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#35 タイミングの悪い合流



 どれくらいそうしていただろうか…結構な時間、貪ってしまったかもしれない。

 最初の一回はホントに唇を合わせるだけの軽いキスだったんだけど、その後のラナの、少しはにかみながらもパッと花が咲いたような笑顔に魅せられ、またラナの唇を奪いに行ってしまった。

 やっぱり俺ってキス魔なんだな、と思いながら我慢出来ず舌まで動かし、かなり深めのキスをしてしまい、それでラナが甘い声で喘いで俺の情欲を煽り…そして止まらなくなった。


 だからだろう、それに集中していたせいで全く周りに気付かなかったのは。




「「「「「…………………」」」」」




 完全に溺れてました、気配とか、それ以前に足音すら聞こえないとか、ここが何処だか完璧に忘れ去るくらい。



「おいおいおいっ……俺の目の前でラナちゃんの唇奪うとか、ケンカ売ってるとしか思えねぇんだがなぁっ!」


「……何故二人ともこんな所にいるのだ…?」


「ふわぁ…キキ、キスしし、してますよっ、ひひ弘史さんっ!」


「んなもん見りゃ分かるわっ!」


「あれが…本当のキス、なのですね……。なぜでしょう、見ているとドキドキしてきましたわ……」


「アンタ達こんなトコで何やってのよっ!そーゆーのはアタシの目の届かないとこでやんなさいよぉっ!ウッキーっ!!」



 迎えに行こうとしていた弘史達が直ぐそこまで来ているとか、ホントどんだけだよ俺…。

 ラナにも悪いことした…あんだけ周り気にしてたのに、結局見られてしまうとか。

 しかも今、骨抜き状態でぽやっぽやになってるし…。



「……えっと、これはだな、その…………」


「………はふぅ…………♡」


「くっそ幸せそうなツラしやがって…っ。あぁクソっ!おいっモリー!」


「なっ、なによ…んむっ!?んんーっ!?」



 対抗してか知らないが弘史までキスしだした、同じ獣人だからかモリーを相手にして。

 いや、お互いこんな所で何してるんだよって話になるんじゃないか、それ…。



「んむっ…ぷはぁ。あー、ちょっとスッキリしたわ。サンキューな、モリー」


「ハァ…んっ……。ア、アンタねぇ…いきなりすぎるわよ…っ。まぁいいけど、さ……」


「モリーちゃん…う、羨ま「トモミ、皆まで言うな」……あぅ、ごご、ごめんなさい……」


「ヒロシお兄さま…その、わたくしに「フラウ、君もだ」…あ、はい………」



 なんだかなぁ…変なコトになってしまった。

 まぁ、こんなところを見られてしまった俺達が悪いのかもしれないけど、って別に見せようとしたわけではないから悪いとかじゃないな、うん。

 折角迎えに行ってやろうとしたのにここまで来た弘史達が悪い、ということにしておこう。


「というか、なんでこんな所まで来てるんだよ」


「今からフラムの所行くからに決まってんだろ」


「歩きとなると相当掛かるからな、早めにモリーの所から出てきたのだ」


 まさかもう猿人族領から出発してたとは…。

 俺達だって結構早めに出て来たはずなのに。

 けどあれか、そんなに長い時間ラナとしてたってことになる…のか?なんかもう気持ち良くて止まらなかったからなぁ…。


「そういうことか…。タイミング悪いなぁ、まったく」


「んだよ、タイミングって」


「俺達は迎えに行こうとしてたんだよ、弘史達のこと」


「あ?なんでだよ、尚斗達には関係ねーだろが」


 確かに弘史の言う通り勇者達と会う前までなら関係なかったんだけどな。

 でも話聞いちゃったらどうにも放っておけなくなったんだよ…。


「いや、昨日勇者達と会って話してさ、俺達もエルフの国へ行くことになったんだ」


「っ!?ナオトが行くってことは、当然ラナも行くってことねっ!」


「それは勿論パーティーなんだし…わたしも行くけど」


 行き先が同じになって案の定喰い付いてきたモリー…予想通り過ぎる。

 脱力状態から復帰したラナも若干辟易した感じで応えてた。

 


「そ、そうなんです、ね」


「何か理由があるのか?」


「あぁ、なんか流れで勇者達の修行に付き合うことになっちゃって。で、精霊王国に勇者達の力になってくれる仲間がいるらしいんだよ。だから次いでに弘史達も連れてってやろうかと思ってここまで来たわけだ」


「それがラナお姉さまとのキスとどうつながるんですの?」


 ぐっは…ストレートに来たな……。

 はい、なんにも繋がりはありませんです…。


「そ、それはだな……」

「こっ、これは、そのっ、二人っきりになれたから、わたしがナオトさんにお願いしただけなのっ」


「あー、そういうことっ。アンタ達いつも一緒だもんねっ」


「なんだよ、ラナちゃんってばそんなに恥ずかしがり屋さんなのか?他のみんないたって別にいーんじゃねーの?」


 ラナが恥ずかしがり屋っていうか、多分俺が普段そういうことしないからなんだとは思うけど…。

 こっちの世界に来てあれこれ考えるようになったからか、そういう方面の事には慎重になり過ぎてる感があるのは多少自覚してる。

 単身赴任するようになってからは人付き合いが億劫になってたし、元々の性格上とか経験上、異性関係では臆病になるきらいがあるし。

 自らハーレムを作ろうとか求めてたつもりもないのに、突然こんな事になって躊躇してる面も多分にあったりして、こういう現状なわけで。

 まぁ弘史辺りからすれば、ぶっちゃけヘタレとしか思われてないんだろうけどな。


「他のみんながいると、ナオトさんが気にすると思って…。あと、みんなの前でしちゃうと絶対にわたしもしてってなっちゃって、ナオトさんが大変になるでしょ…」


「あの人数なら想像に難くないな…確かに」


 と、俺を気遣ってくれてるラナ…いい娘過ぎて泣けてくる。

 確かに全員で夢の中へ入って来た時、それなりに大変だったのは事実です…エクリィとアコを除く21人とキスとか、夢でもない限りあり得ないかと。

 あれを現実でやるとかもう、俺が正気を失う…までとは言わないけど、今のところは夢の中じゃないと無理だと思ってる。

 少しずつでいいから俺のペースでやっていければなぁ、って考えてるし…急激な環境変化に対応が追っ付いてない、というかやっぱり現実感がまるで無いところが一番の要因な気が。


