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#18 勝手にアレンジされた設定



□■□■□






「ラナ…リオっ!」


 目の前に居た二人が、少し目を離した隙に突然居なくなった。

 確かに目の前に居たんだ、それは間違い無い。

 この一瞬で居なくなるなんて…そんなスキルは二人共持ってなかったはずだし、仮に持っていたとしても今ここで使う意味は無いはず。

 つまり…何かに巻き込まれたってことだろう!

 冗談じゃないっ、何で二人がこんなことにならなきゃいけないんだっ!

 つい今しがた、リオの背中に乗れることを楽しみに、リオだって皆を自分の背に乗せるのを楽しみにしてるって話してたばかりなのに…っ!



[マスター]



 アコが呼び掛けてきたがそれどころじゃない俺は、ラナとリオが座っていた場所へ移動し、痕跡を確かめるよう辺りを見回した…けど、見た通り何も無い。



「[マスター]」



 今度は音声出力に切り替えて呼び掛けてきた。

 うるさいっ、お前に構ってる場合じゃないってことくらい分かるだろっ!

 その場から少し離れたシータ達が眠っているテントの方まで向かっていく。

 あの短時間ではあり得ないと思いつつ、それでも確かめずにはいられなくて。


「ラナ…っ!リオォォオオっ!!」



「[落ち着いてください、マスター]」



 ふざけんなっ、こんなの落ち着いてられるわけないだろーがっ!

 何でそんなこと言えるんだお前はっ!


 二人の名を叫びながら、そしてアコの台詞に憤慨しながらテントに向かっていたら、俺の叫び声を聞いて起きたのか、中からシータが出てきた。


「…どうしたん?ナオ…。何かあったんか…?」


「ラナとリオが俺の目の前で消えたんだよっ!」


「…??何言うとんの?ラナとリオならそこにおるやん……」


「いやっ、だからっ……えっ?」


 シータはそう言って俺の後ろ、ラナとリオが消えた辺りを指差す。

 最初はシータが何を言ってるのか分からずまた説明しようとした俺も、シータが指を差すもんだからそれに従って振り返ってみると…本当にラナとリオが立ってそこにいた。


「…んだよ、騒がしーなぁ……」


「…どうしたぁのぉ〜?ふぁぁ〜……」


 シータに続きアーネとマールまで起こしてしまったらしく、二人もテントから這い出てきた。


 俺はラナとリオがそこに居ることに激しく安堵した…二人共無事で……ん?無事?


 二人をよぉく見てみると…ラナは両腕で黒い仔犬っぽいのを抱きかかえている。

 リオは…右肩に黒い鳥を乗せていた。


 突然消えて現れたと思ったら、二人共ペット付…何がどうなってるのかさっぱり理解出来ない。


 しかし、黒い犬と黒い鳥…ん?んんんっ?

 あれっ?もしかして…犬は狼で鳥は鴉じゃないか…?

 

 ってことは、まさか……



「……邪狼シィエランと…邪鴉シィエィア……か…?」



 と、俺が呼んだ途端、一匹と一羽が二人の元を離れ俺に向かって駆けて、飛んできた…が、途中で変化し俺の胸に飛び込んで来た時には、何故か二人の全裸の少女になってた。


 …あー、あったわ、そういやそんな設定。

 黒い狼と黒い鴉を相棒として従えてるって。

 いや、だったらこの世界に来た最初から側に居てくれよ、なんでこんな所に居るんだよっ。

 ラナとリオを消したのはコイツらだったってことか、びっくりさせるなよっまったく!


 それとな、人化の設定はした覚えないんだけどっ!何で二人共少女になってるんだよっ!

 これもあれかっ、称号のせいとか言わないよなっ!

 俺の痛い設定にまで食い込んでくるとか冗談じゃないってのっ!!



「…やっぱりナオトさん絡みだったんですね」


「……マスター、に……関係…あったん、だね………」



 消えていた二人が普通に歩み寄ってくる。

 二人共身体に異常は見受けられない。

 というか、コイツらが原因なら闇に囚われてただけで、そこに居たってことじゃ…気が動転しててそんな事にも気付かなかったとか。



[だから言ったじゃないですか、落ち着いてください、と]



 うっ…わ、悪いアコ…。

 けどいきなり目の前から消えて冷静でいられるようなメンタルが俺にあるわけ無いだろ…元の世界の同年代と比べて精神年齢低いのなんて自分でも分かってるし、落ち着いた大人な対応なんか出来るはずもない。

