第48話
バルディは強かだった。首相の海林の精神をその支配下に置くと、政治というものを理解し、次々と日本の国会議員の精神をも支配下に置き、日本の国会議員全ての精神を支配下に置くのに、30分とかからなかった。
政治の中枢である議会を支配されたことで、日本は真の意味でバルディの支配下になった。
その時にバルディの独り言を聞ける者がいたらこうだ。
「この国の政治家とやらは欲にまみれておる。心を支配して操るのは、赤子の手をひねるより容易いものぞ」
テレビはバルディによる日本の支配を伝え、逆らう者は容赦なく、バルディの配下により処刑された。
警察を始め、陸海空の自衛隊どころか在日米軍まで無力化させ、実質的にバルディが支配する事となっていた。
そして、日本を取り囲むように結界を張り、地球の他国からの干渉も防ぎ、完全に独立することとなっている。日本は孤立化し、世界から隔離された。
バルディは日本を隔離し支配下にすると、配下にその支配権を与え、自らは早々に姿を消している。
先に次のようなやり取りがあった。
「スタイールよ、この国はランスゥの代理の生まれ育った国だ。我はお前に新たなチカラを与えるものとする。そのチカラを用い罠を張り、ランスゥの代理を始末せよ。この日本という国は、既に我の支配下にある。それを利用せよ。失敗は許さぬぞ。我は戻らねばならぬ故、この世界を去る。後は任せた」
バルディの言葉を聞き「お任せ下さい、バルディ様。私めがランスウの代理という輩、聞くところによると小僧のようですな。私めが始末してみせます」スタイールと呼ばれた男が言った。
「よろしい」とバルディは言うと、その右の手の平に何かの球のような物が現れた。
「これに新たなチカラを封入しておく。有効に使え」
スタイールは球を受け取ると、それを体の中心に押さえるようにして埋め込んだ。
「おお、このチカラは…何と強力なチカラなのでしょう。バルディ様、ありがとうございます。その役目、見事に果たしてご覧に入れます」
バルディは再度「よろしい」と言うと、指をパチリと鳴らした、とその瞬間に姿を消した。
スタイールと呼ばれた男は、一人呟いていた。
「バルディ様、この大任見事に果たせてご覧に入れます。ランスゥの代理とやら、お前には私が…く、くくく、とっておきの罠を仕掛けておく。相まみえるのを楽しみにしておるぞ」
スタイールと呼ばれた男は、顔の半分を仮面で覆い、燕尾服を身に纏い、右手にはスティックを持ち、その頭にはシルクハットを被っていた。知る者がいれば言うだろう。まるで、海人の世界でいうところの手品師を想像させる姿だった。
そして、スタイールは右手のスティックを一振りした。と、次の瞬間にその姿が見る見るうちに変わって…ある人物の姿となっていた。
その人物とは、バルディが攫った女性で、海人の大切な女性である、桜その姿だった。
だが、海人は知らない。このような罠が仕掛けられていることを。
スタイールは、また一人で呟いていた。
「バルディ様に逆らう愚か者め。待っておるぞ。その命もらい受けるのを。楽しみに待つとしようではないか」
海人の知る声で、桜の姿と声で、スタイールは不気味に呟いていた。




