#32 凸激な再会
「リーオルが来てると聞いてっ!!」
開口一番、そう叫んだ女性に皆の視線が集まった直後、続いてもう一人。
「ちょっ、お嬢っ!落ち着けって!」
「これが落ち着いていられるわけないでしょうっ!!」
そう言いながら部屋の中を見回し、目的の人…リオを見つけた途端、飛び掛かるような勢いで寄って行き、膝上にいたイアにもお構い無しで座ったままのリオに抱き付いた。
「あぁ…リーオル……リーオル………っ!」
「………シル、ファ………っ!…………」
リオが名前を呼んだことでかつての仲間…確かエルフ姉妹の姉だったかな?その人だと分かった。
リオも会えて嬉しかったんだろう、シルファを抱き締め返してる。
で、膝上で無視されてたイアはというと…シルファが抱き付いてきた瞬間、何事!?って感じになったんだけど、その後すぐに、にへぇーって表情崩して幸せいっぱいみたいな顔してた。
そりゃそうなりますよね、そんなモノに挟まれたら。
見た感じシルファもリオに負けず劣らずっぽいもんなぁ…俺でもそうなるわ、きっと。
っていうかホントおっぱい好きなのね、お前…。
どうしてそうなってるのか知らんけど。
俺が創ったから俺に似たとか言わないよな…そんな勝手に付けられた設定にまで責任とか持てんぞ…。
二人は少しの間抱擁した後、離れてお互い顔を合わせ見つめ合ってた…長い間会えなかった時間を埋めて、一緒にいた頃を思い出してるんだろうか…。
残念がってるイアはほっとくとして。
「……よかった…また会えて……。もう私一人になっちゃったって、ホントどうしようかと思ってたんだから…………」
「……ごめん、ね…………」
「ううん、いいのよ。こうしてまた会えたんだしっ」
400年越しの再会だもんな…お互い嬉しさもひとしおだと思うんだけど、なんだろう…リオの表情が思いの外動いてない気が。
「なんやリオ、こないな時こそあの笑顔になるんちゃうの?」
「そうだよぉ〜、遠慮なんてぇ〜いらないんだぁよぉ〜?」
「…その辺はあの頃と変わってないのね、少し安心した…けど、何故かしら?あの頃よりも瑞々しくなってるような……」
シータとマールは見たことのあるリオの笑顔が出てないことを不思議がってる。
シルファはシルファでリオの顔を両手で挟んでじっくりと見て触って観察しながら、パーティーを組んでた頃との違いを不思議がってる。
まぁ、俺達は昔を知らないから当然その差は分からないけど。
「……それ、は…きっと………マスター、の…おか、げ…………」
「……マスター?」
…んー?えっと、そこで表情が動く…若干頬を赤く染めるのはなんででしょうかね?リオさん。
そして、マスターって言われて迷わず俺の方を向くのは何故でしょう、シルファさん。
「あなたをあそこから出したってことは、この人がケンゴやコウキと同じ異世界人ってことなのは分かったけど…」
あの鍵は攻輝が仕掛けたものだから、同郷じゃないと開けられないだろうしな、日本語だったから。
それを開けてリオがここにいるって時点で俺が漂流者だって分かったのはいいとして…なんでそんなにマジマジと俺の事見てくるんですか?
次いでに周りの皆の事もじっくり観察しだしたよ、この人…。
「……そういうことね。マスターってハーレムのことでしょう?」
「……(コクコクっ………」
「うわぁ…ハーレムだったんだー。ボク初めて見たよ……」
「……本当に実在したんですね…ハーレムって」
あれ、この人見ただけで分かっちゃったよっ!?
確かに男は俺一人…あ、今はもう一人増えてるけど、でもだからってハーレムとは限らないでしょっ?
「えっと…何故そう思ったんでしょうか……?」
「リーオルがこんなになってるのがあなたのせいってことは、アレをやってるってことでしょ?それを頬まで染めさせて言わせるんだから、もうそれしかないじゃない。周りの人達も知ってるみたいだし。リーオルの笑顔なんて私も見た事ないわよっ」
「「「「えっ!?」」」」
「そうだったんや…」
「マジか…」
「わたし達、そんな珍しいもの見ちゃってたのね…」
「あの笑顔はぁ〜本当にぃ〜素敵ぃでぇ可愛いぃからぁねぇ〜」
SレアどころじゃなくてSS、いや、Uレアレベルだったらしい…。
まぁ俺は見てないというか、見れないんですけどねっ!
