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#14 お誘い(茶店)



「それで、何処に連れてかれるんですか、自分は」


 防具屋を出て若干身構える俺、さっき茶店って言ってたけど、ホントに話だけで済むのか怪しいと思ってる。

 なんかやらされそうな気がしなくもない。


「そんなにぃ〜警戒しなくてもぉ〜大丈夫ですよぉ〜」


「ホンマに話したいだけなんや、せやからさっき言った通り茶店にでもどうやろかって」


「そうだぜっ、アタイらがなにかするワケないじゃんか」


 いや、お前が言うか、それ。

 さっき喧嘩吹っ掛けてきたのはどこのどいつだよ、棚に上げ過ぎだろ、まったく…。


「はぁ、分かりました、じゃあ付いていきますよ」


「うっし!んじゃ行くか!いつもの所でいいよな?」


「そやね、あそこのお茶飲みながら落ち着いて話そか」


「あぁ〜私はぁ〜甘いものぉ食べながらでいぃい〜?」


 話よりそっちが主目的なんじゃないか…?えっと、マールだっけか。



 三人娘が歩き出したから、少し後ろから黙って付いていくことに。


 3人横に並んでる後ろ姿を見てたんだけど…身長は全員俺より低いな、3人の中だとマールが1番高い(耳を除いても)、次にシータ、アーネが1番ちっちゃい。

 ちっちゃいくせにあの態度と癖は、身長じゃなくて獣の種族に寄るんだろうか。

 アーネは多分虎の獣人だろう、マールが兎、シータが狐の獣人で間違ってないと思う。


 尻尾が見えてるのはアーネだけ、マールは法衣っぽい服で、シータはローブで隠れてて見えない。

 身体付きはマールが服の上からでも分かるくらい肉感的でどこもかしこも柔らかそうに見える。

 店の中で前から見た感じだと、そこそこ…いや、かなりの大きさのものをお持ちでした、パッと見ただけだけど…間違っても凝視はしてない、してないったらしてない。


 シータはローブで隠れてて良く分からないけど、まぁ、普通の女の娘っぽい感じはする、ただ…お尻の辺りの盛り上がりが、俺的に大変気になる所ではある…あれ絶対もふもふしてるぞ、想像しただけでモフモフしたくなる程…ってこれはマズい、自重自重……。


 アーネは小柄だけあって全体的に割りかし細めだな、前も含めて…確かスカウトって言ってたから俊敏性は高いんだろう。

 縞模様の細めの尻尾が揺れてるのを見ると…無性に握りたくなるのは俺だけじゃない、はずだ……あれ?俺なんでこんなにケモノ部分に反応してるんだ…?なんかおかしいぞ?


 なんて前の三人娘がダベりながら歩いてるのを見て考えてたら、目的の店に着いたらしい。

 コーヒーカップにナイフとフォークがクロスして書かれた看板が入り口上に下がってる、うん、如何にも茶店って感じだな。


 3人が中に入っていくのを見て、俺もそれに続いて入ると、ウェイトレスさんが向こうからやって来た。


「いらっしゃいませー!『ノルチェシェピア』へようこそー!4名様ですかー?って、なんだ、アーちゃんにマーちゃん、シーちゃんかぁ」


 やたらと元気の良いウェイトレスさんだな…三人娘とは知り合いなのか、そういやさっきいつもの所って言ってたもんな。


「よう、ウェナ、ちゃんと仕事してっか?」


「見て分かるでしょー?アーちゃんと違ってちゃーんと仕事してますぅー」


「あ?アタイと違ってってどういうこったよ!」


「アーネ、ちょっと黙っといて。ウェナ、今日は連れがいるから4人でお願い」


「連れって…アレアレアレぇ〜?もしかして、こちらの男性だ・ん・せ・いの方ですかぁー?」


 そこ、男だって強調するようなところなのか…?変なところを…って、なんだ?店内にいる客が一斉にこっち向いたぞ…。





───ザワザワザワ、ガタガタッ!


「三獣姫が男連れだって!?」


「マズいっ、早くここ出ないとっ!」


「ちょっと待ってよ、まだ食べてる途中なのにっ!」


「こいつはギルド報告事案だな…早速行かねば!」





 何やら不穏な事言われてる気がするんだが…数人はすぐ席立って出て行こうとしてるし。

 何が始まるんだよ…お茶しに来ただけだろ?違うのか?


「ウェナちゃん〜?余計なコト言っちゃうとぉぉ〜」


「わー!あは、あはは、ごめん!ごめんなさいマーちゃん!えと、あの、そ、そう!ケーキ!ケーキサービスするからっ!」


 あ、マールってそういう娘なのか…ウェナってウェイトレスの怯え方がおかしいわ。


「ウェナはいつも一言多すぎなんや、ちょっとは自重しいな。それよか、はよ席案内してや」


「あ、うんうん!案内する!こちらへどうぞー」


 マールの視線に怯えながらそそくさと席の方へ向かって行った…逃げたなあれは。

 ウェナが案内してくれた席、2脚ずつの椅子で挟まれたテーブル席に、シータと俺、対面にアーネとマールがそれぞれ座ったところで、ウェナがメニューの書いてあるらしい薄っぺらい板を持ってきた。


