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#23 ラナの実家へ



「リオーっ、悪い待たせた!降りてきていいぞーっ」


「……了、解……マスター………」


 上空で待機してたリオに声を掛けると、ゆっくりと降下してきた。

 地上の俺達からは少し離れた所に無事着地した後、身体を屈めて尻尾を丸める。

 背に乗せていた皆が降りたのを確認したところでリオが人化して、全員揃ってこちらに向かって来た。


「あら?ガズから聞いてたより人数が多いような…」


「ん?もう一人男がいるぜ?」


 ガズさんからは俺の話しか聞いてないだろうし、弘史達のことは知らないのも当然でしょうね。


「それにあれ、モリーちゃんじゃない?」


「あーホントだ。けど何でモリーまでいんだ?」


 俺達の元まで歩いてきている皆を見て素朴な疑問を投げてくるロゼさんとイーナさん。

 二人共モリーが気になったみたい。


「ええと、実はもう1パーティーと一緒に来てまして、モリーはそっちのパーティーメンバーなんですよ」


「あら、そうなのね。でもあれでしょ?ラナが来るから一緒に付いて来たんじゃない?」


「それもありますけど、理由は俺と同じですね…」


「同じってことは、あの男がモリーの相手ってわけかよ?」


「はい、あいつも俺と同じ漂流者なんですよ」


 残念ながら同郷なんですよね。

 頼むから余計なことしないでくれよ、って思ってるそばからキョロキョロしまくってるし、あいつは…。

 広場の周りには若干人が集まりかけてるから、そっちを気にしてるのが丸分かりだ。

 


「ほう、あの男も漂流者なのか…」


「おいっオヤジっ、また力試しとかしだすんじゃねーぞっ」


「ダイ、そういうのは自分の領地でやってくれ、頼むから」


「む。すまん、やはり虎人族の血が…」


「だからそれお前だけだって。何でもかんでも血のせいにするなよ…」


 弘史、お前も狙われてるぞ。

 それにしてもアーネの親父さん、本当に闘うの好きなのね…ルドさんの話だと虎人族の皆がそうだってわけでも無さそうだ。

 こんな人が領主なら戦闘部族になっちゃってそうだと思ったけど。


 そうこうしてる内に皆が俺達の所までやって来たんだけど、挨拶もすっ飛ばしてロゼさんがまず第一声を上げた。



「あらっ!まあまあまあっ!ルドっ、見てっ!」


「こいつは…まさかもうそこまでとはっ」


「もうこれはあれねっ!街上げてお祝いしないとっ!」


 …何かとんでもない勘違いをしていませんか?二人共。


「ちょっと父さん、母さん、いきなり何言ってるのよっ」


「何ってラナ、私達おじいちゃんとおばあちゃんになったのよねっ!?」


「ああ、立派な耳と尻尾だ…でかしたぞラナっ!」


「そんなわけ無いじゃないっ!ちょっと考えたら分かるでしょっ、こんな大きな娘が孫なわけないってっ!」

 

 ランを抱っこしてるラナを見てこの言い様、盛大な勘違いもいいところだ…。

 厳密に言うとランは狼だし。

 俺とラナから狼とか、どうやったら出来るのかと。

 遺伝とかそんなレベルじゃなくて、もう突然変異だよな、それきっと。

 もしかして異世界ならあり得るとかじゃないよな…。


「………」


「ラっ、ランちゃんまでママとか言わないでっ!?」

「ぶっ!おいランっ、オマエもフザケ過ぎだっ!」


 なんで周りに合わせてくるんだコイツはっ。

 あ、そういや今ので思い出したけど、ひぃとティシャもやらかしてたよな…シータとアーネに。

 うちのミニマム組はお巫山戯大好きってことですかいっ。


「そうなの…残念。でも可愛いわね、その娘っ」


「えらくラナに懐いてるじゃないか。本当に違うのか?」


「違いますっ。それにこの娘狼だからねっ」


「………」


「犬でいいって、ランちゃんはまた…」


「と、とりあえずランは置いといて、ご挨拶を…」


 コイツに構ってるとキリ無いわ。

 全く調子にのりやがって…可愛いからって何でも許されると思うなよっ、俺は許すけどっ!