そんな確率なら余計見たくなるわっ、やっぱ皆ズル過ぎるっ!!
「アレってなんにゃ?」
「そーそー、なに?アレって」
それは…魔力補充のことだから別に教えても構わないんだけど、この場合間違いなくやり方まで言わないと話通じないだろうな…。
俺が説明しなくてもリオ自ら暴露しそうな気がしますけどね、そりゃもう嬉しそうに頬赤くしながら、その胸に付けてる果実を持ち上げて。
「おい、お嬢。もう会って落ち着いたんだろ?だったらちゃんとやることやっとけや。話はそれからにしろって」
「?なによ、やることって」
「あのなぁ…挨拶も無しでいきなり突っ込んできただろーがっ。宰相の娘がこんなんじゃ精霊王国の面子が立たねぇっての」
「あっ…オホホホホっ、これは大変失礼をば……」
「今更何言ってんだよ、口調なんかどーでもいーからちゃんと挨拶しとけっ。ったく、この猛進お嬢は……」
このまま話し込む流れになると思ってたら、もう一人のエルフ男性が割って入って来た、やることやってから話せって。
良いタイミングで切ってくれたな…そっち方面の話になりそうだったから助かった。
まぁ、ペルと攻瑠美が興味津々っぽい顔して聞いてきたから、完全には避けられない気もする。
「…そうね、リーオルがいるんだし今更よね。それじゃ改めて…皆さんはじめまして、突然押しかけちゃってごめんなさい。私はシルファミリアネス・ウィンディア、見てて分かったと思うけどリーオルと同じ前勇者パーティーのメンバーだったの。これでも一応スピーレリメント精霊王国宰相の娘よ。あ、ジェリル、教えてくれてありがとうねっ」
「いえ、これは当然教えないといけないことでしたから。けど連絡してから到着まで早かったですね…」
「あー、そりゃあんだけ風の精霊酷使すりゃ早いわなぁ」
「酷使ってなによっ、ちゃんとお願いしてきたじゃない!……無茶は言ったかもだけど」
「それを酷使って言うんじゃねぇか。まぁ俺もそれに便乗してきたわけだから強くは言えねーがな。っと、俺はそこのお嬢の付き人でカーインラーグス・ウォルターナ、カインとでも覚えといてくれや。よろしくな」
美男美女エルフ二人、リオの元パーティーメンバーだったシルファと、その付き人であるカインが自己紹介してくれた。
シルファはエルフ国の宰相の娘らしい…けど、なんだろう、この大陸の国ってどこもこういう感じなのか?
身分とかまるで感じさせない態度というか、お偉いさんの娘ですとか言われないとほぼ分からないよな…話してるだけだと。
階級とかを笠に着たようなことは全然しないし、相手が誰であろうとあからさまに態度変えたりしないし…。
皇国の皇族や貴族だけじゃなくて、ここ獣連邦の領主達もそうだったし、今目の前に居る人もそう。
この大陸の国々、貴族制度とかはあるのに不敬罪って罪はないような気がする…話には聞いてたけど、どこの国に行ってもこれなら気が楽というか、個人的に良い印象しか持てないというか。
そんなシルファはリオと同じで400年以上生きているのに若々しい…やっぱりエルフは長寿種族だったんだな、向こうの世界の創作物でも大抵そうだったし。
年齢のせいかどうかは分からないけど、お姉さんって印象を受ける。
エルフだけあって美人だし、今は落ち着いたせいか、ちょっと大人っぽい雰囲気を纏ってるように感じるし。
そうだな、うちのメンバーだとファルかエマが近い感じ?雰囲気だけなら。
話すとそうでもないから、黙っている時の雰囲気だけね。
サラサラで流れるような長い緑髪から、尖った耳がぴょこんと飛び出てる。
エルフの知り合いと言えばギルマスのフィルさんと雷銃のフラムだけなんだよな、今のところ。
ハーフだとノルチェのシャリーとカッツが居る。
…そういえば、うちのメンバー内にエルフって居ないよな…って、別にエルフを入れようとか思ってるわけじゃないからっ、ホント居ないよなって思っただけなんです!
