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#24 仕事組のお迎えにて



「ただい…」


 ま、とドアを開けながら言おうとしたら、目の前に人が。

 俺と入れ違いで外にでも出ようとしてたんだろうか。

 いや、そんなことよりっ!


「待ったっ!ちょっと待てよ、えっとな……チェル…いやっ、キャムだっ!」


「お帰りなさいませ、ナオト様。お呼びですか?」


 …奥からもう一人サイドテールの娘がやって来て、そっちの娘が俺に返事してきた…くっ、また外したのか……。

 やっぱり髪型以外で区別が付けられない…リベンジ失敗だ。

 くそっ、ベッドの上ならもう確実に分かるのにっ!

 何故ならば、キャムには右胸の下の方に、チェルにはお尻の左側に、パッと見痣っぽい小さな紋章みたいなものが付いてるからだ。

 そう、お風呂でじっくり二人を観察させてもらった結果、見つけたのだよっ!


 …二人を剥かなきゃ区別付かないとか無いわ。



「「愛が足りてませんね」」



「愛なのか、そこは…もっと二人に愛情注がないとダメってこと?」


「そうですね。胸やお尻で区別を付けられるのはどうかと思いますし」


「熱い視線を注いでくれるのは満更でもありませんでしたけど」


 …バレバレでした。

 そりゃあんだけマジマジと見てたらバレるに決まってるよな…。

 いや、でもそこだけ見てたわけじゃ無いから、その紋章っぽいものを見つけた後は違う所で区別付けようと雑念抜き…うん、大体抜けてたはず、それで頑張ったんだよ、ホントにっ。

 結局そこ以外俺には全く同じようにしか見えなかったんですけどね…。


「それと抱かれる前に分かっててもらわないと困ります」


「何でそこ抱く前提なのっ!?」



「「メイドですから」」



「関係無いよなそれっ!?」


 こっちの世界のメイドは夜伽も含むって?そんなバカなっ。

 いや、それ以前に俺は貴族じゃないんだから正確には君達メイドじゃなくて住み込みのハウスキーパーって認識なんだって!

 

「冗談はさておき、ナオト様お一人で戻られたという事は、無事獣連邦国…シータ様達のご実家へお着きになられたのですね」


「え、あー、そう、無事着いたよ…」


 ホントこの二人は俺をからかって遊んでるよな…まぁ悪い気は全然しないんだけど。

 寧ろ気兼ね無しって感じでちょっと嬉しかったり。


「では他の皆様をお迎えに?」


「そうそう。けどリズ達はまだ仕事だよな?」


「はい。リズ様、ファル様、ウェナ様はまだお戻りになっておりません」


「まぁそうだよな…やっぱり迎えに行ってみるか。じゃあちょっとリズ達の所先に行ってくるから、他の皆に出かける準備しといてって伝えといてくれるか?」



「「かしこまりました、お伝えしておきます」」



「よろしく」


 やっぱりまだ仕事中ってことでリズ達は家に居なかった。

 帰ってくる時間には少し早いけど、向こうの皆を待たせるわけにもいかないし、連れてきちゃおう。


 ってことでまずリズの所へ。

 既に転移先として固定されちゃってる裏口から普通に入る俺…慣れ過ぎだとも思うけど、もうリズが居るからいいかな、って。


 中に入ると時間的にクエスト終わりの冒険者が多いらしく、受付カウンターはそこそこ忙しそうだった。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「はい、こちらが今回の報酬となります。今日もご苦労様でした」


「あー、ユリカさんのその一言、やっぱいいなぁ」


「皆さんがご無事で何よりです。お疲れでしょうから酒場でゆっくりしていらしては?」


「もちろんっ!そんでまた明日も頑張るぜっ!」


「はい、明日もお待ちしてますね。あ、でも無理はなさらないように…」


「大丈夫だって!そんなヤワなやつここにゃいないからよっ!」


「そうそう!んじゃユリカさん、またよろしくなっ!」


「はい、お疲れ様でした。またよろしくお願いします」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 裏口の一番近くの窓口に居た優里香さんがまず目に入って、冒険者達とのやり取りが聞こえてきた。

