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11.   出来事。2020/08/05

「良くお似合いですわ。光さま」

 海の国の王女さまに言われたが『額ピアス』。ハクが額に触ってみたら小さな石の感覚が確かにした。


「駿兄、見える?」

「額に宝石がはまったのか? 見えないぞ」

「良かった~。みんなに見えたら学校いけないよ」

「すごく目だっていい。高そうだし、豪華だし」


 カミィはひょっとして、慰めているつもりかもしれない。


「みんなには見えないから、大丈夫」

「見えるのは俺たちだけだし、小さいから平気だよ」


 桐と怜も何とも言えない顔をしつつ慰めてくれた。額ピアスは嫌だと思いつつ、何の役にたつのかな? というハクの疑問に答えるように


「光さま、盾、とおっしゃって下さい」


 王女さまが言うのでハクは「盾」と言ってみた。すると、左手に金の盾があらわれた。と同時に見えないバリヤーで体を包まれた感じがした。


「おお」

「なんだか薄い金色のオーラでハクが包まれたように見える」

 そう言いながら、カミィが触ってきた。


「なんだか柔らかい膜がはっているみたいだ。ちょっとビリビリする」


 そういいながらペタペタと何度も触り、そのうち体ごとくっ付いてきてしまった。金のオーラは丸い形になっているみたいだ。


「このビリビリ、マッサージされているみたいで気持ちいい」


 カミィの言葉に駿もどれどれと触ってきて、二人はハクの盾のオーラにべったりとくっ付いてしまった。心地よいビリビリだそうだ。怜も体を付けつつ端のほうから触っている。このオーラ、スライムみたいな感触でほのかに暖かい。


「なんだか砂糖に群がる蟻みたい……」

 そういいながら桐が手を伸ばしてきたら、そのまますっと膜を通過してしまった。


「きゃっ」

 といいながら桐はつんのめってハクにぶつかってきた。


「ええ、どうして?」

「女の子だけ通すのか!」

「なんという奴だ」

「よし、試してみよう」


 という事で王女さまとその辺にいた人魚、海の国の女の人と試してみたけれど、通れたのは桐だけだった。そして王女さま以外はこの薄い金色のオーラに触ると、ビリッとして固い膜に弾かれた感じがすると言う。

 王女さまには柔らかく気持ちのいいビリビリだそうだ。このオーラは人を選ぶらしい。


「それにしても、宝玉の乙女は特別なのですね」

 王女さまがしみじみと言った。


「桐ちゃんを守るのは俺だと思っていたのに、ハクに取られるのか……」

 カミィのがっくりしたような声がした。


「まぁ、しょうがないよな。カミィは兄弟だし……いずれは離れていくものだ」

「娘を嫁にだす父親みたいな感じかな」


 駿と怜が調子にのってカミィをからかっている。

 まるで、僕と桐ちゃんが結婚するみたいな事を言って……うわー、恥ずかしいからやめてほしい、とハクが思っていたら


「ハク、顔が赤い」

 桐がハクの顔を見ながら言った。


 そんな近くから見ないでほしい、なんだか桐ちゃん、楽しそうだけど少し耳が赤くなってるよ……ハクにとっては恥ずかしいひと時だった。


 その後、海の国を色々案内してもらい、海の国からは川と通じてとか、水の通り道があれば海の国の人たちが移動できることがわかった。まだ光の国がどこにあるのかわからないし毛玉たちも集まっていないけど……そのうち出会いがあるのだろう。


「時期がくれば光の国への扉が開かれると思います」

 と王女さまがいうので、その時を待つ事にした。


 そうしたら、剣が手に入るからそれで桐ちゃんを守っていけたらいいな、とハクは思う。


「剣の修行をしよう」

 カミィが期待に満ちた顔をした。


「もう、カミィは」

「カミィ、剣より先に手が出るじゃないか」

「相手が武器持っててもカミィは素手で殴りにいくから」

「カミィは剣士にはなれないよ」


 カミィは皆にいっせいに突っ込まれた。古武術で木剣を使う時、カミィは剣を支えにして自分を飛ばしたり剣の上に乗ったりする。


「ええ、いや、大丈夫だろ、いい剣を持てばさすがに」

 カミィがしどろもどろに言いかけたら


「光の剣は光さましか使えません」

 と気の毒そうにマーレ王女に言われてしまった。


「やっぱり。カミィは拳王をめざすといいよ」

「素手で戦うのも、かっこいいわ」

 怜と桐にそう言われて


「へへっ、そうかな」

 とカミィはその気になってしまった。王女が少し呆れた顔でカミィを見ている。


 マップマークをつけたので、いつでも海の国に行くことができる。マーレ王女からは、時々こちらに来てほしいといわれた。

 今のところ、この盾のバリヤーはハクと桐しか包めないけど、少しずつ範囲を広げる事ができるようだ。レーダーのほうも使う事で精度をあげられるみたいだ。


「人間レーダー? 便利だな。チーズケーキとか、から揚げとか検索できるのか?」


 カミィがわくわくした顔で聞いてきたので、ハクはデコピンをお見舞いしておいた。

 ちなみにこっそり、チーズケーキで検索をかけてみると検索する事ができた。マップが目の前に浮かんで対象がひかる。誰かの部屋の中に置いてあるみたいだ。これは落し物をした時とか便利かもしれない。

