表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/214

#30 今代の勇者達


 

―・―・―・―・―・―・―・―






「……ここ、に………ケンゴ…達、が…………」


「オヤジやオフクロの話だとそうらしいな」


「ただケンゴ達かどうかはまだ分からないぞ?リオ」


「……そうだ、ね………」


「鼠人族の所に来たのなんて、何時ぶりやろなぁ」


「私たちのぉ領地とぉ〜少ぉし離れてるからぁ〜、頻繁にはぁ来れなかったしぃねぇ〜」


「とりあえず父さんが話通してくれたみたいだから行ってみようよ、領主邸まで」



 姫達両親へのご挨拶から晩餐会まで催してもらい歓待された次の日、予定通り俺達黒惹華(+ランとイア、無言で駄々こねられて仕方無く連れてきた)は鼠人族の領地に来ていた。

 もう一つの目的である勇者達と会うために。



 晩餐会が終わった後、流石にこの人数で泊めてもらうのはちょっと…どころかかなり無理があるというか、迷惑掛かっちゃうだろうと思って、一旦全員、弘史のメンバーも含めて俺の転移でガルムドゲルンへ戻った。

 転移の際、弘史に爆笑されるかと思ったけど逆に羨ましがられた…次からは俺も絶対そうするわ!とか言って。


 家に着いたらすぐ皆でお風呂に入り、ひぃとティシャに背中を流してもらい(ラナとリオがランとイアの面倒みてたせいか、今回はウェナとエマがついてきた)、旅の疲れ─身体はそんなに疲れてなかったんだけど、精神的には若干疲労してたからゆったり湯槽に浸かり、ひぃとティシャ、次いでにイアとランを愛でながら回復。

 姫達とリオも存分に旅の疲れを癒やしてたみたい。


 それとリオの魔力補充もやりました…風呂ではやらないようにしようと思ってたんだけど。

 今回は背に乗せてもらったお礼の気持ちを最大限込めてたので邪念は無し、可能な限り丁寧に魔力を注ぎました。

 そのおかげかどうかは分からないけど、リオは大層喜んでたみたいです…スーパーレアなリオの笑顔を見て皆大騒ぎしてたので。

 いつになったらその笑顔を拝めるのか…俺だって見たいのに。

 …正面から?それだと魔力補充にならないので無理ですね、あの胸を視界に入れながらなんて、どうしたって俺のこの手が黙っていられるワケないですから。


 入浴後は明日早めに行こうってことですぐ就寝しようとしたら、セヴァルとカッツ以外の全員が俺の部屋に来た。

 いや、いくらこのベッドでも全員で寝るのは無理だろうと思ってたらリズとアーネが、


「この部屋、完全に寝室にしようよーっ」


「ナオト、もう一つ同じベッド出してくれよ。出来んだろ?」


 とか言い出した…確かに部屋は無駄に広いし、もう一つ二つは余裕で置ける。

 それにスキル使えば実物が目の前にあるし簡単に同じ物を創れると思うけど、でもここにいる全員で寝るとか、いいの?それ…なんて俺の考えは無意味だったらしく、全員ここに居るのが答えなんだろうってことで、素直にもう一つベッドを創って皆揃って寝た。


 ──翌朝、全員で寝たかった理由が判明したんだけど…俺的には少々生殺しでした。

 ファルが断食してたうえに、俺も旅の間多少なりとも我慢して(完全に弘史のせいだけど)、今日くらいは夢の中で思う存分って気持ちで寝付いたから余計に。


 本当に全員で夢の中に来るんだもんなぁ…おあずけくらった感が。

 まぁでも、皆で来た理由が全員ハーレム入り記念だってことで、これを機に皆が俺にしたい事…夢の中だからだと思うけど、主に抱きしめてキスをねだられ…お姉様方がそうしてくるせいか、ミニマム組にまでおねだりされました。

 約一名、全員いるにも関わらず本気で襲って来たのがいたけどそれは全力で阻止した。

 いくら夢の中だとしても、それを見せるわけにはいかないだろうっ。

 何が怖いって、それ見て「わたしもーっ!」って言ってきそうなのが一番恐ろしいわっ。

 そーゆーのはちゃんと心と身体が成長してからじゃないとダメです絶対!

 そこは異世界だろうが変わらないでしょう!


 ……ミニマム組統括に手を出しちゃってる時点で身体的にはほぼ真っ黒だって自覚はあるけど、俺的には夢の中だからギリギリセーフってことにしてるんですっ!


