第58話
睨み合う海人とスタイール。先に動いたのは、スタイールだった。
スタイールは被っていた、シルクハットを手にすると、中から何かカードのようなものを取り出した。そして、手を軽く振る動作をして、カードを海人目掛けて投げた。
「海人!」ナナカミの緊張に溢れた声が飛ぶ。音もなく投げられたカードは、海人の首筋を掠めたからである。
「小僧、次はその首をかき切ってくれよう。今のはわざと外したものだからな。小僧ごとき、これくらいのハンデを与えんと余興にもなるまい」
「甘く見られたものだな。奴は油断しておる。一気に勝負を決めようぞ」
ナナカミの言う通りだと思った。海人は行動した。
スタイールは次々にカードを投げて来た。海人は紙一重で躱し、スタイールとの距離を詰める。スタイールには焦りの色が見えたが、どこか余裕のものがあった。そうだ。スタイールは、バルディからチカラを授かっている。それを破壊するなり、壊するなりしないと、スタイールを倒せないと思われる。
スタイールとの距離を詰めた海人は、ナナカミを一閃した。スタイールの仮面が軽い音を立てて割れる。その仮面の下からは、火傷らしき痕があった。
「お、おのれ、小僧、許さんぞ。ハンデは終わりだ。バルディ様に授けられたチカラで仕留めてくれよう」
そう宣言し、スタイールはスティックで自分の心臓を自分で貫いた。
そして、スタイールはその姿を変えた。竜だ。ドラゴンと呼ばれる空想上の生き物で、海人はここで竜を目にするとは思わなかったので、後退した。
「おおおお、チカラが漲ってくる。流石、バルディ様。これなら小僧如き一捻りだ」
竜となった、スタイール。海人は打つ手があるのだろうか。
スタイールは、海人に炎を吐いて、焼き殺そうと炎を吐き続けている。このままでは、海人は焼き肉どころか炭となってしまう。
「スタイールの心臓辺りに、何か大きなチカラを感じる。先程は鳩尾辺りに感じたが、自分で心臓を刺したところをみると、バルディの授けたチカラはあそこだ。移動しておる。突撃するぞ、海人」
ナナカミの提案に「わかった。やってみる」と海人は応え、スタイールの隙を伺った。
次々と吐かれる炎だが、海人はある点に気づいていた。炎を吐くと、1秒くらいの隙が出来、その間は炎が吐かれることは無い。
勝機はそこにある。海人はナナカミを構え、スタイールの隙に合わせ突撃した。ナナカミはスタイールの心臓を貫くと、スタイールは悲鳴にも近い絶叫を上げ、その姿を変えた。
その姿とは、ガマガエル。大きな1m近くある、ガマガエルだった。その姿になった時に、スタイールの足元から何かキラキラ光る宝石のようなものが落ちたので、それを海人は拾っていた。
シャフトの兄らしきだったので、これは予想できていたことだが、海人はそれを見て、顔を引きつかせていた。
スタイールに問い詰める。
「バルディはどこだ?桜ちゃんは?居場所はどこだ?」
「グゲゲゴゲゴ。バルディサマゲコカ?オマエゴトキニオシエルコトハナイ。ゲコ。シンデイクオマエニオシエルコトナドナイ。バルディサマニヨッテ、オマエハソノイノチハオワルモノダカラナ。ゲコ」
「このままでは埒が明かん。海人、ロケットに閉じ込め、次元の間に戻るしかあるまい」
確かに、ナナカミの言う通りだ。だが、海人はカエルが苦手である。しかし、ロケットに閉じ込めるのが出来るのは、海人しかいない。
「わかったよ。うっうっ」
海人はガマガエルを掴むと、「うっ」と呻きながらも、ロケットに放り込んだ。
「グゲゲゲゲゲ、グゲ、グゲゲゲゲ!!!」
ガマガエルの絶叫が暫く耳から離れなかった。