 って、そんな話をしに来たわけじゃないんだから、もう止めよう。



「いや、もういいからこの話は。見なかったことにしてくれ。で、俺達と一緒でもいいか?」


「あー、まぁそういうことなら連れてってもらうか。間違いなくその方が早ぇしな」


「ふふふ…またラナと一緒なんて……望むところだわっ!」


「もも、もしかしてま、また、リオちゃんにのの、乗せてってもらえるんです、かっ?」


「多分そうなると思うよ。それが一番早いだろうし」


 とりあえず一緒するのはオーケーらしい。

 知美ちゃんの言う通り、またリオに乗せてってもらうことになるだろうな。

 ホント、リオ様様なんだけどいいのだろうか…本人は大変嬉しそうではあるからなぁ、遠慮すると逆に悪いことしてる気になるっていう。

 

「え?リオお姉さまに乗れるんですの…?」


「あ、そうか、フラウは初めてか。ドラゴンのリオは見たことあるよな?」


「ええ、皇都からの帰りになんどか」


「あの姿のリオの背中に乗せてってもらおうかなって。実はまだひぃもティシャも乗ったことはないんだぞ」


「それは…すごく楽しみですわっ!帰ったら二人にじまんしてしまいそうですわっ」


 ひぃやティシャならリオにお願いすれば何時でも乗せてくれるだろうけど、俺達があちこち行ったりしてるし、そもそも行けるとこなら俺の転移を使うだろうし、あまり機会は無いんだけど。

 フラウが自慢してきたら、ひぃ辺りが黙ってられないだろうからな…その時はリオに時間作ってあげて空の旅を満喫させてやるか。


「またあの背に乗れるとは嬉しい限りだな。目的地が私の国ならこれで堂々と同胞に自慢が出来そうだ」


「あー、実はもう同胞来てるんだ。精霊王国の宰相の娘さんと付き人が」


「む…シルファ様が。あぁ、そうかリオに会いに来たわけか」


「そういうこと。それじゃとりあえずみんながいる鼠人族領まで転移するから掴まってくれ」


「あいよ、んじゃ頼むわ。フラウ、ほれ、こっち来い」


「はいっ、ヒロシお兄さま」


 一旦皆が待ってる鼠人族領まで転移するから、俺に掴まってもらうことに。

 ラナはもう俺の右腕をがっちりホールドしてるからいいとして、弘史はフラウを呼んで抱きかかえた。

 相変わらずフラウには優しいんだな、昨日の晩餐でもほっとけずに連れてきたくらいだし。


 後の皆は弘史に掴まってれば大丈夫だろう…と思いきや、フラムが突拍子もないことを。


「では私も。ナオトに抱き付けばいいのだろう?」


「ちょっ、おいっフラム!何言ってんだよっ!」

「なっ!?ダメよっ!フラムにはヒロシさんがいるでしょっ!」



 弘史が居るのに俺の方へ抱き付くとか…弘史に恨まれるなんてそんな面倒くさいことになるのは勘弁願いたい。

 ただでさえ姫達の件で俺の事気に喰わないとか多少思ってるんだろうし。

 弘史も何故そこまで慌てるのかと。

 お前のメンバーなんだから冗談だって分からんのか。

 ラナもラナでそんなに警戒することでもないだろ…こんなのフラムが弘史を揶揄ってるって丸分かりだろうに。



「フッ、冗談だ。だが…焦るヒロシも悪くはないな、ふふっ」


「フ、フラム…あ、あんまり弘史さんをかか、からかわないで…っ」


「フラム、アンタねぇ…。うちのダンナはこう見えてメンタル弱いんだから、そーゆーのはシャレにならないわよっ」


「そうか…うん、そうだったな。少し悪巫山戯が過ぎた、気を付けるとしよう、ふふっ」


 弘史を焦らせて喜ぶとか、フラムもそんなことするんだな…まぁ君がやるとあんまり冗談に聞こえないのはどうかと思いますが。

 ほら、弘史がメッチャ俺の事睨んで威嚇してるし…けど、お前のメンバーなんだからそんな事になるわけがないだろう。

 お前のことだからもっと余裕綽々な感じで躱すと思ったのにな。

 だってお前、俺より自信満々でこの世界に慣れ親しんでるじゃないか…ヤることヤりまくってるみたいだし。

 相手が俺だから焦ったのかもしれないけどさ、同じ称号持ちならその辺は大丈夫だろ?多分…。


「はいはい、じゃれ合ってないでさっさと行くぞ」


「チッ…余裕ブッてんのがムカつくぜ……」


「お前に余裕ないって方が驚いてるよ、俺は。ほら、さっさと掴まれ」


「くっ…わーったよっ!」


 揶揄って満足したフラムと、知美ちゃん、モリーが弘史を囲むようにしがみついて、その状態から腕一本、フラウを抱きかかえて無い方の腕を俺に差し出す弘史。

 身動きが取れないだろうから、俺からその手を取って掴み、鼠人族領まで転移した。




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