 あとは…俺が皆にしたい事をさせてくれたりと、至れり尽くせりだったから十分満足は出来ましたけど。

 特に獣人組(ランとイアも含む+ファミ)の耳、尻尾、翼をこれでもかってくらいモフらせてもらったのが最高でしたっ。


 ファル曰く、「ナオト様だからか、漂流者だからなのかははっきり分かりませんが、相手によって味が変わるので、いろんな味わいが楽しめて大変満足出来ました」とのこと。

 やっぱりこの味を知ってしまったからには、もう他では物足りない、満足出来ないと思うからって、これからも末永くよろしくお願いされてしまった。

 …相手が増える=味わいも増えるってことで、増やすのは大歓迎ですっ!とか言われたし……。


 で、お腹いっぱい元気いっぱいでツヤツヤのテカテカになったファルと、夢の中の事を反芻してか、ぽやーっとして時々ニマニマしてる他の皆に見送られてラナの実家まで転移、そこからシャリーへのお土産を買いつつ狐人族領→兎人族領→熊人族領→馬人族領と辿って、ここ、鼠人族の領地までやってきたわけである。


 シータとマールの所は昨日会ったのでほぼ素通り、アーネやニナの所とあわせてまた後日ゆっくり訪ねることにした。

 もう転移ですぐ行けるようになったし。


 熊人族と馬人族の領地も割とスムーズに通してもらえた。

 熊人族はやっぱり大きかったわ…会う人会う人皆、ほぼ見下ろしてくるくらい。

 子供…ひぃやティシャと同じ歳くらいの子でも、身長はアーネやシータより上、マールやリオくらいの子も居た。

 周りに大人が居れば分かるんだけど、子供しか居なかったら見た目だけじゃ判断つかないぞ、これ…。

 兎人族の隣の領地だからか、途中でマールの知り合いの娘と会って、軽く挨拶だけしたりってのもあった。

 

 馬人族の所は…ちょっと予想外だった。

 姫達と同じような感じかと思ってたら、下半身が馬、つまりケンタウロスみたいな人も居たから。

 聞いた話だと二足と四足で大体半々くらいらしい。

 遺伝なのかと聞いてみたら、特にそんな事は無いそうで。

 生命の神秘…二足の人から四足の子、四足の人から二足の子が産まれるとか、流石は異世界としか言いようがない…。

 これあれか、俺とラナの子が狼とか、あり得ない話じゃなくなってきた…?


 二足の人達と四足の人達で分かれて生活してるのかというと、そうではなくてちゃんと一緒に暮らしてる。

 だって四足の子の背に二足の子が跨って遊んでるんだもん…馬に馬が乗ってるって考えるとちょっと不思議な光景。

 それで楽しそうに…トラックっぽい所でレースしてるんですが。


 そんなの見ちゃったら、他の獣人領にも行ってみたくなった…その内獣連邦の領地を全部回って、それこそ木彫りの獣人形コンプリートして家に飾りたいな、と。


 ちなみに弘史達もラナの所までは一緒に俺の転移で来て、そこからモリーの実家まで歩いて行った。

 向こうはご挨拶だからパーティーメンバーだけじゃなくフラウも一緒だ。

 ラナの領地の隣だって言ってたし、弘史達はもうとっくに着いてるだろう。


 ルドさんがきっちり伝えてくれてたから、鼠人族の領地内もすんなり入れて、真っ直ぐ領主邸まで向かって行くと─



 キィィン!ガンッ!



