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#10 二つの依頼



 賑やかな昼食も終わり、食後の飲み物を堪能しながら皆で雑談─ティシャやひぃを助けた時の事や昨日の防衛戦の事─を、聞かれたままに応えていたら、ゲシュト様が俺達に話を振ってきた。


「ふむ、今の話を聞いているとやはり優秀な漂流者のようだな。私から見た限り人柄も申し分無い。そこでだ、ナオト、ヒロシ、君達に二つばかり依頼したい事があるのだが」


「…?依頼ですか?クエストの類いで?」


「一つはそうだな。もう一つはクエストというわけではない」


「俺らに出来るような事か?」


「そうだな、君達だからこそ頼みたいのだ」


「な、何でしょうか…?」


 何か無茶振りとかされるわけじゃないよな…?

 ちょっと緊張する…。


「なに、大した事ではない。一つはこの私の領地、ガルムドゲルンの専属漂流者となってはくれぬだろうか、ということだ」


「専属…というと、皇都にいる烈華絢蘭みたいな感じにですか?」


「あぁ、そうだ。なに、普段の冒険者稼業を束縛するようなものでは無い。昨日のような有事の際に手助けしてもらえれば良いのだ。それなりの支援もする。どうだ?」


 要はガルムドゲルンのお抱えになるって事か…。

 うーん…冒険者稼業を束縛するような事はしないって言ってるけど、俺自身皆といろんな所に行きたいと思ってるから、一処に留まるようなことはしない方がいいと思ってるんだけど…。

 でも、考えてみればリズが居るんだよな…ここの受付嬢なんだからずっと俺達と一緒にってわけじゃないし。


「えっと、それは俺だけですか?」


「いや、ナオトとヒロシのパーティーに対してだ」


「そうですか…。みんな、どうしようか……」


「ナオはどうしたいん?」


「俺?俺は…みんなといろんな所へ冒険に行きたいと思ってるから、あんまりこういう縛りは無い方がいいかなって…」


「ゲシュトのおっさんも言ってるじゃねぇか、束縛しねぇって。別にお抱えになったって冒険は出来るだろ?」


「ここにはリズもいるし、いっそのことこの街を拠点みたいな感じにしてもいいんじゃないですか?」


 んー、ラナの言う通りそれも有りかなぁ…それならもうここに家でも借りて俺と皆の拠点にするのも…いや、決してやましい事を考えてるわけじゃないから。


「それにぃ〜、ナオちゃんにはぁあれがぁあるでしょぉ〜」


「うん、そうねー。あれがあるんだからワタシもここで受付嬢やってられるよー」


「あー、それもそうか…」


「あれって何だよ?」


「ん?転移だよ。弘史も持ってるだろ?」


「あぁ、転移か。一応持ってっけどこれも収納と同じでまだレベル低いからなぁ」


 やっぱり漂流者は持ってるのか。

 この辺のスキルはもう漂流者のデフォだと思っていいみたいだな。

 まぁ俺は持ってなかったから創っちゃったんだけど…あれ?そう考えるとやっぱ俺ってイレギュラーなんじゃないか?そんな気がしてきたぞ…。


「ちなみに知美ちゃんも持ってたりする…?」


「は、はい。わわ、私もも、持ってます、よ」


「そうなんだ…」


 うん、何か確定っぽい。

 だから変なステータスだったり、人に言えないようなスキルだったりするんだな…。

 あ、それともう一個、これがあったのと無いのとで完全に確定するな。


「それと二人とも、この世界に来る時にさ…神様とか女神様に会ったり…した?」


「あぁ、会ったぜ。俺が会ったのは確かウェーバなんちゃらっつー武闘神のおっさんだったな」


「わ、私はまま、魔導神ウィーサラードってい、言う女神様、でした」


「あ、そう…なのね……」



 はい完全にイレギュラー確定。


 そりゃそうだよな、こんなおっさんが来たって誰も得なんてしないだろうし…。

 でも何で来れたんだろうか、俺。

 ここに寄越した本人以外分かるわけ無いか…。

 こういうのって異世界モノだと確か神殿や教会とかで祈りを捧げたら会えたりするよな…ダメ元でやってみようか。

 もし会えたら直接聞いてやる、どういう理由で俺をここに寄越したのかって。



「で、どうだ?話は纏まったか?」


「あ、えっと…じゃあみんな、受けてもいい?」


「ええんやないか?なって困るもんでも無さそうやし」


「リズちゃんもぉ〜居るしぃねぇ〜」


「アタイもいいぜ」


「わたしもです」


「………マスター、が……決め、た…こと……な、ら………それで、いい…………」


「リオちゃんはホント従順ねー。ワタシもその方が助かるよー」


 全員同意、と。

 ま、この街と、街の人達は俺も好きだし…な。


「分かった。じゃあゲシュト様、俺達はその話お受けします。弘史達はどうする?」


「俺達は考えるまでもねぇよ。後ろ盾になってくれるってんなら断る理由なんかねぇしな。だろ?知美、フラム」


「そうだな。私達にとってはありがたい話だ。これでパーティーメンバーも少しは増やしやすくなるだろう」


「でで、ですね。こ、これで少しはひひ、弘史さんも、ら、楽になります、よね」


「まぁ俺だけじゃねぇ、二人も楽になんだろ。ってことで俺達も受けるぜ、領主様よ」


「二人とも受けてくれるか、ありがたい。では二人のパーティー、『黒惹華』と『雷銃』はこのガルムドゲルン専属漂流者の冒険者パーティーとする。これからよろしく頼むぞ」


 これで俺も烈華絢蘭と同じお抱えになっちゃったか…国とか貴族様に囲われるつもりは無かったんだけどな。

 でも俺だけじゃないから、まぁいいか。

 それにやっぱりこれから冒険者やっていくんなら拠点は必要だろうし。


「おう、こっちこそよろしく頼むわ」


「こちらこそよろしくお願いします。それでもう一つというのは?」


「あぁ、こっちは純粋にクエストとしての依頼になるな。皇都へ行く際の護衛をお願いしたい」


「皇都へ行かれるのですか?」


「行くのは私ではないがな。娘達が10歳になったお披露目が皇都であるのだ。本来であれば私も出向かなければならないのだが、今回は丁度ブリュナも皇都に行くことになったのでな。ブリュナに一任することにした」


