第十話
だいぶご無沙汰でした(^_^;)
悠は夏子と司の間に生まれた子供だった。
大抵の場合、初めて自分の子供をだいた瞬間は喜びに溢れる。
しかし、夏子は息子の右目に気づいてしまい、彼女は取り乱した。
そして、彼女は悠を愛することができなかった。
施設に預けることも考えたが、司がそれを止めた。
彼は、悠を愛していた。
その日は雨が降っていた。
「前にも言ったよね夏子。悠は僕たちの子供だよ?この子は僕たちの為に生まれてきてくれたんだ。だから…」
「そんなこと分かってる!!」
夏子は、眠っている悠を抱きながら優しく言った司の言葉を遮った。
「でも…それって綺麗事なのよ…」
「綺麗事でも良いじゃないか。親として、この子にしてあげられることは少ないかもしれない。
それでも、僕は悠の為にしてやれる事はしてやりたいんだ」
司のその優しい微笑みに、その言葉に、夏子は膝の上で拳を作った。
「どうしてあなたはそんなに優しく微笑むことができるの!?この子のことが心配じゃないの!!?」
司は悠を別室の布団に寝させる。
寝室の扉を閉めた彼は、リビングの夏子のもとへもどる。
「もちろん…勿論心配だよ。でも、それは夏子みたいに″自分の未来への心配"じゃなくて、″悠の未来への心配″だよ」
そう、夏子は自分の事しか考えていない。
それを悟られた事に腹が立った。
「どうして私が自分の未来の心配しかしていないって言えるの!?」
だからつい反抗期の子供のように反抗したくなる。
「夏子が施設に入れたいって言ってたから、もしかしたらって…それでついさっき確信したよ」
「…して…」
夏子が消え入りそうな声でつぶやいたのを司は聞き逃した。
「え――?」
「どうしてあなたはこの子を…」
夏子は言いかけたが、続きは言葉にしなかった。
いや、言葉にしては取り返しがつかない。
彼女はまだ母親としての意識があったのだろう。
しかし、司には続きが想定できた。
「僕が、悠の父親だから――」
その日の雨の音が、夏子の心を疑い、責めた。
夏子はその言葉に返す言葉を探すことをしなかった――…。
第九話まで読んでいてくださった方には、大変長らくお待たせ致しました。
待ってねぇよ!という方、どうもすみません(-_-;)




