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#09 自己紹介から昼食へ



「さて、では皆席に着いたところで…まずは自己紹介といくか。あぁ、いや、その前に…セヴァル、料理の方頼めるか?」


 ゲシュト様が食堂と言う名のホールに控えていた執事…セヴァルさんと言う名の結構若めな男性に声を掛けた。


「畏まりました、旦那様。只今お持ち致します」


「うむ、よろしくな」


 セヴァルさんと共に控えていたメイドさん…10人くらいも一緒にホールから出て行った…これから料理が運ばれてくるんだろうな、ちょっとだけ楽しみ。


「よし、では改めて。私がガルムドゲルン領主のゲシュトベルグード・テラ・ガルムドゲルンだ。ゲシュトで構わん、本来は堅っ苦しいのが苦手でな。この場では素でいかせてもらう。君達も素で構わんからな」


「あなたったらいつもよりはしゃいじゃって、もう…。皆さん、初めまして。私はアイリィアイギス、ゲシュトの第一夫人でブリュナの母です。アイリとお呼びください。よろしくお願いしますね」


 ちょっと女性が多いなぁ、なんて思ってたら第一夫人だった…この世界はホントに一夫多妻なんだなぁ…と。

 ブリュナ様の母だけあって、かなりの美貌です、それに落ち着いた感じの優しそうな雰囲気がぴったり。

 この両親からブリュナ様ってのも納得だわ…。


「次はわたくしですわね。皆様、ご機嫌麗しゅう。ゲシュトの第二夫人でフラウの母のプリムロゼルタと申します。プリム、とでもお呼びいただければ。よろしくお願いいたしますわ」


 第二夫人…この人も美人だなぁ…アイリ様よりちょっと若いかな。

 これぞ貴族の女性って感じの物腰と口調だけどそれがまたいい感じ。

 少しだけ、ほんの少しだけキツめな目をしてるけど、貴族特有の高圧的な感じとか微塵も無くて笑顔がとても素敵です。

 フラウのお母さんってことは、ブリュナ様とフラウは異母兄妹ってことになるのか。


 こんな感じでガルムドゲルン公爵家から挨拶が始まった。


 ガルムドゲルン公爵家はブリュナノルグ様と、フラウ…フルネームはフラウシャッハ・テラ・ガルムドゲルン、それで全員だった。


 次のグリュムセリナ侯爵家の面々は、当主でティシャのお父さんのグロウデリュード・ソル・グリュムセリナ、第二夫人でティシャのお母さんのシャルティネルフィア、ティシャより少し歳上の兄、ディルフィングス、そしてティシャルフィータでこの場は全員、第一夫人とその子供達は来てないそうだ。


 で、最後はリリエンノルン伯爵家、ひぃのお父さんで当主のロイエルドラグル・ルナ・リリエンノルン、ひぃのお母さん、第二夫人のルリアリエリア、ひぃのお姉ちゃんが2人、長女のナーミナリニィに次女のマイマーミリィ、そして、三女のひぃ…ヒーナリナリィ、と。

 こちらも第一夫人は来てないみたい、まぁ今日はティシャとひぃの関係者だけってことなんだろうな、この間の件で。


 っていうか皆奥さん複数いるのね…やっぱりこっちの世界じゃ常識なんだ。

 目の当たりにすると実感せざるを得ない…。

 でも流石に6人とかは無いでしょ?皇族じゃあるまいし、一介の冒険者でそんなやつは居ない…と思いたい。

 いや、でもフルメンバーのパーティーも多くないけど居るってラナが言ってたしなぁ…って、だから俺もそうしなきゃいけないわけじゃない、けど…実際そうなっちゃってるんだよなぁ…これからどうなるんだろう、と不安と期待がごちゃまぜになってるのが今の正直な心境です。



「こちらはこんなもんだな。ではそちら側も紹介してもらえるかな?」


「あ、はい。では…えっと、冒険者パーティー『黒惹華』のリーダーで漂流者のナオトです。よろしくお願いします」


「何だ、ナオトは堅いな。素でいいと言ったぞ?私は」


「いえ、これが俺の素なんですよ…元の世界での癖が抜けなくて……」


 立場が上の人相手だとこうなっちゃうんだよな…辛うじて俺って一人称は使えてるけど。


「そうか、まぁその内慣れるだろう。この場で慣らしていってもいいぞ?」


「ど、どうですかね…この場にいる人達相手だとちょっと無理かも……」


「ハッハッハッ!もっと気楽にいけっ、折角こちらの世界に来たのだろう?なら存分に楽しむべきだ、違うか?」


「そ、そうですね…あはは……」


 うん、やっぱり豪快だなぁ…ちょっと気圧されるよ…。

 人柄は全く悪くはないんだけどね。


「んじゃ、次は俺か?」


「いや、パーティー単位やろ?そこは」


「あー、んじゃそうすっか。パーティーじゃないやつもいるみたいだけどなぁ?」


「そ、そこはいいでしょっ!関係者なのは間違いないんだからーっ!」


 リズが弘史にツッコまれてる…何かイヤな予感がするなぁ…リズ、どうやって自己紹介するつもりなんだ?まさかまた堂々と宣言するわけじゃないよな…?