 その日は皆で海の国に泊まったが、ホテルのような部屋でとても快適だった。


 翌日も良い天気だった。

 海の国の皆さんに別れをつげて、地下通路を使って熊本城の裏手からこっそりでた。誰もいないのを確認するのにハクのレーダーはすごく便利だ。

 このレーダーを使うとマナの捜索も楽になるので調べてみると、すぐ近くの神社の近くに見つけた。マナを魔法玉にかえてから、レーダーを試してみると3人ほど、高校生と中学生、年配の男の人がコビトを体に埋めているのを発見した。カミィと桐、怜が姿を消してコビトの引っこ抜きに行く。


「姿を消して行くと簡単に引っこ抜けて便利ね」

「最初からそうしとけば良かった」

「これからは楽になるからいいじゃない」


 皆で話をしながらその日、ハクたちは熊本の街中を楽しんだ。

 よく知らない土地で買い物をしてまわるのは結構わくわくする。路面電車も珍しくてよかった。熊本ではいまだに路面電車が走っているのだ。

 でも、夏休みも後半になってしまった。なので、旅行もそろそろ終わりだ。その日は阿蘇のペンションに泊まって翌日、熊本空港から飛行機で羽田まで飛んだ。


「あーあ、旅行は終わっちゃったね」

「ハク達に比べると俺たち楽しんでないよな」

「河童とか見たかった」

「人魚は見たじゃない」

「カエルの王様は見てない」


 怜が不満そうだ。でも、あとからゆっくり見に行けばいい。


 後日、帰ってからカミィは宿題をさせなくてはいけないので、ハクと桐、ハクと怜、ハクと京華という組み合わせで残りのマナの確認と回収に行った。

 レーダーがあるので、その土地について検索して回収するのがすごく早くできるようになったが、どこでもハクが行かなくてはいけない。


 実は各地にマナの回収にいった時に、緑と水色の毛玉との出会いがあった。これで毛玉が5体揃った。

 毛玉が5体でキャイキャイしているのは見ていて楽しいものだ。ユキはいつもハクの頭の上だけど、ほかの毛玉たちはハクのまわりをフワフワと飛んでまわるようになった。


「まるで、毛玉使いのようだ」

 とカミィに言われた。


 コビトのファイが、毛玉は何か攻撃できるのでは、と言うので毛玉たちに聞いてみたが首を傾げられた。「虹と一緒、戦う」というので、虹色の毛玉に会う事で何かができるようになるようだ。虹色がリーダーになるのかもしれない。どこにいるのだろう。

 もうすぐ新学期。

 2学期が始まる前に各地を巡って、取りこぼしがなかったか調べてみる事になっている。

 探査が広域になるとこの辺かな? という感じになるから、レーダーの精度を上げる為に異世界に修行に行く事にした。

 精霊国だと親切にされてしまうので、異世界の修行は未開地に行く。文明人には辛いのだが、修行だから仕方がない。それに未開地で新たな出会いがあったら、それはそれで面白いかもしれない。


「やっぱり、冒険には危険がつきものだよ」

「未開地には何があるかわからないから、楽しいかな」

「未知の獣人もいるかもしれないし」

「仕方ないからつきあうわ」


 カミィに怜、桐と京華はまったく心配してないみたいだ。ハクも半精霊になってから飲食の心配がない点は安心だ。


「それより、カミィの学力が心配だよ」

 怜が言うと


「なんで、お前らはしばらく勉強しなくても成績がいいんだよ!」

 カミィがふてくされた。


「普段の努力」

「頭のできが違うから」

「カミィみたいな鳥あたまのほうがめずらしい」


 カミィは3人に言われていたが、ハクも勉強しないと忘れるから勉強道具は「なんでもしまえる結界」の中に入れておく事にした。

 食糧もしっかり「なんでもしまえる結界」に入っているから異世界で何かあっても大丈夫。


「よーし、がんばろう」

 ハクはこっそり気合をいれた。


 これからもしばらくは忙しい日々が続くのだろう。


次回 第2章「鏡と影の世界」

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