世にも不幸な僕と君の物語
何やかんや言って、そんな辛い物語なんて書けませんので。これは主人公とヒロインの茶番だったり彼らが罵ってくる相手に心の中で突っ込みいれてったりする話です。物語は西区、もしくは椎名が一人称で物語を進行していきます。一作目なんで変な感じになるかもしれませんが、安心して読んでいただければめっさ幸いです。ちなみに実話ではありません。作者の心の闇でもありません。
高校と言われて、皆さんは何を思い浮かべるのだろうか。
恋愛だとか、部活だとか、その他諸々、今までとは異なる色鮮やかなスクールライフを挙げるひとが少なくとも5割はいると思う。実際どれくらいかは知らん。
こんなこと言うのも後ろめたいが、僕、西九 啓人はそんなことどうでもいい。なぜならそんな生活望んでも手に入ることはないのだから。それに昔ならそれを望んだだろうが、今は手に入るとしても望まない。
自分の未来が薄々わかってしまうのだ。普通なら何が起こるかわからなくてワクワクしたり不安を覚えたりするのに。まったく過去を呪いたい。過去といってもわからないだろうから、少し説明したいと思う。
2年前・・・
学校から自宅に帰る途中だった。中学二年生に進級したばかりで、いい感じに過ごしていけると思っていた時だった。その時の僕は、ただの平凡な中学生だった。成績はそこそこ。自慢もできないし、怒られることもない。常識はわかっていて、なるべく人様に迷惑をかけないよう普通に生きていた。
帰路の沿いにあるホームセンターに差し掛かったとき。
事件は起きた。
というか、事件は起きていた。
ホームセンターの中から、人が走ってきた。こちらに向かってくる。見覚えがあると思ったら父だった。
父は自営業でレストランをやっていて、正直者という第一印象を人に与えるのが得意だった。ちなみに僕はそんな父を結構気に入っている。今日は定休日だがこんなとこにいるのは珍しい。
何事かと思ったが、すぐに
「来い」
と言われ、近くに止めてあった自家用車に乗せられた。車はすぐに発車した。
父は慌てている様子だった。それが気になって父に聞こうと思った所で気が付いた。
父の腕に、物凄いほど派手な装飾が施された腕時計がついていた。車内のデジタル時計と時間が全く同じなところを見ると電波時計で、どことなく光っていて、いくらするかなんて解りっこなかった。おそらく十万か、下手をすれば零がもう一個増える。父がそんなものを持っていた記憶はない。とするとあのホームセンターで買ったのか。
そう思っていたら、車が目的地に着いたらしい。着いた先を見て驚いた。
「交番」
そこには確かにそう書いてあった。
父がいきなり、僕に向かった来た。手を取られ、交番の中まで引っ張られた。
「どうしました?」
警察官が聞く。
「うちの息子が・・・」
僕がどうしたって?心の中で思う。
そして父が例の時計を取り出しながら言った事に、僕は一瞬思考停止まで陥ったかもしれない。
父がこう言った。苦悩の末、絞り出すセリフのように。
「うちの息子が、ホームセンターでこの時計を盗んだんです。逮捕してやってくださいっ。」
はい?
冗談かと思った。こんな所まできて言う冗談にしてはふざけ過ぎだが。
父親が、息子を、警察に告発!?
しかも冤罪で!!?
驚いた。ショックのあまり、警察にいろいろ聞かれても、口が動かなかった。
そのまま逮捕された。
取り調べで必死に無実を訴えたが、父親が巧妙極まりないでたらめを言ったせいで、無実は証明されず、裁判にも負け、ホームセンターの人と、腕時計を予約していた人が損害を訴えて、懲役1年が決まった。
ありえないと思った。
こちらが必死になって抗議しているのに、父を信じて全く聞く耳を持たない警察や証人に裁判官。
死にたくなるほど嫌気がさした。こいつらはほんとに人なのかとまで思った。
いっそ死のうかと思った。
父が俺に罪を掛けた理由は知らない。釈放されて自宅に帰ったら、父も母もいなかった。まあどっかに引っ越しでもしたのだろうか。
そんなこんなで、高校まであと少しという所を歩いていると、
「啓人。」
呼ばれた。
僕は友達ができない。犯罪者だということが町中の人に知られているからだ。
だが、一人だけ、友人と呼べる人間がいた。
「よっ。椎名」
椎名 楚乃。幼馴染で、家が隣。幼稚園から中学まで同じで、高校もまた然り。別に付き合ってはいない。そこらはどうでもいい。
実は彼女は僕が裁判で抗議しているころ、旅行先で原発事故に遭っており、人体への影響はなかったのだが、同級生に知られると、
「放射能発してんじゃねえよ。」
「近寄るな。」
「ころされる~。」
などと頭の悪い悪口を延々と浴びせられ、僕が服役している間家に引きこもっていた。嫌われ者同士で、通じるところがあるのか、今でも結構互いの悩みを打ち明けたり、雑談したりしている。まあ基本的には友人だ。
椎名は結構いい奴で、他人のことを考えて行動できる、優しい人間だ。それだけに、罵倒された時のショックも大きかったのだろう。
「始まったねー。高校。」
椎名が言った。
「まあ今回も最低だろうがな。」
椎名も多分またいじめられる。
「はは。まあ頑張ろうよ。」
「できれば頑張ることなくのんびり一人で過ごしていきたい。」
「悲しいこと言わないでよ。」
笑いながらそんなことを言う。
いつ僕にかかった誤解が解ける日が来るのか。それは知らない。
でも、いつか来る。来たからって友達を作る気にはならない。
そんな灰色な僕たちの高校生活が、始まってしまった。
続きは近いうちに出せるかわかりません。完全に不定期ですので。次回は椎名に過去についてもう少し詳しく書こうかなと思います。