第54話
不思議な世界に現れた不思議な生き物。生き物というのが正しいのかはわからないが、梟に似たそれは、生きて言葉を話すらしいので、生き物の類だと思われる。
「ルウィンとか言ったね。君は妖精とか鳥の仲間なのかい?それと、ランスゥに頼まれたんだよね?じゃあ、俺のこの現状もわかってるよね?」
ルウィンは「うんうン、わかってるヨ」頭と首のとの境目がわからないが、どうやら頷いているらしい。
「ルウィンはルウィンデ、妖精でも鳥でもないヨ。ルウィンはルウィンだからネ」
何を言っているのかわからなかった。
「じゃあ、ここはどこで、ここから出るにはどうしたらいいんだ?俺は元の世界に戻らないといけない」
「うんうン、そうだろうヨ。ボクは何でも知ってル、頭が良くテ、可愛くも美しイ、ルウィンだかラ。まア、キミが僕の登場でボクに見惚れてしまうのもわかるからサ」
美しいかはイマイチわからなかったが、可愛らしいのはそうだと海人は思った。だが、ルウィンの機嫌を損ねてもいけないと思い、海人はルウィンを褒めて機嫌を取ることにしたのだった。
「おお、可愛くも美しい、ルウィン。しかも、頭が良いなんて、何て素晴らしいのだろう。だから、教えて欲しいんだ。ここはどこで、元の世界に戻るにはどうしたらいいのかを」
「うんうン、キミは見どころがあるネ。その願いを叶えてあげようと思ウ、けド、今のルウィンハ、ボクは今ネ、ちょっと困った事になっているんだヨ」
「俺はどうしたらいいんだ?」海人はどうしたらいいのか困った。
「あのネ、ボクは今、とってもお腹が減ってるんダ。それにネ、ルウィンがチカラを使うにハ、お腹がいっぱいじゃないといけないノ。だかラ、何か食べさせて欲しいんダ」
要するに、ルウィンは空腹でチカラが使えないらしい。確かに、空腹では誰でも困るが、それが一番の原因でチカラが使えないとは、何かずれているのではないかとも思われた。しかし、海人には現状を変える方法もなく、ルウィンの要求に応えようとした。
だが…「食べ物を何も持っていないんだ。ごめん、何とかならないのか?」海人は食べ物の類一切を持っていない。
ルウィンはここぞとばかりに目をキラキラと輝かせた。それは海人にとっては謎だったが、それはそれで次の理由を聞くと、何となく、ルウィンらしいなとも思われるのだった。
「キミノ…そウ、ズボンのポケットから美味しそうな良い匂いがするんダ。それボクに食べさせて欲しいんだヨ」
ズボンのポケット?海人のズボンのポケットには、何も食べ物など入っていない。
「あのネ、僕が食べるのハ、チカラのあル…そうだネ。ある種のエネルギー体がボクの食べ物になるんだヨ。あるよネ?」
海人はルウィンが何を言っているのかわからなかったが、一応、ズボンのポケットを探った。
「そうそウ、それだヨ。それをボクに食べさせてネ」
言われてズボンのポケットから取り出したのは、小さなカプセル。そう、ダラスに貰った、英知の結晶だった。
英知の結晶を見た、ルウィンが目を輝かせている。
「本当にこんなのでいいのかい?」
「うんうン、それじゃなきゃダメなくらいそれでいいんだヨ。早ク、早く急いでネ」
急かされた海人は、正直戸惑っていたが、英知の結晶をルウィンの口らしき場所に差し出した。そういや、英知の結晶は、あらゆる世界の疑問を解決するアイテムらしかったけど、ここで使ってしまってもいいのかとも思ったのだが、他に方法もなかったので仕方ないのかもしれない。
「早ク、早ク、ボクはお腹ペコペコだヨ。早クー」
こんな時に不謹慎かとも思ったのだが、海人は鳥に餌付けをするイメージを持ってしまった。
「ちょ、ちょっと急かさないで。食べさせてあげるからさ」
「早ク、早クー」
これでは食べ物にがっつく梟である。
「ここでいいのかな」海人はルウィンの口の中に、英知の結晶をそっと放り込んだ。
「うン、いいネ。いただきまース」
パクパク モグモグ モグモグ モグモグ ゴックン
「あー美味しかっタ。ごちそうさまだったのネ。ルウィンはお腹いっぱいだヨ。ありがとうなのネ」
どうやら満足してくれたらしい。海人は逸れた話しを元に戻した。
「じゃあ、現状の説明と俺を元の世界に戻して欲しいんだ」
「オッケーなのネ。今のルウィンハ、お腹いっぱいだかラ。簡単なのネ」
そして、ルウィンは海人の想像外の事を説明し始めた。
「ここはネ。キミの精神世界デ、キミの精神の中なのネ。それト、ボクはあらゆる精神世界を移動する事が可能なのネ。だかラ、ボクに任せておけば安心なのネ。さア、始めるヨ」