「そうだな。ここじゃ何だから館に案内するよ。シータとマールの両親もいるしな」


「ウチの親も来とるんですか?」

「わたしのぉ親もぉですかぁ〜?」


「ええ、館で待ってるわよ。流石にモリーちゃんの両親は来てないけどね」


「アタシの親が来るわけないでしょうっ」


「あら、そんなこと無いわよ?ラナとモリーちゃんが出て行ってからはちょくちょく会ってるもの」



「「えっ!?」」



 そうなんだ、やっぱり犬猿って程でもないんじゃないか。

 ラナとモリーは驚いてるみたいだけど、どうやら俺が思ってた通りっぽいな。

 この世界で出会ってきた人達見てると、そんな啀み合ったりするような感じ全然受けなかったしな…皆気の良い優しい人ばっかりだから。


「あなた達がそんなだから二人の前では遠慮してただけで、私とサナルは仲良しよ?」


「し、知らなかった…」


「ちょっとっ!ママったら何やってるのよっ!いつの間にそんな仲良くなんてズル…じゃないっ、ウッキーっ!会ったらまずママを問い詰めるっ!」


「はいはい、うふふっ。それじゃみんな行きましょっ」



 ロゼさんが犬猿仲良し発言でモリーを憤らせたのも気にせず、俺達を館へ案内するために歩き出した。

 それに俺達もゾロゾロと付いていったんだけど、何故か弘史もそうするのが当たり前のように付いてきてる…モリーもブツブツいいながら。

 弘史なんかキョロキョロ周り見てニコニコ…いや、ニヤニヤしながら歩いてるし。

 君等は猿人族の所へ行くんじゃないのかと。

 弘史がそんなんだから仕方無く付いてきてるんであろう知美ちゃんとフラムを見たら丁度目が合って、「ごご、ごめんなさいっ」「すまない…」って目で訴えてるようだった。

 いやまぁ、二人は何も悪くないからそんな目しなくても大丈夫ですよ。



 この街で一番大きな建物である領主館に着くと、入り口で4人と、その後ろに使用人と思われる数名が待っていた。

 4人は間違い無くシータとマールの両親だろうな…二人と同じ耳と尻尾が付いてるし。

 マールの両親の尻尾は見えないけど耳が長いから間違いようも無い。

 二人共マールと同じ黒ウサミミで、アーネと一緒でやっぱりお義母さんはマールそっくりだ。

 お義父さんの方は身長が高く、ダイさんと同じくらいあるように見えるけど、ヒョロっとしてて如何にもノッポですって感じ。

 シータの両親はと言うと…母親の方は皆と同じで

一目で母娘だと分かる。

 つまり、姫達全員歳取るとこんな美人になるのかっていう見本が目の前にいる感じです、それだけでもう素敵な未来が確約された、と。

 で、父親の方…身体は人なんだけど顔だけは狐のまんまだった。

 ダイさんやルドさん、それにマールの父親も顔まで人化してるけど、シータの父親だけ違うのはどうしてなんだろ?

 けど、これぞ獣人って感じの貫禄があっていいなぁ。

 二人は尻尾が三尾あってもふもふ感がスゴい…もしかしてシータもそうなるってこと?これは期待しててもいいのかな?


「なんだ4人とも、わざわざ出迎えてくれたのか?」


「そら気になるさかい、当然やろ」


「そうそう、久しぶりに娘と会えるんだぁしぃねぇ」


「ならばフォスもラビルも来ればよかったではないか、俺と共に」


「サラッとワテ等を巻き込まんといてくれるか?」


「ダイが何してきたかよく分かったぁよぉ…」


 父親同士、領主4人が入り口で話し出した。

 見てると仲良さそうだ、お互い気の許せる仲って感じで。

 シータ達が仲良いのも頷けるな、うん。


「御前様方、こないな所で話始めんと早う中へ案内せなアカンやろ?」


「娘達もぉ長旅でぇ疲れてるだろうしぃねぇ」


「そうだぜっ、早く中入ってゆっくり酒飲みながら話そうやっ」


「なにもう飲む気になってるのよ…相変わらずなんだから……」


「酒はもちろん出すぞ?まぁとにかく中にはいってからだな。さぁ入ってくれみんな」


「お邪魔します」


 母親達に気遣われて早速中へ入り、広々とした客間に案内してもらい、皆腰を落ち着けた。

 今日は殆どリオの上で寛いでたみたいなもんだから、大した疲れは皆ないだろうな。

 リオが一番疲れてるだろう、後でしっかり労ってやらないと、魔力補充もしないとだし。

 あ、でもその前に、この広さなら大丈夫かな?


「あの、来て早々すみません。ご迷惑でなければもう少し人を連れてきたいんですが…他にも皆さんに会いたいという人達がいまして」


「それは構わないが…何処から連れてくるんだ?」


「自分達が今住んでるガルムドゲルンからですけど」


「今からかいな。どないして連れてくるん?」


「おとん、ナオはな、転移が使えるんやでっ、スゴいやろっ」


「あぁ、そういや漂流者やったな、ナオトはんは」


「はい。なのでそんなに時間もかけず連れて来れると思うんですが…大丈夫ですか?」


「それはアレか?他のナオトの相手ってことかよ?」


「えっと…全員ではないですけど、含まれてます……」


「ならいいんじゃない?むしろ呼んでもらった方がいいんじゃないかしら。ねぇルド」


「そうだな、娘達と一緒なんだからそうした方がいいだろうな。分かった、ぜひ連れてきてくれ」


「ありがとうごさいます。では一旦失礼します」


 領主様直々のお許しをいただけたから、早速俺一人ガルムドゲルンへ転移した。

 時間的には日が落ちるちょっと前だから、仕事組は帰ってきてないだろうな…どうしようか?

 仕事終わってからの方がってのは分かってるんだけど、皆の職場回ったら多分早上がりさせてくれそうなんだよな…。

 こっちの都合で悪いけどお願いしてみるか、何て考えながら転移してきた我が家のドアを開けた。

 


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