「ウェナ、ウチはいつものやつで」


「あー、アタイもだな、そんなに腹も減ってねぇし」


「私はぁ〜いつものとぉ〜ウェナちゃんがサービスしてくれるぅ〜ケーキでぇいいよぉ〜」


 おー流石常連客、いつもので通じるのか…俺もいつかは言ってみたい、転生前に行きつけの店なんてなかったからな……。


「はーい、了解ー。そちらのお連れさんは何にします?」


 って言われてもな…あれ?そういや俺、初めてこっちの世界のもの口にするんじゃ?ここに来るまで結構歩いたよな…の割には腹減ってない気がするんだけど、なんでだろ?まぁ、とりあえず飲み物くらいにしとこうか。

 どれ、メニューは…と。

 あれ、字は読めるのか…そういや外歩いてる時も店の看板とか普通に読めてたな、全然気にしてなかったけど。

 でも、字読めたとしてもどんな飲み物か分からんな…一々内容確認してたら時間掛かりそうだから誰かと同じやつでいいか。


「えっと、シータさんと同じやつでお願いします」


 ちょっと博打っぽいけど、3人の中じゃ1番まともそうなシータと同じものにしてみた。


「かしこまりました!少々お待ちくださいねっ」


 メニューを持って奥に引っ込んでったウェナ、さっきあんなにマール見て怯えてたのに、立ち直り早いなおい。


「なぁ、ナオトはん、ウチらと大した歳変わらんのやろ?さん付けとかそないに畏まらんと普通に話してくれへんか?なんやくすぐったいわ」


「おぉ、そうだぜっ、アタイら相手にそんな敬語なんかいらねーよっ」


「ですねぇ〜。私はぁ〜元々ぉこういう話し方なのでぇ〜あまりぃ気にしないでくださいねぇ〜」


 初対面だし一応失礼無いようにって思ってたけど…アーネ見てるともうどうでも良くなってきたし、普通に話すかな…この面子ならその方が楽そうだし。


「あー、うん、分かった、そうさせてもらうよ。それで、俺に話ってなにかな?こっちの世界に来たばっかりで何も知らないんだけど」


「そうやな…えっと、その、な……ウチらのパーティー見て、正直どう思った…?」


「うーん…正直なところ、バランス悪いなって思ったよ。前衛いないから、大丈夫なのかな?って心配になった」


「やっぱそう見えるよなぁ。後衛と遊撃じゃマトモに戦えねーんだよなぁ…アタイじゃ前衛張れねぇしよー」


 まぁ、単体相手ならアーネが頑張ればタゲ取りくらいは出来なくもないと思うけど、すぐ後衛がヘイト溜めそうだよな…これもゲーム知識だけど。


「だからよ、結構前から前衛募集してんだけどなー、全然来ねぇんだわ、これが」


「全然来なかったの?」


「いや、全然来なかったわけやないんよ。前にいた前衛のメンバーが抜けてからすぐ募集かけて、最初の頃はそれなりに来よったんやけど…」


「私たちとぉ〜中々合わなくてぇ〜…上手くぅ連携がぁ取れなかったりぃ〜、反りがぁ合わなかったりぃしてぇ〜…」


「…みんな長くは続かなかったんや……」


 そうだよな、付け焼き刃でどうにかなるなら苦労はしないだろうしなぁ…それに獣人3人ってところも少し勝手が違う部分があったりするのかもしれないし…連携取るのもそう簡単にはいかないんだろうな…あと、このメンツ、中々濃いからなぁ、合わせるのも大変なんじゃね?と思ったり…特にアーネとか、マールもそれなりに大変そうだけど。


「メンバーの出入りが激しいせいか、みんなから敬遠されてもうたみたいで…」


「今じゃこのザマってわけよ。おかげで下位ランクのクエストしか受けられねぇからポイントも稼げなくてな…」


「最近ちょっとぉ〜無理してぇ〜同ランクのぉクエストを受けたらぁ〜…」


「クエスト連続で失敗しちまってな…あと一回でランク降格ってところまで追い詰められちまったってわけさ」


 確か5回連続失敗でランク降格だったっけ…なるほど、もう後が無いのか。


「でな、もうなりふり構ってられへんさかい、こうして前衛出来そうな人見かけては、声掛けさせてもろてるってわけなんやわ」


「そ、そうなんだ…ま、まぁ、声の掛け方はもうちょっと考えた方がいいと思うけど……」


「あれはぁ〜、アーちゃんのぉ癖なんだけどぉ〜、でもぉ実はぁ〜あれでぇ割とぉ〜相手のことがぁ分かったりぃするんだよねぇ〜」


「えぇ?あれで判断出来るの?」


「第一印象最悪になるから、アーネには止めろっていつも言うとるんやけどな…まぁ、あれやられた相手の出方見れば、大体分かるんよ」


 まぁ、俺的には最悪って程でもないけど、それでも初対面であれはないよなぁ、とは思う。

 ここだけの話、アーネって若干目付き鋭いけど、それで見つめられても全然威圧感とかは感じなかったんだよねぇ…ぶっちゃけると昔実家にいた猫にじぃーっと見つめられてたのを思い出して懐かしい感じがしたっていう。


