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#04 マリシアラ


 

―・―・―・―・―・―・―・―






 明けて翌日、俺はカッツと一緒に朝から冒険者ギルドに来ていた。

 カッツの指名依頼をその場で受ける為に。


 昨晩はあの部屋で過ごしましたよ、何事も無く。

 俺とカッツはソファーで睡眠取りました。

 マニファニの皆と俺のメンバー達はそこそこ遅くまで盛り上がってたみたいですが、寝室の方で。

 どうやって女の娘10人で寝たのかは気になるところではあったけど、そっちの部屋がどういう風になってるのか見てないから分からない。

 

 朝カッツと起きた時には寝室の方から物音一つ聞こえず、まだ皆寝てたみたいだから、二人でそっと出てきたってわけだ。


 カッツは今日やらなきゃならない事がそこそこあるから、とっとと手続きを終わらせて次の用事に行こうとしてる。

 こっちの世界でもマネージャーってのは大変なんだなと思いつつ、受付窓口ですんなり手続きを終えた。


 それが終わった後、カッツは一旦事務所に寄ってスケジュールの確認と、必要であれば調整をしてから宿に戻るって言って俺にカードキーを渡し、足早に駆けていった…そんな朝から体力使って今日一日持つのかと少しだけ心配になる。

 カッツは小柄な方だし、しかも細身だし…。


 そんなカッツと別れて俺だけで宿に戻って来たのはいいんだけど、ここで普通に入って大丈夫か不安になった。

 昨日折角回避出来たのに、まさかこのタイミングで?と一瞬逡巡したけど、この場で突っ立っててもどうしようもないし、まだ皆が寝てることを祈りつつ鍵を開けドアを開けると…



「あ、ナオ。おはようさん。依頼手続き終わったん?」


「あっ、ナオトさん、おはようごさいますっ」


「ナオちゃん〜、おはよぉ〜。朝からぁご苦労さまぁ〜」



 …何も気にした様子も無く、至って普通に朝の挨拶をしてきた三人がいた…着替えをしながら、半裸で。

 

 うん、まぁ、マニファニの誰かじゃなかったってことで、回避は成功したと思っておこう。

 それでいいのかどうかは置いといて。



「お、おはよう…シータ、ラナ、マール。他のみんなはまだ寝てるのか?」


「マニファニのみんなはシャワー浴びとるで?」


「え」




 ガチャッ…




「あーサッパリしたーっ!」


「うん。目、覚めた」


「何で私まで…。みんなで入ることねーだろっ……」


「でもぉ、ファミちゃん嬉しそうだったよぉ?」


「うんうん、ニヤニヤしてたよ?ファミ」


「バッ!そっ、そんなわけねーだろっ!……って、あ」



 音がしたから条件反射で扉の方へ振り向いたら、マニファニの皆が浴室から出てくるところだった…当然のことながら、全員バスタオル姿で。

 ニアとファミに至ってはちゃんと身体に巻き付けてないせいでいろいろと丸見えだし…。



「あっ、尚斗君だー、おはようっ!って、やだ、こんな格好でごめんねーっ、てへっ」


「おはようごさいます、帰ってきてたんですね」


「あ、おはようー」


「お、おはようごさいますぅっ」


「ったく、なんつータイミングだよ…。おはよ、お帰り」



「あ、うん。おはよう……」



 ……回避出来ませんでした。


 いや、うん、やっぱりおかしい。

 この世界、女性の羞恥心が希薄過ぎるだろ…。

 普通こういう状況になったら、キャー!とか、ワー!とか言われて物が飛んできたりして、ごめんなさい!って謝りまくって逃げ回るんじゃないのかと…俺が。


 俺が男だって認識されてないわけじゃない…よな?

 魅音も魅音で何故そんなに平気そうなのかと。

 君は俺と同じ漂流者だよね?最近のJKはこんな事じゃ動じないの?

