと男か女か判別出来ない人がそう語ってきた。



「はいはいっ!望みますっ!!」


「ふふっ、良い返事です」



 深く考えるまでもなく、ただ直感だけでそう応えていた。

 だってそれは、私が生きている間強く望んでいたことだったからっ!


「分かりました、貴女の望みのままに。そうですね…とても元気な良い返事が貰えたので、私から三つ、貴女の望む力を授けましょう。貴女が欲するものは何ですか?」


「三つ…三つかぁ……。あっ!はいっ、決まりましたっ!一つは健康な身体が欲しいですっ」


「なるほど…分かりました。では怪我や病気に強い身体となるようなスキルを授けましょう」


 好きなコトをするためにはまず丈夫な身体が必要だよねっ。

 ということで健康な身体をもらったうえで…。


「もう一つは、どんな楽器でもすぐ演奏出来るようになりたいですっ」


「ふむ…楽器ですか。分かりました。ではそのようなスキルを」


 楽器なんて触った事がなかったから、どんな楽器だろうとすぐに病院のベッドの上で聞いていた音楽みたいに演奏出来るようになりたかった。

 本当なら演奏出来るようになるまで練習しなきゃなんだろうけど、もうどうにも我慢出来なくてお願いしちゃった。


「最後の一つは…どんな人が聞いても楽しく、幸せになれるような歌声が欲しいですっ!」


「そうですか…。貴女は音楽に並々ならぬ興味があるようですね。ですが、この世界は貴女が元いた世界とは違い、身近に脅威が存在する世界です。それでも今貴女が望んだ力で構いませんか?」


「はいっ!構いませんっ。私は大好きな音楽と一緒に生きていきたいですっ!」

 

「……意思は固いようですね…。分かりました、貴女の望みを全て叶えましょう。ではこれより貴女をかの世界へ送ります。貴女が望むままに、精一杯人生を謳歌してください」


「ありがとうございますっ、目一杯楽しんできまっす!」





 ───こうして私はこの世界に降り立った。

 送られた先は皇都グラウデリア、神様が私の身を案じてかどうかは分からないけど、とりあえずいきなり脅威が及ばない場所に送ってくれたような気がした。


 あと、何故か女子高生が着てる制服姿だった。

 多分これもサービスみたいなものなのかなって。

 一度でいいから制服を着てみたかったっていう。


 そこからは、不自由のない身体が嬉しくって、右も左も分からないながらもあちこち動き回り、歌でお金を稼ぎつつ楽器、この世界にもあったギターを手に入れ、日々路上ライブをやっていたら…私と一緒に演りたいって今のマニファニのメンバーが集まってくれて、バンドっていう形になった。


 そしてそんな私達をカッツがスカウトしてくれて、マニオン・ファニオンとしてデビュー、皇都でたくさんライブを演りながら楽しい日々を送っていた。

 ちなみにバンド名のマニオン・ファニオンっていうのは、メンバーの名前…マミーナシャリーナのマ、ニナストリィミアのニ、ファミールレティルのファ、ニアネスラヴィアのニ、そして私、魅音のオンを取って付けましたっ。

 我ながらいい名前が付けられたなって自画自賛してたんだけど、いつの間にか略されてマニファニって呼ばれるようになっちゃって…それだと私のオンが無いから寂しいよぉーってちょっとショックだったり…。


 と、まぁそんな感じで過ごしていたら、とある出来事がきっかけで尚斗君やシータ達と出会い…今に至るというわけ。



「さて、とっ。今日も一日楽しんでいきますかぁーっ」


「んん…やかましい…ぞ……ミオン………(くぅー…くぅー…」


「寝言…?そっかぁ夢の中でもやかましいのかぁー私っ、あははーっ」


 ファミの寝言に一人ツッコみつつ、皆を起こさないようベッドから降りる。

 まだ時間的には早い、多分三つ鐘が鳴って少しだろうから、もうちょっと寝てても大丈夫だろうし。



 部屋を出て顔を洗ってサッパリしようと一階にある洗面所へ向かう途中、ピシッとした執事服を身に纏い、朝早くなのにもかかわらず颯爽とこちらに向かって歩いてくる人がいた。


