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気配
夏の夜。
暑苦しさに千佳は寝付けないでいた。
今日はお父さんもお母さんも帰ってこない。
あまり広くない家なのに、今日は妙に広く感じる。
早く寝てしまおう。固く目を瞑り、縮こまるようにして寝ようとする。
……
(だめだ、寝れないや……)
寝たいのに、頭は一向に冴えたままだ。
ガタンっ
誰もいないはずの家の中で突如大きな音がする。
ビクっとした千佳は声も出ず、動けない。
(……な、なに、いまの…………)
じっとりと背中が汗ばむ気がしたのに、なぜか寒気がする。
音は聞こえてこない。
「気のせい……だよね」
自分に言い聞かせるように声に出す。しかし。
ひたひたと何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
今度こそ、千佳は完全に動けなかった。