チームX
──ある日の、ダイアモンド・ファイア。
今朝からいつも以上に、忙しく調査をしていた。
「何故…こんなことが起きているんだ…!」
苦い顔で機具を操作するレット。
他の皆も、同じような表情を浮かべている。
「…妨害電波か…」
他の者たちちよりも、比較的冷静なファイが呟いた。
たまたま調査中に負傷したラナーテがその声を聞きつけ反応した。
「妨害電波?一体どういうことだ」
「…一ヶ所だけ、電波が届かなくなってるんだ。しかも一番肝心な所」
ラナーテにその『一ヶ所』の画像等を見せる。
しかし、まったく分かってないようだ。
「…何処だ此処」
「……」
「…分かった、ちょっと見せてみろ」
レットがタブレットを操作し、ファイの出している画像を自分のタブレットに出した。
その画像を見た瞬間、顔が変わった。
「……ファイ、本当に此処に妨害電波が…?」
「…間違いないよ」
「?」
ラナーテは未だにわかっていない。
レットは他の者達にもその画像を見せる。
最初は全員よく分からなかったが、真っ先にアニーが気付いた。
「此処って…ディン達がいる世界じゃないですか…!?」
「何だと…!?」
今やっと気付いたラナーテが、慌ててシャーマと通信をとる。
…が、案の定通じない。
「…それにしても、不思議なことに、内部の状況はよく分かるんだよねー」
「──まるで内部に、内通者がいるみたい…かい?」
突然、聞きなれない声が聞こえた。
後ろを振り返ると、そこには…
黒いスーツを着た赤髪の少年が、目を閉じて壁に寄りかかっていた。
「…誰だ」
少年を睨みつけ、レットが言った。
少年は目を開き、レットたちを見る。
その眼はまるで…
「…どこから入ってきたんだ」
「…んー………sorry、ちょっと言えないかなー…」
少年は困ったようなそぶりを見せる。
ファイは、少年に尋ねた。
「…ところで、君は?」
「…ボクの名は、エオル。…とでも名乗っとこうかな」
「へぇー…」
「いやだから何だよ」
「名前聞いただけだよー」
「それだけかよ!」
ファイとラナーテのやり取りを見て、少年は含み笑いをする。
「いやー、情報通りだね。ダイアモンド・ファイア」
「何…?」
エオルは懐から資料らしきものを取り出し、資料を読み上げる。
「…レット・フォルシード、ツンデレ君「(レット)誰がツンデレだ」(というと怒る)」
「当たってる…!」
「…おい」
「うっ…(-_-;)」
ロートとレットを横目に、残りの文も読み上げる。
「──ロート・フォルシード、無自覚毒舌少女。
ガーネット・フレイムバレット、超強運少女。
フィーローズ=エルドフィール、人見知りの不思議ちゃん。
アニー・ヴェラオン、基本周りに敬語。面倒見がいい。
ファイ・リュミエール、全てが謎。
ラナーテ・エスターテ、性別詐欺(ファイ曰く)。
ブレイ・シュトラール、温厚だが毒舌家。
火豪院炎斗、ほぼ無表情。なんかレットと似てるわねー。
火豪院日向、意外と面倒見いいなー…」
「何その情報!?俺のっ…性別詐欺ってなんだよ!」
「…今、この場にいる人たちだよね?」
「…って聞けよ!」
残念なことに、ラナーテは完全にスルーされている。
「ボクはね、あるチームに所属でね…今のは今回の依頼人からの情報さ」
「(よくそんな情報でわかるな…)依頼とは…」
「『ダイアモンド・ファイアの協力』、それが依頼でね」
「…依頼人とは」
「それは言えないな…わかるだろう?」
「…」
レット自身も分かっている。依頼人が誰なのか言えないことぐらい。
しかし…
突然、エオルの前にパネルが現れる。
『ハァーイ♪ソッチはどう?』
片目に眼帯を付けた黒髪の少女がニコニコとしながら話しかける。
「…月無、もう少しタイミングを…」
『あーら、誰かさんのおかげでこっちは大変なのよ?』
「…」
『それじゃ、詳しい現状ホーコクはディアちゃん達に言っといたから、後ヨロシクー♪』
「えっ、あ、ちょっと…はあ…」