 こういう事にはすぐ動揺して焦るのはデフォなんだって。


 とっ、とりあえず二人も無事戻って来たし、それで何も問題無い…わけでも無いか。

 ホント俺が書き溜めた設定そのまま反映されてるんだな…どうやってるのか知らないけど。

 しかも勝手にアレンジされやがってるし。

 これあれだな、エクリィが「ねぇっ、どうだった?私の演出っ!ねぇねぇっ!」とか言ってきそうなんだけど。


 そしてまた増えたとか言わないよな…称号見るの怖いわ。



「よかったね、ちゃんと会えて」


 俺の側まで来たラナが、俺に抱き付いてる狼耳を付けた少女の方に話し掛ける。

 抱き付いたまま顔だけラナの方へ振り向かせた邪狼シィエラン


「………」


「ありがとうって?ふふっ、どういたしまして」


 邪狼シィエランは言葉を発していないのに、ラナは理解したらしい。

 当然俺にも理解出来たけど。

 ただ、他の人には何も分からなかったみたいだ。


「何やラナ、この子達の言ってること分かるんか?」


「っつーかコイツら誰なんだよっ。また増やしたのか?ナオト」


「またとか言うなっ!コイツらは…俺の従者みたいなもんだよ。こっちの耳付きが邪狼シィエランで、黒翼付きが邪鴉シィエィアだ」


「へぇ〜、可愛らしいぃ従者だぁねぇ〜、ふふっ。ランちゃんにぃイアちゃんかぁなぁ〜?」


 人型にしたのは俺じゃないからなっ。

 狼と鴉でいいのに何で人化させたし…。


 …しっかしなんだよ、コイツらの可愛さときたら。


 いやいや、だから可愛さ求めて創ったわけじゃないんだってのっ!

 カッコよさ!カッコよさを求めてたんだって当時はっ!



「「………」」



「ん?この人達は誰かって?えっと、それはだな…俺の、パーティーメンバーだ」


「何でそこはパーティーなんだよ…ハーレムでいいじゃねぇか」


「せや、ウチなんかもう気分はお嫁さんやで?」


「家にいる時は完全にそうだもんね、シータは」


「ご飯のぉ用意ぃしてる時なんかぁ〜、特にぃねぇ〜。うふふっ」


「……わたし、は…イア、と……同じ…従者、で……いいよ……?………」


「………」


「……そう…。イア、と……同じ、だよ………」


 リオは邪鴉シィエィアの言う事を理解してるらしい。

 わたしと同じ…?って、だから主従は求めてないんだよ、リオ。

 君も、その…俺のお嫁さんです。

 と、まだ声を大にして言えないのは、自分でももう何故だか分からなくなってきてる。

 こうなってるんだからいいだろ…皆もいいっていってるんだし。



「「………」」



「主って…まぁオマエらはそうなっちゃうよな。ところで何でこんな所にいたんだ?」



「「………(フルフルっ」」



「分からないって、そりゃそうか。けどまぁこうして会えたんだから良しとするか」


「とりあえずナオトさん、二人に何か着せてあげませんか?いつまでもそのままは可哀想ですよ」


「え…オマエらこのままでいるの?獣化すればい「「(フルフルフルフルっっ」」……あ、そう………」



 激しく否定された…なんでだよ。

 オマエらは元々魔物じゃないけど従魔みたいな感じで当時の俺が考えてたんだから、それでいいだろ?

 いや、別に嫌ってわけじゃないけど。

 大変可愛らしいですからね、二人共。

 またチビっ娘が増えたなぁ…って、俺的には愛でる対象が増えただけだから、これはこれでいいってことにしておくか。

 ミニマム組がどんどん拡張されていくのはどうなんだろうとは思うけど。

 

「んじゃ、とりあえずこれで我慢してくれ。明日街に着いたら買い揃えてやるから」


 収納から俺の予備のシャツを出して二人に渡す。

 下着とかは無いからこれ一枚で今日は何とか我慢してくれ。

 ブカブカだろうから下まで隠れるだろ。


「ランちゃん、それ持っておいで。着せてあげる」


「……イア…も………おい、で…………」


 ラナとリオに言われてすんなり言う事を聞く二人。

 俺からシャツを受け取ってテトテトとラナ、リオの所へ向かってった。

 随分懐いてるな…消えてた時に何かあったのか?

 そういやラナは邪狼シィエランの、リオは邪鴉シィエィアの言いたい事が分かってるみたいだな。

 お互い何か通じるものがあったのか、気があったのか…。


 ま、懐かないより懐いてくれる方がいいに決まってるし、何も問題は無いな、うん。


「はい、着れた。ふふっ、ランちゃん可愛いっ。明日街に着いたらお洋服買いに行こうねっ。わたしがうんと可愛らしい服選んであげるっ」


「………」


「主…ナオトさんも一緒に?うん、そうだね。一緒に行こうねっ」


 邪狼シィエラン…って、もうランでいいや、ランはすんなり着れたみたいだ。

 イアは翼があるからリオが背中に切れ込み入れてる。


「……イア…翼、たたん…で……この、穴…から……。……そう……。……イア、も……着れた、ね……。……うん…可愛、い…………」


「………」


「……わたし、の…服も…?……うん…もち、ろん……。……ラン、と…マスター…と……一緒、に…ね………」



「なんかいいな、それ…。二人にしか分からねぇとかズリぃぞ……」


「ホンマやな…ウチらも話してみたいわ」


「ナオちゃん〜、どうにかぁならないのぉ〜?」


「あー、うん、多分無理…」


 元々人化の設定なんかしてないし、従魔として意思疎通出来るくらいにしか考えてなかったし。

 ラナとリオが出来るようになったのは二人の闇に囚われたからなんだろうか…よく分からんな。


 それより何なんだ、コイツらの愛らしさは。

 ブカブカのシャツが何故こんなにも似合うのかと。

 人化は自分で考えた設定じゃないけど、これ見ちゃったらグッジョブとしか言いようがないんだが。


 とにかく、こうなったら明日はコイツらを目一杯可愛くしてやろう…予想外の楽しみが増えたってことで、うん。



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