「なるほど、本当の護衛依頼なんですね。けどこういう場合ギルドは通さなくてもいいんですか?」


「いや、正式には通す。ただ今回のは指名依頼ということになるがな」


 あ、そういや俺プラチナだったっけ…俺に対して指名依頼って出来ちゃうじゃん。

 でもひぃ達の護衛で、かつ皇都行きとか…断る理由が全く無いな。

 何気に姫達も喜びそうだ…皇都行きたがってたし。

 それとブリュナ様が昨日、烈達との別れ際に後日伺うって言ってたから今回の引率役ってことか。

 うん、これは皇都行き決定だな。


「そういうわけでナオト、お願い出来ますか?」


「了解です。こっちとしても断る理由がありませんし。だよな?みんな」


「…マジかよ、遂に皇都行けるのか……」


「まさかこんなに早う行けることになるなんて思わへんかったわ…」


「みんなでぇ〜皇都にぃ行けるなんてぇ〜…」


「………また……人…いっぱ、い……?………」


「そうね、皇都はここより人がいっぱいいるよ?」


「いいなぁー…ワタシも行けたらいいんだけどなぁ……」


 流石に受付嬢の仕事は休めないよな…ラナも抜けちゃうし、ラナの後任も見てやらなきゃだろうし。

 一回皇都に着けばいくらでも転移で行けるから、リズには今回我慢してもらうしか…。


「なぁ、俺達のパーティーも必要か?尚斗達だけで十分じゃねぇの?」


「弘史達は皇都行ったことあるのか?」


「いや、無ぇけど」


「だったら一緒に行った方がいいんじゃないか?一回行けば転移で行けるようになるし」


「あー、まぁそうか…。なら俺達も行くかぁ」


「ヒロシ、絶対行った方がいいよー?だってここより大きいんだよ?ってことは、いっぱい居るはずだよー?獣人がっ」


「あ、絶対行くわっ!お前ら止めても行くからなっ!」


「止はしないが…また暴走するのだけは止めてほしいのだが」


「そそ、そうです、ね……」


 あー、これリズが余計な事言ったな…。

 知美ちゃんとフラムがまた苦労しそうだ…しょうがない、俺も側に居る時はストッパーに回るか。


「どうやら決まりのようだな。では早速手配することにしよう。可能であれば明日にでも出発したいのだが、大丈夫か?」


「俺達は特に問題無いですかね。少し準備するくらいで大丈夫だと思います」


「俺達も大丈夫だな。むしろ早い方がいいっ」


「分かった。脚はこちらで用意する。明日の六つ鐘前に冒険者ギルドへ向かうとしよう。そこで待ち合わせでどうだ?」


 六つ鐘というと昼前か、じゃあギルド行く前にちょっと買い物すればいいから余裕かな。


「分かりました、明日ギルドで待ち合わせということで」


「それでいいぜ」


「うむ、ではよろしく頼む」


 何かいろいろポンポンと決まったなぁ…けどこれで護衛クエストが経験出来るのはいいな。

 しかも道中ひぃやティシャ達と一緒とか、嬉しいことだらけじゃないか。

 これは全力で護ってやらねばっ。



「ねぇねぇゲシュトおじさん、むずかしいお話はおわった?」


「ん?あぁすまんな、ヒナリィ。もう終わったぞ」


「じゃあナーくんとお姉ちゃんたちとあそんでもいい?」


「そうだな、ナオト達がいいと言うなら構わないぞ」


「うんっ!ナーくん、お姉ちゃんたち、いっしょにあそんでくれる?」


 おっと、ひぃからのお誘いが来たぞ。

 これを断るとかそんな選択肢、俺には存在しないって。


「もちろん。約束もしてたしね」


「やった!それじゃあお庭に行ってあそぼう!」


「ヒナったら〜そんなにはしゃいじゃって〜。ナオトさん〜、皆さん〜ごめんなさいね〜」


「いえ、俺も嬉しいですから気にしないでください」


「ヒナ、ここに居るのはあなただけじゃないんだからね」


「そうそう、私たちだっているんだよっ」


「わたくしだって、ナオトお兄様とお話がしたいんですから…」


「そうですわよヒナリィ。独り占めはよくありませんわ。わたくしたち全員でおきゃくさまをおもてなししてさしあげないと」


「俺だって漂流者ってやつに用があるんだよっ」


「ディル兄さま…おきゃくさまにそのたいどは失礼ですよ……」


 ひぃの一番上のお姉ちゃん、というかもうお姉さんといっていいお年頃のナミさんと、ひぃより少し歳上、多分ディルと同じくらいだと思われるマイちゃん、それからティシャにフラウ、そしてディルまで俺達に興味津々らしく、一緒に話や遊びをしたいらしい。

 まぁ、今まで大人同士で話してたからしびれを切らしたってのもあるんだろうけど…大人の話を黙って聞いていられたところは流石貴族の子供達と言うべきかな。

 それじゃ、子供達の期待に応えるとしますかっ。



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