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#19 皇都到着



 シータとリオと一緒に皆の所へ戻ってくると、こっちはこっちでもう魔石の回収とかは終わってて、何時でも出発出来る感じになってた。

 負傷してた冒険者も回復が終わって難無く動けるみたい。


 ブリュナ様から聞いた話だと、商人達はゲリッツバルムから皇都へ向かっていたらしく、護衛依頼を受けた冒険者達もゲリッツバルムを拠点としたパーティーで、俺達と同じく護衛依頼は初めてだったそうだ。


 初めてでこれとは相当運が悪かったんだろうけど、俺達が運良く通り掛かって援護した事を感謝してくれた。

 当然の事をしたまでだし、こっちも護衛だから危険は排除しないとだったしね。


 不運とはいえこうやって出会ったのも何かの縁、目的地も同じってことで皇都まで一緒に、ということになった。


 ひぃ達ももう起きてて、馬車の中、俺の膝の上でお寛ぎいただいてます。



「ティシャちゃん、ヒナリィちゃん、ごめんね。久しぶりで力加減間違っちゃったみたいで…」


 ラナが二人を眠らせてしまったことに対して罪悪感を抱いてるっぽい。

 俺としては逆に良かったと思うんだけど…怖い思いさせずに済んで。


「いえ、そんな。わたくしたちこそお姉さまたちががんばっている時にねむってしまって…」


「いいんじゃないか?眠ってたおかげで怖い思いもしなかっただろ?二人とも」


「そうだけど…でも、お姉ちゃんたちはたいへんだったのに……」


「それがアタイらの仕事なんだからいーんだよっ。気にすんな」


「そうだよぉ〜。ティシャちゃんとぉヒナちゃんを〜無事にぃ皇都までぇ届けるのがぁ〜、お姉ちゃん達のぉお仕事だからぁねぇ〜」


「そういうことや。ラナも気に病むこと無いて、ナオの言う通り結果的にこれで良かったんやって」


 うんうん、シータの言う通り。

 不安がって俺の脚元にしがみついてるより、眠ってた方が精神的負荷は間違い無く軽かったはず。

 体力的にも回復出来てむしろ一石二鳥だとさえ思うから、ラナのファインプレーと言っても過言ではないくらいだって。


「ワタシだって何も出来なかったし、そーゆーことは出来る人にお任せでいいんだって。それよりほらっ、皇都が見えてきたよっ!」


 リズがもうこの話題はお終いと言わんばかりに前方御者席の窓から見えてきた皇都の外壁に目をやった。

 進行方向とは逆向きの席に座ってたからリオの膝の上で無理矢理反対向きに身を乗り出してる。


 改めて思ったんだけど、この二人のコンビは凶悪過ぎる…俺には。

 二人は俺の正面に座ってたんだけど、俺と向き合って座ってた時は、リオの胸でリズの頭を挟んで、リズを抱えてるリオの手でリズの胸を押し上げて、これみよがしに二人のその胸を強調してた…本人達はそんなつもり更々無かったのかもしれないけど、昨日のお風呂のせいで否が応でもその中身を思い出してしまって、一人脳内で悶まくってたっていう…。

 そういう目で見るなって話だけど、神や仏じゃあるまいし、そんな無欲を通すなんてこと俺には無理ですから、いくらおっさんといっても所詮は男なんですよ。



「あっ、ホントだー、見えてきたよーっ」


「おー、さすが皇都、外壁も高ぇなぁ」


「遂にぃ〜来ちゃったねぇ〜、皇都にぃ〜」


「そういやみんな皇都初めてなの?」


 邪念を払うのは他の事を考えるのが一番ってね。

 皆の話題に乗っかってみた。


「ウチら4人は初めてや。リズは?」


「ワタシも初めてだよー。リオちゃんは?」


「………昔…来た、ことが……ある、よ………」


「あー、でも今とは全然違うだろうから、初めてとあんまり変わらないかもな…」


 なんせ400年以上前だしな…その頃とは変わってるに決まってるだろうし。


「わたしとティシャは、ちっちゃい頃来たことあるよー」


「…ほとんど覚えていませんが……お父さまとお母さまに付いて来たことがあります」


 二人は貴族だけあって来た事はあるみたいだな。

 流石に今より小さい頃だからあんまり記憶に無いっぽいけど、行ったことだけは分かってるらしい。


「そっか。じゃあみんなほぼ初めてに近いってことだな。もう少しだけど気は抜かないようにしとこうか。アーネ、頼むな」


「ったりめーよっ。キッチリ仕事熟してこそ冒険者ってもんだぜっ」


 俺もマップで確認してるけど、アーネの索敵の精度が良過ぎて頼りっぱなしになってるっていう。

 やっぱり獣人って凄いんだな、と改めて思ったり。


 もう皇都が近いせいか魔物の気配も無く、あっさり皇都の外壁門まで無事辿り着いた。

 皇都だけあって人の出入りも激しいんだろう、外壁門は3つあって、内一つは貴族専用だ。

 一緒に来た商隊の人達とはここで別れて俺達は貴族専用の門からほぼ素通りで皇都内へ。

 ブリュナ様が貴族証を提示しただけで、ノーチェックって感じでした、俺達冒険者が居たのにも関わらず。



 中に入ると…各門から伸びているメインストリートが真っ直ぐ中央広場まで続いていて、貴族専用側は馬車の通りが多かった。

 道幅はガルムドゲルンの倍くらいはあると思う。



「おぉー、さすが皇都、でっけぇなぁ…」


「人通りも多いし、店もいっぱいやなぁ……」


「何かぁ〜、凄いぃ歓声みたいなのがぁ〜聞こえてぇくるんだけどぉ〜…」


「…歓声?何かイベントとかやってるのかな?」


 耳のいいマールが何か歓声?を拾ったみたいで、どこかに人が集まってるっぽい…祭りとかやってたりするんだろうか?


