第49話
海人は再び次元の間に戻って来た。そんな海人を驚愕させたのは、ランスゥの予想外の一言だった。
「海人、実は残念な事を伝えなければならん。すまんがワシにはどうする事も出来なかった。これを見るがよい」
そう言い、ランスゥが引き寄せたのは、海人も予想していた鏡だ。しかし、ただの鏡ではなかった。海人が初めてここへ来る事となった鏡。そう、夏目研究所に設置された時空の鏡だったからだ。海人の世界にある時空の鏡。
「もしかして……」海人が全てを言い終える前に、ランスゥが宣言するように言った。
「そうじゃ。お前さんの世界にある時空の鏡じゃ。ただし、鏡の出現位置が海人の入った鏡とは違い、どうやら、バルディのチカラによって、別の位置に出現するようじゃ。今わかるのは、お前さんが入った場所からそんなに遠く離れてはいないだろうということはわかる。バルディが強引に鏡のチカラを使った影響だと思われる。すまんが次はお前さんの世界へ行って欲しい。その先は残念じゃが、行かねばわからぬ。海人よ、すまん」
やはり、そうだった。鏡は海人の世界の時空の鏡だった。ランスゥが引き寄せた鏡を見るが、曇っているだけで、その先がどうなっているかはわからない。
「ランスゥ、行くよ。バルディを倒して、桜ちゃんを助けないといけないかね。その為なら、どんなことだってやってみせる。ここで引き返す事も負ける事も出来ないから」
自分で言葉にすると、心の底から勇気も出た。行くしか道は無い。
「すまんの。バルディの事じゃ。きっと何か罠を仕掛けておるに違いない。気をつけるのじゃ。それと、先々の世界で何か託されておるな。それをワシが解放してやろう。きっとお前さんの役に立つはずじゃ」
次の瞬間に海人の左手首辺りが光を放った。これは…ディードか。
「この力は海人の盾となろう。ただし、1回しか使えぬ。海人の命に危険を感じれば、それをきっと防いでくれよう。温かな良いチカラじゃな。よし、次はこれじゃ」
次は海人のズボンのポケットが光を放った。
「取り出してみよ」そう言われ、海人はダラスに貰ったカプセルを取り出した。
「これは?」
「これは英知の結晶というカラクリじゃな。この世界のあらゆる疑問を解決するものじゃ。ただし、これも1回きりのようじゃな。効果を発揮した時に砕ける仕組みのようじゃ。まあ、砕けると言っても危険はないので安心せよ」
ディードにダラス。それに色んな世界で出会った人々。人種も違えば、文明文化も違った。でも、皆良い人ばかりだった。海人には、それが何故か懐かしく思えた。きっと、後の海人は思い出すだろう。彼らとの繋がりが全ての世界を救う鍵であったと。だが、今の海人にはそれを知る由もなかった。
海人は腹を決めた。
「行くよ、ランスゥ。何があっても負けないから。バルディの邪悪な野望は俺が阻止してみせる」
「よろしい」ランスゥは頷くと、海人の世界の時空の鏡に視線を移した。
「わかっておると思うが、油断せぬようにな」
「わかった、ありがとう」
「礼を言うのはワシの方じゃ」
「そんな事ないよ。行って来る」
「海人の世界が守られる事と、お前さんの成功を信じておる。頼んだぞ」
「行って来るね」
最後にそう言い残し、時空の鏡に意識を集中させた。
「ワシがおるの忘れるでないぞ」背中に背負った、ナナカミだった。
「わかってるよ。よろしくね、相棒」
「おうともよ」
両目には赤い羽が浮かんだ。
そして、海人は鏡の中へと入った。