「二人ともそこまでや。ほなウチらから…ナオと同じパーティーのメンバーで、ウチがシータフィオラシス、隣から順にマールオリザロレッタ、アーネルミルヴァ、ラーナミラルティア。ここまでが見ての通り獣人種、一応ビルトスマーニア獣連邦国の領主の娘達や」


 シータが一人席を立って座ってる順番に紹介していった、とりあえず姫達だけ。

 種族括りってところかな?


「ほう、獣連邦の。ということは…アーネルミルヴァと言ったか、君は虎人族か?」


「アタイのことはアーネでいいぜ。ゲシュトのおっさんの言う通り虎人族だけどよ…それが?」


「ちょっ、おいアーネ、ゲシュト様をおっさん呼ばわりとか…」


「ハッハッハッ!それで構わないと言っておるだろう、さっきから。ナオトは気にし過ぎだ。それよりそうか、なるほどな…。うむ、納得した」


「何がだよ?」


「ん?あぁ、イーナは息災か?」


「げっ!オフクロの事知ってんのかよ…」


「まぁ、昔ちょっとな…。ダイガルド…は聞くまでも無いな、アイツは何があってもくたばるような奴ではないからな」


「オヤジの事まで…って、ん?待てよ…ゲシュト……あぁーっ!『颯迅のゲシュト』っておっさんの事かっ!?」


 何だ何だ?ゲシュト様とアーネの両親は知り合いなのか?

 しかもゲシュト様二つ名持ちだった…領主なのに冒険者でもやってたのかな?


「フッ、また懐かしい二つ名を…。二人にでも聞いたか?」


「昔ちょっとだけ聞いたぜ…オフクロを奪い合った奴がいたって。おっさんだったのか…」


「まぁ、若気の至りだ、気にするな。二人が息災ならそれでいい」


 まさかの恋敵…何かアーネの両親気になってきた。

 その内姫達の国にも行ってみたいな…。



「まぁしばらく会ってねぇけど、多分くたばっちゃいないと思うぜ」


「そうか。私も領主となってからは中々ここを離れることが出来なくてな…。機会があればまた会いたいものだ。っと、すまん、まだ途中だったな。続けてくれ」


「ほな、あとウチらのパーティーメンバーは竜人種のリーオルエレミネア、これで全員や」


「………(ペコっ…………」


「ほう、竜人か…なかなか強そうではないか」


 実際強いです、なんてったって魔王討伐経験者ですから。

 まぁその結果いろいろワケアリになっちゃってますけど、魔人種とかね。


「で、パーティーメンバーやないんやけど、そこのちっこい娘がリーダーの専属受付嬢のリーズロルトミニィや」


「あ、ちなみにナオ「あーっ!んんっ!ゲホッゲホッ!」……ちょっと何さー」


「だからそれはこの場でわざわざ言わなくてもいいだろっ!」


 やっぱり言うつもりだったよこの見た目幼女はっ。

 別に隠すつもりも無いんだけどわざわざこっちから広めるつもりも無いんだって!

 ったく油断も隙もあったもんじゃないっ。


「ん?何だ?何も隠すような事でもないだろう」


「え?」


「パーティーで男一人、しかも漂流者ときたらそれしかないだろう?全員ナオトの相手なんだろうが。違うのか?」


「っ!?いやっ、それは、その……」


「ほう…流石は漂流者と言ったところかな?」


「しかもほぼ他種族とは…畏れ入った」


 グロウ様とロイ様まで乗っかってきたよっ、てかやっぱりこのパーティー編成って見ただけで分かっちゃうわけっ!?

 パーティー名がどうのこうのとかそれ以前の問題だった…もう素直に開き直っちゃおうかな……。


「あらあら〜、あなた〜、羨ましいのかしら〜?」


「いや、そういうわけではない。それだけナオトが優秀だということだろう、と素直に感心しただけで他意は無いぞ、うん」


「ふ〜ん…そうですか〜……。後でリティと一緒にお話しましょうか〜?」


「いや、だから他意は無いと…」


 リリエンノルン家はロイ様よりルリア様の方が強い、と。

 リティっていうのは第一夫人かな?

