月のうさぎ
むしろ し です
月の野うさぎは――跳ねる。
ボールのように、跳ねる。
月の野うさぎは――走る。
風のように、走る。
でも月に、風なんてありません。
でも月に、うさぎなんていません。
そもそも、月では跳ねません。
地球のようには跳ねません。
知ってますか? 月の重力は、地球の重力の六分の一なんです。
知ってますか? 月には空気が無いんです。
だから、月を喰う気はありません。
そう、だから。
馬鹿なこと、言ってる。
その自覚があって。
支離滅裂で。
困ってしまって。
笑って
しまって
わん、わん、わわーん
にゃん、にゃん、……にゃんころりん。
それだけです。
私の主張はそれだけです。
はい、そうですね。
意味が、わかりませんね。
だから
……お粗末さまでした。
たったこれだけ。
たったこれだけの、活字。
たったこれだけの、小説。
……小説?
本当に、小説?
詩
むしろ
詩ではないでしょうか。
そう、思いませんか。
詩
シ
死
物語の死
ストーリーの死
進展性の欠如
時制の消滅
因果関係の崩壊
それが、支離滅裂
それが、死
詩
詩です
これは詩です。
小説じゃ、なかったです。
今、気づきました。
でも、載せます。
だって、
せっかく書いたし
――せっかく、書いた詩。
最期の一行が書きたかっただけです。