「とりあえず、このまま冒険者ギルドまで行くんでしょー?」


「どうだろ?皇城までは流石に要らないと思うけど…。ちょっとブリュナ様に聞いてくるか」 



 一旦馬車を停めてブリュナ様に確認しにいったら、ここまででももう十分っぽい感じだった。

 ただ、明日昼前にまたここの冒険者ギルドで待っていてほしいと言われたけど…まだ何か用があるんだろうか?

 特に予定もあるわけじゃないし、分かりました、と返事をしてブリュナ様達は馬車で皇城に向かって行った。

 ティシャとひぃ、それにフラウも、またねーって言って別れた…また帰りにね、ってことだろうな。


 

 俺と弘史のパーティーは歩いて冒険者ギルドに向かう事に。

 依頼書にはもうブリュナ様のサインは貰ってあるし、これを提出して完了だからな。


「いや、しっかしでけぇ街だな…人多すぎだろ、これ」


「そそ、そうです、ね……」


「この国の中心だからな、これくらいは当然なんだろ?城も見るからにデカそうだしなぁ…」


 漂流者三人でまたおのぼりさんよろしくキョロキョロ辺りを見回してたら、ふと目に入ったものに唖然とした…。

 同じ様に弘史も唖然としてる…ただし見てる物は違うみたいだ。



「……なぁ、あれ……」

「…おい、あれ……」



 弘史が指差した先には…この世界では高い5,6階建ての建物の壁に貼り付いてるデカいモニター…映像が流れてるから恐らく街頭ビジョンだと思われるものが…。


 で、俺が指差したのは空、こっちも大型モニター絡みなんだけど、それを付けた飛行船が数台行き交ってて、一瞬どこの学○都市ですか?って思ってしまった…。


「あー…これもやっぱり先に来てた漂流者の仕業だよなぁ…間違い無く」


「ったく、やりたい放題じゃねーかっ」


「あ、あははは……」


 ちょっと呆れ返る漂流者三人、まさかここまでやっちゃってるとは思ってなかったり。

 そんな感じで辺りを観察しながらメインストリートを歩いていたら、中央広場が見えてきたんだけど…これまた広い。


 楕円形の広場で、門からのメインストリート三本の正面に人の彫刻を乗せた大きな噴水が3つ、多分この国の偉人じゃないかと想像は付くけど、当然誰かなんて分からないね。


 広場の広さは…サッカーグラウンドとか競技場より一回り、いや、二回りくらい大きいんじゃないかって程広々としてる。


 で、メインストリートの対面中央の辺に何やら人だかりが出来てて…その奥に野外ステージっぽいものが見えてたり。


 さっきマールが言ってた歓声の元はこれか?

 ちょっと気になるけど、あの人だかりに入って行くのはちょっとな…なんて考えたら、歓声と一緒に演奏と歌声も聞こえてきた…やっぱりあれ、ステージだったんだ。



『さぁ〜今こそ〜♪旅立ーちのとーき〜♪』


『仲間ーととーもーに〜♪力合わーせーて〜♪』


『行こう〜♪あの虹ーのー橋ーを目ー指ーし〜て〜♫』



 ……えーっと…よくよく聞き耳立てたらバンドっぽいんですが…。

 ギターとベース、ドラムにキーボードの音が…。



「あっ!これ、『マニファニ』じゃないっ!」


「え?『マニファニ』?」


「そ、今皇都で大人気のガールズバンド、『マニオン・ファニオン』、略して『マニファニ』ねっ」


 ガールズバンドて…これも漂流者絡みだよな、絶対。

 楽器まで作って…もしかしてプロデュースまでやっちゃってるんじゃないのっ?


「あー、聞いたことあんな、名前だけは。アタイは音楽とかあんま興味ねーけどよ」


「ガルムドゲルンでもそこそこファンは多いよ?えっとね…」


 そう言ってメンバー紹介しだしたリズ。

 

 ドラムのマミーナシャリーナ、翼人種(悪魔族)、ベースのニナストリィミア、獣人種(狸人族)、キーボードのファミールレティル、翼人種(天使族)、リードギターのニアネスラヴィア、竜人種(蒼竜族)、そして…ギターボーカルのミオン・ヒビキ、人種だって。


 名前だけじゃなく種族まで知ってるとか、リズも相当なファンなんじゃないのか?

 それと…モロ漂流者が組んだバンドじゃねーか。

 向こうの世界でもバンド組んでたとか、そういうのかなぁ…。



「バンドもあんのかよ…ここまできたら異世界感まるで無ぇわ」


「…それな。馴染みあるもの多すぎだろ……」


「ちょっと見てくー?」


「見てみたい気もするけど、まず先にギルド行って依頼片付けてこよう」


 興味無い訳じゃないけど、観光する前に片付けなきゃいけないものは先に片付けておいて、それからゆっくり見て回る方がいいだろうなって。

 

「ほな先にギルドな。えっと…あ、あそこやないか?」


 シータが広場を見回してある一点を指し示した。

 その先には大き目な建物、ガルムドゲルンの冒険者ギルドより当然大きくて、本部に相応しい感じの佇まいに思えるんだけど、この建物の壁にも街頭ビジョンがあって、映像を見てみると一発で冒険者ギルドだって分かる内容だった…「来たれ若人!冒険者募集中!」とか流れてるし……。


「見るからにあそこだな…。んじゃ、行こうか…」


 若干謎の辟易感を覚えつつ、俺達はそのまま冒険者ギルドに向かうことにした…。



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