3.弟子ができました (栗本視点)
「う〜ん・・・」
栗本は事務所のオフィスにある机で、書類を片手に悩んでいた。その手に持っているのは、探偵事務所の本部へ向けての報告書である。
「う〜ん・・・・・・。なんて言おう。いっそ、正直に書くべきか?いやいやいやいや、そんな事したらボスになんて言われるか・・・。死ぬ!物理的に死ぬだろ!今度こそ!ヒィィィィィィ!」
などと、ひとりで騒々しく、恐怖と葛藤に身を震わせる。尚、この状況は、栗本がティア働き始めてから毎日のように繰り返されている出来事である。
栗本が一人身悶えていると、突如、部屋の扉がバンッと勢いよく開け放たれ、一人の少女が音もなく栗本の方へ突進してくる。
驚きに目を見開き固まっていると、少女はその白銀の髪を振り乱して栗本が居る机に勢いよく両手を叩きつけた。そしてその緑がかったマリンブルーの瞳を憤怒の色に染めて睨みつける。
「ほんっとに!全てあなたのせいですからね!?どうにかしてください!」
開口一番怒鳴られた。
「ええっと?まっまあまあ、とりあえず落ち着け。一体何があったんんだ?」
何とか気を持ち直して、怒り狂う少女_________ティアへ声をかける。
「何がではありません!決まっているでしょう、学校の件ですよ!あなたが!勝手に!申し込んだ!」
そう、ティアは今、ある私立の高校の二年生として編入して学校に通っているのだ。と言っても今日が初めての登校日なのだが。
ティアが着ているのは昨日届いたばかりの真新しい学校の制服である。膝上まであるくすんだ青緑色のプリーツスカート。上は純白の生地にスカートと同色の二本のラインが入った襟と少しそれよりも色が濃いスカーフが特徴のセーラー服である。
静かにしていればそれはもう美人なのだが・・・・・・。などと思考をとばしていると
「聞いているんですか!?」
形の整った細い眉を吊り上げて、再度、栗本を睨みつける。
「・・・・・・・あぁ、もちろん聞いているよ。具体的には何が?」
すると、ティアは堰を切ったように喋り出す。
普段のどんな事があっても凛と落ち着いている姿からは想像もできない。
ここまで感情を露わにするのは先日の栗本が気を失った一件以来である。
(初めは警戒されているのか、なかなか本音を出すことは一切していなかったのに・・・。俺に対しては最近本音を話してくれている。いや〜成長したな〜。お互いに・・・。)
「・・・・・・と、言うことなんです。どういう事よ?あなたは事情を知っていて?」
現実逃避気味に思考を飛ばしていると、話し終わったティアがキッと睨みつけてくる。
「さぁ?俺も知らないな」
適当に相槌を打ちながら思考する。
(どうしてこんなにも事件が起きるのやら・・・。ティアの周りは不可解すぎる。)
ティアが栗本に対して冷ややかな殺気を放っていることに気付かずに、栗本は過去へ思考を飛ばす。
そう、初めて会った時もなかなかに大変だったのだ__________。
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