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#07 一件落着…?



「さて、と。ここじゃ邪魔になるだろうから、移動するか。この人数じゃかなり狭いけど楽屋で話そう」


 事情説明してもらおうと場所を移すことにした。

 とにかくここだと邪魔になるだろうし。

 コイツらはこのまま無理矢理引っ張っていくか。



「キョ…キョウヤ……どう、なってるん、だよ…」


「なん、で…俺達ま、で……動け、ないんだ……」


「くっ…お前、さえ……邪魔、しなきゃ…」


「僕、も…こんなの、聞いて…ないよ……」


 身体を固定されたまま話し出すガンスナの三人と正典。

 それは場所変えてからじっくり話そうな。

 とりあえず影を操り拘束した4人を歩かせる。


「っ!勝手に…身体、が……」


「ま、た…さっきと、同じ……」


「悪いけどこのまま付いてきてもらうからな。皆も楽屋まで来てくれる?」


「わ、分かりました…。まさかガンスナの皆も何かに関わっているとは思っていませんでした…」


 カッツが予想外だったと驚いてる。

 そんな事をするような奴らじゃ無いとカッツからは見えてたのか。

 うん、まぁそのヴィジュアルだったらこんな事しなくても相手になんか困らないんじゃないか?と俺も思うんだけど…やっぱりそれ系のスキル持っちゃうと、そういう使い方しちゃうのは仕方無いんだろうか…。


