表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/214

#06 茶番劇阻止



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



──ガンスナ楽屋



 バンッ!



「くそっ!何なんだアイツは…っ!おいっ正典!居るんだろっ、出て来いよっ!」



 ……スウゥゥ……



「…ど、どうしたの?響也くん……」


「予定が狂っちまったっ。魅音達、ボディーガード雇いやがった!」


「え…」


「もうこうなったらチマチマやってる場合じゃねぇ、多少強引にいくっ。正典、このナイフで魅音を襲えっ」


「っ!?そっ、そんなこと僕出来ない…」


「フリだけだ、俺が助けに入るまでのな。間違っても傷付けるんじゃねぇぞ」


「で、でも…」


「お前のスキルなら簡単だろ?背後取るなんて。なに、ちょっと後ろから押さえ付けてこのナイフを目の前にチラつかせるだけでいい。後は…俺が上手いこと助けに入るから適当に合わせてくれ」


「そんなことしたら、僕が捕まっちゃう…」


「それこそお前のスキルで簡単に逃げられるだろ。頃合い見て逃げりゃいいんだよ。俺のスキルが欲しいんならやってくれるよな?」


「うっ…。……うん、分かったよ…」


「(っつっても、もうやれねぇけどな。さっきステータス見たら魅了チャームも分割譲渡も使えなくなってやがったし。クソっ、アイツ何しやがったんだ…)……よし、んじゃ行くぜ。魅音達のリハが終わったら仕掛けろよ」


「………(コクっ」


「(待ってろよ魅音…スキルでなんか手に入れても意味が無いからな。これで俺がカッコよく助けに入りゃ、いくら魅音でもコロっと落ちんだろ。絶対お前をモノにしてやるからな…くくっ)」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 キスでお互いに立ち直った俺達は、終わった後もまだ抱き合ったままだった…マールは俺の胸に顔を埋めてる。

 裸見られるのは平気そうなのに、キスは恥ずかしいのかと、どういう基準なのかよく分からなくなった…接触は羞恥心が伴うってこと?

 って、まぁそれは今考えることじゃないか。


 とりあえず、どうしてこうなったのか確認しないと。


「マール、もう大丈夫か…?」


「……もう、ちょっと、だけ…待ってぇ………」


「あ、うん…」


 まだ恥ずかしいんだろうか、顔を更に埋めて黒いウサ耳をへたりとさせてる…首筋まで真っ赤にして。

 そういやマールをお姫様抱っこした時もこんな感じだったかな?

 あの時は勝手にやっちゃってごめんって気持ちが強かったけど、今はもうあの時とは違うからな…可愛いって思っちゃう…。


 いや、けど本当にここで待機してたのは運が良かった…もし違う場所でこんなことになってたら、と考えただけで恐ろしくなった。

 あんな奴の手にかかるとか想像しただけでハラワタが…って、俺も本気で皆のことをこんなに大切だと思ってるんだな、やっぱり。

 こうなると他の皆も心配だ、早く行った方がいい気がする。


「マール、他のみんなは大丈夫だと思うか?」


「あっ…もしかしたら、私と同じことになってるかも…っ」


「だとすると心配だな、アイツはもう何も出来ないけど、まだ二人いたしな…」


「ナオちゃんっ、早くみんなの所へ!私みたいなことになる前に…っ!」


 マールが素早く俺から離れて扉へ向かう。

 皆が心配なんだろう、自分と同じような事にはなってほしくないって。


 勿論俺もそう思ってるからマールと一緒に皆の元へ急いだ。




 ステージ袖に着いた時にはマニファニの皆はまだリハの最中だった。


 それを見ているカッツとシータ達と…やっぱり居たガンスナの残り二人。

 響也の姿は見当たらない。

 サッと見た感じ何事も無さそうなんだけど、何となくシータの様子が少し変な気がしたから、皆の状態を確認することに。

 アコ、頼む。



[現在の状態および起因要素を表示]



【ステータス】

《識別》

 名前:シータフィオラシス

 状態:困惑(弱)



《識別》

 名前:アーネルミルヴァ

 状態:魅了(対象:レンディミオン)



《識別》

 名前:ラーナミラルティア

 状態:魅了(対象:カイナノルグ)



《識別》

 名前:リーオルエレミネア

 状態:高揚(微)



《識別》

 名前:カッツェトランザ

 状態:興奮(微)



《識別》

 名前:レンディミオン

《技能》

 補助:〔譲〕魅了チャーム(1)



《識別》

 名前:カイナノルグ

《技能》

 補助:〔譲〕魅了チャーム(1)




 …コイツ等も響也とグルってことか…。

 スキルを見た感じだと響也がメインなのは間違いなさそうだ、魅了チャームを分割譲渡してもらったっぽいしな。

 シータが困惑してるってのは、響也の魅了チャームの効果が切れたからだろう。

 確か響也のスキル見た時レベルが2だったはずだから、1レベルにつき対象1人ってところか。


 リオとカッツはマニファニ見て普通に盛り上がってるだけだろう、リオもこういうのに興味が無いってわけでもないんだな…まぁ、言うまでもなく表情には一切出てないけど。


 っと、それよりこの状態を早く解除しないと。


 レンとカイってやつのスキルを封印するため、背後から二人に少し近付いて封闇陣シルクワイトを放つ。

 二人に闇が吸い込まれた直後、アーネとラナがマニファニを見ながら、二人して頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げだした。

 どうやら封印成功して状態が解除されたっぽい。

 

