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volition  作者: 我輩
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目覚め(2)

短い夢の様なものをいくつかみた。

現実にしてはおぼろげで、夢にしては鮮明だった。

それは幼い頃からの記憶の断片。

場面が切り替わる毎に自分の中で喜怒哀楽が入れ替わり、色々な感情を行ったり来たりしていた。


そしてまた、場面が切り替わる。




そろそろ日も暮れようかという夏の日の公園で、幼い頃の自分と弘人がボールを蹴って遊んでいた。今現在住んでいる住宅街はこの当時団地になっていて、灰色にくすんだ長方形の建物がいくつも並んでいた。その団地の端に位置する小さな公園は遊具といえば錆びたブランコと鉄棒くらいしかなく、あとはちょっとした砂場と広場があるだけのものだ。夏休み中だという事もあり犬の散歩や親子などが入れ替わり立ち替わりしているが普段はあまり人はいない。だから二人で思う存分遊べるためお気に入りの公園だった。


その日もいつも通り、学校帰りに公園によった。いつもパスを繰り返すだけで流石に飽きてきていたので、その日は一人がキッカー、もう一人はキーパーになりをゴールに見立てた鉄棒を守るという遊びを考えた。最初は弘人がキッカー、自分がキーパーになった。鉄棒ゴールはかなり狭く守るのは容易だった。


「あーもう、これ入る訳ないじゃん!」


「俺の正面に蹴るから入らないんだよ。もっと端狙ってみろよ。」


両手を広げれば端から端まで届くような鉄棒では際どい場所を狙っても同じなのだが、他にゴールに出来る様な物はなかったのでそう言うしかなかった。


「ちくしょう!」


そう叫んだ弘人が蹴ったボールは枠より高く勢いよく飛んでいき公園の外へ飛び出してしまった。


「優希取ってこいよ!」


「弘人が変なとこ蹴ったんだろ!弘人が行けよ!」


「キーパーが止められないのが悪い!」


枠から外れているのだからそんなはずはないのだが、幼い自分それもそうかと妙に納得してしまった。

ボールは公園の外の車道の向こうにあるアパートの方へ転がっていた。ボールを拾い、公園へ戻りながら弘人へ思いっきりボールを蹴った…のだが、その拍子に派手に転んでしまった。

マズイと思った。

左の足首を捻ったようで立とうとすると激痛が走ったが、それより問題だったのは、そこが車道で、右を向けばすぐそこに軽自動車が迫っていたことだった。


「優希!」


弘人が走ってくるが間に合うはずがない。

焦りと恐怖で混乱しながら運転席の男を見るが、男は助手席の方を向き、何か探している様子でこちらに気がついていない。

必死に這って避けようとするがもうその時には車との距離は2メートルもなかった。

ダメだと思うと同時にようやく男が気がつきブレーキのギーッという音が聞こえたが、車は止まらない。

思いっきり歯を食いしばり目を閉じた。

その瞬間。

脇腹のあたりに鈍い痛みが走ると同時に体全体が前へ吹き飛ばされた感覚がした。が、痛みはすぐに消えたし車にぶつかった感触はなかった。

恐る恐る目を開けると目の前に弘人がいた。しかし弘人の目は倒れ込んでいる自分ではなく自分の左あたりを目を見開いて見上げていた。人がいた。

黒い礼服のようなものの上に夏だというのにこれまた黒いロングコートを着ていた。首から鼻にかけてはタートルネックの延長のような、例えるなら忍者の様なマスクで隠されており目にはサングラスをかけている。幼心にかっこいいと思ったが冷静に考えればかなり不審者だ。

その人をまじまじと見つめてから、やっと自分が公園内にいることに気がついた。後ろを振り返ると先ほどの車が止まっており運転手が辺りをキョロキョロしている。結局よく分からないといった様子で車に戻りタバコを咥えてから去っていった。助手席を見ていたのはタバコを探していたからの様だ。


「大丈夫か?」


黒い男の声にハッとし視線を戻した。想像していたよりずっと若い声だった。


「あっ、は、はい。大丈夫です」


「それは良かった。これからは気をつけなよ?今日は偶然近くにいたから良かったけどさ。」


「あ、ありがとうございました」


この人が助けてくれたという事らしい。

それまで目と口を馬鹿みたいに開けて呆然としていた弘人がようやく言葉を発した。


「あの、あなたは誰?」


「んー、そうだね。魔法使いかな?」


当然からかわれてるのかと思ったが弘人は真面目に驚いた表情だった。そして自分も魔法でも使わなければ轢かれる寸前だったあのタイミングで、5メートルはあるであろうこの距離は移動できない事に気がついた。


「さて、そろそろ僕は帰らないと。あっ、そうだ。今日僕にあった事は三人の秘密にしておいてくれるかな?」


「え、なんで?」


「魔法使いは他の人にバレちゃいけないんだ。今も君たち以外の人は僕の事は見えないようにしてる。お願いできるかな?」


言われてみれば弘人の後ろ、自分と黒の男の正面の方向にあるベンチに子連れのお母さんがいるが未だに地面にすわったままの自分にも夏にも関わらずコートを着ている不審者にも気がついていない様子だ。


「わかった。秘密にする。」


「ありがとう。じゃあサヨナラだ。元気でね。」


「うん。助けてくれてありがとう。」


マスクとサングラスで顔は見えなかったが、その男が笑った気がした。そして突然強い風が吹いたと思うと、もう男はいなかった。





そこで夢は終わった。

お読みいただきありがとうございます!


前回に比べ大分長くなりました…

二話目にして早くも回想に入りました。三話目まで引きずりたくなかったので二話に詰め込ませていただきました!


次回からもよろしくおねがいします!



ご意見・ご感想お待ちしております!

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