 俺と比べたらそんなものに頼らなくたって全然イケるだろうに。


 あ、でも、この世界は外見より力重視な感じするとこあるんだよな…常に外敵脅威に晒されてるからなんだろうか。

 アーネなんか思いっ切り否定してたしな。

 これ、アーネがマールみたいな目に合ってたら、それこそショックで立ち直れなかったんじゃないかな…危なかった、本当に。



 そんなことを思いながら全員でマニファニの楽屋まで移動して、ガンスナの三人と正典を席に座らせ、俺とカッツが対面に陣取る。

 余った席には魅音とファミが座った。

 あんな事があったばっかりなのに割と平気そうに相手と顔を合わせてる魅音…意外と強心臓?と、思って俺の隣に座った魅音を見たら、微かに肩が震えていた。


 だよな、怖くないわけないよな…。

 多分、私は平気だよって、皆を心配させないように頑張って見せてるんだろう。

 そう思ったら無意識に、また魅音の頭に手を乗せて、ゆっくり撫でてしまった。


「…?尚斗君…?」


「え、あっ!ごめん、その、本当に大丈夫かなって…」


「あっ…。えへへっ、心配してくれたんだねっ、ありがとーっ。うん、もう大丈夫だよっ」


「おいっテメェ!俺の魅音に気安く触るんじゃねぇっ!」


 問答無用で席に座らされて、まだ身動きがとれないながらも、対面の俺と魅音のやり取りを見て吠え出した響也。

 俺の魅音て…二人はそういう関係?なワケないか。

 あんな芝居してまで魅音を手に入れたかった、つまり響也の一方通行な想いだろうな。



「はぁっ?ミオンは私らのだっつーのっ。妄想も大概にしてくださーい」


「…ファミぃーっ!んーっ!」


「なっ!?ちょっ、おいっ抱き付くなミオンーっ!」



 隣に座ってるファミに座ったまま抱き付く魅音…嬉しかったんだろう、そう言ってくれて。

 いい仲間に囲まれてるみたいで、こっちの世界でも今まで上手くやれてたんだろうな、と安心する。

 ファミは嫌がってるようにしてるけど、多分照れてるだけだな。


「んんっ!…で、だ。俺達はこの通りマニファニの護衛と、あと盗難の犯人探しに来たんだけど…正典、お前が犯人ってことで間違いないよな?」


「……は、い…………」


 観念したのか俺の問いにすんなり白状する正典。

 その表情はこの世の終わりだと言わんばかりの悲壮感を漂わせてる。


「その、なんだ。正典は響也に脅されて仕方なくやったとか、そういうのじゃないのか?」


「ハッ!俺がんなことするわけねぇだろ!ちゃんとした取り引きの上でだっ」


「取り引き…。あー正典、お前も同じ穴のムジナか……」


 あんなスキル持っててなお響也のスキルを欲しがったって…つまり同じような使い方しようとしてたってことじゃないのか?それ…。


「なぁおい、ナオト。あんましよく分かってねぇんだけどよ、この状況。そこのマサノリってヤツがミオンを襲ったのと、マニファニの私物盗んだ犯人ってだけじゃねーのか?」


「そっか、皆にはそれしか分からないよな…。マール、話しても大丈夫か…?」


「……話さないとぉ…分からないぃ、よねぇ……」


「そうだな…」


 魅了されてたことを説明しないと、響也達が拘束されている意味が分からないよな、当然。

 マールにはちょっと酷かもしれないけど、その辺は出来るだけ省いて話すようにするしかないだろう。


「なんや?マールに何かあったんか?」


「……そう、いえば……マール、と…そこ、の……キョウヤ、って人………途中で…居な、くなって、た……よね…………」


「え?そうなの?わたし気付かなかった…」


「アタイも気付かなかったな」


 リオ以外はマールが響也に連れていかれた事に気付かなかったみたいだ。

 多分魅了が掛かってたせいだろう、普段だったらアーネ辺りは気付いててもおかしくないし。


「えっとな、冷静に聞いてほしいんだけど…」



「「「「…?」」」」



「リオ以外はガンスナの三人に魅了チャーム掛けられてたんだよ」



「「「…え?」」」



「「「………」」」



「それで…響也は俺達のことを聞き出す為にマールを連れ出した。そうだよな?」


「………チッ。あぁ、そうだよっ」


 そうだろうとは思ったけどやっぱりか。

 それだけで止めとけばよかったのに手まで出そうとするとか…ヤバい、思い出したら頭に血が上ってきた…俺が冷静さを失ってどうする。


 落ち着け俺、ここは別な事を思い出し…あ、一気に冷静になった。

 マールのおかげだ、これ。

 唇の感触が鮮明に…思わず自分の唇を触ってしまった。


 そのままふとマールに視線を送ったら…マールも俺の方を見てたらしく、お互いの視線がピッタリ合った瞬間、マールは顔を赤くして俯いてしまった。

 マールもそっちを思い出したみたいで、それなら大丈夫かな、って安心した…。



「…ちょっと待ってくれ!それじゃアタイはナオトのこと…」

「わ、わたし、も…」

「ウチもか…っ!」



「大丈夫、大丈夫だからっ。それはスキルのせいだってちゃんと分かってるし、皆は何も悪くないんだって。だから落ち着こう、なっ?」


 皆思ってることは同じみたいで、俺以外の相手に少しでも気を向けたことに驚愕と罪悪を感じたらしい…マールのように。

 だけど、マールみたいに何かされたってわけじゃないんだから、そこまで思うことは無いんだって。


「ガンスナ全員そんなスキル持ってたのか…。けど、それじゃ何でミオンや私らに使わなかったんだ?」


 ファミの言う事も最もだと思う。

 俺の魅音とか言うくらいだから真っ先に使ってても良さそうなのに。


「…本命はちゃんと自分の力で手に入れたかったんだよ…」


「…おい響也、それはアレか?本命じゃなきゃ、ああいう使い方してもいいって思ってるってことなのかよっ」


「………」


「黙ってるってことは、そういうことなんだな。今までもそういう使い方してきたってことか。そっちの二人もそうなのか?」


「待て、なんの事だよっ。そういう使い方って言われても分かんねーよ」


「キョウヤが何しようとしてたかなんて、オレらに分かるわけないだろっ」


「…本当にか?スキル使って女性を連れ込んで二人きりだぞ?心当たりくらいあるんじゃないのか?」



「「………」」



 二人も響也と同じで黙り込んだ…ってことは同じ様な使い方をしてるってことで間違いなさそうだな。

 けどこの二人は響也に譲ってもらったものだからな…響也が唆して引き込んだような気もする。

 ただまぁ、それでもヤることヤッちゃってる時点でアウトだろう。

 このスキル、証拠も何も残らず合意の上でそういうこと出来ちゃうのが滅茶苦茶質悪い。

 解除しても記憶には残ってるみたいだし、相手がいる娘には相当な罪悪感埋め込むことになるよな…幸い何もされてなかったアーネやラナ、シータでさえあんな感じになったんだし。


 俺が少し怒りで熱くなりかけてたところに、魅音が俺の耳に小声で話し掛けてきた。


「ねぇ尚斗君…それってまさかマールが……」


「あ、いや…それは俺が未然に防いだから大丈夫」


「そっかぁ…よかったぁー。尚斗君って結構スゴいんだねっ、私も助けてくれたしっ」


「今回のはたまたまその場にいたからね…運が良かったとしか」


 二人でコソコソ話してる感じになってたんだけど、魅音の隣のファミには届いていたらしく、嫌悪感丸出しの顔で響也達に一言言い放った。



「最っ低ー」



「「「………」」」


 