 うん、もう大分慣れた感じでどこから見ても受付嬢だな。

 その証拠に優里香さんの窓口が一番列作ってるし。

 最初は不安そうだったけど、今はそんなこと微塵も感じさせないで、流れるように業務を熟してる。


 っと、見惚れてる場合じゃなかった、さてリズは、と。

 あれ、窓口には居ないな、丁度休憩中か?まさかサボってるわけじゃないだろうな…。

 受付カウンター内を勝手に歩き回るのは流石にまだ抵抗あるから、知ってる人に聞いてみようと思って辺りを見回したら、奥のチーフ席にクリス女史と…ショーが居た。

 けど、いつもみたいにクリス女史がデレっとした感じじゃなく、二人共真剣な顔して話してる。

 見慣れないしちょっと話し掛け辛い雰囲気だけど、あまり時間かけられないからな…二人には悪いけど割り込ませてもらってパパっと聞いちゃおう。


「ショー、クリスさん」


「あれ?ナオト君、いつ戻って来たの?」


「あー、いや、戻って来たわけじゃないんだ。向こうに着いたからリズを迎えにきたんだよ」


「そう、無事着いたのね、良かったわ。リズならフィルの所にいるわ、さっき呼ばれてね。すぐ戻ってくると思うわよ」


 リズはフィルさんに呼ばれたのか…。

 仕事の話で呼ばれたならいいけど、普段の勤務態度とか注意されてるわけじゃないよな。


「そうですか。まだ勤務時間内ですけど連れてっても大丈夫ですか?」


「ええ、問題無いわよ。リズったらナオトさんが行ってから休み無しで働いてたんだから。この日のためにって、ね」


「えっ?そうなんですか?あのリズが…」


「僕から見ても彼女はよく頑張ってくれてたと思うよ。ナオト君と一緒になってからはガラッと変わっちゃったよね、ホント」


「いい方向に変わってくれて良かったわ。この調子なら私の後を任せても問題無さそうだし」


 リズが…俺や皆の前だとお調子者ですぐフザケたりする、あのちっちゃいリズが?

 でもクリス女史やショーがこう言ってるんだから本当にそうなんだろう。

 リズ…お前本当にいい娘だな、ちっちゃいけど。

 それはそうとクリス女史、リズに後を任せるって…。


「私の後をって…クリスさん、辞めちゃうんですか?」


「あー、いや、うん、別に辞めるわけじゃなくて、少し長い休みをね…」


「長期休暇…どれくらいの?」


「えっと…1年くらい、かな」


 …ん?それってつまり…所謂そういうこと?


「え?もしかして……」


「ふふっ、そうなの。まだ分かったばかりだから一部の人にしか言ってないし、それにもう少しここにいるつもりよ、私は」


「僕としてはもう休んでほしいところなんだけどね」


「それは…おめでとうございます、でいいんですよね?」


「もちろんよ。ショーちゃんとの愛の結晶なんだから。うふふっ」


「まさかこの僕が父親になるとか思ってもみなかったよ…。けど、こうなったからにはクリスと、お腹の子のためにも頑張るよ。今まで以上にね」


 なんとクリス女史がオメデタでしたっ。

 ショーは何となく苦労してそうだと思ってたんだけどなぁ…。


「なぁ、ちょっとショー」


「ん?なに?」


 クリス女史から少し引き離しコソッと小声で聞いてみる。


「いつも困ってる感じに見えてたんだけど、ヤる事ヤッてたんだな」


「あ、あれはその…人前で流石にあの扱いは男として恥ずかしかったってだけで…二人きりの時とかは全然構わないというか、むしろ好きだし……」


「あー、そういうことね。納得した」


 なんだ、クリス女史が一方的にってわけじゃなかったんだ。

 てっきりショーが喰われたのかと思ったけど、そんな事は無いってことね。

 ならこの結果は多いに喜ばしいってわけだ。

 真剣な顔して話してたのはこの件だったのか。


「そうですか。でもこんなめでたい事なのにまだ一部の人にしか言ってないって、どうしてですか?」


「私の両親はこの街にいるからすぐに話したんだけど、ショーの両親にはまだ伝えてないのよ…。中々休みが上手く合わなくてね。皆にはそれからと思って。フィルにだけは伝えてあるけど」


