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3.8 違和感 (栗本視点)

 そんなこんなで、新しい弟子を迎えることになった栗本は、とりあえず警部へ報告することにした。


「ではティアさん、少しだけ待っててもらえますか?これから私の弟子になる人だということを伝えなければ。」


「ええ、もちろんです。」

 

栗本は、ソファーから立ち上がり、色々と書き留めていたメモ帳をパタリと閉じながらティアへ背を向け、ドアノブに手をかける。


「一つ、お尋ねしてもいいですか?」


 突然、そっと背後から声が掛けられた。振り返ると、ティアがにこりと微笑んでいる。


 栗本は直感的に今話すべきではないと感じた。


「・・・なんでしょう?後でも構いませんか?どうせこれから話す機会は沢山ありますし。」


  「・・・そうですね、後にしましょう。」


  ティアは避けられたことに気がついたのか、少し目を細めながら笑みを深くする。


「では、また後ほど伺います。」


 栗本はにこりと笑うとそう言って、再びドアノブに手をかけて、部屋を出る。パタリとドアを閉めた。


 閉じられた扉をティアはそっと見つめていた。


 ドアを閉めた瞬間、栗本は、どっと汗が吹き出るのを感じた。


「はぁ〜〜〜。」


 深く息を吐いて気持ちを整えながら、警部がいる部屋へと足を進める。


(なんだこの悪寒は・・・)


 深められた笑みを見た瞬間、深い戦慄が走った。


 一見すると、ただ微笑んでいるように見えるけれど、その瞳には確かに警戒の色が浮かんでおり、どうしても拭えない違和感が感じられた。


 強盗を踏みつけたと聞いた時は驚いたが、探偵の弟子となる人物ならば、多少そういった側面があるものなのかもしれないと考え直していたものだが、、、今の笑みを見て確信した。


 彼女はただの一般人ではない。


 少なくとも、なにかの目的があり、弟子として栗本に近づいたのだ。


 栗本が、いくつもの事件を解決するような名探偵だったからこそ気付けたものだ。


(警部にも警戒を促しておこう・・・)


 そう思案していると、奥の扉がガチャリと開き、警部が出てきた。


 きょろきょろと当たりを見回し、近づいてくる栗本を見るなり、ほっと安堵の息を吐いた。よほど気を揉んでいたらしい。


「よう。遅かったからどうしたものかと思っていたが、、、旦那?顔色が悪いですぜ?」


 心配そうに警部が声をかけてくる。


 隠していたつもりだったのだが、警部にはバレていたらしい。随分と余裕を失っていたみたいだ。


「・・・いえ、すみません。一旦情報を共有します。」

 

 部屋へ入り 栗本はソファーへ腰かけ、ホッと息を吐く。


「・・・でどうだった?例の少女は。」


「・・・先日、私に弟子ができる、という話をしましたよね?」


「あぁ、そういえばしていたな。旦那が浮かれまくって車に轢かれかけた時だな。一日中どこかしこで事故に会いかけたんだっけ。...不審者がいるって通報もされてたっけ!」


 警部が懐かしむようにガハハハと笑う。


「ちょっ、その話はやめてくださいよ。」


 顔を顰めて慌てて話を遮るが、警部はペラペラと栗本の珍事件を語り出す。


「あぁもう!そんな話はどうでもいいんですよ!・・・で、例の少女がその弟子だったんですよ。」


 今度は刑事が顔を顰めた。


「マジかよ・・・てことはこれからも顔を合わせることになるっちゅう事か。憂鬱だぜ。」


「そんなに苦手なんですか?彼女_______ティアは結構美人さんですよ?」


「俺にそんな趣味は無い!というか旦那だってなんか気味悪く感じたんじゃないんですか?」

 

「そうですね・・・。なんというか、色々と予想外の人物でしたよ。確実に言えることは、ただの一般市民ではないという事だけ・・・。なかなかに手強いです。」


「要注意だな。」


 実害は無さそうだが、探りを入れられたり、書類を漁ったりは平気でしてきそうな人物である。


 考えれば考える程、底なし沼に落ちていくように思考が絡まり、抜け出せなくなるような薄気味悪さを感じていた。


 これからの生活が不安でしかないが、何とかするしかないだろう。


 一応弟子は、ずっと望んできた存在だ。よし!と気合を入れて気持ちを整える。


(・・・どうせならば、栗本流歓迎の舞や、儀式、栗本家秘伝のスペシャルメニュー【激不味】の考案などもやってみてもいいかもしれないな・・・。警部も呼んで大々的なパーティーにするか!よしよしそれがいい。)


 などと不穏な計画が進められていくが・・・二人の無事を祈るしかない。


 そんなこんなで栗本とティアの生活は幕を開けていくことになる。


 ・・・・・・不安でしかない。

ご覧頂きありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)

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