 何か段々俺の感覚も麻痺してきたような気がする…。


 とは言ってもまじまじと見るのは俺的にいろいろとマズいから、冷静を装ってゆっくり視線を外してシータ達の方へ向き直した。

 こっちはこっちでまだ着替え終わってないけど。


「あー、マニファニのみんなは分かったけど、じゃあアーネとリオは?」


「わたし達が着替え終わったら起こそうかなって」


「リーちゃんのぉ上にぃ乗っかてるぅ〜アーちゃんがぁ可愛くてぇ〜」


「まぁ、気持ち良さそうに寝とったから、もうちょい寝かせとこ思てな」


「そういうことね」


 それはまぁ、確かに起こすのは忍びないというか躊躇っちゃうな…さぞかし可愛いんだろう。

 とか言ってたら、こっちから起こさなくても大丈夫だった。

 寝室の方からリオが…アーネを抱き付けながら出てきたから。


「………おは、よう…………みん、な……………」


「おはよぉ〜リーちゃん〜」


「おはよ。なんやアーネはまだ寝とるんか?」


「あー起きてるよ…リオが降ろすより先に動き出すから、しがみついてるだけだっての……」


「だったら降りなさいよ、自分から…」


「いやぁ、リオのコレは離れがたいんだよ…。この弾力がまた最高で」


「なんか可愛い」


「ふふっ、そうだねぇ」


「いいなぁーっ、私もそれやってみたいっ!」


「………ミオン、も……乗る…?………」


 いや君達はまず服を着てくださいお願いします。

 リオもそれ乗せてるわけじゃないだろ…。


「ほらみんな、早くしないとカッツが来るって。それに今日はいろいろやる事あるんだろ?」


「そうだったね。まずはシータ達の衣装合わせないと」


「だな。んじゃさっさと準備するか。ほらミオン、ニア、いくぞー」



「「はーい」」



「みんなぁ、ちょっと待っててねぇ。すぐ準備してくるからぁ」



 ふぅ…やっと着替えてくれるようだ。

 マニファニの皆が寝室の方へ引っ込んでった。

 まったく朝からなんて光景を…また目に焼き付いて離れなくなるじゃないか。

 このままだと漏れなく吸引しそうな気がしてならないんだが…気を付けようにもこれじゃどうにもならないぞ。

 この称号、ラッキースケベも含まれてるんじゃないのかと。




 朝からこんな刺激的な出来事があったりもしたけど、この後すぐにカッツが戻って来て皆でルームサービスの朝食を取り、カッツが都合を付けてくれた貸衣装屋にぞろぞろとやって来た。

 事務所お抱えの貸衣装屋らしく、今までステージで着たことのあるマニファニの衣装もここで保管してもらってるそうで。

 今すぐ必要だから一から衣装を作る時間も無いし、ここから選んで合わせるってわけか。


 俺とカッツも付いては来たけど、役には立たないからシータ達をマニファニの皆に任せて、似合いそうな衣装を選んでもらうことに。

 スケジュール的にあまり時間は無いらしいから、手早くお願いってカッツがマニファニの皆に言ってた。

 その間俺とカッツは店奥の小部屋を借りて皆を待つ。

 店の人が出してくれたお茶を啜りながら。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



──マニファニ衣装保管庫内



「わぁーっ、これ懐かしいーっ!」


「おー、それ私らのファーストライブん時の衣装だな」


「ホントだー、懐かしい」


「思い出に浸りたくなるのは分かるけど、時間無いみたいだから早く選んじゃおう」


「あ、ねぇ、これなんかぁどうかなぁ?」


「うぇ!?そんなヒラヒラしたやつなんか着れねーよっ」


「第一そんなんウチらには合わへんて…」


「そんなことないよぉ。ちょっと着てみてぇ?」



「えーっとぉ…サイズ的には私のがラナかなー?」

「わたしのはリオだねー」

「マールは私のかな?」

「わたしのはぁ、アーネちゃんだねぇ」

「シータは私のな。ほれ、着てみ?」



「本当にこれ着るの…?」


「大丈夫ぅかなぁ〜……」


「……着てみ、たい………」


「ほら、リオはノリ気だぜ?」


「大丈夫、絶対似合うから。さ、着てみて、みんな」


「…これも仕事だ、着るしかねーかぁ……」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 カッツと今日これからの事とか、会場での俺達の動き方とかを打ち合わせっぽく話して待つこと数十分、着替えが終わったらしいから俺達も小部屋から出て、皆の所へ行ったら…



「ジャジャーン!どおっ?ねぇ、スゴくないっ!?」

「いや、マジこれステージ上がってもいいレベルだって!」

「わたしもびっくりだよー」

「凄いよぉっ、みんなぁ!」

「ね?絶対似合うって言った通りでしょ?」



 ……鼻血出そうになった。


 え、ホントにシータ達なのっ!?

 メチャクチャ可愛いんですけどっ!

 いや、まず間違い無くどこからどう見ても冒険者には見えないからそこは全然オッケーとしても、逆にこれファンとか付きそうでそっちの心配しちまうわっ!



「ちょっ、それは言い過ぎちゃうの…?」


「これは落ち着かねぇ…防御ってもんが皆無だろ……」


「こんなのぉ着たのぉ〜、生まれてぇ初めてぇだよぉ〜…」


「でも…ちょっとだけ新鮮かも」


「………どう、かな…?………マスター……………」



「…いや、もう、みんな可愛いとしか言えないんだけど……」


 語彙力無いのは分かってるので…それ以外何を言えと。

 衣装だけでこうも変わるとか、あ、これが他種族の、っていうか、耳と尻尾、翼の力かっ。

 人種が着てもここまで変わるとは思わないだろうな、普通に可愛いとしか。

 これ、後で写真にでも残そう、絶対そうするべきだっ!


「いや、これは本当に驚きました…。本気でスカウトしてもいいですか?」


「いや、だからアタイら音楽なんか出来ねーってのっ!」


「そこは練習次第でどうにでもなりますっ。マニファニと二大看板でいけますよっ!」


「そんな無茶言わんといてな…」


「あ!じゃあバンド名は『マリシアラ』でっ!」



『『『『マリシアラ…?』』』』



「そっ!私達みたいにみんなの名前から取って付けてみたーっ」


 俺も皆がステージで演奏するのちょっと見てみたくなってきたぞ…ヤバいなこれ。

 こうして衣装着ることにした目的が変わりそうだ。


「言いたいことは凄くよく分かるけど、あくまで目的は動き易くするためだからな?」


「あ、はい、そうですね…。では先程ミオンが言った『マリシアラ』のメンバーということで調整しておきます。スカウトの話は依頼が片付いた後でゆっくりと…」


「そこはぁ本当にぃ本気なのねぇ〜……」


「ま、とにかくこれで大丈夫だろ?それよかシータとラナの衣装だけ手直しするぞ?そのままだと下着丸見えだし」


「そうだねぇ、せっかく可愛いんだから、パッと直しちゃおぅ」


「あ、うん、よろしく」



 こうして少しだけ衣装を手直しして変装は完了した。

 依頼中限定ユニット、マリシアラがここに誕生した…ファン第一号は当然俺ってことでそこは誰にも譲らないからなっ!



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