第二話「師匠」
とりあえず俺は、あの人が待つ自宅へ戻った
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「やっと来たか、飯が冷めるぞ」
この人はカイラ、俺の母親だ。
捨て子だった俺を拾い、育ててくれたらしい。
容姿は身長は170cmくらいで体格が良く、
肩まで黒髪が伸びており、青の瞳を持つ美しい女性だ。
元兵士で、上司を殴って、それが原因で退職して、
その後、自給自足の生活を始めたらしい。
「今日はお前が好きなブルロス肉のシチューだ、たくさん食べろ」
「カイラ、話があるんだけど・・・」
「どうした?改まって」
「俺を弟子にしてください!」
「断る」
「なんで!?」
「お前がまだ子供だからだ、遊びならいくらでも付き合ってやるぞ?」
「いらないよ・・・」
参った・・・
まさか断られるとは・・・しょうがない
こうなれば自分で強くなる方法を探さねばならない。
近くに【迷子の森】という場所がある
夜になるとそこにモンスターが現れるらしい
そのモンスターを狩れれば多少強くなったと言えるだろう。
そしたらカイラも弟子入りを認めてくれるかもしれないしな。
今日、カイラが寝てから出発しよう。
「おい、さっさと食え」
「・・はーい」
--深夜--
・・・ベットからゆっくり抜け出して、カイラが起きてないことを確認する。
武器は、カイラの剣は重たくて持てないので調理用の包丁を使う。
明りはランプがあるのでそれを持っていく。
家を出て数十分程歩くと森の入り口が見えてきた。
中は月の明りを通さず、ランプで照らしても手前の道しか見えない。
「よし、行くか。」
そう呟き、俺は歩みを進めた。
周りを警戒しながら奥に進んでいくと、何かがいる。
・・・あれは、イノシシだ。
モンスターではなく、動物だが一応、狩ってみるか、
この包丁の切れ味も確かめる必要があるしな。
「ウゴゴゴ・・・」
イノシシは大きなイビキを上げて眠っていた。
今殺しても強くなれないので、俺は一旦イノシシを起こすことにした。
イノシシに近づいて腹を蹴とばす。
「ピギィィィ」と驚いた声を上げて身を起こしたイノシシ。
少し間合いを取って、イノシシが突進してくるのを待つ。
改めて見ると結構大きなイノシシだ、恐らく俺と同じくらいだろう。
イノシシが、足を地面に擦りだす。
・・・突進してきた!
イノシシが寸前までくるのを待つ・・・
・・・まだ
・・・まだだ
・・・今!
俺は突進を横に避け、そのまま包丁をイノシシの横腹に突き立てようとしたが、イノシシが速く、攻撃が間に合わなかった。
次に俺は近くにあった太めの木を背にして、イノシシの突進を待った。
イノシシが突進してくる
・・・まだ
・・・もう少し
・・・今!
突進を横に避けて、包丁を木に突っかかているイノシシの横腹に突き立てる。
・・・ズブリ
手に感覚が伝わる。
その瞬間イノシシが大きく暴れだした。
「うわ、ウッ・・・」
俺の踏ん張りも効かず、あっけなく吹っ飛ばされた。
「ピギィィィィ」
大きな悲鳴を上げて、イノシシは逃げ出した。
「クソッ・・殺せなかった・・」
だが、包丁の切れ味が思ったよりも良かったので、
血の跡が分かりやすくイノシシの行く先を示していた。
俺はイノシシの跡を追った。
数分歩くとイノシシの呼吸音が聞こえてきた。
ランプで少し前を照らすと、イノシシが倒れていた。
「よし!弱ってたんだ!」
そう言いながら、仕留めようと俺は駆けだした。
・・・すると
俺の頭上から呼吸音が聞こえた気がした
「・・・ゴクリ」
生唾を飲み込み、俺は恐る恐るランプを上に向けた。
そこには、カイラの5倍はあるであろうイノシシがこちらを見下ろしていた。
イノシシの血走った眼と荒げた鼻息が俺の生存本能に訴えかける、
((((((((((((((逃げろ))))))))))))))))
俺はランプを投げ捨てて、逃げ出した。
・・・ドシ・・ザッ・・ザッ
後方から足を地面に擦る音が聞こえる、突進の予兆だろう。
俺は木々を縫いないながら逃げる。
・・・ガッ・・バキバキ・・バキ
後ろをチラリと見ると奴が木々をなぎ倒しながら突進してきた。
「クソッ・・お構いなしかよ!」
そう吐き出しながらも、俺の心は落ち着きを取り戻していた。
目的を忘れていた。
俺は強くなるためにこの森に入ったのだ。
恐らく奴がモンスターの『ブルロス』だろう。
あんな奴ぐらい今倒せなくては間に合わない。
『大いなるもの』が来るまでに。
俺は、やつを殺すと決めた。
方法はイノシシと同じだ。
ギリギリで避けて、包丁を刺す。
バキバキ、バキボキと木をなぎ倒しながら、どんどん近づいてくる。
・・まだだ
・・・もう少し
・・・・今!!
横に駆けだした。
その瞬間、ブルロスが馬鹿にしたかのように鼻を鳴らし、
急カーブした。
ぐしゃり と音を立てて俺の身体は吹っ飛ばされた。
数秒の滞空時間を終えて、木にぶつかる。
・・・全身が・・・痛い・・・息が・・・出来ない。。。
・・・ドシィ・・・ザッ・・ザッ
ブルロスが地面を擦る。
身体は動かない、包丁を握る手にも力が入らない。
・・・ガッ・・バキ・・バキバキ
ブルロスが近づいてくる。
この状況でも俺は、奴を殺すことを考えていた。
だが、具体的な方法は見つからなかった。
ブルロスがもう目の前まで来ていた。
とうとう目を閉じ、死を待った。
・・・・いつまで経っても死は来なかった
目を開けると、そこには上下に真っ二つにされたブルロスであろう物体があった。
すると、一人の見知った女性が近づいてきた。
・・・カイラだ
カイラは俺の側まで来ると、問答無用で抱きしめた。
「・・・・良かった・・・」
涙を流しながらそう呟いた
ブルロスとカイラが切り開いたであろう木々の隙間から月が姿を現した。
月に照らされながら俺は考えていた。
ここまでカイラが強いとは思っていなかった。
よし、決めた。
この人を殺すことを第一目標にしよう。




