第50話<首都東京>
鏡を出た時に、海人は自分がどこにいるのか把握できなかった。周りは青色で、そうだ、これは青空で空中だ。しかも、かなりの高さなのがわかった。
そう思った次の瞬間に、海人は下方…地上目掛けて落下する重力を感じた。足元遠くに見えた地面が近づいて来る。そこにビルやマンション等の高い建物を確認する事が出来た。
海人はある一点を目掛けて落下しているのであった。このままでは、地面に激突してしまう。魔法が使えれば飛べるかと思って試してみるのだったが、それを発揮する事は出来なかった。
地面はどんんどんどんどんと近くなる。このままでは…背中のナナカミの声が飛んで聞こえた。
「海人、ワシに気を送れ。そして、そのチカラで落下に備えよ。大丈夫だ。ワシの真のチカラが使える、今のお前ならそれが出来る。急げ」
聞き終えるや海人は背中のナカカミを抜いて構えて、気を送り、地面目掛けて一振りした。
チカラが目に見えるが如くだった。ナナカミから放出されたチカラによって、海人は地面に激突一歩手前で、ゆっくりと地上に降り立った。
「危なかった」無事を確認して安堵の声が自然と出た。
ここはどこかと周りを見渡すと、特徴のある交差点だった。日本の首都東京の渋谷スクランブル交差点、その中心に海人は降り立ったのだ。
「安心するのは早いぞ。油断するな。どうやら、囲まれたようじゃ」
ナナカミから警告の声が飛んだ。
「そのようだね」
海人を取り囲んでいるのは、そう、日本の陸上自衛隊で、銃を構えてその銃口が海人に向けられていた。
「テロリストに告ぐ。抵抗せずに投降せよ。繰り返す。テロリストに告ぐ。抵抗せずに投降せよ」
自衛隊の隊長らしき隊員が宣言するように言った。
テロリスト?海人は自分がなぜテロリストと呼ばれるのかがわからなかった。
「最後警告だ。テロリストに告ぐ。抵抗せずに武器を捨てて投降せよ」
これは話しにならないと思った。
「ナナカミ、突破するよ。でも、傷つけないでね」
「難しい問題じゃが、まあ、何とかなるじゃろう」
「同じ世界の同じ国の人間なんだ」
「わかっておる」
心が決まった。自衛隊隊員には気絶してもらおう。見たところ、1個中隊だ。弾はナナカミで防げばいい。前の世界では上手く出来たから大丈夫だ。
「行くよ」
「おう」
その言葉を言い終えるや、海人は前面の自衛隊員達をナナカミの一振りで気絶させた。
「撃ち方始め!撃て!」自衛隊の隊長の命令が飛んだ。
「海人、あいつがリーダーのようじゃな」ナナカミの声が飛ぶ。
「そうだね」その瞬間に海人は隊長の側面に移動するやナカカミを隊長の首に当てた。昔の海人には想像すら出来なかった早業が、今の海人には簡単に出来た。
「動くな!」海人は警告した。
「くっ…撃ち方やめ…」
自衛隊隊員の撃ち方が止んだ。
「それが賢明だと思うよ」海人はそう言ったのだが、隊長には謎の余裕があった。
「それはこちらのセリフだ。あれを見よ」そう言って指差したその先に…彼女が…いた。
「彼女の命が惜しければ、武器を捨てて投降せよ」
隊長は不敵な笑みを浮かべている。
彼女…ついに…ついに…ついに見つけた。
出掛けた時と同じ、白のワンピースを着ている彼女。
ついに見つけた。
その彼女に自衛隊員達の銃口が向けられていた。
「桜ちゃん!」海人は我知らず、そう叫んでいた。




