第51話
銃口を向けられた桜の悲鳴に近い声が聞こえた。
「海人君、怖い。助けて!」
「桜ちゃん、今助けるからね」
「きゃーっ」と桜の悲鳴が聞こえる。
「お願い。海人君、武器を捨てて。そうでないと私は殺されてしまうわ」
おかしい。海人は思った。桜の様子がおかしいことに。桜はそんな事は言わない。そんな弱音は吐かない。この違和感は何だろうと思った。
そうだ。バルディの配下のシャフトと戦った時に感じたものを桜に感じる事が出来た。
「気づいたようじゃな、海人」ナナカミも海人と同様だった。
「そうだね。上手く化けているようだけど、あれは桜ちゃんとは違う」
「その通りじゃ」
海人の目に映る桜の表情に変化があった。
「海人君、どうしたの?早く武器を捨てて投降して。お願い」
桜の姿で桜の声で、桜ではない何者かの言葉に腹が立った。心底気分が悪かった。
「お前は何者だ!」
「何言ってるの?海人君?」
怒りに近い気持に胸がムカムカとする。
「桜ちゃんの姿と声で言うな!」
「どうしたの?海人君?」
ナナカミの狙いを桜に向けた。
「桜ちゃんに化けたようだが、俺は騙されない」
そう言うと、桜の姿をした何者かは、身を折って高笑いを始めた。
「く、くっくっくっ、うあわぁはっはっは…芝居は終わりだ」
そして、その姿を変えた。その姿その男は、身の丈は海人よりやや高く、燕尾服を身に纏い、頭にはシルクハットを被って、右手にはスティックを持っていた。何より目を引いたのは、その顔の上半分を覆う仮面を付けていたからだ。
「何者だ!?」海人の言葉に謎の男は言った。
「我が名は、スタイール。バルディ様の忠実なる僕だ。そして、お前が倒した、シャフトの実の兄だ。弟の仇は取らせてもらうぞ」
シャフトが右手のスティックを目の前で1回転させた。すると、自衛隊員達の銃口が海人に変わる。そして、そのままスティックで地面を突いた。
自衛隊隊長の号令が飛ぶ「目標に攻撃開始!」海人に銃弾の雨が降り注ぐ…と思ったが、海人がナナカミを一振りすると銃弾は全て地面に落ち、次の一振りりで全ての自衛隊員達がその場に崩れ落ちた。
「ちっ、やはり、この世界の奴らは使えねぇな」
仮面で表情はわからないが、スタイールは不満の声を上げた。
海人はスタイールに聞かないといけない事があった。一番大切な桜について。
「スタイールとか言ったな。桜ちゃんはどこだ?それと、バルディはどこだ?」
それを聞いた、スタイールが癇癪を起したかのように、スティックを地面に激しく突き出した。
「き、貴様、バルディ様を呼び捨てにするとは、何と愚かな。ゆ、許さんぞ」
突き続けるスティックが折れんばかりに抗議の音を上げている。
「桜ちゃんに化けていた奴の言う事か!お前こそ、それを愚か者と言うんだよ。兄弟揃ってモノマネだけは得意なようだな」
海人が言い返すと、
「口だけが達者な小僧の分際で生意気な。その命を代償にしてもらうぞ」スタイールは冷静さを取り戻し、頭のシルクハットを脱いで、頭上高く放り投げた。
「この帽子が俺の手に戻った時がお前の命の終わりだ。覚悟せよ」
スタイールの気配が…気のようなものが膨らんだ気がした。
海人はその時に「おや?」っとデジャヴのようなものを感じて、背中に悪寒が走ったのだが、その時の海人には何なのか思い出す余裕がなかった。
「海人よ、油断するでないぞ」
ナナカミの言葉に「大丈夫、ナナカミと一緒ならね。頼んだよ、相棒」
「任せておけ」ナナカミが微笑むような声で言った。
戦闘態勢に入った、スタイールと同じく、海人とナナカミも戦闘態勢に入った。