 マールだけ連れて来られたのは、俺達の事を聞き出すためだったってことか。

 二人がマールみたいなことになってなくて良かった…。


 このままマニファニのリハが終わるまで様子を見て、何か動きがあったらすぐ対処出来るように身構えていたらアコが、



[後方の物陰に、相良 響也の反応があります]



 

 と、響也の気配を捕まえた。

 すぐさまこの場に顔を出さないのは、俺がいるからか、もしくは他に何か企んでいるからか。

 

 油断しないように、それと俺が気付いてることに気付かれないよう意識しながらマニファニを見ていたら、曲が終わり少しスタッフらしき人と会話した後、俺達の居る方へ引っ込んできた。



「ふぁーっ!やっぱりステージは最っ高ーっ!」


「今日もノリノリだったねー、ミオン」


「リハなんだけどな。ま、本番でもその調子は変わんねーんだろーな」


「そこがミオンの凄いところだよね」


「ミオンちゃんが引っ張ってくれる感じ、わたしは好きだよぉ。うふふっ」



 なんて話ながらマニファニの皆がステージ脇のちょっとした階段を降りきったあたりで、それは起こった。



「よぉーっし、この調子で明日も…っ?あれ?動けな「…ぜ、全員動かないでっ!」……きゃっ!?」


 魅音が急に動きを止め、動けなくなったと伝えようとした瞬間、魅音の背後からいきなり人がスウゥゥっと現れる。

 左腕を魅音の身体に巻き付けて身動きを封じ、右手に持ったナイフを魅音の顔の前に持ってきた…見せ付けるように。


 それを見て短い悲鳴を上げる魅音。



『『『『『っ!?』』』』』



 魅音の声を聞いて振り返り、息を呑む他のメンバーと、ナイフを突き付けられた魅音を見て、同様に息を呑むカッツとマリシアラの皆。


 更にそれとほぼ同時に後ろの物陰に隠れていた響也が飛び出してきて、魅音へ一直線に向かって行く。


「てめぇ!魅音にな「いや、お前らが動くなよ」……ぐっ!なっ…に……」


「あ、れ…?動、け…ない……」


 

 俺も魅音の背後に人が現れたのと、響也が動き出したのと同タイミングで、影操縛シェルトバインを発動し、二人を拘束した…ついでにレンとカイも。


 魅音を襲った奴はアコでも気付かなかったらしい、どんなスキルなのか気になったからアコに見てもらった。



[対象者:宇薄 正典の技能を表示]



【ステータス】

《識別》

 名前:宇薄 正典

《技能》

 固有:認識遮断(−)



 阻害じゃなくて遮断なのか…完全に認識外になるってことか?

 それならアコにも分からなかったのは頷ける。



[あれは反則です。卑怯です。即封印を実行してください。アコの為に] 



 いっちょ前に悔しがってるのか?まぁ、こんなことにスキル使ってる時点で封印確定なんだけど。

 それより先にやることやらないとな。


 魅音の目の前に晒されているナイフを、影を操り正典とかいうやつの右手ごと、ゆっくりと魅音から遠ざける。

 それと、魅音に巻き付いていた左腕も同じ様に魅音の身体から引き剥がす。


「なっ…んで、勝手…に……動、く………の…………」


「くっ…そ……こっち、は……指一本、動…かせ、ねぇ………」



 響也は何とか魅音の元へ行こうと足掻いているけど、固まったままピクリともしていない。

 多分だけど正典もグルだろうから、何をしようとしてたのか何となく予想は付くけど、そんな下手な芝居なんか打たせるわけ無いだろ、マールにあんな事しといて。



「魅音、ゆっくりこっちにおいで」


「あっ…うん、分かった…っ」



 正典の拘束を完全に外して自由となった魅音に、慌てないでこっちに来るよう指示を出す。

 魅音は素直に俺の指示に従い、ゆっくりと正典から離れて俺の方に歩いてきた。


 俺の目の前まで来たところで、魅音の頭にそっと手を置いて撫でながら一応無事を確かめる。


「…うん、大丈夫そうだな。無事でよかった」


「えっと、ちょっとびっくりしただけで、何ともないよ…」


「そっか。それじゃ、みんなの所へ行っておいで」


「うんっ、ありがとっ」


 にっこり笑ったところを見ると本当に大丈夫そうだ。

 俺に礼を言ってメンバーの所へ寄っていった魅音。



「ミオンっ!無事かっ!」


「だだ、大丈夫!?ミオンちゃんーっ!」


「あははー…。ちょっとびっくりしたけど、大丈夫だよーっ」


「よ…よかった……。もうこっちの心臓が止まるかと思ったよ……」

 

「わたし達だけじゃヤバかったねー」


「うん、そうなんだよねー。尚斗君達がいなかったらどうなってたか分かんないよ…」



 皆に無事迎えられて、そっちは大丈夫そうだと確認出来たから、次はこっちだな。

 まずはスキルを封印する為に封闇陣シルクワイトを正典に向かって放つ。

 これで姿を消す事も出来なくなっただろう。

 アコもこれでいいだろ?



[はい。これで問題ありません。私の為にありがとうございます、マスター]



 いや、別にお前の為ってわけじゃ無いんだけどな…まぁ、結果的にそうなっちゃっただけで。



[ありがとうございます。私の為に]



 …分かったよ、もうそれでいいよ。

 さて、これからこいつ等の話を聞くとするか。

 大体分かるけど、皆の前で白状してもらうってことで。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