第56話
遠のいた意識がはっきりとすると、眼前に仮面に燕尾服の男を確認する事が出来た。
スタイールだった。そうだ。精神の窓から、海人は現実の世界へと日本へと帰って来たのだ。
一瞬、夢かと思ったが、小脇に抱えた、ルウィンの温もりを感じて、これが現実だと思わされた。それと同時に、相棒のナナカミの存在も確認できた。
スタイールは、その表情は仮面でわからないが、驚きの声を上げた。
「き、貴様、戻って来たのか…お、おのれ」
海人はスタイールを問い詰める。
「お前のターンは終わりだ。知っている事を言ってもらう。桜ちゃんとバルディはどこだ?」
「く、くくく、何が終わりだ?終わりなのはお前の方だ。戻って来れたようだが、ただそれだけで、俺に勝つことなど出来ぬ」
「海人、海人、このまま戦うつもりじゃないよネ?ボクを安全なところに降してヨ?」
抱えられた、ルウィンが抗議の声を上げた。
そうだった。確かに、ルウィンを抱えたままでの戦闘は無理がある。どうしたものかと考えていると…。
「あ、あそこがいいのネ。あの中にボクを避難させてヨ。あそこだヨ。ほラ、ほラ、あの地面に入って行くような入り口の中でいいと思うんダ」
ルウィンは小さな羽をバタバタさせて、その羽の先でその場所を指した。
「地下鉄の入り口か…確かにあそこならいいかもな」
「そうそウ、地下鉄とか言うんだネ。急いデ、早く早クー」
「ルウィン、ちょっと待ってね。ナナカミ、あそこだけどわかるよね?」
背負った、ナナカミに確認をした。
「よかろう。海人、行くぞ」
そのナナカミの一言を後にして、海人は一息で地下鉄の入り口に移動した。それは見れる人がいれば驚くべき速さで、瞬間移動したと言っても疑われない速さだった。
移動した海人は、「ルウィン、ちょっと待っててね」そう言い、ルウィンを地下鉄入り口に優しく放り投げた。
「こ、こラ…乱暴に扱っテ…あ、ああ…落ちるウゥ…」ルウィンは地下鉄の入り口の中へと吸い込まれて行った。
そして、海人はスタイールに向き直り、宣言した。
「待たせたな。教えてもらうぞ。桜ちゃんとバルディの居場所を」
スタイールには謎の余裕があったのだが、それは次の事実があったからだ。
「小僧、俺はバルディ様にあるチカラを授かっているからな。これがあれば俺は無敵だ。お前に俺を倒す事は出来まい」
あるチカラとは何かはわからないが、ナナカミは察したようだ。
「海人、奴の鳩尾辺りに意識を集中してみよ」
海人は言われるままに、スタイールの鳩尾辺りに意識を集中すると「あ、あれか!見える。見えるよ、ナナカミ」
「よろしい」
「スタイールの鳩尾辺りに何か邪悪なチカラを感じる。あれがバルディの授けたチカラだと思うから、まずはあれを破壊すればいいんだね」
「そうだ」
そして、海人はスタイールに宣言した。
「お前のチカラの根源はわかった。チェックメイトだよ」
「わかったところで、どうということはない。貴様ごときに俺が負けるものか!」スタイールは知らず激高していた。
海人はナナカミを構えた。そして、戦闘態勢にも入った。
それを見た、スタイールも戦闘態勢に入った。
静かで、今までにない戦闘が始まろうとしていた。




