第76話
姿を現した海人は思った。バルディのこの不思議なチカラ。バルディはこの不思議なチカラで次元の間を支配しようとしている。
周りの様子を伺った海人だったが、ここがどこかは全くわからなかった。ただ、石造りの建物の中庭らしい。広さは子どもの頃に通った学校の体育館くらいだ。先程いた場所は日中だったはずだが、ここは闇夜のようで薄暗い。頭上を見上げると星々が見れた。
そして、バルディは…いた。右隣にガスキュールと呼ばれた男を従えて、不敵な笑みで海人を見ている。良く見ると、バルディの背後には石像が10体あって、どの石像もまるで生きているかのような造りだ。
海人は先制しようと思ったが、バルディの宣言が先だった。
「小僧、海人とか言ったな。ここは我が居城ザクゲシュ城である。頭上を見上げると良い。青白く光る惑星が見えよう。先程お前がいた惑星で、あの惑星とこの惑星は双子惑星でな。ここは我の支配とする闇夜の惑星だ。お前の最後の地にするにふさわしかろう」
「バルディ様、配下の者達はいかがなされました?この石像はまさか、かの者達でございますか?」
狼狽えたかのような、ガスキュールが控えめに申し出た。
「あの者どもは我のチカラとなるために、我が吸収した。我のチカラとなれたことを喜んでおろう」
「そうでございましたか…海人という者はいかがなさいますか?」
「あの者は、我が直々に手を下すとする。お前は控えておれ」
「ははっ」そう言うやガスキュールは後ろに引き下がった。
バルディはどうやら配下の者達を吸収したらしい。だが、海人は思った。複数を相手にするよりは単独のバルディを相手にする方がいいかもしれないと。
「話しを聞いておったな?これがお前との最初で最後の戦いである。我が直接手を下す。そして、お前の命も終わりだ。覚悟せよ」
バルディは早々と戦闘態勢に入った。
「それはこっちのセリフだ。お前の野望は砕いてみせるし、桜ちゃんも返してもらおう。覚悟!」
宣言するや海人も背中のナナカミを構え、戦闘態勢に入った。
バルディは何やら唱えると、体が低く浮かび、指をパチリと鳴らした。足元が一瞬光り輝いたかと思ったら、そこから何かが現れた。獣だった。海人の知るものだと、虎に近い獣が1体。咆哮を上げながら威嚇している。ナナカミを獣に向けると、獣は足をバネのようにして飛び掛かって来た。素早い獣の動きだった。鋭い爪が海人の首筋に当たる…直前で海人は、後ろによけ、ナナカミを一閃した。ナナカミから放出されたチカラが獣の顔面に当り、呻きを上げて崩れ落ちた。
「好機ぞ。奴は油断しておる」
ナナカミの言葉が終わる前に、海人は突進した。突きのようなナナカミの一撃が当たる…その直前にバルディは、その場所を瞬間移動さながらに変えた。
「あれはどういうことなんだ?」
ナナカミに聞いたが「ワシにもわからん。吸収したらしい配下達のチカラかもしれぬな」
その言葉を聞いた時に閃いた。海人はバルディの後ろにある石像目掛けて、ナナカミを振るった。1体、2体…9体、10体、素早く全ての石像を壊す。バルディの表情からは、いつの間にか余裕が消えていた。
「ただの小僧だと思っておったが、流石にランスゥに認められし者か。まあ、良い。これは只の余興であるからな。次で終わりだ」
バルディは左手を高々と掲げる。その頭上には、青黒い大きな大きな球状の光が現れた。光はどんどんどんどんどん大きくなり、中庭よりも居城よりも大きくなった。
「感じるぞ。このチカラこそ、黒き呪われしこのチカラ。いいぞ。いいぞ。このまま…城ごと消えて無くなれ!」
パチリ!
バルディが右手の指を鳴らした瞬間だった。
「ダメ!」
そこに飛び込んで来たのは、桜だった。