 っていう剣戟音が門前まで辿り着いた俺達の耳に届いて来た…なんか既視感が。

 そういや確か修行してるって話だったっけ。

 ここからじゃ音だけしか聞こえないからまだ誰かは分からない。

 ちょっと気になって鉄格子の門の隙間から中を覗いてみようとしたら、門番の人が話し掛けてきてくれた。


「話は伺ってます。ようこそ鼠人族領主邸へ。丁度今は対人訓練の時間で前庭におります。お通ししますのでどうぞ」


「あ。ありがとうございます」


 そう言って門を開けてもらい、剣戟音のする方へ歩みを進める俺達。

 近付くにつれ気合いの入った掛け声まで聞こえてきた。


「対人訓練かぁ。訓練ならアタイもちょい混ぜてもらうかなっ」


「待てって。リオの方が先だろう」


「あー、そっか」


「アーネ、昨日イーナさんやダイさんに会ったから、あなたも血が騒ぐとか言い出すんじゃないの?」


「んなこと言うかっ!オヤジやオフクロと一緒にすんじゃねーよっ!」


「言わんくともやろうとしとることは同じやないか」


「おんなじぃだぁねぇ〜」


「ちっげぇよっ!アタイのは性分だってのっ!」


「どこがどう違うのかはっきり分からないんじゃないか?それ…。まぁとにかく会って話するのが先な」


「…わーってるよっ。ったく、ちょっと言ったらこれだよ……」


 前庭に向かいながら訓練中の剣戟音を聞いてアーネの血が騒ぎだしたらしい、本人は本能の血じゃなくて生まれついてからの性分とか言ってるけど、やっぱり血は争えないというか、どっちも引き継いでるとしか思えないんだけど。

 なんて駄弁りながら歩いてるうちに掛け声とやり取りまではっきりと聞こえて、訓練中の姿が目に見える所まで来た。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「うりゃぁぁああっっ!!」


「うにゃんっ!そんにゃ大振り当たらにゃいにゃんっ」


「あーもーっ!ちょこまかとぉ!大人しく当たっときなさいよぉっ!!」


「いやにゃーっ。ホイっとぉ!」


「わわっ!ちょっ!」



 ガィィンッ!



「うにゃっ!」


「あっ!サンキューっ、護璃っ!」


「まったく、一人で突っ走らないでよ攻瑠美っ。ほらっ今度はあっち!」


「気ぃ抜いちゃダメっちゅっ!」


「っ!次から次へと…もうっ!いい加減に…っ、しろぉ!」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 対人訓練をしているのは四人、どうやらニ対ニでやってるっぽい。

 四人共女の娘、つまり今代の勇者は先代と同じケンゴとコウキじゃないってことだ。

 エクリィの話だとバレバレな気がしてたんだけど、女の娘だった…。

 女の娘の勇者かぁ…もうさ、先代と違うって分かったから、帰ってもいいかな…。

 もしもだよ?もし仮に間違ってこの娘達も吸い込んじゃったりしたら…俺も魔統王討伐行き確定しちゃうでしょう、俺の性格上放っておけるわけないし。

 俺もってことは当然の如く付いてくる嫁もいるわけで…。

 いや、吸い込まなくてももう既に放っておけないとか思い掛けちゃってるんですけどね…。

 


 見た感じ魅音や知美ちゃんと同年代、いや、もうちょっと下かも。

 相手の方は獣人二人、多分猫と鼠の獣人だろう、にゃんっ、とか、ちゅっ、とか語尾に付いてるし。


 しかし…勇者二人はかなりトリッキーだなぁ。

 一人はスモールシールドっぽいものを両腕に付けて、それを武器として攻めに行ってる。

 もう一人は大剣…と言っていいのか、それこそ殆ど剣の形をした大盾に柄を付けたといっても過言ではないような幅広の刀身のものを、剣としてではなく盾として使っている感じ。

 要は攻めを盾で、守りを剣でやってる。


 盾の方は変幻自在らしく、いろいろと形を変えて、パイルバンカーのようなもので殴りに行ったり、鎖付きの円盤にして飛び道具っぽく使ったりと、攻撃方法が多彩だ。

 剣の方は…うん、柄は付いてるけど振り被ったりは一切してないから、剣として使う意図はまるっきり無いみたい。

 柄の意味が…とは思うけど、何故かそれで獣人達の攻撃を見事に受けて、防いで、捌いてる。

 ただ、女の娘だからか、少し力負けしてるようにも見える…勇者として召喚された割には少し頼りない気が。

 まだレベルが低いとかなんだろうか。


 獣人の二人、猫の娘は昨日見たイーナさんと同じ様な鉤爪で、それに加え尻尾の先に槍先のような物も装備していた。

 あれは厄介そうだと思ったけど、何となくそこまで自由自在に動かせるってわけでもなさそうだ、遠心力を使って振り回してる感じに見えるし。

 鼠の娘は短剣二刀流、というか、あれはクナイに近い武器かな?