「なるほど。ショーの実家は遠いのか?」


「そんなには遠くないよ。空崩からくずの森の近くだし」


 空崩からくずの森…俺がこの世界に初めて降り立ったあの森の近くか。

 それなら転移で行けるよな。


「あそこか。なら俺が戻って来たら送ってあげるよ。時間短縮出来るだろう?」


「…いいのかい?」


「クリスさんに無理はさせられないだろ?俺だって世話になってるんだしそれくらいはさせてくれよ。まぁ、それくらいしか出来ないんだけどな…」


「十分過ぎるわよ、それは。けれどもそうしてもらえるととても助かるわ」


「じゃあ決まりですね。戻って来るのがいつになるかはっきりしてないんですけど、それでも大丈夫ですか?」


「そこまで急いではいないし大丈夫だよ。それにナオト君の転移で送ってくれるなら、まとまった休みの調整も必要無いだろうし、ナオト君の都合に合わせられるよ」


「了解、それじゃ戻って来たらってことで」


「ありがとう、ナオトさん」


「いえいえ」


 身重で旅はキツいだろうし、身体は大事にしないと。

 お世話になった恩を返すには丁度いいかな、ラナやリズの分も含めて。



「あっ!ナオトっ!」


 クリス女史とショーとちょっとした約束をしてたら、奥の階段からリズがやって来た。

 フィルさんとの話は終わったらしいな。


「リズ、迎えに来たぞ」


「そっか、無事着いたのねっ。それじゃあチーフ、上がってもいいですかっ?」


「ええ、みんなとゆっくりしてきなさい。楽しみにしてたんでしょう?」


「それはもう!この日のために頑張っちゃいましたっ」


「よくやってくれてたよね、本当に。だから目一杯楽しんできなよ」


「はいっ!じゃあ行ってきますねっ」



 二人に快く見送られて、ギルド裏口からまた転移した…今度はファルのいる情報開示局へ。

 中に入るとファルは…相変わらず暇そうだった。

 受付窓口には座っているんだけど、下を向いて何かやってる…多分本とか読んでるんじゃないかな。


「ワタシが呼んでくるから、ナオトはここで待っててー」


「分かった、じゃあ頼むな」


 小走りにファルの窓口へ向かって行ったリズ。

 ファルが暇そうだってことは、漂流者は来てないってことだよな。

 そうポンポン来るような感じでも無いのか…どれくらいの頻度なんだろ?

 これも今度エクリィに会った時聞いてみるか。


 そんなに待つ事なくリズがファルを連れて来た。

 けど、なんだろ?ファルが少しやつれた感じに見えるんだけど…気のせいか?