女性のエルフだと初めて知り会いになったのはフラムだったけど、最近のフラムは冒険者だからか会った頃より健康的な肌色になってきた感じするんだよな…まぁそれでも十分白いけど、この世界のエルフは日焼けとかするんだろうかって思っちゃう。
シルファは綺麗な白肌で全体的に見るとちょっと神々しさを感じさせる。
この世界で神々しいっていうと明らかにランク落ちしちゃうけど、神々のトップがアレだし。
喩えは置いといて、それだけ容姿は美しい、ということで。
付き人カインの方もやっぱりエルフだけあって美形ですね、はい。
でもこの人もフィルさん程じゃないけどちょっと顔に翳りがあるような…。
エルフ男性は苦労症がデフォなんだろうか。
それでもイケメンには変わりないです…爽やかな青髪、長身でキリッとした立ち姿、切れ長の鋭い目がその耳とバッチリ合ってますよね。
いや、もう別に凹んだりはしませんよ?この世界はこういうものだと割り切りましたから。
それに…こんなイケメンばっかりの中で、それでも俺がいいって思ってくれてる娘がこんなにいるわけですし。
明らかに称号のせいだってのは分かってるんだけど、もう今更どうにも出来ないし…付けた本人ですら。
でも、もしこの称号が無かったら…どうなってたんだろ?
姫達とリオ、あとリズくらいは側に居てくれてただろうか…って、もうそれだけで十分ハーレムなんですけどねっ。
ダメだ、今となってはもう皆が居ない状態が想像出来なくなってる…望む望まないに関係無くこれが当たり前のことだと認識しちゃってるよ…。
「お二人ともどうぞこちらにお掛けになってください。今お茶を用意させますので」
「ええ、そうさせてもらうわ。それとジェリル、いつも言ってるけどそんなに畏まらなくてもいいのよ?あなた領主でしょう?」
「そうなんですが…大婆さまのお仲間ですし」
「あら、それを言うならリーオルだってそうよ?」
「…確かにそうですね……。分かったわ、それじゃそうするわね」
「そうしてちょうだい、ふふっ」
ジェリルさんとシルファはラビィ繋がりで知り合いっぽいな。
恐らくシャーミィさんともだろう。
でも勇者パーティーの仲間はもうリオしか残っていないんだよな…今のこの世界には。
二人共空いてる席に…と思ったら、シルファは何故か俺とリオの間に座ろうとしてる。
リオの隣に座りたいのは何となく分かるけど…俺の隣じゃなくてもいいですよね?
「はい、ちょっとここ空けてねっ」
「え、ちょっ…」
そんなぴっちりと座ってたわけじゃないから、そのちょっとした隙間へ半ば強引に座ってきた。
仕方無く横にズレたりしたら、割とギチギチになって隣同士ぴったりくっつく感じに…。
「あー…なんかすまねぇな……うちのお嬢が」
「あ、いや、別に構わないんですけど…反対隣でよかったんじゃ」
「あなたにも聞きたいことあるんだからここでいいのよっ。で?どうやってリーオルのマスターになれたのかしら?」
いきなりそこからかいっ、他に聞くことあるでしょうっ。
まだお茶も来てないし…見た目からはかけ離れてせっかちさんなのね、このお方は。
「いや、それより先に聞きたいこととか…」
「無いわけじゃないけど今はそれが一番気になるからねっ」
「お嬢っ!またすっ飛ばしてんじゃねーぞっ、先に言うことあるだろーがっ!」
「?なによ、言うことって」
「かぁーっ、ったくよぉ…。お嬢の仲間がここにいるのは誰のおかげだよっ!なんで俺がそこまで言わなきゃなんねーんだっ」
「あっ…私ったらまた……。そうよね、まず言うべき事はそれよね。ええと…お名前伺っても?」
「あ、はい。ナオトです」
「うん、ナオト、リーオルを連れ出してくれて…本当にありがとう。いくら感謝してもし足りないくらいよ」
お礼言われてしまった…別に助けようとして助けたわけじゃなく、偶然そこにリオが居たってだけだから、礼なんてしてもらうことも無いんだけど…。
「いえ、たまたま受けたクエストでそこにリオがいたってだけなので…。まぁ、もし礼を言うなら俺よりマールにですかね。真っ先にリオを救おうとしたのが彼女なので」
「あれはぁ〜そのぉ……リーちゃんがぁ〜あまりにもぉ綺麗ぃだったのでぇ〜………」
「そうだったのね。マールもありがとう、いい人達に見つけてもらえたみたいで良かったわ…。コウキも喜んでくれると思う」
「間違いなく喜びますよ、兄さんは。ただ、今は伝える術が無いですけど…」