「お早う御座いますミオン様。お一人での起床ですか?」


「あ、うん。おはようございます、セヴァルさんっ。みんなはまだ寝てるんだー。珍しく私ちょっと早く目が覚めちゃったみたいで…」


「…しっかり睡眠は取られましたか?体調は「あははーっ、大丈夫だよーっ!いつも通り元気でっす!」………見た限りでは問題無さそうですね。いつものミオン様で」


「もぉー心配性だなぁーセヴァルさんはっ」


「ナオト様より留守を預かっていますので。奥様方も勿論含まれますから当然のことです」



 そう言って、ニコリと笑う美形さんはこの家の執事であるセヴァルティアンさん。

 この家のことを一手に引き受けて面倒を見てくれている敏腕執事さんなのです。

 私達のことも細かくサポートしてくれて、この人のおかげで気兼ねなく生活出来てる。

 元々はガルムドゲルン公爵家付の執事だったらしく、尚斗君に惚れ込んでここへ来たんだって。

 そう言えば尚斗君がボソッと溢してたっけ…このイケメン執事さんがここまで惚れ込んで、尽くしてくれてるのが一番謎だって。

 どういう風に知り合ったのか私は分からないから何とも言えないけど、こうして私達も含めきめ細やかに気配りしてくれてるんだから、何一つ不満なんかないでしょっ。



 一頻り朝の挨拶をした後、洗面所で顔を洗ってから食堂に向かうと、朝食の準備などでもう既に動き回っている人達…この屋敷で一緒に暮らしている、尚斗君のお相手達がいた。

 まぁ、かくいう私もそうなんだけどねーっ。

 っていうかもうこの家に住んでる娘達全員尚斗君のお相手になっちゃったんだった…なんだかスゴいことになってるけど、まぁ楽しいからいっか!


「おはようございます、ミオン様」


「「「おはようございます(なのです)」」」



「おっはよーっ、エマさん、チェル、キャム、コロネちゃんっ」



 朝の挨拶をくれたのは、この屋敷自体の面倒を見てくれている、ハウスキーパーの四人である。

 この四人もセヴァルさんと同じで、元々はガルムドゲルン公爵家付のメイドだったそうで、そのせいかここでもメイドのような仕事をしてしまっているのだ。


「いつもより少しお早いですね。何かお飲み物でもお持ちしましょうか」


 とまぁ、こんな感じで。

 それくらい自分でやるのに、どうも癖が抜けないらしく甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるんだなぁ、これが。

 尚斗君のお相手っていう同じ立場なはずなんだけどねぇ…。


「エマさんってば、本当にお世話好きだよねーっ。尚斗君からもメイドじゃないって言われてるんでしょっ?」


「あ…はい、そうなんですが…。最早性分とでも申しますか、これが自分にとって一番自然な状態でして……」


「根っからのメイド気質、っていうか、今までそうやってきてたんだもんね…中々抜けるようなものでもないってところかなっ?」


「ええ、仰る通りです。ですのであまりお気になさらずに。ナオト様も好きな様にしていいと仰られてましたので」


「私たちももうメイド長と呼んでますし」


「そうですね。それが一番しっくりきます」


「(コクコクっ。そうなのですっ」



 エマさん自身がそれでいいならいいんだけど、こっちとしては中々慣れないんだぁ…メイドさんがいる生活なんてしたことないし。

 とは言ってもニアなんか普通に「エマさん、お茶ほしいー」とか平気でお願いしてるんだよねぇ…それを何でもないようにエマさんは笑顔で受けてるんだもんなぁ。

 そんなんだから私も甘えちゃったりするのが普通になってきてるんだよね…。


「そっかー。まぁエマさん達がそれでいいなら私からはなにも言わないよー。それじゃ、お言葉に甘えていつものアレ貰ってもいい?」


「はい、ではお持ちしますね。キャムとチェル、コロネは厨房の手伝いを」



「「「はい(なのです)」」」

 


 そう言って四人共厨房の方へ引っ込んで行ったら…入れ違いで厨房からヒョコっと一人やって来た。


「ミオンお姉さま、おはようございます」


「おっはよー、ティシャっ」


 やって来たのは貴族のご令嬢、ティシャルフィータ・ソル・グリュムセリナ、なんとこの娘も尚斗君のお相手なのだ。

 まだ10歳なのに、本人はもう尚斗君のお嫁さんとしてあれこれ修行中らしい…特に料理方面を頑張っている。

 尚斗君のお相手の中で一番料理上手なシータが家にいる時は、付きっきりで教わっているんだけど、冒険者で尚斗君のパーティーメンバーであるシータはこの家にいることが多くない。

 だからシータがいない時はウェナとリズりんに教えてもらっているそうな。


 本人が相当頑張っているせいか、今やこの家の厨房はティシャがほぼ仕切っているといってもいいくらいなのだ、凄いねっ。


「すみません、朝食はまだお出しできないのですが…」


「あー、大丈夫だよーっ。ちょっと早く目が覚めちゃっただけだしっ。みんなが起きてきてからでいいよーっ」


「そうなのですね、わかりました。ではいつも通りお出ししますね」


「うんっ、ありがとっ。よろしくねー」


「はいっ」


 元気に返事をしてまた厨房へ戻っていったティシャ…もしかしてわざわざ朝の挨拶に来てくれたのかな?そんな気にしなくてもいいのに。

 小さいのにしっかりしてるんだから…貴族の教育の賜物ってやつ?偉いなぁ。



 その後、エマさんがいつものアレ…元の世界での紅茶みたいな飲み物(こっちの世界ではアエットと言うらしい)を入れてくれて、一人優雅にそれを飲んでいたら、徐々に他の皆が起きて集まってきた…んだけど、我がマニファニのメンバーはまだ起きてこない。