中途半端に話を終わらされ、エオルはため息をつく。
「…悪いね、急用が入った。ボクはこれで失礼するよ」
「…ちょっといいかい?」
立ち去ろうとするエオルに、ファイが声をかける。
「…何だい?」
「ちょっと色々聞きたいことがあってね…」
ファイは、何か確信をもった表情を見せる。
彼の表情を見て、エオルは訪ねた。
「…もしかして、分かっちゃったかな…」
「まあね」
帰ってきた答えに、思わず苦笑いをする。
「…参ったな。こんな早くから分かるなんて想定外だよ」
「そうだろうね」
レットたちは二人の話していることが今一よく分からない。
ちなみにこの中で、一番分かっていないのはラナーテである。
「…ところで。君は今エオル、だったよね」
「うーん…ヒドイなー」
「…君のチームっていうのは、もしかしてこれのことかい?」
そういってファイはある資料を取り出す。
「…それは…?」
「俺が調べたものだよ。ちょっと色々あってね…」
資料には、『チームX』のことが書かれていた。
「…『チームX』
結成時期、不明。結成目的、不明。チーム人数、不明。
はっきり言って存在自体が不明、謎に包まれたチーム」
「うわヒッド…」
「ちなみに『チームX』っていうのは俺が勝手にそう呼んでるだけね」
「『チームX』って…まんまじゃねえか」
ファイは含み笑いをする。片目を閉じて、さらに資料を読む。
「唯一鮮明になっているのは…二つ。
──チームリーダー・エオル。
現在疾走中の赤き盗賊団、初代団長・ルビー・フレイムバレットと何らかの関係を持っている可能性。
…ってところかな」
「何だと…!?」
彼らは思わず驚きの声を上げる。数人はエオルを見る。
「へぇ…そこまで調べているなんて、さすがチーム一の情報収集家だね。
そう、その通り。ボクはこれでもチームリーダさ」
ニコニコとしながら、あっさりと認めた。
「おいおい…マジかよ…」
「…なんか信用できないなー…」
ラナーテとガーネットは、まったく信じられないようだ。
「お姉ちゃんと知り合いっていうのがなんか嘘っぽいなー…」
「あはは、酷いなー(棒読)」
ジリジリとエオルに詰め寄るガーネット。
しかし、それでも彼は表情を変えない。
「…あ、そうだ。ここに来たもう一つの目的を忘れてた」
「目的ぃ?…わっ!」
「そう。まあボク個人の頼みみたいなものだけど」
エオルはガーネットを片手で押えて言った。
「…君の力を借りたいんだ。ファイ・リュミエール」
「…今日は出番が多いなー」
(それは作者が…)(やめんか)
「…ファイ…」
「…俺を信じて、____達も大丈夫だよ」
心配そうに顔をあげたフィーにファイは何かを言うと、エオルを見る。
「…それで、俺の力を借りたいというのは?」
「うーん…ちょっと言いにくいんだけどねー…
──ボクら、『チームX』に入ってほしいんだ」
「「はああ!?」」
周りからは、驚きの声が上がるも、ファイは微動だにしない。
それどころか、既に分かっていたかのような顔をしている。
「いやー実を言うとボクらのチーム名、ホントは『レジスタンス』っていうんだけど、
『チームX』のほうが気に入っちゃってねー」
「だから何だっての…」
ラナーテが少々苛立ちながら言う。
「…で、どうする?ボクとしてはどっちでもいいんだけどね」
「うん、分かった。協力するよ」
「「はっ!?」」
まさかの返答。しかも即答。
思わずラナーテが聞き返した。
「おっ…おい…ちゃんと考えろよ…?」
「うん。考えたよ?」
ふざけているように見えるが、ファイは本気だ。
「…エオルは信用しても大丈夫さ」
「…その理由は?」
「…残念だけど、今は言えない。いずれ分るさ」
「……はあ?」
その後もラナーテはずっと理由を尋ねるが、ファイは何も答えない。
そして…
──別世界。
「なー、先輩。通信がつながらないんだがー?」
「…何?」
「おいおい、こりゃヤバくないか?」
「ええ…」
──異変に気付き始めた人々、各自…行動をしだした。