「ボクたちが魔統王を倒して帰ってからだねー」
あの時のマールはホント早かったよな、行動起こすのが。
そのおかげで今こうしてリオが居る。
ただ、リオを見つけちゃったからこうやって勇者達と関わることになったんだけど、全責任持つって宣言しちゃってるしな…攻輝もこれを見越してたんだろうか。
次の勇者が自分達の妹とか、まさかそこまで考えてたわけじゃないだろうけど。
あ、いや…もしかして元の世界に戻る時、エクリィと何かしら交わしてたのか?何となくあり得そう…。
しかしまぁ、攻瑠美は軽く言うなぁ…チャチャッと終わらせますかぁ、みたいなノリで。
そんな単純な道程じゃないと思うんだけど…大丈夫なのか?これ。
「サラッと言ってっけど、んな簡単な話じゃねーだろ…」
「せやな…リオに話聞いただけでも大変そうやったで?」
「そうよね…だってシルファさんの妹さんが……」
やっぱり皆もそう思ってたよ。
全員無事帰還出来たわけじゃないし、リオだって途中離脱しそうになってたし…。
ヤバいなぁ…危なっかしくてほっとけないって大分傾いてきたぞ…。
「あー、うん、それなんだけどね……どうも生きてるかもしれないのよね、あの娘………」
「……っ!?………セラフィ…が……っ!?…………」
「…ここ最近、って言っても1年前くらいからの話なんだけどね……夢に出てくるようになって。なんか助けを求めてるって感じがして………」
「1年前くらい…もしかして魔統王の復活に関係してるんじゃないですか?」
「ええ、何となく私もそう思ってるのよ…。それこそ魔統王がいいように使ってるんじゃないかって、あの娘を」
夢か…けど、こっちの世界の夢だからな…信憑性は高いんじゃないかと思う。
夢の中に入れるくらいだし。
それに時期的にも当たってる気がする。
確かオーガがこっちに来てからまだ1年は経ってなかったよな。
けど、来た時にはもう復活してたって言ってたから…だとすると、それくらいの可能性が高いんじゃ。
姉妹だし何か繋がってるようなモノがあってもおかしくはないよな。
その勘…魔統王に使われてるって当たってなければいいけど…。
「だったら早くボクたちがなんとかしないとだよねっ」
「そうね、堅兄さんにもすぐ教えてあげたいし」
「でもにゃー、今のマモとクル、それとにゃー達じゃ魔統王を倒すどころか、魔王の力すら削げにゃいんじゃにゃいかにゃぁ…」
「そうっチュね…せめてもうチョット仲間がほしいっちゅよ」
「二人の言う通りね。来た頃よりは大分動けるようになってきたけれど、まだ心許ないわ」
意気込みはいいんだけど、実力が伴ってないとどうにもならないよな…。
ペルとチュチュ、それにジェリルさんの心配も頷ける。
確かに一緒に行ってくれる仲間がいれば、それだけ勝率も上がるだろうけど、魔王討伐なんてそうそう来てくれる人は居ないんじゃ…。
「それなら俺らの国に来な。お嬢がこれを見越してか知らねーが、準備してたみてーだからよ」
「夢を見るようになったのと、あとはあなた達勇者が来たって聞いた時から話はしてあったのよ。あの子達も連れて行くといいわ」
「私たちに付いてきてくれる仲間がいるんですか?」
「ええ、その為の修行も積んであるからきっと力になれるはずよ」
「この娘達の他に居てくれるのなら助かるわね」
と思ってたら、カインとシルファから同行出来る仲間がいるって話が。
エルフの仲間ならパーティーバランス的にも良さそうだな、恐らく後衛だろうし。
精霊魔法のマジックユーザーかアーチャーってところで。
ここにいる四人は前衛と遊撃だしな。
そうするとあとは…。
「そーすっと、あとはアレか、竜人の仲間がいりゃ前勇者パーティーと同じになるってワケか」
うん、アーネも同じことを考えてた。
竜人…かつての仲間の妹達なんだから、もしかしたら付いていきたいって思ってるかもしれない、リオは。
正直今となってはもう俺の側にいて欲しいって気持ちが強いんだけど、それでもリオの意思だけは確かめておかないと…たとえそれがどういう結果であれ、本人の意思は尊重してあげなきゃだよな…。
「そうだな…。リオはどうする…?付いていく…か?」
恐る恐るになってしまったけど聞いてみた。
これで付いていくって言われたら寂しいけど、これもリオのためだ、自分の事を優先なんてしたら昔と何も変わらないし…。
リオがどう応えてもそれを受け止めようと思う。