 別に私達はきっちり時間を決めてやってるわけじゃないし、いいっちゃいいんだけどさっ。


「ふぁぁ〜……。ミオお姉ちゃん、おはよぉ〜…」


「おはよっ、ヒナリんっ」


 眠い目を擦りながらやってきたのは、尚斗君のもう一人の小嫁さんであるヒナリん、フルネームは確か…ヒーナリナリィ・ルナ・リリエンノルンだったかな?この娘も貴族のご令嬢なんだけど、ティシャとは違いお淑やかって感じではなく、お転婆お嬢様だ。

 歳相応の元気があって、それはそれでいいとは思うんだけど、ご令嬢とはちょっと掛け離れてるかなぁーなんて。

 この二人はミルティシア学園っていう所に通っていて、日々勉学に励んでいる。

 ティシャはまぁ分かるけど、ヒナリんは専ら遊びに通っているんじゃないかと思ったり。

 隣に住んでいるフラウもティシャ達と同じ学園生で、毎朝一緒に登園してる。

 学園にはまだまだ友達がいっぱいいるみたいで、学園生活も楽しそうだ。

 

 それから、我が家から職場へ通っている仕事組の三人、ファルるんとウェナ、リズりんも起きてきた。


「おはようございます、ミオン様」


「あ、おっはよーファルるんっ」



 ファルるんことファルシェナさんは情報開示局の受付嬢で、種族はサキュバスなのです。

 尚斗君と一緒に寝ると、夢の中へ連れてってくれるとっても素敵な力があって、ついこの間…尚斗君がシータ達の実家に連れてってくれた日の夜、皆で一緒に寝た時なんか、夢の中で全員集合してそれはもう楽しかったっ。

 夢の中だからか、普段はちょっと恥ずかしくて出来ないようなこともしちゃったりして。

 ファルるんにとってこの夢の中に入ることは、食事をする意味があって、ある程度定期的に行わないといけないらしい…なんでも尚斗君から精気を貰ってるんだって。

 それがサキュバスの食事になってるそうな。

 私達が一緒に夢の中へ入ると、その精気の味が変わる?みたいで、出来ればいろんな人を連れてっていきたいらしい…当然私達には精気の味なんて分からないんだけど、ファルるんがそう言うならそういうものなんだろうなって。


「ぁふ…。あれぇ…今日は早いねぇ、ミオンちゃん」


「おはよ、ウェナ。うん、ちょっと早く目ぇ覚めちゃってねー」



 ウェナ…ウェナヴェナルーチェはノルチェシェピアっていう茶店でウェイトレスをやってる。

 ウェイトレスなんだけど料理の腕前も凄くて、実は私達尚斗君のお相手の中ではシータに続く二番手の料理上手なのだ。

 お店でも裏メニューとしてウェナの料理、といっても軽食系なんだけど、そういうのがあって常連さんなんかからはよく頼まれるんだって。

 私達マニファニもお店に行った時には頼んじゃったりしてる。

 お店にはもう一人、シャリたんって娘がいるんだけど、ウェナとよくじゃれ合ってる…仕事中なのに。

 ウェナの歳は私と同じで、お互い調子に乗るところがあったりして、結構気が合う感じ。

 マニファニのメンバー以外だと、初めての友達みたい、なんて思ったりして。


「ンんーっ。ミオンちゃん、おはよぉー」


「おはよーリズりんっ」



 伸びをしながらやって来たのはリズりん、リーズロルトミニィっていう、ちっちゃい身体に大きいお胸をお持ちの娘…えーっと、確かこういう娘のことをロリ巨乳っていうんだっけかな?ともみんに教えてもらったんだけど…。

 でも、こう見えて私やシータ達より歳上らしいんだよね…身体付きと全く合ってないような。

 あとこれもともみんに教えてもらったんだけど、年齢的にはもう成人してるらしいから、こういうのを合法ロリって言うみたい…身体はともかく心はもう大人だからってことなのかな?よく分からないけど。

 そんなリズりんは冒険者ギルドの受付嬢、しかも尚斗君の専属でもある。

 今居る受付嬢の中ではチーフのクリスさんに次いで古株なんだそうな。

 ラナもリズりんと一緒に受付嬢をやってたって聞いた。

 でも尚斗君と一緒にいたくて冒険者になったらしい…スゴい行動力だよね。

 あ、それとリズりんは私達マニファニの大ファンなんだってっ。

 ここに来た時一番喜んでたのがリズりんだったよー、ホント。


 


 と、こんな感じの皆が尚斗君の元、集まって日々を送ってるわけです。

 肝心の本人が居ないのは…まぁしょうがないよねー。

 でも、どうしても会いたいと思ったら、多分すぐ来てくれると思う。

 ファルるんがいるからちょこちょこ戻って来てくれるんだけどねっ。


 さてさて、今日はどんな一日になるかなーっ!




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