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「104回目で、また君と」  作者: 朝焼け
第一章
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7.過去の記憶

 教室にたどり着くと、それぞれ席へ向かう。と言っても、幸か不幸か二人の席はとても近い。ティアが窓側の一番後ろの席。ウィルはそのひとつ前の席だ。


 席に着いた途端、思わずため息をつきそうになった。何とかそっと息を吐く程度にとどめながらも、笑みを保ち続けることは出来なかった。


 幸いにも、今日は職員会議のため3時間しか授業はない。家に帰ってから、もっとしっかり作戦を立てるべきだろう。

 本来ならば、ここまでわけも分からずに不安になることなどなかった。でも、ここ最近、ティアは不調だった。理由は分からない。でも、明らかに何かがおかしいような、不安が心の奥から湧き上がってくるような、そんな感覚に襲われる。


(頭が痛い...)


 先程からズキズキと頭痛が酷く目の前がチカチカしている。


 ふと、あれ?、という気持ちが心に湧いた。


(この光景、どこかで見たことあるような...。それに、さっきのウィルとの会話、どこかで聞いたことがある。)


 聞いたことがあると言うよりも、ずっと前にどこかで同じような話をしたことがあるような、そんな気持ちの悪い感覚が頭の中を駆け巡る。


『思い出して!』


 誰かが叫ぶ。


(何、これ。頭の中で誰かが叫んでいるみたい。...頭が痛くて考えられない...。気持ち悪い。)


「あなたは、誰...?」


気づけば、ティアは胸元を抑え、机にうずくまるようにして荒い息を吐いていた。体中から汗が吹き出るように、気持ちの悪い感覚だけがせり上がってくる。


 考えたくても、誰かが耳元で、心の中で叫んでいるような気がして、上手く思考がまとまらない。心を落ち着けようとゆっくりと呼吸しようとするが、上手くできずに、声になり損ねたような乱れた呼吸音だけが微かに響く。


 その時、前の席のウィルが振り返った。


「なぁ、さっきの話のことだけど...って、おい大丈夫か!?」


 驚いたように声を上げ、がたりと立ち上がる。周りの生徒たちもティアの様子に気づいたようで、ザワザワと数人が集まり、誰かが保健室へと走っていく。


 大丈夫だ、と言いたいのに、声が出ず荒い息が口から漏れる。周りの声がやけに大きく頭にガンガンと響き、耳を押さえたくなった。


 なんとか顔を上げようとすると、力が入らないからか、やけに頭が重く感じられて、ぐらりと右側に重心が傾いたのが遠目にわかる。

 倒れる、そう頭の中では分かっていたけれど、体も頭も上手く回らない。


 体が床にぶつかる寸前、誰かが自分を受けとめたのが分かる。ウィルだ。


「おい!しっかりしろ!」


 返事をしたいのに、意識は遠のいていくばかりで、ろくに何も出来ない。

 ティアはそっと意識を手放した。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ティアが意識を失った後、教室は騒然となっていた。


 ウィルはティアを咄嗟に抱え直し、立ち上がる。


「直接保健室に行く!」


 声を張り上げると、生徒達がザッと道を空け、その中を突っ走る。


ティアはぐったりとしたまま動かない。過呼吸のようにハアハアと荒い息を吐くばかりで一切の反応も示さない。


 昨日会ったばかりの転校生。なのに、ウィルの心には、今まで感じたことがないほどの焦燥感が込み上げていた。


(くそ...!なんなんだよ!)


 突然ふと、頭の中に火花が飛び散るような痛みが走り、足を止めて膝を着く。それと共にウィルの頭に一つの情景が浮かび上がった。


 昼と夜が共存しているような、神秘的な空間。そこで誰かと向かいあわせで座り込んでいる。目の前の誰か、いや少女が、血まみれで泣きながら悲しそうに笑っている。自分はそれに微笑み返して、そっと抱きしめようとして__________


「はっ...!」


 自分が何を見ていたのかが分からずに思わず息をのむ。


「お前は、誰だ?」


 名前も知らない誰かにそっと問いかけるが、返事は返ってこない。


 そのままティアを保健室まで送り届けたあとも、その光景が頭に焼き付いて離れない。

 ボーッとティアが救急車に運ばれていく様子を見ながら突っ立っていた。


「シナ、だったっけか...。あいつか...?そんな訳ないか。」


 きっとあれは夢だったんだ、と思考に区切りをつける。

 どことなく、夢の少女が先程まで自分の腕の中にいた彼女と重なって見えたのは、きっと気のせいだろう。


ご覧頂きありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)

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