「ナオト様、お帰りなさい」


「ただいまファル。えっと、少し疲れてる?」


「あ、いえ。疲れているわけでは…」


「ちょっとナオト、そんなの聞かなくても分かるでしょ?お腹空かしてるだけよっ」


「お腹…って、えっ!?もしかして俺達が行ってから食べてないのかっ!?」


「実を言うと…はい……」


「なんでっ!?」


「なんでって…それ聞くの?ナオトが」


「……あっ、俺のためかっ!いや待って、そんな命削るような真似しないでくれよっ!俺のためっていうならそっちの方が大事だってっ!」


「もー分かってないなぁーナオトは。ファルはもうナオトのしか食べられない身体になっちゃったんだってば」


「あ、いえ、食べられないことはないと思うんですけど、その、食べたくないといいますか…」


「そこまでだったのか…。なら先に言ってくれよっ、ファルのために戻って来ることだって出来たのにっ」


 まさか断食状態になってるとは思いもしなかった…。

 家にはセヴァルやカッツがいるんだし、普通に食事してるのかと…。


「そんなナオトの手煩わせるようなことするわけ無いじゃない。ファルがそうしたいからしてるだけよ。ねっ、ファル」


「はい、リズの言う通り私の意思でそうしているだけですので。大丈夫ですよ、そんな命に関わるほどではありませんし」


「けど、俺が見ても分かるくらいなのに…」


「そう思うなら今日の夜にでも食べさせてあげてよ。ナオトだって溜まってるんじゃないの?あ、姫ちゃん達で解消してた?」


「そんな疲れさすようなことするかっ!あぁ溜まってますよっ、悪いかっ!」


「だったらいいじゃない、その分ファルに食べさせてあげれば。もちろんその時はワタシも協力するからさっ」


 そうしてあげるのは当然として、そこまで俺に操を立ててる感じになってるなんて…。

 それ、サキュバスの本能みたいなものなんだろうし、夢の中だって分かってるんだから何やってたって気にしないって、そこまで狭量じゃないぞ俺は…現実ならともかく。

 ただ、そうまでしてくれてるのが俺としては凄く嬉しいってのも事実だけど…。

 

「分かった。今晩は多分みんなで向こうに泊まるだろうから、それまでもつ?ファル」


「はいっ、大丈夫です、ありがとうごさいますっ」


「今晩はごちそうよ?ファル。良かったねーっ」


「そうですねっ、またあの極上の精気が味わえると思うと、お腹を空かせたかいがあるというものです、ふふっ」


 ファルがそれでいいならいいんだけど、頼むから俺の為に無理はしないでくれ…まぁ、本当にヤバくなったらどうにかするとは思うけど。

 サラッと自分も入ってくる気満々なリズはちょっと置いとこう。


 で、最後にウェナの居るノルチェに来たら、丁度入り口の会計カウンターに居た。


「いらっ…あっ!お兄さんっ!」


「ただいまウェナ。向こうに着いたから迎えに来たよ」


「無事着いたんですねっ、良かったーっ!」


 カウンターにも関わらず俺を見て声を張り、とびっきりの笑顔を見せてくれるウェナ…この笑顔、こっちまで強制的に嬉しくさせてくれるよな。

 俺だけじゃなくてリズ、ファルもニコニコしてるし。


「ウェナ、やかましい。こっちにまで聞こえてきたぞ」


「あっごめんっ、嬉しくってつい…えへへっ」


 奥からシャリーがやって来てウェナを注意した。

 確かに店内の客までこっち見てるしな…まぁ皆の視線は生温かいから大丈夫だと思うけど。


「何だ、兄さん一人だけか。シー達はどうした」


「まだ向こうにいるよ。ウェナ迎えに来ただけだし」


「あー、また戻るのか。それでまたアタシに頼るってわけだ」


「うっ…ダ、ダメか?」


「…そうだな、戻って来たら見返り要求するぞ。それなら任されてやってもいい」


 まぁ、こっちからお願いしてるからお礼は当然しようと思ってたけど…見返りって言われると何要求されるかちょっと怖いな、シャリーだしとんでもない要求とかしてきそうで。

 でも仕方無いよな、ウェナ連れ出すんだしここは甘んじて受けるしか。


「分かった、それで…」


「よし、言質は取ったぞ」


「ちょっとシャー、あんまりお兄さんに無茶なこと要求しないでよっ?」


「フッ…さてどうだろうな?ま、戻って来てからの楽しみにしといてくれ。ほれ、さっさと準備してこい」


「うん、分かった。ありがとねっ、シャー」


 そう言って制服を着替えるために奥へ引っ込んで行ったウェナ。

 あの調子ならすぐ戻って来るだろう。


「こっちのみんな全員連れて行くのか?」


「そのつもりだけど」


「…そうか」


「ははーん…シャリーちゃん、さてはアナタも行きたいんでしょー」


「…まぁ、な。今回は我慢してやる。けど戻って来たら覚悟しておけよ」


「覚悟って…俺ホント何やらされるんだよ……」


 もう既に見返り要求がおっかないんですが。

 でもまぁ今までもいろいろと頼んでたし、言われた通り覚悟決めておくか。

 シャリーだから本当に何要求してくるかさっぱり予想付かない…。


 ウェナが帰り支度をして戻って来た後、シャリーのニヤリとした笑顔に見送られて、3人を連れ我が家へ転移した。


 何か迎えに来ただけなのにいろいろと約束事が増えちゃったな…忘れないようにしないと。



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