 俯いてしまい最早何も言い返さない三人。

 最初の方から俯いてた正典も入れて、これで全員俯いたことになる。


「で、それを俺に邪魔されたから、正典と一緒にあんな暴挙に出た、と。大方格好良く魅音を助けようとしてたんだろうけど、それも俺が邪魔したってわけだ」


「えっ!?そんな事の為にナイフを突き付けたの…?ミオンに……」


「バッカじゃねーのっ!そんなんでミオンが振り向くわけねーだろっ!だよなっミオンっ」


「え?あー…うーん……。ど、どうだろうねぇ?あは、あはは……」


「ちょっ、おいミオン!何で…って、ああーっ!」


「あー、ミオンってば単純だからねー」


「でもぉ、何となくわかるかなぁ…」


「いやっ、単純すぎるだろそれはっ!」


「じゃあファミだったらどうなのー?」


「うぇっ!?私!?私はそんな……そん、な………。バッ、バカっ!私はいいんだよっ私はっ!」


「あーごまかしたー」


「うううるさいっ!ダマれっニアッ!」




「あー…なんだかなぁ…。これはやっぱアレかねぇ…」


「せやなぁ…」


「また賑やかになりそうね…」


「やっぱりぃ〜、ナオちゃんだぁねぇ〜……」


「……マスター、なら……当、然…………」



 えーっと、皆が何を言ってるのかはとりあえず放置して、先に目の前のこいつらをどうにかしないと…。


「あー、そのだな。悪いけどお前らのスキルは俺が封印したからもう使えない」


「えっ!?そ、そんな…っ!」


「封印…。それでか……」


「ま、待ってっ!アレが無いと僕は…僕はこの世界で生きていけない…っ!」


「すまないけど、あんな使い方されちゃ、もう…な」


「ごめんなさいっ!もうしないっ!しないから返してっ、僕のスキル返してよぉっ!!」


 半狂乱で懇願してくる正典…あのスキルで今までこの世界で何とかやってきたんだろうってのが伝わってくる。

 けど…いくら頼まれても、ああいう使い方を見ちゃったら、俺にはもう無理だ。

 それに正典、お前は魅了チャームまで欲したんだろう?なら尚更解くわけにはいかないんだよ。


「…謝る相手を間違ってるし、それに…そう簡単に改心するとは思えないから、な」


「な、なんで…」


「響也の取り引きに応じたってことは、つまりそういうことなんだろ?」


「っ!……僕、は…………」


「響也、お前もお前で正典を巻き込んで…スキルで釣るとかどうなんだよ、それ」


「俺から釣ったわけじゃねぇよ…興味持って話し掛けてきたのはコイツからだし……」


「え…。そんなに欲しかったのか、正典…このスキル」


「…だって……僕も、女の娘と、その………」


「あー、うん、それは分かるけど、スキル頼みはダメじゃないか?やっぱり」


 あれ?これ何か言っててブーメランじゃないかって気が…。

 俺のはスキルじゃなくて称号だけど。

 いや、本人にそんな意思は全く無いんだからなっ!

 スキルみたいに発動が任意じゃないってところがまた厄介だしっ!

 そう、頼んでないんだよっ俺はっ!


 けど正典もなぁ…俺から見たらイケメンの部類に入ると思うんだけどな。

 その自信なさげな性格をどうにか出来たら普通に声掛けられそうなんだけど。

 まぁ、それが出来ないからスキル頼みにってことなんだろうけど、流石に相手の心を変えてまでってのは俺的にやっぱりいただけない…。


「まぁ、とにかくそういうことだから、スキルの事は諦めてくれ。それで…こいつらどうする?カッツ」


「あ、はい。そうですね…普通ですと憲兵隊にだと思いますが、彼らはもうスキルが使えないんですよね?」


「あぁ、俺が封印したから俺が解かない限りもう使えないよ」


「では、彼らには今後こういう事は出来ない、と」


「そうなるね」


「…分かりました。では、盗まれた私物を返していただければ、この件はそれで終わりにします」


「えっ…いいのか?それで……」


「はい。元々犯人をどうこうしたかったわけじゃなくて、彼女達の身の危険を排除したかっただけなので」


 確かにこれでマニファニの皆の身の安全は確保出来たと思うけど、こんなこと起こした奴等とまだ一緒にいても大丈夫なんだろうか…。

 マニファニの皆は特に。


「えっと、マニファニのみんなはそれでいいの?」


「あ、うん。いいよっ、それでっ」


「ま、あんまし私らには近寄らないようにしてほしいけどな」


「ミオンがいいって言うならいいけど…本当にいいの?」


「え?あー、うんっ。ちゃんと考えもあるし、大丈夫ーっ」


「何か考えがあるんだねぇ。後で教えてくれる?」


「もっちろん!」


「じゃあ、はい、これはこれで終わりー。あ、私のピック、ちゃんと返してねー」


 何ていうか、こんな軽い感じでいいんだろうか…まぁ、本人達がいいって言うなら、こっちとしては何も言うことは無いんだけどさ。


「分かった、それじゃそういう事で…。正典、盗んだものはちゃんとあるのか?」


「……ここに………」


 そう言って収納から盗んだ品を全部出す正典…そんな絶望感満載な顔されると、俺もちょっと辛いんだけど…。

 でも、自業自得なんだし、芝居とはいえそれだけのことをやってしまったんだから、仕方無いよな…。


 全員の私物を返してもらい、これで依頼が完了ってことになった。

 依頼を受けた時に予想した通り漂流者絡みだったけど、ストーカー事案ってわけじゃ無かったから、まぁ大丈夫だろう。


 一先ず一件落着ってことで…別の件で何となくマズい予感がしてるのは、もうどうしようもないんだろうな、きっと…。



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