「大抵のヤツはあれやると、ソッコーで逃げてくんだけどな。あとはたまに突っ掛かってくるヤツな。アタイより喧嘩っ早い時点でダメだろ。ま、その後アタイに返り討ちにされちまう時点でもっとダメなんだけどな、前衛として使い物にならねーって話だよ」


「…何ていうか、こう、俺の常識外の確かめ方だね……まぁ、初対面で喧嘩売るとか、冒険者らしいような気もするというか…。それで、話をしたいってことは、つまり俺はその判断基準で合格したってことなのかな?」


「いや、あれで判断するのはアーネだけで、ウチらはまぁ、参考程度にしとるというか…ナオトはんに話持ち掛けたんは、その、漂流者ってことと、前衛向きの職種ってことで全員一致して、な」


 そういや魔法剣士って言った途端に相談し始めてたな。

 これで大体シータ達が言いたいことは分かったけど、さてどうしようかな…。


「でな、ここまで言ったらもう分かると思うんやけど…ナオトはん、ウチらのパーティーに来てくれへんかな?」


「ナオちゃんがぁ〜来てくれたらぁ〜私たちぃ〜すごぉく助かってぇ嬉しいんだけどなぁ〜」


 ナオちゃんて…マールは誰にでもちゃん付けなのか……なんか小っ恥ずかしいけど、今はとりあえず置いといて。


「パーティーへの勧誘だったんだ…でもこのパーティーで前衛なら盾職の方がいいんじゃない?火力はシータでマールの回復もあるんだし、俺じゃない方がいいと思うんだけど」


 魔法剣士って前衛じゃなくて、どっちかっていうと中衛向きなんじゃないかと思うんだけど…大抵は器用貧乏って場合が多いような。

 まぁ今の俺だと多分前衛も出来るんだろうな、とは思う…厨二病のお陰で。

 実際にはこのパーティーだと、盾職の方がかなり安定するんじゃないだろうか。


「確かにナオトはんの言う通りやと思うんやけど…さっきも言うたように、もうなりふり構ってる場合やないんよ……」


「そうなんだよねぇ〜…私たちぃもう後がないしぃ〜……次のぉクエストまでぇ〜もうあんまりぃ〜猶予も無いんだぁ……」


「だからナオト!アタイらとパーティー組んでくれよ!なっ!」 


 うーん…とは言ってもなぁ、まだクエスト一回も熟してないのにいきなりパーティー組むってのもなぁ……まぁ、その内組んでみたいとは思ったりもしてたけど。


「はいはーい!お待ちどうさまっ!いつものお持ちしましたよーっ」


 お、注文の品が来たみたいだ、ウェナが持ってきた。

 シータと俺はどうやら紅茶みたいな飲み物らしい。

 ティーカップに注がれてる澄んだ茶色…じゃない、なんだこれ、紫か!?待って紫っていったら毒の代表的な色じゃないか?大丈夫なのかこれ…味が全く予想付かないぞ。

 マールもティーカップだけど中身は俺やシータと違って澄んだ赤っぽい色だから、俺の知ってる紅茶にまだ近い、アーネに至ってはグラスに透き通ったちょっと黄色味のある液体だ…これ、賭けに負けたか?


「おおきに、ウェナ」


「ありがとぉ〜ウェナちゃん〜ケーキもぉありがとねぇ〜」


「おーきたきた、ウェナ、ちょっと遅いんじゃねぇか?ちゃんと仕事しろよ?」


「なんだとぉアーちゃん!それは聞き捨てならないぞー!そんなこと言うならこちらお下げしますねー」


「あー!ウソウソ!冗談だっつーの!頼むから置いてってくれっ」


 この二人意外と似てるな…余計な一言が多いところとか。

 自爆癖でもあるんじゃないのか?


「あー、どうもありがとう…」


 毒っぽいものを貰ってお礼を言うのに抵抗が…とは言ってもシータが飲むんだから大丈夫なんだろうってのは分かる…けど、視覚的抵抗が何とも……。


「はいっ、ではごゆっくりどうぞー」


 注文品を乗せてきたトレーを片手にまた戻っていったウェナ、アーネは早速頼んだ飲み物を口にしてる。

 正面ではマールがニコニコしながらケーキを突付いてるし、隣のシータは紫の液体を口に運んで…運んでる……俺も覚悟を決めるか………。

 カップを持って視線を落とすとやっぱり紫…ゴクリと一回喉を鳴らして、いざカップに口を付けて紫の液体を口の中に流し込んだら……。


「ん!?何これ美味っ!!」


「美味いやろ?これウチのお気に入りなんやー、ふふっ」


 味的には紅茶に変わりはないんだけど、凄いスッキリした感じが強い…多分柑橘系なんだろうけど転生前でこの味は俺知らないから例えられない…そんなグルメってわけじゃなかったし、好きな飲み物はインスタントコーヒーだったしな……そんな俺でもこの飲み物は美味いと思った、いやホント美味いわこれ。

 負けたと思ったけど最終的には勝ちだった!



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