 いや、姿からしてクナイだな、あれは…なんて言ったらいいか、ちょっと洋風な、なんちゃって忍び装束って格好だもんな…色はピンク基調だし。


 そんな感じの四人の戦闘を皆で眺めてたら、指導をしていたらしい鼠の獣人が俺達に気付いたみたいで、戦闘終了の号令を出した。


「そこまでっ!一旦休憩にするよっ!」



「ぷはぁーっ!つっかれたぁーっ」


「ふぅ…なんとか防げるようにはなってきたかな」


「マモはいいけどクルはまだまだだにゃあ」


「ちゃんと周りも気にしとかないとダメっちゅよ?クル」


「うへぇ…分かってるけどペルもチュチュもウロチョロし過ぎなんだもんっ」



 戦闘を終えた四人はすぐ集まってあれこれ話し出してる。

 号令を出した指導者らしき人は俺達の方に向かって来て挨拶をしてくれた。


「いらっしゃい。ルドとロゼから話は聞いてるよ。マモリとクルミに会いに来たんだってね」


「どうもお邪魔しまして。じゃあやっぱりあの二人が勇者なんですね…。リオ、残念だけどケンゴとコウキじゃなかったみたいだ」


「………そう、みた…い……だね…………」


 面には出てないけど少し落胆した雰囲気が伝わってくる…話したい事、伝えたい事がたくさんあったんだろうし、当然か…。


「ん?堅護と攻輝?なんでおにぃ達の名前が…って、あっ!もしかしてリーオルってあなたのことっ!?」


「確かに竜人の仲間がいたって兄さん達は言ってたけど…」


「……それ、じゃ…二人、は………」


 訓練していた四人も合流してきて俺達の輪に入り、挨拶とかそっちのけで会話に混ざり込んで来た。

 どうやら完全に攻輝や堅護と無関係ってわけじゃなかったらしい。

 っていうか思いっ切り関係者じゃないか、妹とか。

 あ、それでか…リオがどうするのかってエクリィが言ってたのは。

 もしかしたら彼女達から堅護や攻輝の話を聞いて、一緒に行くって言い出すかもしれないしな…。

 それ以前に俺がもう黙っていられなくなるかもしれないけど…。


「でも兄さんは閉じ込めてきちゃったって…本人の意思が固くてどうしようもなかったって」


「…おにぃはそれどころじゃなかったみたいだけどね…」


「…ケン、ゴ…は……どう、なった…の……?…………」


「あー、うん…しばらくは落ち込んでたよ…。ボクも話聞くまではワケ分からなかったけどね、なんでそうなってたのか」


「帰ってきてからずっと兄さんが付きっきりで、私たちがここに来る頃には大分立ち直ってたみたいです」


「……そう、なん…だ………コウキ、が……………」


 リオが最も気になっていたであろう堅護は、攻輝のおかげでなんとか立ち直れたらしい。

 今は向こうの世界で普通に生活…あ、いや、妹達がこうしてこっちに来ちゃったんだから、また普通ではなくなったか?

 しかし…なんだろ?この娘達は妙にこっちの世界に馴染んでるような気が…前情報として堅護や攻輝に話を聞いてたからなんだろうか、やっぱり。


 堅護の妹の方は見た目に反してボクっ娘だった、俺の中でボクっ娘といえばショートカットでボーイッシュなイメージだったんだけど、目の前のこの娘は黒髪ロングでお淑やかな感じ、黙っていれば清楚系お嬢様にしか見えない。

 片や攻輝の妹の方も、話し方は普通っぽいのに見た目は若干ギャル…ウェーブがかった赤茶けた髪に軽くアクセで結ったサイドテールで、二人共ギャップが…。

 最近の若い娘はこういうのが流行ってるのか?って、いや、違うか、俺の勝手なイメージか、オタク知識からの。


「こんな所で立ち話もなんだから、お茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」


「すみません、そうさせてもらえると」


「大丈夫よ、私にも関係のあることだし。さ、遠慮しないで中へどうぞ」


 そう言って領主邸の中へ案内してくれる指導者らしき鼠人族のお姉さん…というよりロゼさんやステラさん達と雰囲気が似てるからお母さんだろうな。

 後に付いて後ろ姿を眺めてると、頭には控え目な丸耳、細いネズミの尻尾が少し大き目なお尻に合わせてゆらゆらと揺れている。

 歩き方から凛々しい感じを受ける、指導者をしてるくらいだから当然か。


 一先ずこうして勇者達に会えた…予想してた人達とは違ったけど、全く無関係じゃなく身内だったわけだし、リオが知りたい事は聞けるんじゃないかな、と。

 あとは…俺が気を付けないとだよなぁ……。

 どうやって気を付ければいいのか皆目検討つかないんですけどね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