 いや、それより早くこの話題を切り上げないとっ。


「次っ、ほら、弘史の番だろっ!」


「あー、んじゃ俺のパーティーな。パーティー名は『雷銃』、リーダーは俺、漂流者のヒロシだ。んで隣のコイツも俺と同じ漂流者でトモミ、その隣がフラムネシェラータ、見ての通りエルフだ」


 弘史もいつもと全く変わらないのな…ある意味関心するわ。

 向こうの世界でもこんな感じだったのか?もしかして。


「ふむ、漂流者が二人とは頼もしいパーティーだな。よし、これで全員か。では紹介も済んだことだ、大したものではないが遠慮なく食べてくれ」


 俺達が自己紹介してる間、セヴァルさんやメイドさん達が次々と料理を運んで来ていて、全員の紹介が丁度終わった頃にはほぼ料理が出揃っていた。

 意外なことに一人一人にそれぞれ料理が用意されたわけではなくて、大皿に乗った料理がいくつも用意されてて好きなように取り分けて食べるみたい。

 コース料理みたいなのを想像してたんだけど、中華風だった…料理自体は全然違うけど。

 

 いや、でもどれも旨そうだ…肉料理、魚料理、色とりどりの野菜、スープなんかは言えば配膳してくれるみたいで、至れり尽くせりだし。


 皆どうやって食べるのかとちょっと様子を見てたら、アーネと弘史がソッコーで勝手に取り分けて食いついてた…。


「アーネ、弘史…少しは遠慮っていうか節度っていうか…そういうものは無いのか…?」


「あ?何言ってんだナオト、んなもん必要ねぇってゲシュトのおっさんがさっきから言ってるだろーが」


「ったく、ホントくっそ真面目だな、尚斗。こんな旨そうなもん前にして食いつかないとかありえねーだろっ」


 そう俺に言いつつ美味い旨い言いながら結構な勢いで食らいついてる二人。

 いや、確かにゲシュト様はそう言ったけどさぁ…それでも少しはこう、思ったりしないか?貴族様達の前なんだし…。


「ハッハッハッ、いい食いっぷりだなっ!これは用意した甲斐があったというものだ。さぁ他の者も好きなように好きなだけ食べてくれっ」


 あー、領主様からしてこれだもんな…俺が無駄に気遣ってる気がしてきた…。


「ふふっ、ナオトさんも私達に遠慮することはないんですよ。はい、あなた。どうぞ」


「おお、すまんなアイリ」


 そう言いながらゲシュト様に料理を取ってあげてるアイリ様…目の前の方達がこうなんだからそれに倣うのが筋ってもんか…。

 しかし仲いいな、ゲシュト様とアイリ様。

 しかもそれ見て微笑んでるプリム様…。

 一夫多妻でもこうやって上手くやれるってのは凄いな…俺に出来るのか?そんなこと…。


 って少しだけ戸惑ってたら、ティシャとひぃの両親がこちらに話し掛けてきた。


「食事を始める前に私達から一言ナオトに…。娘のヒナリィと、そしてティシャの事、本当に感謝している。ありがとう」


「ミディやセバスに話を聞いた時には、血の気が引いたぞ…。だが、今こうして笑って娘が側にいる。これも全てナオトのおかげだ。ありがとう」


「私からも、大事な娘を救っていただき、本当にありがとうございました…」


「本当に〜、ありがとうございました〜。ナオトさん〜」


「いえ、ミディさんやセバスさんにも言いましたけど、二人が諦めずに頑張った結果ですから…お気になさらず」


 こうして家族揃っていられて本当に良かったよ。

 ティシャとひぃも、あれだけ怖い思いしたはずなのに、今ではそんなことがあったのを微塵も感じさせない程ニコニコ笑ってて…多分家族に十分癒してもらったんだろうな…うん、俺も嬉しいよ。


 そんなやり取りをして、じゃあ俺も料理をいただこうかなって思ってたら、ラナが取り分けた料理の皿を持って俺の所に来て、目の前に差し出してきた。


「はい、ナオトさん。どうぞっ」


「あ…ありがとう、ラナ……」


「何よーラナったら、点数稼ぎなんかしちゃってー」


「点数稼ぎって…ナオトさんの為にならこれくらい当然じゃない。ですよね、ナオトさんっ。ふふっ」


「あ、いや、当然…では無いと思うけど、でも嬉しいよ、ラナ」



 とまぁ、こんな感じで貴族様達と昼食を楽しんだ。

 昼だからかお酒は無かったけど、こうして大勢で食卓を囲むとか、親戚一同が集まった時くらいしか記憶に無い…子供の頃に。

 でもこんなに親しげに和気藹々って感じじゃなかったよな…どうして今はそう感じるのか。

 やっぱり皆が居てくれるからなんだろうな…と思いながら目の前の料理を美味しくいただいた。



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