第69話
アルマール王国の城のバルコニーには、誕生日を迎えたサーシャ、その横にバルディとその背後に控えるように、ガスキュールがいた。
「皆の者、これより、サーシャの生誕を祝う誕生祭を執り行う。宴である」
バルディの宣言によって、誕生祭は盛大に執り行われ、参加した全ての人々がサーシャの成長と国の繁栄を祈った。
バルディは余興として、青く晴れ渡った空に次々と色鮮やかな花火を出現させていた。
指をパチリと鳴らす度に空高く出現する花火は、見る者全ての心を虜にし、出現する度に歓声が響いた。
パチリ!
「それ」
パチリ!
「それ、それ」
不思議なバルディのチカラによって出現する花火は本当に美しかった。
パチリ!
「まだまだ、それ」
花火が出現する度に観衆が沸き、歓声がこだまする。
「父様、本当に綺麗」うっとりしたかのような、サーシャの声と押し寄せ沸く観衆の歓声。
「サーシャよ、皆に手を振ってやるがよい」バルディの勧めに「はい、父様」サーシャは応え、観衆に手を振った。
「サーシャ様、姫様、バルディ様!アルマール王国万歳!」
「サーシャ様!」
「バルディ様!」
「姫様!」
「アルマール王国万歳!サーシャ様万歳!バルディ様万歳!アルマール王国万歳!」
バルコニーから顔を出し、手を振った、サーシャに応え祝う声が響く。
「サーシャ様!サーシャ様!姫様!」
父親の目と顔をした、バルディは満面の笑みを湛えている。
「ガスキュール、次はお前の番ぞ」バルディはガスキュールを呼び、前へ出るようにと言った。
「ははっ、バルディ様には遠く及びませんが、姫様のお祝いに一つ披露させていただきます」
「うむ、頼んだぞ」
「楽しみだわ。ガスキュールは何かしらね、父様」
「我も楽しみぞ。励めよ、ガスキュール」
「ははっ、お任せを」そう言うや、ガスキュールは1歩前に出て、そして、両手をポンと合わせた。
次の瞬間、観衆が沈黙した…かと思ったら、何と、ガスキュールの両手の平から、白い煙のようなものが姿をもくもくと現し始めた。白い煙は、上へ上へと昇り始めたと思ったら弾けて、その中から複数の透明の小さな球体が姿を現した。その数をどんどんどんどんと増やして、今やその球体は空一杯に広がっている。
「参りますよ」ガスキュールが言うやその球体は、パチンと弾けて、七色の虹が頭上に架かったではないか。虹は城に架かった天の橋のように架かっている。
「お粗末様でございます」ガスキュールが言うや、「まあ、綺麗。素敵ね」サーシャが目を輝かせている。
「おお、見事である」バルディが言うと、次の瞬間に観衆が沸いた。
皆、頭上の虹を眺めては、目をキラキラと輝かせている。
「アルマール王国万歳!アルマール王国万歳!アルマール王国万歳!」再び三度歓声が沸く。
「お粗末様でございます」そう言うと、ガスキュールはその場から一歩下がって控えた。
「父様、ありがとうございます。ガスキュール、ありがとう。私、今とても幸せです」
「それは我も同じぞ、ガスキュール」
バルディはガスキュールに声を掛け、
「サーシャをこれからも頼むぞ」
「ははっ、このガスキュール、私の命にかけても姫様をお守り致します」
「まあ、嬉しいけど、大袈裟だわ。でも、よろしくね、ガスキュール」
「ははっ、お任せ下さいませ」
「うむ、頼もしいな」
「恐れ入ります」
そんな声が聞こえていた気がしたけど、だんだんと周りがぼんやりして、意識がどこか遠くへと飛んで行く気がした。
それは何で次はどこへ行き、桜に一体何を伝えようとするのか。
桜にはわからず、だが、それを知らないといけないと頭の片隅で何となくであるが、それが大切で真実なのだと思われた。
遠く。
遠くへ。
どこへ行くのだろうか。




